クリエイターマーケット「BOOTH」における、3Dモデルカテゴリの商品取引データをまとめた「BOOTH 3Dモデルカテゴリ取引白書2024」が発表された。昨年に発表されたものに、2023年の取引データも追加した最新版データとなる。
取扱高は31億円に 右肩上がりが続く3Dモデルカテゴリ
「BOOTH」では、「VRChat」向けアバターや対応衣装の3Dモデル、および3Dモデル制作ソフトウェア「VRoid Studio」向けのテクスチャデータが多く販売されている。人気3Dモデルともなれば「いいね!」の数が1万件を超えることもめずらしくないほど、多くの人がチェックする市場のひとつだ。
昨年に発表されたデータでは、2022年の取扱高が24億円、注文件数は148万件、 注文者数は12.9万人という数値が公開。想像以上の規模に驚かされた人は多いだろう。
今年の発表では、新たに2023年分の取引データが追加。これによれば、2023年の取扱高は31億円、注文件数は198万件、注文者数は14.8万人と、いずれも増加している。昨年までほどの成長幅ではないが、右肩上がりが続いていることは明白だ。
また、3Dキャラクターの価格帯と注文件数については、5,000〜6,999円が増加、7000円以上も微増している。こうした傾向を、レポートでは「3Dモデルカテゴリのファンは、価格よりも、商品の魅力や商品を通じて得られる体験の価値を重視する傾向が高まっていそうです。」と考察している。
ユーザー1人あたりの年間支出額は昨年と同様に、支出額が増えるごとに該当ユーザー数が減少するわけでなく、高額支出をするユーザーはどの価格帯にも一定以上存在する、という傾向が見られる。そして、2022年と比べるとより高額帯のユーザーが増加しているのが特徴だ。
総じて、3Dモデルを購入する人数も、支出額も増えている、というユーザー動向が見えてくるだろう。とりわけ「VRChat」を中心に、市販アバターを購入し、さらに衣服や髪型などをカスタマイズして楽しむ「アバター改変」という文化が盛り上がりを見せており、その熱量が数値となって現れていると言えるだろう。
公式サイドもプッシュする3Dモデルカテゴリの熱量
こうしたユーザーの動きに対し、「BOOTH」や運営のpixiv側も盛り上げる方針で動き始めている。3Dモデルクリエイターの創作活動を支援する3Dビジネス室は、2023年には「スキリスト」や「オーナーギフト機能」の追加、「VRChat」公式ワールド「BOOTH Cafe」の公開、「VRoid Studio」へのフルスクラッチアバター向け3D衣装着用機能の試験実装、メディア掲載など、様々な取り組みを展開している。
特に、商品を誰かにプレゼントできる「ギフト機能」は、3Dモデル愛用者の間でも活発に利用されている。レポート内ではギフト機能の活用状況を示すグラフも公開。リリースから1年経った2023年12月には、「スキリスト」の公開やキャンペーン公開によってか、ギフトでの注文割合が10.1%にも達している。「3Dモデルカテゴリの注文の1割がギフト目的」と考えれば、文化としての定着も十分に考えられるだろう。
レポートでは、2023年は「3D衣装・装飾品」カテゴリ、すなわちアバター向けの衣服やアクセサリー類の伸びが顕著だったことも報告された。アバター改変に関するアンケートでも、「特定のアバター対応衣装以外も着用したい」という意見が最も多かったらしく、 「VRoid Studio」のフルスクラッチアバター向け3D衣装着用機能も、そうした傾向を受けて開発されたことが明かされている。
現状では、アバター改変には「Unity」や「blender」などで多少複雑な作業が必要となることも多い。それゆえ、ハードルの高さを感じて手を出せない人も少なくない。プラットフォームだけでなく、ツールの面でも3Dモデル文化を推進しようとする、「BOOTH」およびpixivの今後の展開に期待したいところだ。
(TEXT by 浅田カズラ)