2月4日、個人勢VTuberのエピトさんは活動3周年を迎えたことを記念し、音楽活動で使用している水木瑛斗名義で音楽ライブ「Eito Mizuki LIVE TOUR 2022 Love Delivery Man」通称「ラブデリコン」をVRChat上で開催した。本記事では、2021年9月に個人勢VTuberとして新たな一歩を踏み出したエピトさんに同ライブのレポートと併せて、ライブに先駆けて行ったインタビューをお届けする。
ラブデリコン・ライブレポート
現地会場に当選したのは約10人という少数のファン。ファン同士で和気あいあいと雑談をしているとオープニングのムービーがスクリーンに映り、会場は一気にライブのムードに。ファンたちが「かっこいい~」「すご~い」と歓声を上げる中、エピトさんにとって最初のオリジナル曲「ChuChuChuで撃ち抜いて」のイントロが流れてきた。
スモークとともにスクリーンが開くと中央からライブ衣装のエピトさんが登場し、雰囲気は一転。足元にペンライト風のカラフルなライトが付くと場内は一気に華やかになる。昔ながらのアイドルソングを思わせる曲調と「ChuChuChuで撃ち抜いて」と繰り返されるキャッチ―な歌詞は、ファンにも人気の高い曲だ。
MCを挟んでエピトさんと一緒に登場したのは、VRChat漫画でおなじみのリーチャ隊長と結成したユニット「RepeaT」。
しっとりとした歌謡曲テイストのデュエット曲「仮想世界(バーチャル)から君へ」を披露。バーチャル世界の住民ならではの切ない感情をエモーショナルにつづった歌詞を美声で歌い上げるという、二人の個性が昇華された楽曲だった。楽曲はVRChatやclusterなどのバーチャルイベントでさまざまな活動を行っているMiliaさん提供によるもの。
MCパートではリーチャ隊長らしい軽妙なトークが楽しめた。 ユニットとして初めてライブをしたにもかかわらず「本日をもって解散します」と告げるやいなや、次のライブ告知としてclusterで開催されているバーチャル雪まつり2月12日の雪解けフィナーレライブにて再結成すると発表。「RepeaT(リピート)」というユニット名らしく、解散と再結成を繰り返しながら活動していくようだ。
続いて修二と彰の「青春アミーゴ」のイントロが流れると、九条茘枝さんが登場する。リーチャ隊長とのユニットRepeaTに引き続き、二人は「LyhiTo」というユニットを昨年2021年11月に結成。エピトさんの高音ボイスと九条茘枝さんの低音ボイスの相性が抜群の二人だ。
お互いがジャニーズファンということもあり、トロッコに乗って歌う演出は念願だったとのこと。客席エリアの頭上をトロッコが移動しているので実際に手を振ると振り返してくれるという絶妙な距離感は、バーチャルライブイベントの理想を追求したものかもしれない。
また、版権曲であるため後日公開される本ライブの映像からLyhiToのパートはカットしたうえで、後日歌ってみた動画として改めてアップするとのことなので、楽しみにしたい。
続いて登場したのは同じはぴのひのメンバーである鈴山八広さんと天護ねもさんのお二人。東雲めぐさんは現在、学業専念につき活動をお休みしているため欠席となったが、ビデオメッセージでの参加となった。
スクリーンに映されたビデオメッセージでは、ライブ開催にあたるエールと、エピトさんのファンへのメッセージを送った。自身のファンが本ライブにスタッフとして関わっていることを知り、ファンに詰め寄る場面も。
3人で歌うのは、東雲めぐさん独立後初のオリジナル曲ではぴのひメンバー全員が参加している「虹」。元の曲では東雲めぐさんのボーカルから始まるが、今回はエピトさんが歌い上げる特別バージョンを披露。東雲めぐさんやはぴのひの未来を描くような歌詞が、そのままエピトさんの今後を祝福するようなものにも捉えられる素敵なものになっていた。
そのままMCを挟まずにエピトさんは新しいオリジナル曲「キセキ」を歌い始める。ライブ前半はどこか懐かしさが漂う曲が続いただけに、シティポップな曲調が新鮮さを感じさせた。3周年のタイミングでの発表となるだけに、作曲者が書いた歌詞も希望あふれるものになっているのが印象的だ。
(こちらの楽曲は2月14日にMVを公開予定とのこと)
歌が終わった後のMCでは「3年間やってきてマジでよかった」と語り始めると、こらえきれずに涙ぐむ場面も。
「これは僕の力じゃなくて、今まで支えてきてくれたファンのみんなと、まわりにいてくれているお友達みんなのおかげだと思っています」と涙ながらに語る様子に思わず感動してしまった。
最後となる6曲目はGugenka時代の支配人の衣装に着替え、オリジナル曲「鶸(ひわ)色の月」を歌う。こちらも「キセキ」と同じ作曲者によるものだ。舞台の後ろに月が現れて雨が降りだす様子が静かな曲調と相まって、美しい演出となっていた。
アンコールではライブTシャツを着て登場。このあたりの演出もアイドルのライブらしさを感じさせる。
キセキに続きさらに新曲となる「きみでよかった」を歌う。
あっという間にライブの時間が終わってしまったが、これだけのライブイベントを個人勢が周りの力を借りて実現しているというのは本当にすごいことだ。
ファンとともに成長を続けるエピトさん
エピトさんのライブは演出の素晴しさもさることながら、ライブに参加したファンのアバター改変の熱量の高さが印象的だった。Gugenka所属時からエピトさんは事あるごとにファンがモデリングやアバター改変を挑戦できる機会を重ねてきたが、それだけに3周年を迎えた本ライブでは衣装を着こなし、ライブグッズも改変して臨む姿が見られた。
惜しくもライブに参加できなかったファンたちも含め、終演後に会場でハイタッチ会も行われた。エピトさんに直接感想を伝えられたり、ツーショットでの撮影も。また、会場に行けたファンも自作の推しうちわを直接見せられたり、ファン同士での交流があったりと、温かい空間となっていた。
VRChatでワールドを移動して直接会場に入るのではなく、その前にエントランスでライブ前の雰囲気を味わえたり、ライブ後に余韻に浸れるようになっている。実際にBOOTHで販売しているグッズ(2月28日まで販売中)を間近で見られる物販ブースもあるなど、余白のある作り込みが良かった。
また、ライブに際してはぴのひメンバーや日頃関わっている仲間からのメッセージが壁に飾られているところに温かさを感じた。
ライブ事前インタビュー:写交部コミュニティーとの関係
ここからは事前に行ったインタビューを紹介する。
インタビューにはエピトさんのほか、制作スタッフ代表としてかなたさん、薄荷さん、Hidekiさん、そしてGugenka時代からエピトさんの仲間でもあるトオン君が参加してくれた。
── ライブはいつ頃から企画されていたのでしょうか?
エピト 実は発案自体は昨年11月でした。11月の末くらいに来年の2月に音楽ライブをやりたいと言ったら「急すぎる」と怒られました(笑)。 かなたさんや、VRChatのイベント運営に詳しい人に声をかけて、それから「写交部」の人たちに声をかけたんです。
── 写交部についてお聞きしてもいいですか?
エピト 写交部は2020年3月に始めたコミュニティーで、写真をきっかけにVRChatに親しくなろうという趣旨で始めました。最初はデスクトップ勢だったような人もモデリングが上達したりして、3年経ったらライブイベントを作れるくらいになっていました。 写交部のメンバーにはモデリングやデザインを含めて、映像制作などもできる人がいるので、彼らに支えてもらっています。
── 実際の制作はどのように進めたのでしょうか?
エピト ライブまでの期間が短かったので、担当を分けて制作しました。制作進行を担当してくれるメンバーもいるので、僕は本当に「これやりたい」って言うだけでした。 とにかく無理はしないでってたくさん言ってたけど、全力で頑張ってくれてうれしいです。
トオン 思いつきで無茶振りをするし、誰も止めないのは大変だオン。
エピト トオン君とぶつかることもあるんですけど、こういうことを言ってもらえるのがすごくありがたいです。
── エピトさんのライブ制作に携わろうとしたきっかけや、参加して良かったことを教えてください。
薄荷 私は、はぴのひのロゴも制作していたり配信者としても仲良くさせてもらっているから、役に立ちたい気持ちがありました。
Hideki 無茶ぶりをされることで自身のスキルアップにつながっていくことが純粋に楽しいです。
かなた ライブに携わることはwin-winの関係だと考えています。もちろんエピトくんのために何かをしてあげたい気持ちもあるけど、参加することで別の新しいことに挑戦できるかもしれないという期待もあるんです。
エピト 僕のライブに参加することで、みんなも大きくなってくれたらうれしいです。
ファンと共振しながら活動する個人勢VTuberという存在
事前取材させていただいたメンバーはもちろん、ライブ制作に携わったスタッフのほとんどが写交部のメンバーだという。 VRChatを起点とするコミュニティー上での交流によって、スキルが上がっていったユーザーを巻き込んでライブイベントを開催をするというのは、個人勢VTuberの活動としての可能性や今後の在り方を感じさせるものだった。
企業所属のVTuberから個人勢となったことで、かえって解き放たれたような様子すら感じさせるエピトさんの姿はたくましくもあり、今後も面白い活動をしていくのだろうという期待も感じてやまない。
ライブ動画は本日、2月7日より公開となった。生放送で観れなかった方もぜひ見て欲しい。
(TEXT by ササニシキ)