
2025年1月11日(土)と12日(日)、283プロダクション *1のユニット「SHHis」(シーズ:七草にちかさん、緋田美琴さん)と「CoMETIK」(コメティック:斑鳩ルカさん、鈴木羽那さん、郁田はるきさん)によるライブ「283 Production LIVE Performance [liminal;marginal;eternal]」が開催された。
*1 いわゆる「アイドルマスター シャイニーカラーズ」の舞台となるアイドル事務所
1日目の昼公演[never;1]、夜公演[odd;2]をレポートした記事に続いて、今回は2日目となる12日に開催した昼公演の[or;3]、夜公演の[even;4]を中心に取り上げよう。
本ライブは、立川ステージガーデンを会場にしてた現地公演と同時に、「xRライブストリーミング」の配信も行われた。
現地では、ステージと客席の上を飛び交う舞台照明やレーザー、スモークや紙吹雪による演出の中、”治安の悪い”音楽を身体を響く重低音にまみれながら、他の観客と一緒に盛り上がりながら楽しめた。一方でxRライブストリーミングは、パフォーマンスをより盛り上げるようなカメラワークでライブを撮影しており、演者の表情や手足の動き、衣装の細やかさに注目することができるメリットがある。ちなみにアーカイブも2月16日まで配信中だ。
本稿は、そんな現場に参加した上でxRライブストリーミングを見直し、観客の視点で5名の活躍を記述した。
[or;3] 「今は、ようやくという気持ちです」
[or;3]のトップバッターを務めるのは、コメティックの郁田さんのソロ曲「夢模様キャンバス」。舞台の背景は、灰色のコンクリート壁で囲まれた部屋という無機質なものであるが、フワフワとステップを決めながら軽やかに歌う彼女を見ていると、自然と様々な色が頭の中のキャンパスに広がってくる。

1曲目が終わったところで、昨日の[odd;2]公演の一部楽曲にて出演を見合わせたシーズの緋田さんが、今回の[or;3]公演では後半から出演できることを報告。共演者である郁田さんも安心したことを伝えると、会場並びに配信コメントでは安堵の声が広がった。
さらに観客からの声で斑鳩さんと鈴木さんを呼び込み、コメティック3人の挨拶が始まる。鈴木さんの明るい声の呼びかけだけでなく、斑鳩さんの「コメティック 斑鳩ルカ。よろしく」という素気ない自己紹介でも客席は沸いた。鈴木さんは本ライブの解説として「シーズ、コメティックの2ユニットが作り上げる、無機質かつ有機的なステージになっています」とコメント。といっても、鈴木さんはよくわかっていない模様だ。
ここからはMCを終えたコメティックが、ユニット曲「くだらないや」「平行線の美学」「ハナムケのハナタバ」を披露していく。「黒色彗星」(カラーレスアイドル)をキャッチフレーズにして活動する彼女らは、楽曲も一つの色に留まらず、センターメンバーを変えることでテイストを変えてくる。
郁田さんがセンターを務め早口パートから始まる「くだらないや」や、ハイテンポのピアノから入る鈴木さんセンターの「平行線の美学」と、自分は自分であり続けることを歌うコメティックデビュー時の刺激的な楽曲を披露。
続く鈴木さんセンターの「ハナムケのハナタバ」は、別れとその先を3人それぞれの笑みを交えながら歌い上げる。

鈴木さんのソロナンバー「無垢」は、天真爛漫と紹介される彼女が透明な意志を伝える、そんな強さを歌唱から感じた。

ソロ曲披露の後、コメティック楽曲についても「みんなで練習してもっといいパフォーマンスにできたらいいなって」とさらなる上昇を誓う鈴木さん。ここで合流した七草さんは「美琴さんが合流されるまで気合いれて頑張りますので、最後まで楽しんでいきましょうー」と、明るい声で呼びかける。
緋田さんの出演となるライブ後半までは、シーズは私ひとりでやらせていただくと意気込む七草さん。そんなシーズパートは、七草さんのソロ曲「フェアリー・ガール」から始まった。シーズは「スパイシー&ガーリーなダンスポップユニット」と紹介されているが、そんなユニットの活動とは異なる、素直じゃない・素直になれない女の子を歌ったカワイイ曲だ。

ここから「Fly and Fly」「Bouncy Girl」「White Story」と、シーズの楽曲を七草さんひとりで披露する。
「Fly and Fly」について、前日の公演ではイントロの英語詩が流れる中、舞台下からせり上がって登場する形であったが、[odd;2]公演で緋田さんがいない中で七草さんが1人でせり上がるのを見た時は大きなどよめきが起きた。
しかし今回は前の曲が終わった後、七草さんがゆっくりと立ち位置へと移動してからのイントロ開始だ。配信ではせり上がりを意識したカメラワークであったとしても、安心して、いや、むしろ七草さんのパフォーマンスを期待しながら歌唱が始まるのを待っていた。
昨日のソロ披露では、急遽のことであったので音源も2人前提のものから調整できず、七草さんも苦戦していた。しかし今日の[or;3]公演では音響スタッフ側もきちんと音源の準備できたので、十全の形で「七草にちか」が披露する「Fly and Fly」を堪能することができた。

続く「Bouncy Girl」でもダンスポップユニットらしい、激しく時折セクシーに決めるダンスを決める七草さんも、曲間では肩で息を切らす様子も見られた。しかしながら客席を見ると、七草さんのテーマカラーである緑だけでなく、緋田さんを示す赤のコンサートライトをあわせて振る姿も多く見られ、今披露されているが「七草にちか」のパフォーマンスであると同時に「シーズ」のパフォーマンスであるだと言っているように見えた。
続いて2曲と比較してスローで哀愁を感じさせるナンバーである「White Story」でも七草さんはパフォーマンスを決めた。
抽象的な映像によるインターバルの後、舞台下からせり上がってきた2つの影。1つはシーズの七草さん。そしてもう1つは…コメティックの斑鳩さんだ。
ここで歌唱されたのは「Shiny Stories」。もともとは七草さん・斑鳩さんと、彼女らと同じ事務所所属の櫻木真乃さんとの3名でリリースされた曲だ。シーズの楽曲のテイストともコメティックのそれとも異なるあたたかなメロディに、これまで”私”が歩んできた物語に対し、間違いや正解ではなく、選んだものが未来を作っていくという歌詞。七草さんは大きく手を揺らしながらステップを刻み、斑鳩さんも派手ではないが静かに笑みを浮かべながら確実に手を振っていた。
MCを挟み七草さんが舞台からはけると、「なんだよ、早叩いてくんねえ」とつぶやく斑鳩さんの声をきっかけに、舞台の下からステージがせり上がる。
イントロが流れる中、上昇するステージに立つ斑鳩さんが手を強く振り煽ると、客席からは「オイ!オイ!」とコールが聞こえてきた。そう、ここで披露されたのは、一部ファンから「カミサマ」と呼ばれてきた彼女が283プロに所属する前から歌ってきた楽曲、「神様は死んだ、って」だ。綺麗事のような救いを否定し、痛みだけが自分の証だと歌う刺激的なこの曲を迫力のある声で歌い上げる彼女の姿に、会場は熱狂の渦に巻き込まれる。
郁田さんが舞台センターに登場し、鈴木さんも並んだところで披露されたのは、コメティックの新曲「泥濘鳴鳴」(でいねいめいめい)だ。他のコメティック楽曲のように不穏な世界を歌う曲であるが、キュートな振りと思わず口ずさみたくなる韻の効いたサビが、見る者聞く者を魅了する中毒性のある一曲だ。
斑鳩さんがセンターを務める「無自覚アプリオリ」は、コメティックのデビューCDに収録されている。斑鳩さんの攻撃的なアピールに新人の鈴木さん郁田さんも負けずに喰らいつくという、彼女たちの方向性を示した曲のひとつだ。
「Heads or Tails?」は攻撃的な曲に、厭世的な歌詞が乗り、コメティックの反抗心が光る。
コメティックのMCコーナーでは、先輩である斑鳩さんは身体の使い方のコツなどを丁寧に教えてくれていることが鈴木さんや郁田さんによって語られた。斑鳩さんは「レベル、落としたくないだけ」と素っ気なく言うが、ステージでは見られない3人の関係を垣間見ることができた。
そして、「シーズ 七草にちかさん」(郁田さん)、「シーズ 緋田美琴」(斑鳩さん)とシーズの2名を呼び込む(緋田さんと斑鳩さんは、両者とも283プロに所属する前に同じユニットで活動をしていたことがある)。
ここで本日初めて緋田さんが舞台に上がった。彼女が体調不良で心配をかけたことを謝ると、客席からは待っていたぞとばかりの拍手と歓声が起こった。そして、この後は精一杯のパフォーマンスをするので見守ってほしいと続けると、それに応えるように改めて歓声が上がる。
シーズとコメティックの5名が揃ったところで、楽曲「星の声」を披露。Aサビが静かに始まり、そしてサビで大きく飛び立つように広がるこの曲を、5名は歌い上げた。
しかしライブはこれだけでは終わらない。客席からのアンコールの声に応え、ついに2名揃ってのシーズのパフォーマンスが行われた。
ラテン系のナンバー「Fashionable」では、彼女らがWow…と歌うのにあわせ、観客も一緒に声を出して彼女らの歌唱の世界に入り込んでいた。
K-POPテイストで初登場の時から歌唱だけでなくダンスもきっちり決めてきたシーズのデビュー曲「OH MY GOD」は、2名の体格差を考慮にいれたアピールも見栄えよく決まっていた。
シーズの代表曲である2曲を披露すると、緋田さんは「これまでも当たり前にやってきた2曲だけど、今は、ようやくという気持ちです」と今の心境を語った。
求められているパフォーマンスを完璧にこなすために練習を重ね続ける彼女が、今回のライブでは一部楽曲においてステージに立つことができなかった。そんな、完璧とは言えない自分であっても、温かく迎え、何より自分が立つまでに1人でもシーズを背負ってくれたと、七草さんに感謝の言葉を述べた緋田さん。緋田さんに対し同じユニットのメンバーでありながらいつも敬語を使うくらい、彼女のパフォーマンスに憧れ、遠くても目標としている七草さんも、その言葉は嬉しかったといい、そして「お帰りなさい」と声をかけたのであった。
と、ライブが終わりそうな雰囲気を吹き飛ばすように、「最後まで盛り上がれますかー」と七草さんが観客を煽り、シーズの楽曲の中ではポップな「Happier」を披露。2人の息をあわせたパフォーマンスが、ウインクしながら手でハートを作るなどかわいさ溢れる方向に活かされる様子を見ると、見ているこちらまで楽しくなってしまう。
シーズパートの最後は緋田さんのソロ楽曲、「Look up to the sky」。昨日の公演のMCパートにて、出身地である北海道にいた頃は「空ばかりが広く感じられて」と語っていた緋田さん。北国の空と海と大地にて日が昇り、沈み、星が輝き、また日が昇るイメージ映像がスクリーンに映し出される中、彼女は夢見た空を見上げるように歌い上げた。
そして、今日のこの曲の歌唱について、多くの人の支えによってステージがつくられていると実感し、丁寧にパフォーマンスをすることができたと述べた。
最後は5人揃って「愛なView」を披露。ステージと客席に紙吹雪が舞う中、歌を通じて観客に向けて「ありがとう」と愛を伝えていた。
[even;4] 「最低の今日、誰かひとりくらいは救えたのかよ」
最終公演となる[even;4]。この回では緋田さんも予定通りのフル出演となり、斑鳩さんも「最後だからさ、お前ら全員撃ち抜くよ」と意気込んだライブとなった。
今回のセットリストは、鈴木さんのソロ曲「無垢」から、[or;3]と同じくコメティックの「くだらないや」「平行線の美学」「ハナムケのハナタバ」という流れに。

途中のMCで郁田さんが「無機質かつ有機的なステージとなります」と本ライブパフォーマンスの説明をし、鈴木さんが「ねぇルカちゃん?」とその意味を聞こうとするも、即座に「うるせぇ」と返す斑鳩さん。キャリアとしては先輩である斑鳩さんに対し、「(まだ)何も言ってないー」と甘えるように当たる鈴木さんと、いつもの事と流して話を進める郁田さんの、ある意味約束された流れも今回が最後だと思うと寂しいものである。
郁田さんが「夢模様キャンバス」を披露した後、緋田さんを呼び込むと、こちらもアイドルとして先輩にあたる彼女に「表現力を磨くためにしていることは」と質問。緋田さんは悩みながら、「誰かを感動させられるようなパフォーマンスのために私が何を表現したいのか、それを考えることが表現につながると言われたことがあるの」とアドバイス。イラストやアート制作を得意とするアーティスト気質の郁田さんも、この言葉に感じるものがあったようだ。

このMCを踏まえ「今の私にできる表現を見ていて」と述べてから緋田さんが歌ったのは「Look up to the sky」。

曲終わりの暗転の中、七草さんが舞台に上がると、「Fly and Fly」のイントロが流れた。客席から歓声があがり、緑と赤のコンサートライトが揺れるのが見られると、2人揃ってのシーズのパフォーマンスが始まった。
この楽曲は大サビ前から大サビにかけて、片方が主旋律を歌う中もう片方がロングシャウトを入れる掛け合いが見どころで、特に大サビでの七草さんのシャウトはファンから「にちか砲」とも呼ばれている。[odd;2]では大サビ前はシャウトが入ったものの、大サビの主旋律を緋田さんの代わりに七草さんが歌ったため、「にちか砲」は無かった。[or;3]では七草さんの歌唱音源を活用して、七草さんの歌と「にちか砲」の共演が実現した。
そして、今回の[even;4]ではもちろん、緋田さんの歌唱に七草さんの「にちか砲」が決まると、配信で見ているファンも大いにコメントで盛り上がった。

「Bouncy Girl」「White Story」とシーズ2人の歌唱の後は、[or;3]でも歌唱された、七草さんと斑鳩さんによる「Shiny Stories」が歌われた。
この後のMCで、七草さんが斑鳩さんに感想を求めたのだが、[or;3]では「別に」というコメントで止まり、そこからやり取りは無かった。しかし、[even;4]では「キレが悪い、位置取りが悪い」と七草さんへのダメ出しが。これは逆に斑鳩さんが鈴木さんや郁田さんと同じように、七草さんのことも一緒にパフォーマンスできる相手だと認識したからかもしれない。
続いてコメティックが「神様は死んだ、って」「泥濘鳴鳴」「無自覚アプリオリ」「Heads or Tails?」と披露。その後のMCでは鈴木さんが「泥濘鳴鳴」に好きなところがあるということで、「教えてよ」という郁田さんのパートを振り付きでポーズをとり、それに対して郁田さんが照れてしまうという一幕も。

今回の4公演を経ての感想を求められると、鈴木さんはコメティック3人でステージで立てて楽しかったとし、郁田さんはシーズとの共演からも刺激がもらえたと述べた。応援するファンに向け、心を動かす表現を身に着けるべくこれからも頑張るという気持ちは2名に共通した想いのようだ。
5名での「星の声」、アンコールでのシーズの「Fashionable」「OH MY GOD」のパフォーマンスの後、シーズの2名も4公演の経験を踏まえての感想を述べた。

七草さんは、今回のライブを振り返り、「挑戦し甲斐のあった内容」「貴重な経験」と言葉を選んで表現した。体力的にも気持ちの上でも力不足であったと吐露したが、「もっともっと練習して最高のパフォーマンスを目指していきますので、期待して待っていてくださいね」と観客に向けてポジティブな言葉でアピールをした。
緋田さんは「正直、私にとっては満足のいく結果ではなかったかもしれません」とするも、これから活動を行っていく中で、今回のことがあってよかったと思えるよう前に進んでいきたい、そして少しでも理想に近づいていきたいと述べた。

コメティックの鈴木さん郁田さんも含め、みなに共通するのは、完璧と呼ばれるものに向けての行動を止めることなく、次にパフォーマンスを見せる時はよりよくなった表現を見せたいという意気込みだ。
この後は、シーズの「Happier」、七草さんの「フェアリー・ガール」、そして5名による「愛なView」と続く。尖った表現を売りにしている2つのユニットのライブでも、こういったあたたかい楽曲を連続して浴びると多幸感が溢れてきて、一方でそれがこのライブが終わりを迎えてしまうことを強調しているようで、寂しさを強く感じてしまったのであった。
しかし、終わりもあれば新たな出会いもある。歌唱を終えて5名が舞台からはけた後、2025年5月10日(土)、11日(日)に大阪のオリックス劇場にて、次の283 Production LIVE Performanceが開催されることが発表された。なお、出演者は現時点では未発表だ。
サプライズはそれだけで終わらない。ピアノの音にあわせて舞台上に1本ずつライトが灯り、上手にある3本目が点いたとき、斑鳩ルカさんのシルエットが浮かび上がったのだ。Wアンコールとして披露されたのは、コメティックメンバーのソロ曲CD *2にてシークレットトラックに収録されたバラード、「1/3」だ。
*2 なおシークレットトラックゆえ歌詞カードを見つけるのも苦労する
がなりにも似た自己主張の強い声での「神様は死んだ、って」とは異なり、誰かに語り掛けるような優しい声で歌う。時折配信カメラに映る表情は、これまでとは違って柔らかいものだ。
歌い終えた後、斑鳩さんは「最低の今日、誰かひとりくらいは救えたのかよ」と呟いてからステージを降りた。救えた「誰か」が誰なのかを詮索するのは野暮な話かもしれない。しかし、彼女のその声を聞いた人たち、彼女と一緒にステージに立った彼女たち、何よりこの歌を歌った斑鳩さん本人に、今回のライブを通じて何かの気持ちは届けられたのではないか、筆者にはそう思うようなラストナンバーであった。
誰が何を見届けたのか
ファンの視点、プロデューサーの視点、プレイヤーの視点
ここまで5名のアイドルが、立川ステージガーデンという我々が済む現実世界にある会場で行ったライブ(とその配信)を見たファン視点でレポートしてきた。あくまでファンの目線なので、アイドルとして活動している側面しか見ていない。レッスンの様子も配信番組で流れていなければ分からないし、プライベートも言及している範囲でしか知らない。
一方でこのライブを、ファンではなく、アイドル活動を支えるスタッフから見たならばどうだろうか。
例えば、彼女らが所属する芸能事務所、283プロダクションのプロデューサーであれば、彼女らがどのように完璧を目指すべくレッスンに励んでいるかという様子も知っているはずだ。彼女らがどのような思いでアイドルを目指し、どんな経緯で283プロダクションのアイドルになって、課題に対してどのように取り組んでいったのか。彼女たちの関係性はどのようなものか。そういったものが見える立場であれば、今回のライブで起きた出来事のいくつかは、本稿に記した内容より立体的に見えてくるだろう。
そもそも彼女らは「アイドルマスター シャイニーカラーズ」というゲームを中心とした創作されたコンテンツのキャラクターである。ならば、創作されたコンテンツを楽しむプレイヤー(あるいは読者、ユーザー)という視点で、彼女たちアイドルを現実にはいない創作人物であると見たならばどうだろうか。
[odd;2]での緋田さんのトラブルも、その後4名、いや5名がトラブル中でも完璧なるパフォーマンスを目指したと出来事も、誰かによって決められたことであり、今回のライブが、ライブの形式をとったコミュ(ゲームシナリオ)と解釈することもできるかもしれない。そうなると、今回のライブタイトル、[liminal;marginal;eternal]や公演ごとサブタイトル、[never][odd][or][even]といった文字列に隠された意味を探ることもできるし、本ライブのキャッチフレーズである「完璧・永遠であることは美徳であり 彼女達は幾度も到達の機会を与えられる」というテキストの解釈を求めるということもできる。
上記に挙げた視点について、人によってどの視点で今回のライブを見ているかは異なるだろうし、同じ人物が同時に複数の視点を持ち、その時によって使い分けることも十分ありえる話である。
スクリーンだけの存在から
そもそも、今回のライブをもって、アイドルが現実にいることを目指そうとしているのか、それともCGキャラクターが登場する作品を作ろうとしているのか。
[odd;2]でのトラブルは、スクリーン(配信映像)の中だけで起きた出来事ではない。現場のPAブースでもスタッフがトラブルに対応すべく動いていた。また、緋田さんが出演を控えたこと・翌日は出演すると決めたことは、ライブ会場を超えSNSでも告知された。
会場のスクリーン(あるいは配信画面)の中だけでなく、会場スタッフという実在する人物や、Xという日常生活で触れるメディアを使ってアイドルの動向を表現する事で、それに触れた人に「アイドルは現実にいるのではないか」と感じさせる、あるいは「アイドルが現実にいてほしい」と思わせる、いわば共犯関係を作りやすくなる。
この手法はやり方によっては、受け手が対象をどのように見ているか・見たいかによって不安を感じさせ、反発を招いてしまう。かといって丁寧にネタばらしをすると「これは創作なのか」と感じさせてしまうこともあり、バランスは難しい。
ともあれ、今回のライブは、複数のチャンネルを使い彼女たち5名をスクリーンの中だけの存在にしないように試みたのではないだろうか。そしてそれをどう感じたかは、彼女たちに触れた人の数だけあるとも言えるだろう。
もちろんこの取り組みは、主役であるアイドルが輝いていなければ成り立たない。モデリング、レンダリング、衣装、ダンスの切れや滑らかな動き、キャラクターあった表情、歌唱力や演技力、楽曲、照明や音響、舞台装置、xRライブのカメラワークなど、七草さん、緋田さん、斑鳩さん、鈴木さん、郁田さんを、(スクリーンや配信画面を介した)ステージ上で存在させるための努力が結集したからこそ、人々はより彼女らを応援したくなったはずだ。
実際、彼女ら5人を知らなかった本サイト(PANORA)の編集長も、xR配信ライブを鑑賞しながら、緋田さんのファーのついた衣装やカメラワークに驚嘆し、「Look up to the sky」や「愛なView」の歌唱に崩れ落ちたと絶賛していた。
なお、2月9日(日) 22時からはシーズの七草さんと緋田さんが、2月14日(金)22時からはコメティックの斑鳩さん、鈴木さん、郁田さんが本ライブのオーディオコメンタリー付き同時視聴会に出演するとのことだ。今回のライブで彼女たちに興味を持った方は、こちらも参加してみるといいだろう。
●[or;3] セットリスト
- 夢模様キャンバス
- くだらないや
- 平行線の美学
- ハナムケのハナタバ
- 無垢
- フェアリー・ガール
- Fly and Fly
- Bouncy Girl
- White Story
- Shiny Stories
- 神様は死んだ、って
- 泥濘鳴鳴
- 無自覚アプリオリ
- Heads or Tails?
- 星の声
*アンコール
- Fashionable
- OH MY GOD
- Happier
- Look up to the sky
- 愛なView
●[even;4] セットリスト
- 無垢
- くだらないや
- 平行線の美学
- ハナムケのハナタバ
- 夢模様キャンバス
- Look up to the sky
- Fly and Fly
- Bouncy Girl
- White Story
- Shiny Stories
- 神様は死んだ、って
- 泥濘鳴鳴
- 無自覚アプリオリ
- Heads or Tails?
- 星の声
*アンコール
- Fashionable
- OH MY GOD
- Happier
- フェアリー・ガール
- 愛なView
*Wアンコール
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(TEXT by tabata hideki)
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