GEMS COMPANY「Magic Socks」ライブレポート メンバーとファンの愛が埋めた、珠根うた不在の穴

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これは今なお続くメンバーとファン、そしてスタッフの愛の物語だ──。

スクウェア・エニックスがプロデュースする12人のバーチャルアイドルグループ「GEMS COMPANY」(ジェムカン)は20〜22日、神奈川県横浜市にあるDMM VR THEATERにてライブ「Magic Socks」を開催した。今年7月に開催した「Magic Box」と同様、3日で5公演、5つのグループ内ユニットが順番にMCを担当するという方式で、満員御礼の会場を大いに熱狂させていた。

今回は、珠根(たまね)うたさん、星菜日向夏(ほしなひなか)さんのユニット「うたひな」回を取材予定だったのだが、体調不良が原因で珠根うたさんが出演辞退となり、代わりに「ポン姉」こと音羽雫(おとわしずく)さんを起用した「ひなポン」回となった。

はたして11人ではどうなるのか……という心配をよそに、相変わらずの圧倒的な完成度の高さと、メンバー・お客さんの暖かさで、その「穴」を微塵も感じさせないほど埋めていた。ジェムカンについての基礎知識をMagic Boxの記事で知った上で、大量の写真で送るレポートを読んでほしい。

なお、新情報としては5月10日に東京・マイナビBLITZ赤坂にて2ndワンマンライブを開催することを明らにした。


最高のステージをさらに盛り上げたファンの熱量

ジェムカンのライブで最もスゴいのは、彼女たちがいるとしか思えない(いや、いるのですが)存在感の高さだ。

ライブを見たことがない方になかなか伝えにくいのだが、とにかくぬるぬるよく動くし、激しいダンスでもまったく破綻しない。VTuberのライブでありがちな見た目の「引っかかる」部分がまったくなく、それを12人(今回は11人だが)という物量で攻められるととにかく圧倒される。

歌が始まる前には暗闇の中、ステージ袖から演者が歩いてきたり、歌い終わった後に肩で息をしていたりと、細部の生々しさも美しい(今回のサンタの衣装も可愛かった)。おそらくVTuberの文脈をまったく知らない人でも「本当にいる」すごさが伝わるレベルで、ファンも安心して彼女たちを全力で応援できるわけだ。

舞台演出も彼女たちを引き立てるやり方だ。VTuberのライブというとスクリーン1枚へのプロジェクター投影やLEDが多いが、DMM VR THEATERの装置はペッパーズゴースト──斜めに貼った透明スクリーンに床から投影し、背景はさらに後ろのスクリーンに映し出される仕組みだ。1枚のスクリーンに映すより、そもそもが演者が本当にステージに立っているように見える状態にある。

そこに背景の映像を最低限にし、様々な方向からライトを当ててくれて彼女たちを美しく輝かせてくれる演出が加わる。左右のサービス映像でも頻繁に演者の顔を映してくれるので、後ろの席でも彼女たちの顔を大きく見られる。ファンが何を見に来たかをきちんとおさえた手法だ。

ジェムカンメンバー自身の努力、3Dやモーションキャプチャーといった高い技術力、魅力を最大限に引き出す投影装置、以上を実現する資本力──。どれが欠けてもダメで、すべての「掛け算」が最高の舞台を生み出している。VTuberのライブに関わる人なら間違いなく一度は見てほしいクオリティーだ。

 
そこにメンバーとファンがつくり上げてきたストーリーが重なるのがとてもアツい。

今回、現場で取材して感じたのは、前回のMagic Boxと比べてファンの練度がめちゃくちゃ上がって、とにかくコールの完璧さと一体感がヤバかったということだ。

Magic Boxの取材が初回で今回のMagic Socksが最終公演という差もあったのか、演者がステージに現れたときに「推し」の名前を叫んだり、煽られれば即座に「ヘイヘイ!」などと返すのは当たり前。

一番感じたのは12人が出る全体曲の「JAM GEM JUMP!!!」で、「Yeah Yeah Yeah Wow Wow Wow」の合いの手で全力で叫んでいたり、ソロで歌う場面で「なーにぬ!なーにぬ!」「ぽーんねぇ!ぽーんねぇ!」と名前でコールしたりと、「これ完全に精鋭のアイドル現場だ」という熱量だった。開演前には、おそらく初めて会う人同士が気軽に会話していたり、サイリウムを配っていたりと、ファンの距離感の近さも感じた。

そして今回の「JAM GEM JUMP!!!」で一番心を打ったのが、12人が自分のセリフを読み上げるシーンだ。最初にうたちゃんの「はい!そいそい女子高生」というセリフが来るのだが、彼女不在の代わりにメンバー11人が「はい!そいそい女子高生」と口にしたり、アンコールの2度目の「JAM GEM JUMP!!!」ではファンまで「はい!そいそい女子高生!」と叫んで、彼女の不在を全員でカバーしていた。

アンコール明けのトークも心に響いた。

 
雫さん 今回のライブの前に配信したときにうーたまは心の中にいるっていったじゃん。ポン姉もね、今回の「オンリー・マイ・フレンド」は3人で一緒に歌っているという気持ちで歌いました。みんなに届いてたら嬉しいな。

客席 と”””と”””いたよー!

ひなさん ほんとはさ、最初はどうなるかわからなかったし、すごく不安だったから、一人でやるのかなとも思ったし、どうなるのかなと思ったけど、ポン姉が一緒に練習してくれるっていってすごく嬉しかった。

 
今回は「ひなポン」ではなく、「ひなポンうた」だったのだ。これをみんなの愛と言わずして、何というか。

そんな様々なドラマがあった上に、アンコールのラストで各メンバーが歌詞を自由に崩して歌い、解き放たれたように振り関係なく楽しく踊る「JAM GEM JUMP!!!」を見て、その場にいる全員で一緒に歌うと最高に感動できるのだ。

なんとなくじゃなくて、これでなくちゃダメな、スペシャルな宝物──。

VTuberといえば、2017年末頃にYouTubeやTwitterで注目を集めたネット文化だ。一方で今回のジェムカンや、まりなす(仮)、えのぐなどは、同じバーチャルなところにカテゴライズされがちだが、リアルライブでもVRライブでも「現場」のほうが圧倒的にその価値がわかるアイドル文化の延長といえる。

このバーチャルアイドルの潮流は2020年、VTuberとは別にアイドルファンを巻き込んで独自進化を遂げていくかもしれない。

 
●セットリスト
M1.サンタさん(ももいろクローバーカバー)
M2.メッセージ
M3.JAM GEM JUMP!!!
M4.ノルマンディ
M5.鮮紅の花
M6.DESIGNED LOVE
M7.形而境界のモノローグ
M8.しゃかりきマイライフ!
M9.オンリー・マイ・フレンド

*アンコール
M10.Snow halation(「ラブライブ」カバー)
M11.JAM JEM JUMP!!!

 
●サンタさん(ももいろクローバーカバー)

 
●メッセージ

 
●JAM GEM JUMP!!!

 
●ノルマンディ

 
●鮮紅の花

 
●DESIGNED LOVE

 
●形而境界のモノローグ

 
●しゃかりきマイライフ!

 
●オンリー・マイ・フレンド

 
●アンコール:Snow halation(「ラブライブ」カバー)、JAM JEM JUMP!!!

 
(TEXT &Photos by Minoru Hirota

 
 
●関連リンク
GEMS COMPANY(公式サイト)
GEMS COMPANY(Twitter)