
ネットの投稿者といえば、自分の「好き」を起点に活動している人も多い。VTuberでもさまざまなジャンルに詳しいタレントが存在し、VTuber自体にそこまで興味がない人からも「面白い配信だなー」と評価されるケースもあったりする。
本記事では、Vebop Projectの「もりもりにゃんこめし」に所属する数寄屋橋(すきやばし)れんげさんをお呼びし、「ゼルダの伝説」についてインタビューしたが、そんな好きを語り尽くしたような内容になった。
きっかけは弊誌に数々のVTuber記事を寄稿いただいている哲学研究者・山野弘樹氏で、「このVTuberの方が面白いんです」と持ち込みいただき実現したところ、両者とも「ゼルダ愛」にあふれており、非常に濃い対話となった。2000年前後にゼルダをプレイした方なら共感できるはずなので、ぜひご一読いただき、「わかり手」たちの魅力を再確認してほしい。
ゼルダでヒロインとして語られるべきは「エポナ」では
──まずは「ゼルダの伝説 時のオカリナ」(時オカ)と「ゼルダの伝説 ムジュラの仮面」(ムジュラ)の話に入る前に、広くゼルダシリーズについて質問させてください。数寄屋橋さんが最初に触れたゼルダはどの作品でしょうか?
数寄屋橋れんげ 昔、「ゼルダの伝説 4つの剣」の25周年記念のバージョンが期間限定で配信していたと思うのですが、それをお母さんと一緒に序盤のところを何度も遊んだりしていました。だからゼルダと言えば、最初は「数人で遊ぶドットのゲーム」というイメージでした。
あとは、3DS版の時オカもやっていました。「4つの剣」のときよりは成長していたのですが、それでも難しくって、「デクの樹サマの中」だけでおなか一杯、クリアしたかしてないか……くらいだったと思います。当時はまだ頭が硬かったなと思います。
──なるほど。ゼルダをクリアするためにはいわゆる「ゼルダ脳」を鍛える必要があるので仕方ないですよね……。数寄屋橋さんが最初に「ゼルダめっちゃ面白い!」と感じた瞬間は何でしょうか?
数寄屋橋れんげ もう、これは「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」(ブレワイ)で、特にBGMが好きでした。場の雰囲気や自然の音と合わさることを前提でBGMをつくっていて、そこにすごく感動したんです。冒険してる感があって、本当にいいなぁって……。
他にも、シリーズ過去作とのつながりがいくつもあるのがすごいなぁと思いました。例えば、マスターソードに焦点が当たるシーンがあるんですけど、そのときのBGMに「ゼルダの伝説 スカイウォードソード」(スカウォ)でファイ*1が出てくるときの「ファイのテーマ」が含まれているんです。こういうところで過去作とのつながりを示してくれるのが「おもしれぇ~~!!」となりました。
*1マスターソードに宿る精霊
──シリーズの歴史を感じることができる素晴らしい工夫ですよね。前提を聞いたところで本題に入っていきたいのですが、ズバリ、時オカのリンクに対する想いを聞かせてください。
数寄屋橋れんげ これは……激重ですよ? えっと、まず思ったのは、「可哀想だな」ということです。いろいろ失ってばかりじゃないですか。始まるときも育ちの故郷(コキリの森)を失い、デクの樹サマも失い、最終的には、「失った先で得たもの」も(7年前の世界に戻ることによって)失って……結局手元に何も残ってない。すごい……可哀想な人だなと思っていました。
一方でムジュラは、むしろリンクを慰める物語だったんじゃないかなって思うんです。彼が最終的にエンディングで学ぶことって、「別れはあるけど、永遠の別れじゃない」、「出逢った人との思い出がずっとある、きっと先に進める」……そういうことだと思うんです。だから、ムジュラはリンクが時オカの頃から一歩前に進むために必要だった物語なんじゃないかなって、そう思いました。
──素晴らしい見方で、ムジュラという物語がまた違った風に見えてくると思います。時オカの質問を続けますが、作中に登場する様々なヒロイン候補についての想いはありますか。
数寄屋橋れんげ まず……二次創作とかで言うとマロンが人気かなって思います。それは私も同意というか、オタクなのでマロンに行きがちな気持ちも分かります。もちろん可愛いし、リンクのことを小さい頃から知っている上、何より(ゼルダやサリアと違って)同じ人間の普通の女の子なんです。一番上手く収まるのがマロンだし、旅とか冒険から離れた後に、一番リンクが平穏に暮らせる場所って「ロンロン牧場」なんじゃないかなと。だから、「リンク、ロンロン牧場へ行け!! ハイラルから離れるな!!」って強く思いますね(笑)。しかも、マロンのお父さんから(結婚についての)公認をもらってますからね!! そういった意味でも、他のヒロインたちと比べて一歩進んじゃってる。
他のヒロインだと、個人的にはルト姫がめっちゃ好きなんですよ。最初会ったときは「なんだこの生意気なガキは!?」って思ったんですけど、(7年経って)成長したところを見たら、グッときましたね……。見た目だけじゃなくて、中身も成長していて。子供の頃は一人で座って「運んでくれなきゃヤダ!」みたいな女の子だったのに、大人になったら「自分が守る!」みたいな感じで、(水の神殿の中で)リンク放っておいて一人でどんどん移動しちゃう……みたいなところに、ルト姫の成長を感じました。
しかも、ですよ!? ルト姫って、大人になるくらい時間が経ってるのに、まだリンクのこと覚えてくれていて、しかも好きでいてくれているこの一途さ! ここもまた、いいんですよね。ずっと会ってなかったのに。種族も違うのに。もう……めっちゃ……。ルト姫、いいんですよね。
──「種族を超えて一途」。まさにキーワードですよね。
数寄屋橋れんげ そうなんですよ。ゾーラ*2はいいぞ。あと……実は、ヒロインとして語られるべきキャラクターがまだいて、それがエポナ*3かなって思っていて。
*2ルト姫の種族
*3馬
──アツいですね!
数寄屋橋れんげ エポナってマジで可愛くて、時オカで見たときにびっくりしたんです。まず、足のところの白いフワフワが見逃せませんし、リンクが呼んだらすぐに来てくれる点でも本当に一途。これも愛、種族を超えた愛だと思います。それに、エポナって後のゼルダ作品でも大切な位置づけなリンクの愛馬じゃないですか。だから、言葉は話せなくても、シリーズを通して一番リンクのことを知ってくれているのはエポナなのかなって……そう思います。私は時オカの実況をやっているときに、かなりエポナに救われました。
──救われた?
数寄屋橋れんげ はい、救われました。もう、とっても可愛くって……。ハイラル平原でエポナに会うと、「あぁ~~、エポナぁ~~」ってなるんですよ。「エポナの歌」も素晴らしいですしね。エポナの操作はけっこうクセがあると思うんですけど、それでもなるべく一緒に冒険がしたくて頑張って乗りこなしました!
──愛があふれていますね……。ちなみに時オカには他にも個性的な人物が登場しますが、特に印象深いキャラクターはいますか?
数寄屋橋れんげ そうですね……。私的には、ミド*4がけっこう好きです。けっこう序盤の序盤に出てきて「イジワルなやつだな」って思ったし、3DS版をやってた当時も「なんだコイツ!」って感じていたので……。だけど、配信で時オカをプレイしたときに、「サリアをたのむぜ」みたいな感じのことも言っていて、けっこう印象が変わったというか、思い出に残っているキャラではあります。ミドもミドで、帰ってこないサリアを待ってて……。切ないなって思います。ただ、「デクの樹サマ」の赤ちゃんも生まれているので、その赤ちゃんと一緒に幸せに暮らしてほしいです。
*4リンクの幼馴染
あとは、インパ*5が印象に残っています。他の作品でもそうなんですけど、インパってけっこう苦労人で、しかも時オカでは賢者にもなって。……私、「賢者になる」ってどういうことなのか、まだ理解できていなくて。悲しいことではあるというのは、分かるんです。「多分もう会えない」っていう雰囲気があるので。それでも、インパはずっと(賢者として)仕事を続けていて、本当に大変だなぁって思います。シーカー族の生き残りとしてシークを育てていたのもインパじゃないですか。しかもインパはシーカー族最後の生き残りで、インパが賢者になることでシーカー族は途絶えてしまったので、それもインパは無念だろうなぁって思います。
*5ゼルダの複数作品に異なる姿・立場で登場する女性
──未練があるかもしれないですよね……。冒頭でブレワイのBGMについて触れていましたが、時オカで心に残っている音楽はありますか?
数寄屋橋れんげ 最近はニンテンドーミュージックでいろいろな音楽を聴いているんですけど、その中でも特に「時の神殿」の曲が一番好きです。最初に聴いたとき、あの重たくて神聖な雰囲気が「かっこいいなぁ」って感じましたし、その奥にマスターソードが置かれている状況にも惹きつけられました。時オカではダントツに好きな曲です。
──なかなか渋いチョイスですね。時オカの人気楽曲って、それこそ「ゼルダの子守唄」や「サリアの歌」、「嵐の歌」がランクインする印象がありますが、「時の神殿」を選ばれるとは、いい一票だと思います。
数寄屋橋れんげ もちろん、他にも好きな曲はたくさんあるんですけど、なんだかんだ一番聴いていて、時オカを思い出すのはやっぱり「時の神殿」です。考え事をしているときとかに流しています。
──それは予想の斜め上を超えてきましたね。全く想定してなかったです。
数寄屋橋れんげ もう一つ曲を挙げるとしたら「ゲルドの谷」の曲です! 配信でやったときに、最初は谷から落ちちゃったんですけど、コメントで「エポナで渡れるよ」って教えてもらって、それでエポナで乗り越えたとき、もうかっこよすぎて……!! あそこの曲は、めちゃくちゃ好きですね。
──時オカ屈指の名演出です。
数寄屋橋れんげ ですね!
──続けて、時オカにたくさんあるダンジョンで印象に残っているものを教えてください。
数寄屋橋れんげ はい。これはもう、一個ブチギレダンジョンがあって。まぁ、「水の神殿」って言うんですけど。
──わかります。
数寄屋橋れんげ もう本当にブチギレましたね……。まぁ、子供時代の「ジャブジャブ様のお腹」の中でもブチギレてたんですけど、実は、ブチギレてる途中に部屋にお母さんが入ってきたんですよ。「うるさい!」って。それでちょっとしおしお~……ってなっちゃって……。
「水の神殿」では……なんでしたっけ? なんか、スイッチを探しているときに、動く足場の下に最後のスイッチがあって、あれでブチギレましたね。しかも、惜しいところまで行ってたのに、画面の角度で見えなかったんですよ! あれはもう、許せなかったですね。
──怒りがひしひしと伝わってきます。そんな数寄屋橋さんは、スカウォ、ブレワイ、「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」(ティアキン)などもプレイされていますが、そういうゼルダ経験者から見て時オカでグッと来た場面や演出はありますか?
数寄屋橋れんげ そうですね……。例えば、リンクがハイラル城に忍び込んで、お城の中庭で初めてゼルダ姫と出逢ったときに、ゼルダ姫が意味深なセリフを言いますよね。「リンク……。ふしぎ、なんだか懐かしい響き……」って。こことか、二重の意味があるんじゃないかなって思うんです。時オカの中だけで言えば、ガノンを倒して7年前に戻ってきて時間がループしたから「懐かしい」って言ったのかもしれないし、スカウォでのリンクとゼルダの関係を匂わせて「懐かしい」という意図なのかもしれない。二重に取れる言葉だから、すごく印象に残っています。
他にも、ガノンを倒した後に、ゼルダがリンクを7年前の世界に戻すためにオカリナを吹くシーン。あそこは配信では少し茶化しちゃったけど、本当は「幸せになれるリンクとゼルダ」と、「幸せになれないリンクとゼルダ」がいるんだなって思って「うっ……」ってなってました。スカウォでもリンクとゼルダが離れ離れになるシーンがありましたけど、時オカのラストを観て、「あぁ、この二人はまた長い間別れるのか」って思うと……辛かったですね。
──特に時オカのリンクとゼルダは、もっと関わりを持ってもよかったと感じます。まともにゆっくりお話しすらできてないですよね。
数寄屋橋れんげ そうなんですよね。だから、(リンクを元の世界に戻すのを)もう一日くらい待ってもよかったんじゃない? って。でも、それもゼルダの優しさじゃないでしょうか。彼女の中には「リンクを巻き込んじゃった」って罪悪感が多分あって、だから「リンクは元の世界に戻った方が幸せになれるに違いない」って思って、それで戻したんですよね。でも、そういう気持ちも、ゼルダが自分で自分に対して言い聞かせているんじゃないでしょうか。リンクもリンクで、「そのこと」を選べるくらい、まだ大人じゃなかった。彼はきっと自分の意志で選べなかったんだろうなぁって。
──「選べなかった」?
数寄屋橋れんげ はい。リンクって、元々けっこうちっちゃな男の子ですよね。それで、マスターソードを引き抜いてなんだかんだ大人の体になったけど、精神年齢的にはまだ子供。だから、ゼルダが「時のオカリナを渡して」って言ったときに、流されちゃったと思うんです。彼女の中では、「きっとこうした方がリンクのため」っていう想いがあったけど、でもリンクはどっちがいいのか(つまり元の世界に戻るべきなのか否か)が選べなかった。あそこで二人がもっとちゃんと話していれば、少なくとも、あの時点でゼルダとリンクはもっと仲良くなれていたと思うし、もしかしたらリンクが過去の世界に戻らなかったということもあり得たんじゃないかなって。
──確かに。プレイヤーは中盤くらいからほとんど「大人リンク」を操作しているので忘れがちなんですけど、実際はまだ「子供」なんですよね。
数寄屋橋れんげ そうなんです。だから、そこもまたリンクの可哀想なところなのかなって……。過去の世界に戻った後で、きっといつか後悔するんじゃないかなって思うんです。でも、そんな後悔も「ムジュラの仮面」を経て乗り越えてくれたのかも? と感じたりもします。
「大人」と「子供」の異なる物語だから面白い

──ちょうど話題が出たので、ムジュラに話を移したいです。ムジュラでは、操作性や登場人物のデザインの大半が時オカからの流用ですが、実際には両作品の世界観は大きく異なっています。数寄屋橋さんから見て、ムジュラはどんな物語ととらえていますか?
数寄屋橋れんげ 私目線だと、時オカは本当に王道な「勇者が世界を救う話」なのですが、ムジュラは「子供の目線で見ている物語」なのかなって感じます。子供の頃って、何でも「怖い」って思いがちですよね? 家具の木目とか、何気ないものが不気味に見えてしまう。ムジュラでは、リンクが子供の頃に戻って、成長するまでにできなかった「怖い体験」をしているというか、(そういう意味での)「子供目線」でリンクが過ごしているんじゃないかなって。
時オカでは「大人」でいないといけなかったけど、ムジュラでは誰かのために「大人」にならなくていいんです。だからムジュラは、「子供の目線で見ている物語」なのかなぁって感じてました。
──なるほど。時オカとムジュラが「大人」と「子供」の対比で解釈するできるというのは、非常に興味深いです。さらに両作品で対照的なのは、時オカではナビィ、ムジュラはチャットという性格が異なる妖精がそれぞれ相棒になることです。この二匹について思うところはありますか。
数寄屋橋れんげ ナビィとチャットで言うと、実はチャットの方が好きです。それはナビィって「導いてくれる人」みたいな先生感がある一方で、チャットには私が個人的にムジュラのテーマだと思っている「子供っぽさ」みたいな部分が表れているからです。リンクに対して年相応の絡みをしてくれる相棒というか……。絶対にずっと一緒にいてくれるわけじゃないけど、なんだかんだ近くにいてくれる友達みたいな感じで。
ナビィも友達だったとは思うんですけど、理想の「すごく良い子」って感じもあった。それに比べると、チャットはいたずらっ子というか、ちょっと生意気で、年相応な感じがあって。上手く言えないですけど、好きですねぇ。生意気だったので、私も(配信中に)受け答えのしがいがありました(笑)。一人のキャラとしてちゃんと立っていた。
──「ちょっと生意気」で「子供っぽい」ということで、ちょうど数寄屋橋さんとは正反対の性格ですね。
数寄屋橋れんげ そうですね!! 私も生意気な要素、もっと足した方がいいのかなって思いますね~。普段が大人過ぎるので。
──ありがとうございます。さらに対比という話で、時オカのガノンドロフ、ムジュラのムジュラという、リンクの前に立ちはだかるラスボス(ヴィラン)についてはどうとらえていますか?
数寄屋橋れんげ ガノンドロフは「大人」だから世界を征服するなんて野望を掲げている一方で、(ムジュラの仮面に憑りつかれた)スタルキッドは、「子供」だから起こしちゃったことなのかなって思います。そこに「世界を滅ぼしてやる!」、「自分のものにしてやる!」みたいな野望はなくて、ただ、友達と遊びたかっただけ。子供のときって、狭いところでの関係が全部だから、友達がすべてじゃないですか。だから、「なんで遊んでくれないの!」っていうワガママで、あんなことをしちゃったんだろうなって。
子供のイタズラに悪意ってないじゃないですか。だからガノンドロフと違って、(ムジュラの仮面をつけた)スタルキッドには「悪ふざけ」感があった。時オカが「大人の争い」なら、ムジュラは「子供の悪ふざけ」。そういう世界観の違いが、ラスボスにも表れている。
──スタルキッドは、特にそういう寂しさから行動しているところはありますよね。では終盤でスタルキッドのことを振り払って捨てる「ムジュラの仮面」本体に関してはどうでしょう?
数寄屋橋れんげ なんか、あれも楽しそうにしてたから……。(第二形態の「ムジュラの化身」では)すごいおちょくってきたし、ダンスも踊ってたし。悪い奴じゃなかったと思いますよ。
──(笑)
数寄屋橋れんげ 「ムジュラの仮面」本体も、「あー楽しかった!」くらいに思ってるんじゃないですかね? リンクにボコボコにされてましたけど。
──なんだかんだ、三日で世界を滅亡させる月を生み出したりしてましたからね。ムジュラについて一歩踏み込んで、印象に残っているエピソードやキャラクターを教えてください。
数寄屋橋れんげ 難しい質問ですね。ムジュラって、「三日間」の中でちゃんと街の人たちが生きているのがすごくて、それを一番実感できるのは、やっぱりカーフェイのイベントだと思います。このイベントが終わった後に「めおとの面」をもらえますが、時間を巻き戻した後にカーフェイのお父さん(町長)にそのお面を見せたら、「懐かしいな、若いカップルが結婚したんだね」って言うセリフにもグッときました。ただ普通に過ごしているように見える人たちが、「三日間」の中でちゃんとそれぞれの想いがあって過ごしているということが分かるから、ムジュラのサブクエストはとてもいいと思います。
《キャプション》「めおとの面」で町長たちの会議を終わらせるシーン(該当箇所は2時間22分26秒から)
だからキャラクターは、一人一人が印象残ってます。同じ人たちと、同じ三日間を何回も過ごしていますから。それに、カーフェイイベントって最後に「ナベかま亭」でアンジュと一緒にカーフェイを待つ場面があるから、そこで私たちがちゃんと世界観に浸れるための時間が用意されていると思うんです。そうした意味でも、本当によく計算されたゲームだなって。あのイベントのおかげで、「ここの街の人たちも私たちと同じように生きているんだな」って感じることができて、今までやったゲームの中でもすごい体験でした。
──「カーフェイ」のイベントがダントツというのはわかります。あともう一つ印象に残っているエピソードを挙げるとしたら、何になりますか?
数寄屋橋れんげ う~~~ん……。そうですねぇ……。あ、なんか今フッと思い出したんですけど、ゴロンのおじいちゃんがウロウロしてて、あれ大丈夫だったのかなって思います(笑)。だって、見る度に凍ってるんですよ? 「あの人大丈夫なのかな?」ってちょっと心配でした。
それで言うと、ゴロンの赤ちゃんも印象的でした。ちょっと生意気な感じだったので、こっちも絡みやすくて好きでした。平和になって春が戻ったとき、「レースがみたーい!」とか言い出して「あァ!? なんだァこのガキィ!?」って思ったんですけど、でもちょっと可愛かったです(笑)
──「赤ちゃん」で、「生意気」で、「ガキんちょ」……。本当に数寄屋橋さんとは真反対のキャラクターですね。
数寄屋橋れんげ そうですねぇ。「大人のレディー」として、あの赤ちゃんには「私のように立派なレディーになるんだぞ」って伝えてあげたいですね。
──ぜひ伝えてあげてください。今までBGMも熱く語られていましたが、ムジュラでもお気に入りの音楽はありますか?
数寄屋橋れんげ これは、あれですね。仮面屋さんがいた時計塔の薄暗いところがあったと思うんですけど、そこの曲が一番好きで、ムジュラを代表するBGMだと思います。なんでかって言うと、一番最初に衝撃を受けたシーンがあの空間だったからです。何も知らずに三日間を過ごし、月が落ちてきて何も見えなくなった後で、「大変な目にあいましたねぇ……」って全く同じセリフを言われたときに、「ループしてる……!」ってなって、そのときにあのBGMが流れていたんです。そのときのゾワッとする感じを思い出すから、この曲が好きで、一番印象に残っています。
時オカにしても、ムジュラにしても、「オカリナで曲を吹いてギミックを動かす」という発想が本当に天才的ですよね。ああいう仕掛けがあることで、物語自体にも奥行きができるし、ゲームを遊ぶ人も何度も曲をゆっくり聴ける。二重に意味がある設計になってて、すごいなぁ……って思います。こんなに完璧なゲームがNINTENDO64の時代からあったなんて、驚きです。
──本当にすごいですよね。ムジュラのエリアやダンジョンに関して、印象に残っているものはありますか?
数寄屋橋れんげ 「雪山」もけっこう好きだったんですけど、「海」が特に印象に残っています。「グレートベイの神殿は難しいぞ」ってコメント欄ですっごい言われてたんですけど、(リスナーさんからヒントはもらいつつ)けっこうサクッとクリアできちゃって、それが気持ちよくて。あと、設計で面白いなって思ったのは、蛇口をひねって水流を変える仕組みです。他にも、氷の矢で水を凍らしたり、炎の矢で氷を溶かしたりといったギミックに「おもしれぇ~~~!!」ってなって、四つある神殿のうちで一番楽しかったです。ただ、ボス戦(「グヨーグ」)は恐ろしいほど苦戦しましたけど……。もう二度と戦いたくないです。
──それで言うと、時オカで一番苦手だったボスは何でしたか?
数寄屋橋れんげ 一番はやっぱりツインローバです。盾で相手の魔法攻撃を跳ね返すっていう操作が難しくて、「ぐうう……!!」ってなりました。でも、ツインローバ自体けっこう好きで、遊び心というか、ちょっとふざけてる感じが好きなんですよね。最後にケンカしながらいなくなりますし。途中まであんなにおちょくってくるのに、最後に二人して「ぐぬぬ…!」ってなってるのも可愛いです。
二人が合体してなぜかセクシーお姉さんになるところも好きで、あの変身シーンを観たときにめっちゃテンション上がりました(笑) もしガノンドロフがいなかったら、ムジュラで描かれていたような普通のおばあちゃんなのかなって思うと、可愛いですよね。

──確かに、普通の気のいいおばあちゃん姉妹だったかもしれないですよね。最後になりましたが、ゼルダシリーズ全体について、数寄屋橋さんの想いを聞かせてください。
数寄屋橋れんげ そうですね……。ゼルダシリーズって、リンク・ゼルダ・ガノンドロフの三人を中心にした物語だと思うんですけど、それぞれみんな違う出逢い方をしていますよね。でも、過去作をプレイしていることでよりグッとくるようなシーンもたくさんあって、そういうシリーズ間の繋がりがあるのがゼルダの魅力だと思います。
それに、どれだけ各作品でハッピーエンドを迎えても、三人の物語が続く限りシリーズが終わらない。「最後までクリアしても物語は続く」という感じがすごく好きです。完結しているのに続いていくっていうのがゼルダシリーズの魅力だなって感じます。
これから、「ゼルダの伝説 風のタクト」(風のタクト)と「ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス」(トワプリ)をプレイしていく予定なんですけど(編集註:配信の時期は未定)、実は昔まちがって「ゼルダの伝説 夢幻の砂時計」をやってしまって思いっきり風のタクトのネタバレをくらったんですよ(笑)。 肝心なところは見ちゃってるんですけど、やっぱり道中のグラフィックとか可愛いだろうし、自分でプレイしてネタバレ踏んだ場面を観るのも、そのときとは違った感想を持てるだろうなと思うので楽しみです!
実はトワプリは漫画版を読んだんですけど、どうやらゲーム版と漫画版で違うところもあると聞くので、ゲーム本編をやるのが楽しみです! BGMも期待している部分です。
──これから時オカやムジュラをプレイしたい、あるいは両作品の実況を観たいという方に向けて、一言お願いします。
数寄屋橋れんげ 時オカとムジュラでは、いろいろな場面で他のゼルダ作品との繋がりを見つけられて、何回遊んでも楽しめる作品だと思います。だから、自分でもぜひ遊んでほしいですし、プレイした後は誰かの実況を観て、その人の感想を聞くのもいいと思います。色々な楽しみ方があると思うので、ぜひ手に取ってほしいです! 楽しんでくださいね!!
●執筆者プロフィール
山野弘樹
「東京大学大学院博士課程。東京大学「共生のための国際哲学研究センター(UTCP)」リサーチアシスタント。元日本学術振興会特別研究員DC1。主著に、「独学の思考法」(2022年)、「VTuberの哲学」(2024年)、「VTuber学」(共編、2024年)など。
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