一般社団法人メイクスマイルプロジェクトは5月16日〜6月4日、表参道の写真店「WONDER PHOTO SHOP」にて、展示イベント「VR PHOTO EXHIBITION Vol.4 Supported by FUJIFILM」を開催している。
本展は、VRChatをはじめとするメタバース空間で撮影された写真、いわゆる「VR PHOTO」をFUJIFILMの高品質プリントによって現実空間に展示する試み。会期2日目となる5月17日には、出展作家であるmo4caさん、グロウさん、なのさん、此花ゆうなさん、もんでぃーさんの5名による在廊イベントを実施し、それぞれの作品に込められた想いやVR写真の魅力について語られた。
VR PHOTO EXHITBITIONとは?
「VR PHOTO EXHIBITION」は、一般社団法人メイクスマイルプロジェクトが主催し、FUJIFILMが協賛として参画しているバーチャルフォトグラフィーの写真展だ。2024年1月に第一弾となる「VR PHOTO EXHIBITION Vol.1」を開催以降、年に2回ほどのペースで実施。今回で4回目を迎える(過去のレポート)。
会場となる「WONDER PHOTO SHOP」は、FUJIFILMが提供する各種プリンティングサービスをその場で体験できるコンセプトの旗艦店で、スマホ写真を簡単に印刷できる「チェキプリント」や、オリジナルのフォトブックを作れるサービスなどを提供している。この「VR PHOTO EXHIBITION」で展示されている作品も、FUJIFILMによるサービス「WALL DECOR」(ウォールデコ)を用いて印刷されている。インクジェットなど通常の印刷と異なり、感光材料を用いた銀塩プリントを行うことで、よりフィルム写真に近い仕上がりとなる。
また、こうした取り組みは写真展のみに収まらず、今年2月にはDiscordサーバー「VR PHOTO PRINT CLUB」を開設。「WONDER PHOTO SHOP」のスタッフも参加し、VR PHOTOを印刷する体験を広めている。
ちなみに、「WONDER PHOTO SHOP」を訪れてみると、この企画展に限らず常設棚として「VR PHOTO」を紹介するコーナーもあるなど、かなり意欲的であることがうかがえる。
作家陣が語るVR PHOTOの可能性
在廊イベントでは、今回の出展作家であるmo4caさん、グロウさん、なのさん、此花ゆうなさん、もんでぃーさんの5名が出席し、自身の作品とVR PHOTOへの想いを語った。(*なのさんのみ遠方のため、Discord通話にて参加)
此花ゆうなさんは、自身が初めて友人からVRChatに誘われたときに「この世界ってすごく綺麗だな」と思ったことを告白。それをまだ知らない人にも、なるべく同じ感覚で伝えたいと語った。
此花ゆうなさんの作品は、「バーチャルらしい」立体感のある作品。出展スペースの中でも、まず最初に目につく位置にあり、VRChatを知らない人がたまたま通りかかった際にも、目を惹くような作品になっている。
mo4caさんは、全天球カメラと万華鏡を組み合わせた独特の撮影方法で、他作品とは一線を画す。「現実だと万華鏡を側面から覗くようなことはできないですよね。でも、VRの世界であれば当たり判定がないからできちゃうんです。VRでしか撮影できない写真というのを意識しています」と話す。
グロウさんは、バーチャルフォトグラファー歴はまだ半年ほど。しかし、「Glow’sVRphotoLounge」と題したVRChatの撮影技術についてゲストと語るYouTubeラジオを配信するなど、精力的に活動している。
展示について「男性アバターの魅力をいかに伝えるかがテーマです」と力強く語るグロウさん。VRChatといえば、男女を問わず全体の約7割が女性アバターを使用しているという報告もあるほど、女性アバター使いが多い印象がある。その中でも、敢えて「男のかっこよさをいかに表現するか」に力を入れた作品は、バーチャル世界の表現の幅を見せる意味でも意義がある。
続いて、遠方からの参加となるなのさんは、Discordにて会場の人たちの質問に答える。展示作品の撮影において意識した点は2つ。1つは、「日の丸構図」と呼ばれる被写体を画面の中央に配置するリアル写真でも王道の構図を採用していること。もう1つは、VRChatの有志開発者がBOOTHにて公開しているカメラギミック「Integral」(スズ製作所、BOOTHリンク)を活用していることだ。
例えば、左上の写真にある信号機の光が十字を描いている写真。これは、「Integral」のクロスフィルターという機能を使用して演出しているという。
最後に、もんでぃーさん。彼は、「VR PHOTO EXHIBITION」の第1回から参加者として毎回遊びに来ていたそう。「まさか自分の作品がプリントされるとは思わなかったですが、実際に目の前にすると本当に感動して」とその胸中を語った。
まだまだ進化していくVR PHOTOの世界
今回の写真展で印象的だったのは、それぞれの作家が多様なカメラギミックを活用していた点だ。
VRChatには、公式のカメラ機能があり、実は2021年10月にこれまで実装されていなかった「フォーカス機能」が追加されたり、今年1月にはドローンカメラやドリー機能が追加されたりなど、度々アップデートされてきた。一方で、現実の世界であっても、写真家にとってカメラ性能は非常に重要だ。それと同じく、本格的にVR PHOTOでの作品づくりに励むフォトグラファーたちは、BOOTHにて販売されている有志開発者が作成した非公式のカメラギミックを導入してきた。
グロウさん、此花ゆうなさん、もんでぃーさんは「VRCLens」(Gumroadリンク)をメインに、mo4caさんは「全天球カメラシステム」 (BOOTHリンク) 。同じワールドでも、撮影するカメラギミックが異なれば、その印象は大きく変わる。
中でも、なのさんが作品の見どころの1つに挙げた「Integral」というカメラギミックは、長時間露光やシャッタースピードの調整、より正確なボケ、そしてクロスフィルターなど現実の一眼レフさながらのきめ細やかな撮影設定を可能する現在バーチャルフォトグラファーが注目するアセットだ。
撮影技法や撮影環境を指定したうえでのフォトコンテストなどが開催されれば、VR PHOTOにまた違った競技性のようなものが生まれてくるんじゃないか、そんなアイディアもふと浮かんだ。VR PHOTOは、まだまだ日進月歩で技術もコミュニティも進化し続けているシーンだと言える。
「VR PHOTO EXHIBITION Vol.4」は、VR空間での表現がリアルな写真として具現化されることで、新たな感動と発見を提供する。バーチャルとリアルの融合が生み出す、VR PHOTOの可能性をぜひ会場で体感してほしい。
●イベント概要
・名称:VR PHOTO EXHIBITION Vol.4
・会期:2025年5月16日(金) ~ 6月4日(水)
・時間:11:00~19:00 (第2・第4木曜は17:00まで)
・会場:WONDER PHOTO SHOP (東京都渋谷区神宮前5丁目51-8 ラ・ポルト青山1F)
・入場料:無料
・主催:一般社団法人メイクスマイルプロジェクト
・協賛:FUJIFILM
●関連リンク
・WONDER PHOTO SHOP公式サイト
・「VR PHOTO EXHIBITION Vol.4」特設ページ