
Live2Dによるクリエイター向けイベント「alive 2025」が2025年12月12日に秋葉原UDXで開催された。
2014年にスタートして今年で11年目を迎える本イベント。多くの参加者が足を運んだステージ企画のラストに、トークセッションとしてANYCOLORとカバーに所属する2人のスタッフによるトークセッション「VTuber×Live2Dモデルの”今”と”未来”について話したい!」が行われた。
VTuberシーンにLive2Dという技術を2社が持ち込んでから約8年が経過しようというタイミングで、両社に務めるクリエイターが当時の思い出、現在の制作、そして今後の展望まで語り尽くした。
司会役はLive2D社の須田修伍氏が担当。登壇したのは、ANYCOLORからLive2Dチームのデザイン部副部長兼Live2Dアートディレクターを務める野久保賢一氏、カバーからLive2Dチームのディレクター兼マネージャーを務める平原翔大氏だ。
最初のテーマは「VTuber×Live2Dモデルの第一印象はどうでしたか」というもの。

野久保氏は「VTuberが流行り始めてから知った」「個人のVTuberでもこんなにおもしろい人がいるのか」と大いに楽しんでいたところからLive2Dに触れるようになったとのこと。
逆に平原氏は、「Live2Dを使ったゲームが流行っていたところから」「もともとゲーム関連会社で働いていて、Live2Dを使う機会があって、そこで初めて触れた」といい、対照的な出会いからLive2Dに触れたことを明かした。
ここで会場に集まった参加者に「Live2Dを触り始めたきっかけは、VTuberを見たからだという方は?」と聞くと、会場の約半数ほどが挙手。改めてその影響力の高さが伺えた。
加えて2人に「Live2DモデルによるVTuberの第一印象は?」と聞いて、当時の思い出や所感を話していく。
野久保氏「イラストが動いているだけでこんなに感動できるんだ、臨場感があるんだと思いました。Live2Dを用いたVTuberが出てくる前にも、立ち絵を配信画面の隅に載せてゲーム配信をしたり、歌ってみたでキャラ絵をアイコンとして使う方もいらっしゃったと思います。その中で、Live2Dでイラストが動いているというところの違いは、やっぱりその画面の向こう側に本当に人がいると感じられる臨場感です。これはメタ的な捉え方でもなんでもなく、本当に今そこに人がいるという臨場感がイラストから得られる。日本で生まれ育ったアニメ好きとしては、3Dより2Dイラストの方が親和性が高く、”生きてるじゃん”と思ったのが第一印象でした」
平原氏「最初はゲームで触っていたので、VTuber×Live2Dを見たときに、こんな使い方があるんだというのが第一印象でした。もともとVTuberは3D文化的なところもあったと思うんですが、Live2DをVTuberで用いた時にイラストの可愛さを表現できるところは、可愛いなと思いましたし親和性を感じました」

当時の第一印象についてそう語る2人に、須田氏は「”Live2Dモデル=手軽”というイメージは正しかったですか?」と聞く。
当時は現在よりも「3DじゃないとVTuberじゃない」という声が大きかった時代であり、そのなかでLive2Dを使用したことは大きなインパクトを視聴者にもたらした。その中で「3DよりもLive2Dは手軽だから配信がしやすい」というような意見が広まる(実際に筆者もこの意見・考えを記事中に記したことがある)

この問いかけに平原氏は「今と昔の手軽さの意味が違ってきてる」と明かし、「参入障壁として今のほうが昔よりも情報が入手しやすく参入障壁は下がりましたが、術面では逆に『できること』が増えた分、求められるクオリティーラインも上がっている」と指摘する。
野久保氏はそれに補足するように、2017~18年には「3Dは動かせないけどLive2Dならできそう」とVTuberをスタートさせた例を挙げ、「VTuberの本人が絵を描いて動かす文脈が強かった個人のVTuber=イラストレーター=Live2Dモデラーという流れ」について話す。
野久保「かつては絵が描けないといけないという参入障壁は高かったけど、逆に描けさえすればチュートリアルがわかりやすいのでLive2Dを使えばだれでも簡単にイラストを動かすことができてVTuberになれた。そういう意味で手軽だった」
現在は当初の参入障壁がなくなって、モデル自体が購入したり依頼しやすくなって手に入れやすくなっていたり、トラッキングアプリも使いやすくなったりと、VTuber側としてはより手軽な環境になったと付け加える。
須田氏は「ソフトウェアを提供する以上、使い方がわかるマニュアルやチュートリアルを一緒に出すべき」と同社のスタンスを話し、実際にLive2D社が出しているチュートリアルやマニュアルを通じて学習した人がアンケートで多く答えていただいているとも明かした。


続けて「Live2Dのコストが増えている」点へとテーマがシフトする。手軽さとは対照的にコストが増えているとはどういうことか。
野久保氏は「絵を描いて、Live2Dで動かし、それを演じる人が一緒だったからこそ、それぞれに割くことができる時間という物理的な問題があった。だが現在ではほとんどの場合Live2Dモデラーが専門としているために、良いものを作るためだけに工数を割けてしまう」と話す。
これは実際に彼自身が実体験として感じている部分がヒシヒシと伝わってくる語りで、「発注側と制作側に分かれてしまったからこそ、コストがだんだん重くなっていく構造になっている」と明かしました。
平原氏は「昔に比べてLive2Dというソフト自体がアップデートされ、やれることがかなり増えています。技術者として『できること』が増えるということは、そこにかかるコストも当然増えていきますよね」と付け加えました。
つまり、Live2Dモデラー(クリエイター)がモデルを出す→それを使って配信をする→それをみた他の人が「こういうモデルで配信しよう」とモデラーに発注を出す→そのクオリティーが平均値になるようにクリエイター達のスキルが上がる→それにあわせてLive2D社が新技術をアップデートし技術が増える→それを使ってモデラーがモデルを新たに出す………というようなループが生まれてコストが増えているとのこと。
このように書くと”コストが増えて悪い”というように読み解く読者もいるかもしれないが、この循環があってモデラーのスキルがあがり、出来上がってくるLive2Dビジュアルがよりよくなるというプラスの部分もある。
また2人は、「求めてくるユーザー側も120点、200点なLive2Dモデルを欲しがる人もいれば、逆にクオリティーは高くなくていいから10人分作ってほしいという需要も生まれている」「市場がグッと広まってワンポイントでの発注が生まれている」と切り出し、もしもコストが増えてキャッチアップできる自信がない・難しいというクリエイターがいれば、大量発注のほうにシフトすれば新しいビジネスチャンスがあるのではないか?と話した。

続けて須田氏が「いろいろと打ち合わせを重ねていくなかでコストを下げたいとなったときにどのようにしているか?」と2人に問いかけると、野久保氏が「発注側の依頼に対して求めていることの真意を汲み取りつつ、なるべく工数がかからない方法でもそれが可能であることを説明し、納得していただくための言葉の工夫が大事です」と明るく返した。
この返答で会場内が少し温かな空気になったところ、「クリエイターにとって必須の技能だと思っています。個人でも企業でも人が介入するので、提案のスキル=コミュニケーションが大事」と重ねる平原氏。会場の中には、その話に頷く方もちらほら見られた。
野久保氏「僕はよく”説得するのが上手”と言われるのですが、そのために必要なことはやはり、より多くの技術的な表現技法や工数削減の解決方法を把握していること。それを知っているからこそ説得力が出て、逆に提案で最善の方法が出てくる。幅広い表現のジャンルを勉強することが大事だと思っています」
自身の技術力や知識を蓄えれば交渉力・提案力もあがり、コストが減る理由にもなる。これはLive2Dモデラーへ向けてというよりは、フリーで活動するさまざまなクリエイターに対して通じそうな答えだった。野久保氏・平原氏が両社で重要ポジションに就いているからこそ、こういった言葉は重みがある。

元々3Dモデルが主流と言われていた中、Live2Dモデルが手軽という理由で広まったが、現在ではコストの問題が出てくるようになった。こうした流れの中で、須田氏は改めて2人に「なぜLive2Dモデルを使うのか? 選ぶ価値はどういったところなのか?」と質問すると、二人はこう答える。
平原氏「一番に思うのは、イラストならではの可愛さを表現できるという点です。イラストレーターさんが描いた絵のタッチや良さを、そのまま最大限に引き出して動かせる。そこにLive2Dを選ぶ独自の価値があると思っています」
野久保氏「企業側の目線としてLive2Dモデルを選び続けるのは、運用しやすい点にあります。調整コストも含めて仕組みさえ整えて置けば保守もしやすく、モデルを大量に管理・運用ができるので」

トークセッションの終盤では、「漫画を描いたとか、演技していたというのもアピールになるし、どういう表情や動きをしたらカッコよく・可愛く見えるか、ポーズや身振り手振りを知っているので、Live2Dで再現できるポテンシャルがある」と、個々人の経験や知識がLive2Dモデルの制作へとつながるという点で2人が一致していた。
そこで、野久保氏が「なるべく多くの体験がしたいとバンジージャンプを飛びに行ったことがある」と明かすと、平原氏も「わたしも一度飛んでみようかなと思って飛んだことがあります」と吐露。なんと”Live2D制作でバンジージャンプを飛んだことがある”という経緯まで含め、2人がバンジージャンプ経験者ということが明らかになった。
須田氏が「わたしはバンジージャンプを飛んだことない。Live2Dモデラーになれる/なれないの差がここに引かれてますね」というと、2人は「少なくとも、VTuber企業のアートディレクターが2人ともバンジー経験者ですね」「もしかすると採用フォームのチェックボックスに出てくるかもしれない」と最後に笑いを誘った。

セッションが開始してすぐに「技術論ではなくマインドにまつわるお話になると思います」と切り出していたが、実際にこの日の話は技術的ではなく、むしろ社会人として・1人の個人クリエイターとしてのマインドを学ぶような対話だった。
にじさんじでは会社内での部門を立ち上げて内製する体制でスタートし、ホロライブでは「外部クリエイターへの発注と社内制作を併用しているなど、Live2Dの制作体制は多少異なる。
しかし、両社が2018年にVTuberシーンにLive2D制作を持ち込んだことにより、VTuberシーンのあり方やイメージ像をつくりあげ、Live2D社の顧客・使用内容、そしてクリエイティビティの促進に大きく寄与したのはいうまでもないこと。
セッションが始まる直前、第12回 Live2D Creative Awards クリエイターズインスピレーション賞がANYCOLOR/ANYCOLOR デザイン部Live2Dチームへと贈られたわけだが、その意味や重みが感じられるセッションであった。




