VTuber×地域振興の可能性をイベントで実感! 鹿児島「りなブイ☆​VTuber展 in かのや」レポート

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1月9日、鹿児島県鹿屋市にある複合交流施設「リナシティかのや」にて、VTuberが多数出演する「りなブイ☆​VTuber展 in かのや」が開催された。

1月8〜9日まで同市で実施していたポップカルチャーイベント「RENACUL! VOL.6」(りなかる)内の併催で、2019年1月の「りなかる!×りなネオ!」にバーチャルアーティストの鴨見カモミさんがゲスト出演したところからさらに一歩進んで、初めてVTuberをメインにしたのが新しい。

今回の出演者は、舞鶴よかとさん、花雲くゆりさん、東雲めぐさん、結目ユイさん、華月エアリさんの5名。それぞれの個性やスキルを活かしたコーナーを各所に展開し、多くの来場者を魅了していた。

筆者自身、イベント業界に少し携わっている人間なので、仕掛ける側からの見解も交えつつ、現地の様子をレポートしていこう。


1on1トークや謎解き、占いなどバリエーション豊富な企画

りなブイが行われた鹿屋市は、桜島がある鹿児島湾の南東部、大隅半島の中央に位置する。人口は約10万で、県内では鹿児島市、霧島市に次ぐ第3位だ。

りなかるは、コスプレ、痛車、アニソン、声優などをカバーする2013年にスタートしたイベント。今年は、angelaさんやReoNaさんなども出演するアニソンライブ「りなメロ♪」が1月8日、りなかるが1月9日という時期を合わせて「りなかる!+」という総称で開催した。

1月9日は、鹿児島でも1月3日頃から増えてきた新型コロナの新規感染者数がちょうど100人を突破した日で、リアルイベントにとって若干逆風な状況だったが、それでも地元の若者に加えて、全国から集まったと思われるVTuberのファンたちがのべ数百人参加。ステージやトークコーナーなどで、出演したVTuberたちと楽しそうに交流していた。

 
●おしゃべりエリア

結目ユイさん、東雲めぐさん、花雲くゆりさん、舞鶴よかとさんが時間毎に交代で担当していたエリア。

初めてVTuberとお話しする来場者の方が多かったように見受けられたが、そこは彼女たちが上手く話を盛り上げて、初体験でもかなり楽しんでいたようだった。

中には記念撮影をする人も。筆者はキャラクターショーの記念撮影を現場を経験したことがあるが、モニター越しのキャラクターでも同じことが成立するのだなと個人的な感想を持った。

舞鶴よかとさんについては、さすが九州福岡のご当地VTuberといったところで、福岡のファンがわざわざこのイベントのために足を運んでくれていたようだ。

 
●占い師VTuber「華月エアリ」の運勢占い

占いコーナーというと通常、女性が多いのだが、さすが女性VTuberといったところ、男性の行列ができていたのが印象的だった。

モニターは大きく、周囲に「ここで何をしているか?」のアピールがしっかりできているにも関わらず、音声はエアリさんとお客様にしか聞こえない様になっていて、この塩梅がリアルイベントとして上手いと感じる。

既存のイベント内における占いコーナーは、お客様に配慮してどうしても個室を用意しがちだが、モニター越しでのサービス提供が基本のVTuberでは、周囲にアピールしつつプライベート性も確保できるという体験が実現可能だ。これは他の占いコーナーを用意するイベントでも、その中に1人占い師のVTuberを入れられるとより通りがかりの人に興味を持ってもらえるのではと可能性を感じた。

 
●謎解きゲーム体験

花雲くゆりさん渾身の謎解きゲームで、会場内を周遊してみようという企画。私はあまり謎解きイベントには参加しない質だが、「このアイテムをここでこう使わせるのか!?」といった非常に凝った問題と仕掛けを用意していた(ネタばれになるので詳しい内容は避ける)。

各自治体は、観光や地域振興のために頭をひねって多くの周遊イベントを実施しており、スタンプラリー的なイベントはお手軽に長期間展開できることもあって、主催者側から人気だ。その中でも謎解きを取り入れたスタンプラリー形式は、参加者からも人気が高く、専門の業者が請け負ってやっているところもあるくらいだ。

そうした周遊型の謎解きイベントは、紙での展開が基本で、なんとかウェブページにつなげて終わるというのが多いが、今回のようにVTuberのパフォーマンスと組み合わせることで、今まで難しかったデジタルベースでの効果的な情報発信が可能になってくるのでは、とこちらも可能性を感じられた。

 
●トークイベント

メインMCを舞鶴よかとさんが担当し、時間ごとに花雲くゆりさん、東雲めぐさん、結目ユイさん、華月エアリさんを交代でゲストに迎えたトークイベント。

途中、鹿児島ご当地VTuberの桜馬トウカさんや、鹿屋市PR特命係長のかのやカンパチロウさんがゲストに入りながら、出演者・観客が一体となって楽しくステージが進められていった。最前列は、早い時間からファンと思われる方々で占められていたほどの熱気だ。

個人的に注目したのは、VRお絵かきコーナーで描かれたイラストを手にパフォーマンスを繰り広げていた東雲めぐさん。彼女のファンであれば見慣れた光景かもしれないが、初見の人にとって、来場客が描いたイラストをVRの世界に取り込んで1枚絵として扱ったり、リアルタイムで拡大縮小や透過しながらトークを進めていく光景はなかなかにインパクトがあった。ディスプレーが見慣れたPCサイズではなく、舞台の大きなスクリーンというのも、視覚的効果を上げていたのかもしれない。

 
●VTuberになってみよう

実際に使われている機材を用いて、VTuberを体験するコーナー。単に機材の体験会で終わるのではなく、生配信してコメントとの掛け合いでパフォーマンスするという質の高い体験になっていた。

コーナーの担当者によれば、初めてVTuberに触れる方々がいる中、皆さん前のめりで体験していたとのこと。中には、使用機材をスマホで撮って帰る方もいたそうだ。

 
●鹿児島ご当地VTuber紹介

7組参加した鹿児島県ご当地VTuberをPR動画付きで紹介していた。


「誰もが表現者に」の最先端がVTuber

イベント終了後、りなかるを総合プロディースしている「コマツP」こと 株式会社まちづくり鹿屋 市民交流センター課の課長、小松嘉永さんに短めだがお話をうかがえた。

 
──今回VTuberの企画を用意した切っ掛けは?

コマツP 2019年に開催した前回の「りなかる」のときにもVTuberイベントを実施して、バーチャルアーティストの鴨見カモミ先生に来ていただきました。

元々、「りなかる」は「誰もが表現者に」をコンセプトに掲げていて、そのテーマに今最適なのはやっぱりYouTuberやVTuberではないかと感じています。膨大に人集めをしようと思ったら別ですが、個人でも視聴者数や再生数にこだわらず誰でも色々なことを発信できる時代です。さらにVTuberなら容姿や年齢まで関係なく、「誰もが表現者に」なれるわけで、そういった意味でご出演いただいたのがカモミ先生だったのです。

その流れで、今回はもう少し大々的にこの世界を知ってもらいたいという思いと、あとは好きな人たちに楽しんでもらいたいなっていう意図で企画したところです。

 
──手ごたえはいかがでしたか?

コマツP コロナ禍で、ちょうど2、3日前から急に鹿児島でも感染拡大が進んでいたので、正直集客的には厳しいかなと思っていたのですが、思いの外、終始盛況でした。

こうしたVTuberの地方イベントは、全国的にもかなり珍しいと思いますが、鹿屋という土地でも成立するのだなと。むしろこんなに楽しんでくださる方が鹿児島にも、あるいは県外からも来ていただいて、本当に大成功だったんじゃないかと考えています。

 
──今後、リナシティでのVTuber活用はありますか?

コマツP 施設自体でというのは考えていませんが、今回、紹介させていただいた鹿児島のご当地VTuberの方々をサポートする側に回れたらなとは考えています。


(TEXT by さつま忍者研究会所属、リアル忍者系VTubver「ストライダー」

 
 
●関連リンク
りなかる(公式サイト)
りなかる!+(公式Twitter)