2025年5月10日(土)、11日(日)に、オリックス劇場(大阪府大阪市)にて、283プロダクション(ツバサプロダクション*。以下、283プロ)所属アイドル、櫻木真乃さん、風野灯織さん、八宮めぐるさんによるユニット「illumination STARS」(イルミネーションスターズ、以下イルミネ)によるライブ「283 Production LIVE Performance Uka,」が開催された。
*いわゆる「アイドルマスター シャイニーカラーズ」の舞台となるアイドル事務所
本ライブは、「Larva,1」「Pupa,2」「Imago,3」という3つの公演で構成されている。イルミネの3名のほか、283プロダクション所属アイドルである、ユニット「放課後クライマックス」の小宮果穂さん、ユニット「Straylight」(ストレイライト)の黛冬優子(ふゆこ)さん、ユニット「L’Antica」(アンティーカ)の田中摩美々さんが各回のゲストとして出演した。
当日は現地でのライブと共にxRライブ配信も行われた。本稿では現地での様子を中心にレポートする(一部を除く本稿の画像はxRライブのものになる)。
Larva,1
5月10日(土)に開催されたのは、本ライブ第1公演である「Larva,1」だ。なお、Larvaは「幼虫」を意味する。
会場に着くと、ステージ上には、開演前から繭のようなオブジェが配置されていた。
観客は会場に流れる283プロアイドルの楽曲を聞いて気持ちを高めていたところ、櫻木さんが「私たちと一緒にリラックスをしましょう」という声が。風野さん、八宮さんも含めた3人からの案内にあわせて、観客全員が深呼吸をして落ち着く流れに。
初手から意表を付いた展開に続いて開演が告げられると、舞台の壁面には「Larva,1」という文字が映し出され、繭のようなオブジェが開いていく。そしてその中にいたのは、ひとりのアイドル。風野灯織さんだ。
風野さんが披露したのは彼女のソロ楽曲、「スローモーション」。ふとしたきっかけで昔を思い出し、キミへの感謝を告げ、今の自分への自信を持とうとするバラード。風野さんのアイドルとしての歩みを描いた曲ともいわれることもあるそうだ。
風野さんの歌唱が終わり、手持ちのマイクを置いてヘッドセットマイクを身に着けると、MCパートに。観客への挨拶と楽曲の紹介に続いて、「真乃、めぐる」とユニットメンバーを紹介すると、櫻木さんは手を振りながら、八宮さんは大きく手を動かすだけではなく飛び跳ねながらステージに登場した。風野さんは落ち着いた形でMCを続けていたが、3名の性格の違いとその組み合わせが、我々が各種メディアで接する「イルミネーションスターズ」がそこにいるということを実感させてくれる。
MCでは、本ライブが「成長型ライブステージ」であると櫻木さんから案内があった。ここでいう「成長型」とは何を指すのか。1曲目が「スローモーション」という過去を振り返るバラードから始まるという意表を付いた始まり方であったが、これも「成長型」のライブステージと関連があるのだろうか。
本ライブでイルミネの3名が揃って披露する最初の曲は「Happy Funny Lucky」だ。仲間たちと同じ時を生きる幸運をひたすらに明るくポップに歌うこの曲は、客席のファンと一緒に楽しめる幸せや、イルミネのメンバー同士が一緒にいる幸せを歌っているのかもしれない。
(余談だが、曲中の「Every Moment!」という歌詞が「エビ揉め」と聞こえることからミーム化して一時期SNS上で様々な動画が展開された、元となった楽曲である)
続いて披露されたのは、「イルミネイトコンサート」。ステップを踏みながら、コンサートが如くメンバーそれぞれが楽器を演奏する振りが特徴的な陽気な一曲。「クラップの演奏家大募集!」という歌詞もあるように、観客もステージ上の3名の振りにあわせて観客もクラップをする姿も見られた。
「We can go now!」は、イルミネメンバーが飛び跳ねながら歌うと、聞く者を元気づけてしまう一曲。それだけでなく、「HEY HEY!」「イ・ル・ミ・ネ」「Everybody let’s go!」など、彼女らの声にあわせてコールもいれたくなるのだ!
ハイテンポで明るい楽曲が3曲続いたところで一旦ここで小休止。ステージが暗転すると、舞台前方に降りたスクリーンに主演であるイルミネの3名と、各回に出演するゲストを紹介するムービーが流れる。
ムービーの中で動き回る3つの星がスクリーン中央で止まると、スクリーンの裏で切り替えが行われていた舞台セットの照明装置が光りだした。
スクリーンが上がり、水晶のようなオブジェクトの舞台セット中央にある扉から登場したのは、283プロアイドルの共通ステージ衣装に着替えた八宮さん。観客に向けて手を振りながら披露したのは、彼女のソロ曲「HAREBARE!!」だ。小刻みにステップを決めながら、「心で(心を)ギュっとしたい」という歌詞で、彼女らしい形で見ている者の背中を押してくれる。
八宮さんが歌い終わると、舞台の扉から櫻木さんと風野さんも現れ、3名で歌い始めたのは、283プロ所属アイドルの持ち歌、「Dye the sky.」。全員が歌う曲の中でもキラキラではなくモノクロームなイメージから始まり、サビに向けて力強い色を帯びていく曲。
そんな曲を3名が歌う中、途中でセットの扉が開き、サビ前の「私であれ」という歌詞にあわせ、本ライブのゲスト、放課後クライマックス(以下、放クラ)の小宮果穂さんが飛び出てきた。これには客席からも大きな歓声があがった。
小宮さんはお辞儀をしながら3名の間に入ると、2番冒頭のソロパートを普段の彼女とは違った、落ち着いた、ちょっと物寂しげな形で表現した。
4名での歌唱の後はMCコーナーに。「放課後クライマックスガールズ、小宮果穂ですっ!」「イルミネのみなさんが大好きなので、とってもうれしいです!」と飛び跳ねるほど元気に挨拶すると、八宮さんも同じように跳ねながら応える。
続けて八宮さんが「私たちのどんなところが好きー?」と振るのに対し、風野さんが「変な質問しないで。果穂だって困……」と制止しようとするも、小宮さんは食い気味にイルミネ3名の好きなところをひとりあたり20秒くらいかけて紹介。お返しに3名も小宮さんや彼女が所属する放クラを褒め合っていた。
イルミネだけだと3名の性格のバランスが特徴的であるが、元気な小宮さんが加わると同じく元気な八宮さん側にトークが弾んだのが印象的だった。
続いては、放クラの楽曲「五ツ座流星群」を小宮さんとイルミネ3名の4名で披露。放クラらしいハイテンションで宇宙を駆け抜けるこの曲を、櫻木さんたちも役になりきって歌唱。
曲終わりにピースサインを集めて五芒星を作るところも、今回は小宮さんが両手を使うことで無事作り上げ、4名の息があっている所を見せてくれた。
櫻木さんと小宮さんが2名で歌うのは、彼女らが所属する283プロのアイドルによる混合ユニット「Team.Stella」の「プラニスフィア ~planisphere~」。planisphere=星座早見表を示すキラキラしたこの楽曲を、元気にパフォーマンスする妹=小宮さんと、それを優しく見守るように歌う姉=櫻木さんのデュオで披露した。
櫻木さんと小宮さんで今回の共演での感想を言い合い、またやりたいという願望を述べたところで、小宮さんが彼女自身のソロ曲「ハナマルバッジ」を披露。目を輝かせながら飛び跳ねて、観客とクラップをして、手や指で歌詞を表現してと、小宮果穂ワールドを全身に表現してくれた。
本公演のゲストである小宮さんがライブの感想を述べ退場すると、暗転を挟んでイルミネの3名が今回のライブのために作られた衣装に着替えて登場。櫻木さんは髪を後ろで結わえ、八宮さんは髪を下ろす、眼鏡をかけた風野さんはポニーテールにするなどヘアスタイルも変えてきた。
暗転の間には舞台転換も行われ、柱に草木が絡まり白い幕で装飾された、森の中の神殿のようなセットに変わった。そのようなステージの両サイドから3名を照らす照明によってできた影が、神殿のようなセットにうつしだされる姿は、神秘的でもあった。
小宮さんとの元気溢れるセッションから一転した空気で披露したのは、「トライアングル」。点と点と点が繋がってできる三角形になぞらえて3人の関係性を歌う、イルミネならではの楽曲を、いつものイルミネの安定した歌い方でパフォーマンスしてくれた。
続くMCコーナーでは着替えた衣装の紹介が行われた。八宮さんはここぞとばかりにいろんなポーズをとり、さらに客席の「回ってー」という声を誘導するなどはしゃぎっぱなし。
せっかくの新衣装ということで、配信だけでなく現地参加の観客も参加ができたフォトセッションコーナーでは、3名が思い思いの姿でアピールを行った。
ヘッドセットマイクをハンドマイクを変え、櫻木さんが披露したのは、彼女のソロ楽曲「ありったけの輝きで」。櫻木さんの細くても強い歌声、そして曲の展開にあわせて照明が色づく様子が歌の世界を表現していて、聞き入ってしまう。
櫻木さんが舞台からせり下がると、神殿のようなセットのバックには光の筋で描かれた蝶が羽化し羽ばたく映像が映し出される。そして、3人がせり上がりで登場し、「Shower of light」のイントロが流れ出すと、客席から大きな歓声があがった。
イルミネの楽曲の中でもテンポが速い上に拍子が細かく変わり、疾走感がある中、お互いの光に憧れながら、お互いの光を反射して輝く自分を好きになろうとする姿を描く一曲だ。
そんな本曲を、さらに今回のライブの中で象徴的なものにしたのが2番サビ後の間奏からの演出だ。
間奏で3人が躍るステージがせり上がり、「あなたは太陽なんです」と八宮さんが歌うと、中央にいる櫻木さんのいるセンターステージがさらにせり上がる。
羽根が舞い落ち、櫻木さんがさなぎのような姿勢でじっとしている中、風野さんと八宮さんが祈りを捧げるように歌いながら櫻木さんの周りを歩く。
Dメロ終わりで櫻木さんが体を起こすと、舞台奥にあった羽のような電飾が光りだした。ちょうど背の位置にある電飾は、あたかも彼女に羽が生えたように輝いたのだ。
それだけではない。櫻木さんが手を広げ、彼女が後ろを向くと、衣装の後ろが蝶の羽のように広がったのだ。
これが、ライブタイトルにある「Uka,」…羽化なのか!
羽を振動させ躍動することができるようになった櫻木さんは、大サビを1人で歌いきる。
そして、センターステージが他の2人を同じ高さに戻ったところで、3人そろったイルミネで「Shower of light」を歌うのであった。
歌唱が終わると、八宮さんは「真乃、おめでとう!」と櫻木さんの羽化を祝福し、「私も早く羽化したい」とはしゃぐ。
風野さんは「焦るとキレイな羽にならない」とたしなめつつ、羽化に対して何かしらためらう気持ちもあるようだ。
櫻木さんが「この羽で駆けだせますように」といって始めた本編最後の楽曲は「シャイノグラフィ」。
この曲は283プロアイドル全体の楽曲なのだが、「君色の羽が羽ばたいている」「その羽はきっと 光の当たり方で色を変える」という歌詞が、今回のライブにおいては櫻木さんの背中に生まれた羽の色とリンクして、また違った意味合いも持つように聞こえた。そして、風野さんと八宮さんの背中にはどのような羽が生まれるのか、このあとのライブにも期待が生まれる。
アンコール後、登場したのは櫻木さん。先ほどの羽が生えた衣装のまま「Shiny Stories」を歌う。この曲は、283プロダクションのシーズ・七草にちかさん、コメティック・斑鳩ルカさんとの楽曲だが、のちのMCで1月に開催された「283 Production LIVE Performance [liminal;marginal;eternal]」で七草さん、斑鳩さんが歌唱したことに触れ、今回はバトンを受け取った形で1人で歌唱。
風野さんと八宮さんが加わって3名で歌唱したのは、イルミネ最初の楽曲、「ヒカリのdestination」。デビュー時の曲を聞くと、これまで彼女たちを応援してきた記憶が再生され、明るい曲調にも関わらず感慨深いものもある。そんなことを考えていたら、彼女たちもイルミネが始まった頃を思い出し、3名が一緒に過ごしてきた時間を感じ、そしてファンも含めてこれからもこの曲と一緒に歩んでいけたらという。考えが一致して、嬉しかったり。
本公演のラストナンバーは、3名による冒頭の「響け 夢の果てまで!」というハモリが印象的な、「スマイルシンフォニア」。聞くたびに櫻木さん、風野さん、八宮さんの3名の声が重なることの幸せを実感する曲だ。曲の最後を「響き渡れ!」という3名が重ねた声だけで締めると、来場・視聴したファンへの挨拶を経て、「Larva,1」の公演を終えた。
Pupa,2
5月11日(日)の昼から開催されたのは、2つ目の公演である「Pupa,2」。Pupaはさなぎを意味する。
「Larva,1」の時と同じように、開演前から舞台には繭を模した装置が置かれている。イルミネ3名による深呼吸の案内が終わり、「Pupa,2」というスクリーンの文字にあわせて繭が開くと、そこに現れたのは櫻木さんだ。
ここで披露したのは、彼女のソロ曲「ありったけの輝きで」。前日の公演では終盤の披露だったので、セットリストが前日とは異なるようだ。
曲終わりのMCで、櫻木さんはこの曲を「まだ見たことのない世界に連れて行ってくれるような、小さな勇気を歌った楽曲」と紹介。そしてこの後のライブについて「私たちが踏みだす一歩を温かく見守っていただけると嬉しいです」と案内した。
風野さんと八宮さんを呼び込むと、八宮さんは大声を出しながらダッシュで舞台に上がる。そんな姿を見ながら、風野さんは微笑みながらゆっくり登場。
3名がイルミネのユニット衣装で揃うと、「Happy Funny Lucky」「イルミネイトコンサート」「トライアングル」とイルミネ楽曲を披露していった。
前日と同様に、出演者紹介のムービーが流れ、セットの転換が終わった後に披露されたのは、衣装を変えた風野さんの「スローモーション」。
続いて、櫻木さんと八宮さんが加わり、3名で「Dye the sky.」を歌うと、サビ前に開いた扉に観客の視線が集まる。そして(前日の小宮さんとは違い飛び出てではなく)歩いて登場したのは、今回のライブのゲストである、「ストレライト」の黛 冬優子さんだ。
黛さんはにこやかに右手を振りながら3名が並ぶ中に入ると、物憂げの中にもクールさを持った歌い方で歌唱に参加。可愛らしい印象がある彼女だが、サイバーパンクな曲を多く歌うストレイライトのメンバーでもあり、イルミネ3名の歌唱の中に強さを加えてくれた。
八宮さんに「ふゆちゃん」と紹介された黛さんは、「皆さんが笑顔になっていただけるよう、一生懸命頑張ります」とキュートに抱負を述べる。櫻木さんが「かっこいい曲も、かわいい曲も、どっちもすごいと思います」とパフォーマンスを評し、風野さんは裏側ではストイックに練習していて自分たちの学びになると述べると、黛さんは今回のライブ出演がお互いの成長のきっかけになったと本ライブのテーマにかけてその意義を語った。
続いて4名が歌唱したのは、つながりを歌ったストレイライトの楽曲、「LINKs」。ハイテンポなナンバーが多いストレイライトの曲の中では珍しいバラード。ライバルが切磋琢磨して高め合っていく姿を振り返るように歌うこの曲を、コラボという形でイルミネの3名が歌うというのもまた味わい深い。
八宮さんと黛さんが2名で歌ったのは、2名が所属する混合ユニット「Team.Sol」から「SOLAR WAY」。「ケ・セラ・セラ」と太陽の光のようにどこまでも突き抜けていくポップな一曲を、ムードメーカーである八宮さんと気配りのできるストレイライトのリーダー、黛さんが楽しく歌い上げた。
「Team.Sol」だけでなく、別の仕事で一緒になった時のことにも触れる八宮さんと黛さん。今回も一緒にライブができたことにお互いに感謝して八宮さんが舞台袖にはけると、「ふゆの曲を披露するのですが」と黛さんが予告。
片思いをする女の子の胸の苦しさを歌う「SOS」は、ストレイライトのクールさとは異なる、黛さんの可愛さを詰め込んだ一曲。とろけるような歌声に観客にアピールする振付、そして時々織り込まれるウインクに、冒頭の「皆さんが笑顔になってくれるように」という宣言は、この曲だけでも十分果たすことができただろう。
昨日の「Larva,1」と同じように、ステージの上が森の神殿のようなセットに切り替わると、こちらも同じく本ライブのための新衣装に着替えたイルミネの3名の登場。なお、「Larva,1」の終盤で羽化をした櫻木さんの衣装は、ほかの2名とは違い羽が生えた形だ。3名による「PRISISM」の歌唱、衣装披露とフォトセッション、八宮さんの「HAREBARE!!」の歌唱に続いて、昨日羽化の儀式が行われた「Shower of light」の披露に。
櫻木さんの次に羽化するのは風野さん、八宮さんのどちらのどちらだろうと歌唱とは別のポイントも気にしながらパフォーマンスを見ていると、間奏でセンターに立ったのは……八宮さんだった!
さなぎのように固まる八宮さんに、櫻木さんと風野さんが祝福を与えるがごとく歌いかけると
舞台奥の羽を模した電飾も無事光り
蝶の羽根を伸ばし、八宮さんも無事羽化することができたのだ。
八宮さんによる大サビのソロ歌唱から、3名揃っての歌唱を終えると、「真乃、灯織、見て!」と櫻木さんと風野さんに羽化した喜びを飛び跳ねながら伝える八宮さん。櫻木さんは素直に「おめでとう」と伝えるも、風野さんは「おめで……とう……」と不安げに告げる。そして「羽化って……なんだっけ」「羽化をして、その次は」と疑問を呈する。八宮さんと櫻木さんの「羽化をすると、羽ばたくの」「飛び立つの」という言葉に「どこに」と尋ねる風野さん。2名は「ここじゃないところ」と答えるが、風野さんはやはり納得いかない様子だった。
そんな中、3名で歌唱したのは「BRIGHTEST WHITE」。今回のライブでここまでにヒカリや色に関する楽曲、3名の関係についての様々な歌を歌ってきたライブだが、本公演「Pupa,2」の本編最後に見せたのは「色彩を束ね 無限に光れ」と歌うこの曲。3名はこれまで集めてきた色を重ねて、真っ白く輝くことを目指す。
アンコールで最初に登場したのは、先ほど羽化を果たした八宮さん。イルミネの楽曲「星の数だけ」をソロで歌唱を行った。いや、歌唱の冒頭で「これからも私たちと一緒に歌ってくれますか」と語りかけてきたように、黄色いライトを振る観客と一緒に「LaLaLa」と口ずさむように、彼女は隣にいる誰かを意識しながら歌唱をしていたのではないだろうか。
櫻木さんと風野さんも合流して「シャイノグラフィ」を披露すると、八宮さんは息を切らして喜びを伝える。私たちの歌でみんなが笑顔になって、その笑顔で私たちがまた歌って、というのを繰り返すと、変わるものもありながらも、ずっと一緒にいられるのではないかと述べる八宮さん。それを聞いた風野さんは思うところがあるのか表情を曇らせつつも、気持ちは伝わっていると八宮さんに応えた。
そして、「スマイルシンフォニア」の披露を終え、「Pupa,2」の公演は幕を閉じた。
Imago,3
5月11日(日)の夕方から開催されたのは、「283 Production LIVE Performance Uka,」の最終公演である「Imago,3」。Imagoは成長を意味する。
今回、繭のような舞台装置の中から登場したのは八宮さん。「HAREBARE!!」を披露すると、この曲は「がんばれ」という気持ちだけでなく、「大丈夫だよ」という気持ちも伝えたいという意図があると述べた。これまでの彼女の歌唱にもそんな気持ちがあったのだろう。
ライブ序盤は3名による歌唱が続く。「Happy Funny Lucky」で陽気に盛り上がり、「イルミネイトコンサート」でクラップをあわせ、「PRISISM」で絆を確認すると
出演者紹介ムービーと舞台・衣装チェンジを挟んで櫻木さんによる「ありったけの輝きで」の歌唱へ。
今回、「Dye the sky.」の途中で登場したゲストは、283プロの5人ユニット「アンティーカ」から田中摩美々さん。
右手を軽く上げてから3人が歌唱する列に入る田中さん。力をこめるのではなく、アンニュイさも感じさせる歌唱と動きで、この曲が持つ閉塞感とその打破を彼女の形で表現する。
MCパートでは、ゲストである田中さんの紹介コーナーが……と思いきや、まずは自己紹介を「お任せしまーす」と拒絶。「早速次の曲へ」と進行を無視しようとしたり、ライブの感想を求められると「イルミネ頑張ってるし、これなら私でなくてもいいんじゃないかって」と発言したりと、進行役の風野さんを翻弄していた。
そんな中、八宮さんがイルミネとのレッスンとアンティーカでのレッスンの違いを聞くと、5名で構成されるアンティーカはイルミネとは違いレッスンで全員が集まる機会も少ないとのこと。それゆえそれぞれで振り入れをしたうえで集まれる機会に合わせるという形をとっているという、ユニットごとの事情を聞かせてくれた。
そんなアンティーカの楽曲「愚者の独白」を田中さん+イルミネの3名にて披露。立ち去ってしまった彼にいまだ囚われ悲しみを溢れながらも幸せを願おうとする姿をスローに歌った一曲だ。イルミネの持ち歌にはないタイプの悲劇の曲であり、スタンドマイクでパフォーマンスするイルミネも新鮮であるが、それゆえに3名の新境地が感じられた。そしてMCパートでは気だるそうにしていた田中さんの抑えた感じの歌唱がやるせなさを感じさせてくれた。


続く楽曲は、風野さんと田中さんが所蔵する混成ユニット「Team.Luna」の「リフレクトサイン」。力強い風野さんと妖しく歌う田中さんの歌唱が混じり、月の光の中走る姿を連想させてくれた。
ゲストパートの最後は田中さんの「誰ソ彼アイデンティティー」。ガイコツマイクを握りながら、捉えどころのない、それでいて捉えたくなる魅力的で蠱惑的な声とメロディは後を引く。
暗転を挟んで、舞台は神殿のようなセットに。イルミネの3名がまとう衣装もライブ用新衣装になり、櫻木さんと八宮さんの衣装は、羽が生えている。
疾走感のある「Twinkle way」ののち、MCパートでの衣装紹介とフォトセッションと続く。
その後は「より一層の願いを込めて」という言葉を添えて始まった風野さんの「スローモーション」。本ライブの最初に披露されたこの曲をここで改めて歌唱するということは、改めて風野さんの立ち位置を確認するという意味もあるのだろう。
そしていよいよ「Shower of light」へ。前の公演で櫻木さん、八宮さんの背中に羽が生えた。次こそは風野さんが羽化するのではないか、しかしながら風野さんは羽化の持つ意味を疑っている。
そんな期待と不安が混じりながらも風野さんを応援したいった気持ちが観客の中で通じ合ったのか、客席で振られるコンサートライトの色が、イルミネのテーマカラーである黄色だけでなく、風野さんをテーマカラーである青色にも染まっていったのだ。
そしていよいよ風野さんがセンターポジションに立ち、ステージがせり上がる。
「Shower of light」と櫻木さんと八宮さんが祈るように歌う。
そして、舞台奥の羽のような電飾は白く光る…ように見えたが、点滅の後に消えてしまい、
風野さんの背中にも羽は生まれなかった。
それでも風野さんは赤く光る片翼のもとで歌い続けた。
歌唱後、八宮さんと櫻木さんに「羽ばたくことは怖くないの」「飛び立つことは怖くないの」と問いかける風野さんに、「怖いよ」と応える2名。さらに「この場所にいてはいけないのか」と問う風野さんに、最初は言葉に詰まるも、「羽は、願いをかなえるためにある」と、風野さん自身も気づいているのではないかと告げる櫻木さん。
そして風野さんは(羽など持たずに)「ここでずっと一緒に…」と願うも、2名を見失ってしまう。
再び見つけた2名に「どうするの」「どうしたいの」と聞かれた風野さんは意を決して「羽が、願いそのものというのならば、私だけの羽が欲しい!」と願いを述べた。
その決意に呼応するように、「BRIGHTEST WHITE」のイントロが流れ始めた。そして風野さんと櫻木さん、八宮さんはこの歌にのせて、変わることを恐れずに、真っ白く輝こうとすることを誓うのであった。
3名がありがとうございましたと述べ、舞台下にせり下りた後、本来ならばここでアンコールとなるはずだが、会場から自然に沸き起こったのは「アンコール」ではなく「イルミネ」という声であった。イルミネ3名のこの後が気になるファンの声に応えて登場したのは風野さん。
風野さんはイルミネのユニット曲「枕木の歌」を1人で歌唱。別れがあったとしもそれまで重ねた思い出は消えはしないし、思い出にぬくもりをもらいながらも先に進んでいこうというという楽曲に、先ほど羽をもつことを望んだ風野さんが重なってくる。
そして、風野さんが櫻木さんと八宮さんと合流して歌うのは、イルミネ始まりの曲「ヒカリのdestination」。
先に進むことを望んだうえで3名の原点に触れたことで迷いが解けたのか、大サビ前の間奏で遂に風野さんにも羽が生まれた。
そして、「真乃、めぐる……。この羽で、ずっと一緒に!」という言葉ともに、3人が揃って、それぞれの羽をもって羽ばたくことができたのであった。
最後のMCでは3名が今回の公演の経験を踏まえ、イルミネのメンバーに、小宮さん、黛さん、田中さんのゲスト3名を含めた283プロの同僚アイドルに、そして応援してくれるファンに対して感謝の気持ちを述べた。そして風野さんが「この歌が私たちの帰る場所、再び集う合図です」と告げ、「スマイルシンフォニア」で櫻木さん、風野さん、八宮さんが歌声を重ねた。
そして3名が退場した後に流れたインスト版「スマイルシンフォニア」に対して、観客が自主的に「響き渡れ!」と合唱して、本ライブは幕を閉じた。
舞台装置の実在感が作り上げた、舞台演出としての羽化のシーンの説得力
「成長型ライブステージ」をうたう今回の公演。レポート本文でも書いたが、今回のライブは(イルミネーションスターズのユニット楽曲の傾向もあって)光や色がテーマの楽曲が多く集まった。それが、導きなのか反目なのか、重なり合いなのか反射なのかは楽曲それぞれで異なるのだが、それらを重ね合う事で、イルミネーションスターズが仲良しなまま一か所に立ち止まるのではなく、先に進もうとするという意思は十分伝わった。
そんな「成長」を特に表現していたのが、楽曲「Shower of light」を中心とする、Uka,=羽化に関する演出だ。
3名が同時ではなく時間差をもって羽化することにより、先に進むという事への不安や疑問を、なにより成長は自分ならではの形でするものだということを示した構成や関連楽曲のセットリストもそうだが、今回大きかったのは、舞台演出を用いて羽化を表現していたことだ。
ここからは配信で見られたxRライブではなく、現地での観覧の話になる。
いわゆるCGをスクリーンに映し出すことによるライブでは、舞台上の出演者を魔法のように一瞬で隠すことも、衣装をチェンジさせることも、舞台を一変させることも可能であり、それが利点でもある。一方で、平面スクリーンに映し出しての表現は、特に横から見るとスクリーンの中の舞台に奥行きを感じることが難しいという欠点もある。
そんな中、今回の「283 Production LIVE Performance Uka,」では、「CGだからできる魔法」をできる限り減らしていたのだ。
舞台装置は暗転の間に舞台上から降ろしたり、釣り上げて隠したりしていた。(その様子は暗転の間にうっすらと見ることができた)
出演者紹介ムービーや楽曲PVのような映像演出も、舞台のどこにでも映し出されたのではなく、舞台前方の上部から降りてきたスクリーンに投影されるか、あるいは舞台奥の壁に映し出されたとしても、前方にある舞台装置に阻まれ映像全体が見えない形で(全体が見えなくても問題がないような映像として)投影されていた。
こういった、細かくても「これは魔法のように消えたり現れたりするものではなく、存在する舞台装置ですよ」という表現を重ねていくと、次第に見ている方も「これは映像による表現ではなく、存在する物体である」という気がしてくる。そうすると、「Shower of light」の時にあった森の神殿のような舞台セットも奥行があるようなものに見えてくる。
そして櫻木さんや八宮さんが羽化する際に光った羽の電飾も、舞台の奥に配置されたものと実在性を認識できたからこそ、演者と電飾が前後に並んだ時に「羽が生えた」ように見せるという舞台上の表現に驚き、そしてうまくいったときに感嘆をしたのではないだろうか。
なお、「Imago,3」の最後には、次回の「283 Production LIVE Performance」が2025年12月27日(土)、28日(日)にNiterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール(名古屋市)にて開催されることが発表された。さらに、ユニット「アンティーカ」のロゴの一部と、「LIVE Performance」の文字が「Musical? Performance」に変わる演出も映し出された。


12月にはさらにアンティーカの(田中さん以外の)4名のサインが増えるのだろうが、いずれ28名のサインがサインが揃うところが見たい
本公演のxRライブは6月15日(日)まで有料アーカイブ配信されている。
●「Larva,1」セットリスト
1. スローモーション
2. Happy Funny Lucky
3. イルミネイトコンサート
4. We can go now!
5. HAREBARE!!
6. Dye the sky.
7. 五ツ座流星群
8. プラニスフィア ~planisphere~
9. ハナマルバッジ
10. トライアングル
11. ありったけの輝きで
12. Shower of light
13. シャイノグラフィ
En1. Shiny Stories
En2. ヒカリのdestination
En3. スマイルシンフォニア
●「Pupa,2」セットリスト
1. ありったけの輝きで
2. Happy Funny Lucky
3. イルミネイトコンサート
4. トライアングル
5. スローモーション
6. Dye the sky.
7. LINKs
8. SOLAR WAY
9. SOS
10. PRISISM
11. HAREBARE!!
12. Shower of light
13. BRIGHTEST WHITE
En1. 星の数だけ
En2. シャイノグラフィ
En3. スマイルシンフォニア
●「Imago,3」セットリスト
- HAREBARE!!
- Happy Funny Lucky
- イルミネイトコンサート
- PRISISM
- ありったけの輝きで
- Dye the sky.
- 愚者の独白
- リフレクトサイン
- 誰ソ彼アイデンティティー
- Twinkle way
- スローモーション
- Shower of light
- BRIGHTEST WHITE
- 枕木の歌
- ヒカリのdestination
- スマイルシンフォニア
THE IDOLM@STER™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.
(TEXT by tabata hideki)