VTuber・小鳥遊キアラさんがドイツのリアルイベントに初参加 「DoKomi」現地レポート

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ステージ上の巨大スクリーンを通して歌とトークで来場者を楽しませる小鳥遊キアラさん

皆さんこんにちは。ドイツ・フランクフルト在住のライター、Katahoです。

8月7〜8日、ドイツのデュッセルドルフで同国最大のアニメ・マンガファン向けイベント「DoKomi」(ドコミ)が開催されました。今回、「ホロライブEnglish」に所属するVTuber・小鳥遊キアラさんがこのイベントに参加し、ライブコンサートなどを行うということで、筆者も現地に駆けつけて取材を敢行しました。その模様をお伝えします。

ドコミの会場前。入場は大きな混雑もなくスムーズでした

小鳥遊キアラさんのライブは8月7日の現地時間17時過ぎ、会場内のステージのひとつ「ライブ・ステージ」で行われました。通常のライブ配信と同じような元気いっぱいのトークに歌を加えて、ステージホールを大いに盛り上げていました。

ステージの模様は配信サイトを通じてオンラインでも公開されたわけですが、映像では会場の熱気はあまり伝わっていなかったかもしれません。実際は、拍手や歓声、そしてトークに反応する笑い声で会場はかなりヒートアップしていました。

VTuberファンが多いPANORAの読者の皆さんであれば、この光景は当たり前に感じるかもしれません。しかし、筆者は非常に驚きました。というのも、小鳥遊キアラさんの姿はステージ上の大型スクリーンに映し出されているだけです。つまり現実のステージ上には誰もいないのです。そして、VTuber自体がドイツではまだまだ「若い」トレンドです。ましてやバーチャルなタレントがリアルイベントに参加すること自体がドイツでも今回が初めてのこと。アニメやマンガファンが比較的VTuberのファンと重なっている部分があるとしても、多くの来場者にとっては、まだ見たことがないVTuberのステージパフォーマンスに「アウェイ」感があったことは否めません。リアルイベントの中でVTuberのステージが本当に盛り上がるのか、正直なところ不安を抱いていたのです。

ところが、フタを開けてみれば「アウェイ」感など皆無。ステージが始まるとホールは徐々に来場者が増え、ほぼ満席になりました。終了時にアンコールを意味するドイツ語の「ツーガーベ」が叫ばれた瞬間、一部の熱狂的なファンだけでなく、恐らく今回初めてVTuberを見た来場者の多くも合わせて会場全体が一体となり、小鳥遊キアラさんのライブを心から楽しんでいるのが伝わってきました。

そんな小鳥遊キアラさんは、ドコミではこのライブのほか、開会式でメッセージ動画が上映され、その後、ドコミの関係者とのトークイベントに参加。また、ファンに向けては、1対1で交流できる「ミートアンドグリート」と呼ばれるファンミーティングが実施されました。

開会式で自己紹介する小鳥遊キアラさん
ドコミ関係者とトークする小鳥遊キアラさん

ドイツ最大のアニメ・日本文化エキスポ、ドコミとは?

ところで、ドコミとはどのようなイベントなのでしょうか? ドコミはアニメやマンガ、ゲーム文化のファンが集い、ステージやワークショップ、ブースなどが展開される、いわゆるアニメコンベンションと呼ばれる総合イベントです。日本の同人誌即売会にインスピレーションを受け、「ドイツのコミケ」になることを掲げており、ドイツだけでなく欧州各国からもファンが集まる欧州屈指のイベントのひとつとなります。

イラストやマンガを制作するアーティストのブースが集まるエリア

今年はもともと5月に開催を予定していましたが、新型コロナウイルス感染症の急増を受けて夏に延期、開催へと至りました。平時は5万5000人(2日間のべ)を動員するところ、今年は感染予防対策の一環で、上限を3万人(2日間の合計、スタッフを含む)にして開催。当然のように、チケットは両日とも完売していました。

会場となった国際見本市施設「メッセ・デュッセルドルフ」には、マンガやアニメに影響を受けたアーティストやクリエイターのブースが立ち並ぶホールのほか、アニメやマンガのローカライズ版を公式に制作する企業ブースおよびアニメグッズなどを販売する業者が集まるホールもあります。

フィギュアなどアニメグッズを販売する業者が集まるエリア

また、近年拡大しつつあるのが、eスポーツとしてゲーム大会が開催されるゲームエリアとダンス文化のエリアです。ゲームエリアでは今年も「スマッシュブラザーズ」の大会が行われ多くの来場者が観戦していました。

「スマッシュブラザーズ」大会の様子

配信文化のエリアも、近年注目されつつあるジャンルのひとつかもしれません。今年も配信プラットフォーム「Twitch」によるゲーム実況などで多くのファンに支持されている配信者がファンたちと交流を楽しんでいました。VTuberも配信者の一形態であることを考えれば、今後はこういったエリアへの参加もあるかもしれません。

会場には痛車も多数展示されていました
アニメコンベンションといえばコスプレも見所のひとつ

ドコミとVTuberの関係とは?

ドコミといえば、今年5月にオンラインイベントとして開催した「ディギコミ」は、「VTuberエディション」と銘打たれドイツの国内外で活躍するVTuberが多数参加していました。今回ライブを実施した小鳥遊キアラさんのほか、英語圏の大手VTuberエージェント「VShojo」に所属する有名VTuberをキャスティングする一方で、ドイツや欧州の他の国のVTuberも参加し、VTuber文化の裾野の広さを感じることができました。

では、今回のドコミの会場ではどうだったのでしょうか? 実は、小鳥遊キアラさんだけでなくさまざまなVTuberが参加していました。中でもフィンランドのLumiさんとデンマークのMerryさんのブースは常に多くのファンでにぎわっていました。ドイツのVTuberではアニメ声優や歌手でもあるSelphyさんもブースで終始、ファンと交流している姿が見かけられました。このほかにも一般参加として来場したVTuberの人たちもいたようです。以下に、当日の会場からの彼女たちのツイートをご紹介します。

なぜこの時期に大型イベントを実施できたのか

最後に、新型コロナウィルスの感染予防対策にも少し触れておきます。コロナ禍における昨今では、このようなアニメコンベンションの多くは世界中で中止されています。今回3万人という大規模イベントが開催できたのは、ドコミの実行委員会が市の保健当局やメッセ運営会社と緊密に連携し、行政が定める感染予防対策を実施した点が非常に大きいです。

入場にはワクチン接種証明または抗原検査・PCR検査による陰性証明、快復証明のいずれかの提示が義務付けられました。会場内は医療マスクの着用義務が徹底されたほか、混雑を避けるために通路は広く設定するか一方通行にすることで参加者同士が密になることが避けられていました。また、ハグの禁止といったルールも徹底されていました。

いずれにせよ、VTuber文化はすでにアニメファンイベントの一部になっていると、今回の現地取材を通して改めて感じました。来年以降に開催されるであろう世界中のアニメコンベンションでは、VTuber関連のプログラムがさらに勢いを増すかもしれません。

なお、今回小鳥遊キアラさんへの単独インタビューも行うことができたので、こちらも近日公開できればと思っています。お楽しみに。

(TEXT & PHOTO by Kataho

<著者プロフィール>
ドイツゴチョットワカル系ライター&コーディネーター。ドイツ・フランクフルト在住。ドイツのオタクイベントでの遭遇率が高い人。日独オタク文化交流がライフワーク。