
バーチャルシンガープロダクションのRK Musicが、2026年6月21日に所属全シンガーが出演する「RK Music Fes. 2026」を立川ステージガーデンで開催した(アーカイブページ)。
「LIVE UNION」として活躍する焔魔るり、HACHI、瀬戸乃とと、水瀬 凪の4人、2018年から活動をスタートしたKMNZ(ケモノズ)、ロック色のつよいボーカルデュオ・VESPSEBELL(ヴェスパーベル)、2024年以降にデビューしたMEDAやCULUA、アニメルックなビジュアルと生の自分自身とを分け隔てなく活動する「Fused」に在籍するCONAや妃玖、そしてもっとも最近デビューしたHONK THE HORNとNUROJUNKまで、事務所に所属する全メンバーが出演したライブとなった。
そんなライブのなかで、見どころ・ハイライト・キーポイントをピックアップし、この日のライブ昼公演について振り返りたいと思う。
昼公演・夜公演、あわせて約5時間という濃密な音楽祭となった「RK Music Fes. 2026」。その流れと内容をつぶさに見てみると、所属するシンガーやユニットが全員出演・それぞれのライブパフォーマンスをみて楽しむことができるだけでなく、個々のユニットやシンガー、その音楽性の違いから「RK Musicの変遷と多様さ」を楽しみ、知ることができるイベントとなっていた。
どういった意味か、それはこの日の昼公演に凝縮されていた。
「LIVE UNION」×「Fused」──異なるバックグラウンドの4人を見た
昼公演前半では、RK Music内のレーベル「Fused」に所属する妃玖、Diα、CULUA、CONAの4人が出演。VTuberらしいアニメルックな3Dビジュアルではなく、ステージ上の照明を当てずに暗がりのなかで歌っていた(いわゆる「Adoのライブ」といえば伝わるだろうか)。




昼公演の最後には、「LIVE UNION」の4人が連なって登場した。2020年3月にデビューしたのが焔魔るりとHACHI、個人として活動していた瀬戸乃ととが2020年9月、2021年2月に水瀬凪。黎明期から発展期へとつながるタイミングでデビューした立役者である4人は、RK Music内にくまれたレーベル「LIVE UNION」の一員として、また4人組ユニット「LIVE UNION」としても活動するようになっている。
「LIVE UNION」と「Fused」、RK Musicにおける立役者と最新鋭である4人が、この昼公演で相まみえることになった。そしてその音楽性は、両者でかなり異なる。
「Fused」の4人は、ソングライティングやダンスにも強みを持っており、シンガーではなくよりアーティスト然としているのが特徴である。
CONAは自身が作詞作曲を務めた「無色夏」を、Diαは作詞を一部担当した「ティニタス」をそれぞれ披露。この日のライブ直前にツーマン企画「INVISIBLE STATE」を行なったCULUAと妃玖は、ステージ左右へ動き回り、音に乗って踊りながら歌っていった。
4人のサウンドも、クラブサウンドやシンガーソングライター然とした楽曲を披露しており、志向や影響を受けた音楽シーンが両者で異なっていることが伝わる。
では「LIVE UNION」はどうか。そもそも、RK Musicはバーチャルアーティストに特化した音楽レーベル。その影響が少なからず働いたのだろう、焔魔るり、HACHI、瀬戸乃とと、水瀬凪の楽曲・サウンド・歌唱法には、それぞれ温度感は異なるがアニソンシンガーからの影響が見て取れる。
この日のライブでは、瀬戸乃ととが「不可逆サバイバル」「More than Blue」、水瀬凪が「午前零時逃避行」「アオハル進化論」といった楽曲を披露していた。
軽快なギターリフとリズムで組まれたロックチューン、瀬戸乃は少し低めの声色を安定して出しながら伸びやかに歌っていき、水瀬はよりクリアな声色を押し出してポップに歌っていく。その姿に一時期のLiSAや水樹奈々、あるいは夏川椎菜や水瀬いのりの姿がダブって見えた。


焔魔るりは、自身が語るようにストーリー性や世界観を強く意識した楽曲をリリースしており、この日も「Calling」「Hope Song」といった曲を披露。ファルセットと抑揚のついた焔魔のボーカルはこの日も冴えをみせ、本来のシアトリカルな魅力をこの日も発揮していた。

HACHIはもっともアニメ的な色合いからは遠いが、ミドルテンポかつ柔らかなシンセポップで一貫したサウンドを表現し続けてきた。アニメタイアップとなった「Brand New Episode」を1曲目に披露したあと、「ビー玉」「夜迷い言」「星を待つ」を歌い上げた。HACHIの太くしっとりとした声色で観客もウットリ、昼公演のトリを務めたのだった。

約6~7年のあいだでさまざまな「シンガー」をデビューさせてきたうえで、これだけの幅を持った面々が活動するように変化していったRK Music。そんな変遷を、2組の対比を組んだ昼公演に感じたのだった。
閃光のような新星と2組の”ライブの鬼”
そんな黎明期と最新のシンガーたちに挟まれていたのが、NUROJUNK、HONK THE HORN、VESPERBELL、KMNZの4組だった。
KMNZは2018年にデビューしたヒップホップユニット、VESPERBELLは2020年6月にデビューしたロックシンガーデュオ。2組ともシーンの荒波にもまれながら確かな支持を得てきた。
そんな2組の直系的後輩にあたるのが、HONK THE HORNとNUROJUNKだ。2組とも音源リリースやライブ配信、クラブイベントなどへの出演は行なっていたが、この日のようなホール会場でのライブは初めてだ。
一方はロック寄りで、一方はヒップホップ寄りで、スタイリッシュかつ刺激的なサウンドを提供してきた2組は、この日も閃光のような激しさをステージで表現した。
NUROJUNKはシンセやベースサウンドにメタルサウンドを混ぜ込んだラウドな音楽を、HONK THE HORNはK-POPやチルヒップホップなどをトラックにした楽曲を、それぞれに歌っていった。


そんな2組には少し共通している部分がある、ここまでの楽曲で”がなり声”を高頻度で取り入れているのだ。その意味や理由を、RK Musicの外に広がるポップミュージックから考えてみよう。
太い声色で厳めしい印象を与えるがなり声、近年の日本でいえばAdoやちゃんみなが楽曲の中で印象的に使っており、K-POPのフィメールグループでもしばしば聞けるようになった。
K-POP、ローファイ・ヒップホップ、メタルを単に志向するのではなく、ネット的な感性でヒネリを少しだけ加えつつ、ガナリ声というトレンドとなっている歌唱も楽曲中に織り込んでいく。
こういった2020年代に入ってからの音楽シーンの潮流をうまく取り入れたユニットがデビューしているのも、「2026年のRK Music」だからこそだろうと、筆者は改めて思った。
それでいて、ライブをギュッと締めたのがVESPERBELLとKMNZの2組。所属事務所のライブを祝う大事なステージのなかで、普段通り・いつも通りの”らしさ”でライブをで場を圧倒。毎月のようにさまざまな現場を盛り上げているパフォーマンス力を、まざまざと見せつけたのだった。


全シンガーが”没入”させた昼公演──「コールの次は、黙って浸る」充実の約2時間30分
RK Musicの8年間のなかでデビューしていったバラエティ豊かなシンガーやユニットたち、その志向の変遷やバックボーンの違いをこの昼公演から十二分に感じ取れた。それでいてどのシンガーやユニットも、1曲目を歌い終える頃には「自分の音楽世界」へとファンたちをグッと引き込んでいった。その事実が何よりも重要だ。
バラエティ豊かであるというのはつまり、個々人で志向する世界観や歌い方、メッセージもまったく異なるということであり、その違いや振れ幅に観客を連れ回すという意味でもある。ベタなことを書けば、推しのシンガー以外誰一人知らないなんてこともありえるだろう。
だがこの日の前半公演では、先程のライブでは大声でコールをしていたところから、次のアーティストでは横にペンライトを振ってグルーヴを楽しむ、次のシンガーではその歌声や世界観に黙って浸る。そうした一人ひとりの世界観やパフォーマンスにファンがしっかりと”没入”していたように見えた。
MCの時間をなるべく減らし、次から次に楽曲を披露し続けた昼公演。約2時間30分のRK Musicワールドを堪能した観客たちは、満足げな顔で会場をあとにしていった。
●「RK Music Fes. 2026」昼公演セットリスト
Diα
1.ティニタス
2.残声
3.SIGNAL
CONA
4.無色夏
5.藍色の水槽
6.神様はいつでも
妃玖
7.PULSE
8.HOMURA
9.ノイゼルフィ・ライナーノート
CULUA
10.ハレバレ
11.自分ごっこ
12.スペクトロライト
NUROJUNK
13.Rising a Tide
14.DEMOLISHER
15.Chase the Sun
VESPERBELL
16.鳴動
17.RAMPAGE
18.MACH
19.NO MORE!!
HONK THE HORN
20.808
21.Slow-Flame
22.no-leash
23.WILD-SIDE
KMNZ
24.OPENER
25.POSSE
26.VERSE
27.Hero in the heart
水瀬 凪
28.アオハル進化論
29.フラッグライン
30.午前零時逃避行
瀬戸乃とと
31.不可逆サバイバル
32.Masterpiece
33.More than Blue
焔魔るり
34.Calling
35.呪り-inori-
36.Hope Song
HACHI
37.Brand New Episode
38.ビー玉
39.夜迷い言
40.星を待つ
(TEXT by 草野虹)
●関連リンク
・RK Music Fes. 2026(アーカイブページ)
