VTuber・バーチャルライバーグループ「にじさんじ」に所属する加賀美ハヤトさん(社長)は10日、3Dの姿をお披露目する生放送を配信した。社長といえばやはり歌が特徴で、今回も約1時間に渡って9曲を熱唱。集まった視聴者の心を震わせて、コメント欄の投稿とスーパーチャットを加速させていた。
3Dお披露目は、普段2Dの姿で活動しているVTuberにとって「ハレの日」にあたる。生放送にリアルタイムで集まっている人数を表す同時接続数(同接)も伸びやすい傾向にあるものの、今回の社長は13万人超というVTuber業界で記録的な数値を叩き出したのが大きなトピックだ。
VTuberに限らず、日本のYouTubeでは同接が1万を超えるものは人気上位の配信といえる。そしてVTuber業界ではここ半年ほど新型コロナウィルスの影響もあってか同接が上昇傾向にあり、3Dお披露目や誕生日、大型コラボなどの記念番組ではなく、通常の配信でも数万を記録するものが珍しくなくなってきた。
その上でここ1、2ヵ月、「ホロライブ」の桐生ココさん、天音かなたさん、角巻わためさんの3Dお披露目、にじさんじ甲子園のドラフト会議などが10万を超えて加速していたのだが、今回、社長がおそらくVTuber業界最高となる13万を記録した。
数字が伸びた裏付けもしっかりある。社長のアツい歌声が素晴らしかったのが大前提で、さらに技術オタク的に見るとリアルタイムモーションキャプチャーによる3Dフルバンドの生演奏に魅了された。
社長を取り囲み、ギター3人、ベース1人、ドラム1人という黒子姿の5人が演奏しているのだが、弦を弾く指やドラムを叩く腕、リズムに合わせて揺らす体などがやけに生々しい。リアルのライブでよく見る、体でタイミングをとって演奏しているバンドそのものだった。こうした細かく動く指や腕を3Dでリアルタイムに再現するのは技術的にも資金的にもハードルが高く、3Dキャラに楽器を演奏させるなら、従来は事前に収録したものを流すのが当たり前だった。
一方で、配信中にもコメントでリクエストを受け付けて「天体観測」と「完全感覚Dreamer」を披露したように、今回は完全にリアルタイムで制御していたというから驚きだ(しかもドラムのシンバルの揺れまでぴったりだった)。おそらく初音ミクのARライブ時代から含めて、フルバンドかつ3Dをリアルタイムで再現したのは初めての事例と思われる。
「にじさんじ」を運営しているいちからは、モーションキャプチャシステムとして映画やゲームの制作にも使われている高価な「VICON」を導入し、2019年10月より運用を開始している(ニュース記事)。今回のライブでは一瞬ギターが消えたりする小さなトラブルも見られたものの、全体的に破綻がなく多くの感動を呼び起こしていたのは、高性能なハードウェア、それを活かす技術者と半年以上の運用実績、いちからの資金力が結びついた結果だろう。
社長自身も配信中、下記のようにYouTubeのスーパーチャット(投げ銭)でファンから受けた「7桁」の支援が今回に注ぎ込まれたことを明らかにしていた。
「予想通りです。多分、みなさんのたくさんのものを今日まで、そしてこれからも頂いてしまうかもしれないんですけど、本当に皆様からの声援、そして具体的に言うと、今飛び交っている(スーパーチャット)……! 大丈夫ですからね、マジで。もらったぶんを今返しているだけですからね。えー、いただいた分をこのような光景に還元させていただきました。だいたい具体的には伏せますが、7桁の光景これでございますー!」
さらに「超大型ゲスト」として、タカラトミーのトレーディングカードゲーム「デュエル・マスターズ」(デュエマ)から「ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン」が登場するというサプライズもあった。
ライブステージが転換し、同じ「にじさんじ」所属の葛葉さんとデュエマを始めて、葛葉さんが社築さんとチャイカさんを召喚。2人の攻撃で社長を追い詰めるものの、社長が超大型ゲストを……という流れでボルメテウス・ホワイト・ドラゴンが現れ、タカラトミーつながりで「ゾイドワイルド」OP曲の「決闘」を熱唱していた。
社長によれば、ボルメテウス・ホワイト・ドラゴンは「本家、本物、ガチモノのタカラトミーさんからお借りさせていただきました」とのこと。デュエマ自体、社長や葛葉さんが過去の配信で遊び倒していたゲームで、3Dお披露目で本家コラボが実現したことに嬉しさを感じるファンも多いはず。ちなみに葛葉さんは、ボルメテウス・ホワイト・ドラゴンに食べられ、「あったけぇ、ボルホワの中。いろんなあったかみを感じます」とコメントしていた。
デュエマのスマホ版である「デュエル・マスターズ プレイス」では、月ノ美兎さん、本間ひまわりさんらとのコラボが決まっており、今後もなんらかの展開が期待できそうだ。
番組の最後は、福岡のツアーでも披露したオリジナル曲の「WITHIN」で締めていた。息つく暇もない興奮が続く配信だったので、ぜひチェックしてほしい。
(TEXT by Minoru Hirota)
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