BOOGEY VOXXとHACHIのツーマンライブレポート 異色の組み合わせが生み出す心地よい化学反応

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12月12日、ボーカルでキョンシーのCiさんと、ラッパーでフランケンのFraさんによる2人組バーチャルアンデッドユニット「BOOGEY VOXX」と、ライブユニオン所属のVシンガー・HACHIさんがオンラインのツーマンライブ「『DøminatoR B×H』- BOOGEY VOXX × HACHI TWO-MAN LIVE -」を開催。ライブストリーミングサービス「Z-aN」で配信された(アーカイブ視聴チケットは、2021年12月19日18:00まで販売。2021年12月19日23:59まで視聴可能)。

魂を鼓舞する熱いパフォーマンスに加え、テンポ感抜群の掛け合いが楽しいMCでも人気のBOOGEY VOXX。バラードを中心に心に優しく沁み入る美しい歌声が高く評価されている正統派VシンガーのHACHIさん。

2021年に大きな注目を集めた実力派バーチャルアーティストという点以外、あまり共通点がなさそうにも思える二組は、初のツーマンライブで、どのようなステージを作りあげたのか。「DøminatoR」(支配者)というライブタイトルに相応しい存在感を放った3人による全16曲のオンラインライブをレポートする。

BOOGEY VOXXとHACHIによるコラボ曲で開幕

オープニング映像からカメラがステージに切り替わると、そこにはすでに3人の姿があった。長身のFraさんがセンターに立ち、左右に小柄なCiさんとHACHIさんという並びは、まるで3人組ユニットのようにサマになっている。1曲目は、このツーマンライブに先駆けて先行配信されたBOOGEY VOXXとHACHIさんのコラボEP「DøminatoR B×H」に収録された新曲「DOMINATOR」

Fraさんがパワフルなラップで開幕から視聴者の気持ちをつかみ、CiさんとHACHIさんは調和したユニゾンを響かせる。綺麗に音を重ねながら、個々の歌声の魅力も伝わってくるのは、歌唱力の高さの証明だろう。二人が交互にソロを取るサビも圧巻。このツーマンライブが、どれだけの熱量とクオリティーを持つステージになるのかを予告するような1曲目のパフォーマンスだった。

最初のMCからテンションが最高潮のCiさんとHACHIさん。トークの名手でもあるFraさんが「ここのMC 、『Fraさんが回して下さい』って言われてたけど、自信ねえ(笑)」と嘆くほどのはしゃぎっぷりだ。突然、始まったスクショタイムでも、和気あいあいとした雰囲気の3人。2020年11月に初めてのコラボ動画「Gimme×Gimme – 八王子P × Giga [cover] feat. HACHI / BOOGEY VOXX」を公開した二組は、今回のツーマンライブまでの約1年間でより関係性を深めてきたのだろう。

Fraさんが「この『DøminatoR B×H』は、BOOGEY VOXXとHACHIがお見せする音楽VTuber、2021年最強決定戦として行っております」と強い自信と覚悟の込もったメッセージを語っている横でも、なぜか決めポーズをしてふざけている女性陣。MCからも緩急の変化の激しいライブになりそうな予感が伝わってきた。

HACHIの新プロジェクトも発表!

MC明けは、HACHIさんのソロパート。「涙することは疎か、息も出来ない。」「20」と、2021年にデジタルリリースしたシングル曲を続けて披露。澄み切った高音や伸びやかなロングトーンからはボーカリストとしての才能やスキルの高さと一緒に、HACHIさんの思いも熱を持ち伝わってくるようだった。2020年9月に開催された「Life Like a Live!」(エルスリー)で初めてHACHIさんの歌声を聴いたとき、特に驚いたのは歌声の綺麗さ。しかし、久々に観るステージでのHACHIさんのパフォーマンスからは、「感情系Vシンガー」と呼ばれ、さらに大きな注目を集めている理由も実感できた。

4曲目では、BOOGEY VOXXが再登場。 BOOGEY VOXXの「Pray a LOVE」を3人で披露すると、配信のコメント欄は視聴者からの「LOVE」の文字で埋まっていく。コラボ曲として作られた「DOMINATOR」で感じた3人の相性の良さは、BOOGEY VOXX楽曲のカバーでも再確認できた。

5曲目からは再びHACHIさんのソロコーナー。ライブ初披露の「もし世界が終わるなら、僕らは選択する」と、今年8月にリリースした最新シングル「八月の蛍」を続けて熱唱した。バーチャル空間に作られた特設ステージのさまざまなオブジェクトや照明。スクリーン以外の空間でもタイポグラフィを自在に使ったオンラインライブならではの演出。広大なライブ空間や八角形の全方位ステージを生かした自由自在なカメラワーク。HACHIさんのパフォーマンスを支えるすべての要素も、主役に負けない高いクオリティーを発揮している。

MCでは、「八月の蛍」などを手掛けたクリエイター海野水玉さんとの新プロジェクトが2022年に始動することも発表。ソロコーナーの最後は、1stシングル「光の向こうへ」で美しく締めくくった。

BOOGEY VOXXの熱でステージ機材も熱暴走?

「光の向こうへ」の余韻に静かに浸っていると、ステージに明かりが点る。HACHIさんが「この曲もコラボしていきたいと思います。カモーン! BOOGEY VOXX!」と呼び込むと、決めポーズをしたCiさんとFraさんが登場。HACHIさんがボーカルとして参加した [ahi:]の「アイソレイション (feat. HACHI & DJ WILDPARTY)」を3人で披露した。しかも、このライブのためにFraさんが書き下ろしでラップパートを加えたスペシャルコラボバージョンだ。開幕から、このツーマンライブでしか観られない特別なステージが次々と生まれていく。

「アイソレーション」スペシャルコラボバージョン制作時のエピソードを3人で仲良く語った後、HACHIさんが退場。BOOGEY VOXXの二人は、改めてお馴染みの自己紹介をするが、すでにハイテンション。謎のアメリカンジョークのオチだけを見せるという即興ネタも繰り出して、コメント欄を歌とラップ以外でも沸かせていく。

本人たちも大笑いだったMCが終わると、空気は一変、BOOGEY VOXXのステージは、代表曲「GOLDEN BATS」で開幕した。MCで見せた笑顔からはイメージできないほどに強く熱いFraさんのラップ。コラボ曲での力強いながらも透明感のある歌声とは異なり、パワフルさを前面に出したCiさんのボーカル。二人が熱のこもったパフォーマンスを見せる中、ステージ上に浮かんでいたキューブ状のスピーカーやスクリーンが突然、ブルースクリーンになり「お待ちください」の文字が浮かぶ。機材の熱暴走を模した描写で、バーチャル空間の熱を視覚化するというユニークな演出だ。

続けて披露したのは、1stアルバムの表題曲「Bang!!」。Ciさんの歌声のキュートさを前面に押し出した曲で、Fraさんのラップも含めて楽しく盛り上がり、ステージ演出も色鮮やかでにぎやかだ。

BOOGEY VOXXとHACHIでバラードも披露

楽曲と同じく、温度感の変化が激しいMCの後は、HACHIさんが登場してのコラボパート。HACHIさんの切ないバラード「Rainy proof」を3人でカバーした。Fraさんは静かに語りかけるようなラップを披露し、Ciさんの歌声もより優しく包容力を感じさせた。HACHIさんが退場した後は、またまたBOOGEY VOXXのターン。コミカルでハイテンションなラブソング「ラブリースタンプデリバリー」と、メッセージ性の強い歌詞も印象的な「0’s」を続けて披露した。

MCでは、「0’s」をライブで歌うのは2度目であることを紹介。2021年6月の3Dモデルお披露目ワンマンライブ「#デッドマーチ02 ~BOOGEY VOXX 3D Release LIVE~」のために作った曲を、なぜこのステージで披露したのかを語った。企業所属のHACHIさんと、個人勢のBOOGEY VOXXという組み合わせで成立しているこのツーマンライブ。どちらかがゲストとして招かれているわけではなく対等な関係であるため、二組がどちらも主催者で、BOOGEY VOXXにとっては大事な年内最後の自主公演だからこそ、ファンへの思いのこもった曲「0’s」を披露したそうだ。

また、開設から1年半でYouTubeチャンネル登録者が10万人を突破するなど、今年、大躍進したHACHIさんに対する正直な思いも吐露。Ciさんは「たや」(HACHIさんの愛称)がちゃんと評価されているこの音楽シーンは素敵な場所」と語り、Fraさんも「HACHIが評価されない世界の方がおかしいと思う。歌上手いし、やばいから」と、ライブのパートナーを大絶賛。さらに、「それと同じようなことをHACHIも俺たちに思ってくれていることが、このライブのすべてだと思う」と語った。ライブの開催を知ったときには、異色の組み合わせと感じたが、深く理解し合い、リスペクトし合った二組のツーマンライブだったのだ。

笑いを交えながらも深く真剣なMCの後は、Fraさんいわく「この2年間、鍛え続けた一番強い刀」のデビュー曲「D.I.Y.」を披露。コメント欄とのコールアンドレスポンスで、この日、最大級の盛り上がりを生み出し、BOOGEY VOXXパートを締めくくった。

3人に歌声が重なるコラボ曲を熱唱

ライブ本編のトリを飾るのは、やはりコラボ曲。FraさんとCiさんの呼びかけに応えてステージに戻ってきたHACHIさんは、「あんなMCされるなんて、聞いてないんですけど~(笑)」と、自分が褒めちぎられたMCについて照れくさそうにかわいく抗議。その後は、CiさんとHACHIさんの仲良しエピソードなども語られた。

初めてのツーマンライブを通して、より絆が深まったであろう二組が歌ったのは、コラボEPに収録されたもう一つの新曲「ハッピーエンド」。タイトルからも想像できる通り、フィナーレを飾るのにピッタリの曲で、サビでは、CiさんとHACHIさんのツインボーカルだけでなく、Fraさんの歌声がも重なるパートがあるのも、クライマックス感を強めていた。3人が手を振りながらステージを去ると、コメント欄はすぐに「アンコール」を求める声で埋まっていく。

3人が戻って来てのアンコールでは、Ciさんを中心に、このライブに向けて作られた新曲、「DOMINATOR」と「ハッピーエンド」に込めた思いなど披露。さらに、HACHIさんがBOOGEY VOXXとの出会いなどを語った後、「今日は学ぶべきところがたくさんあると思い、息切れしながら頑張っちゃいました」とライブを振り返った。Ciさんから「長くなるから」と語りはじめる前に釘を刺されたFraさんは、「今日は、V音楽シーンで現状、『誰が喧嘩強いの?』って言ったら『オレらでしょ』っていうのを証明する日だったと思ってるんで」と力強く語った。

観客やスタッフ、クリエイターへの感謝を語った後の本当に最後の曲は、Fraさんいわく「我々3人をつないでくれた仲人みたいな友達」隣町本舗さんの代表曲「52Hzの鯨」のカバー。空中を巨大な鯨が泳ぐ幻想的なステージで、透明感のあるCiさんとHACHIさんの歌声と、力強く温かいFraさんのラップと歌声が響きわたり、約2時間15分のステージが幕を閉じた。

繰り返し記してきたように、一見、アーティストとして、まったく異なる方向性を目指しているようにも思えていたBOOGEY VOXXとHACHIさん。しかし、和気あいあいとしたMCだけでなく、CiさんとHACHIさんの歌声など、パフォーマンスの面でも相性抜群。お互いに認め合うアーティスト同士だからこそ、刺激を受け合って、より高いパフォーマンスを見せられたところもあったのではないだろうか。

今回のレポートは、二組のアーティストのパフォーマンスを中心に記してきたが、バーチャルライブならではの利点を生かした演出のクオリティーも素晴らしく、時折、完成度の高いMVを観ているような感覚にもなった。BOOGEY VOXXとHACHIさんのファンは、すでに視聴済みと思われるが、二組のファン以外の音楽好きにも、ぜひアーカイブ視聴を勧めたいライブだ。

(TEXT by Daisuke Marumoto

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