「SANRIO Virtual Festival 2024 in Sanrio Puroland」の興奮も醒めやらぬ中、VRChatに新たなフェスがやってくる。3月30日(土)から4週連続で、毎週土曜日に開催されるメタバース音楽フェス「META=KNOT 2024 in AKASAKA BLITZ」だ(ニュース記事)。
出演アーティストは著名なVTuberだけでなく、VRChatで活躍する新鋭アーティストなども幅広く参戦。主催は大手テレビ局・TBS、制作にはVRChat制作実績も豊富な映像・CG制作会社のイアリンジャパンが参加と、様々な面で類を見ないイベントとなっている。
3月30日の第1回公演が迫る中、これに先駆けて、メディア関係者向けの体験会が開催された。本記事では、体験会の様子を中心に、多くの人が注目する本イベントの全容を先駆けてお届けする。
”思い出”を集めて作り出された「伝説のライブハウス」
「META=KNOT 2024 in AKASAKA BLITZ」の会場となるのは、ライブハウス「赤坂BLITZ」を再現したワールドだ(CG空間)。2020年に惜しまれつつも閉館した、「ライブの聖地」と呼ばれた伝説的なライブハウスだった。本イベントでは、再現された「赤坂BLITZ」の屋外にある野外ステージと、屋内ステージにてライブが実施される。
制作を手掛けたのはイアリンジャパンと、クリエイティブチーム「MIGIRI」ディレクターのTakaomiさん。昨年10月に開催され、VRChatの制約を超える「同一会場内参加者400人」というチャレンジを成し遂げた「CIEL LIVE SHOWCASE at VRChat」を手掛けた面々だ。
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Takaomiさんによれば、本ワールドは「赤坂BLITZ」の在りし日の姿を再現しつつも、「単なるデジタルツイン」は食傷気味として避け、多くの人の内にある「”赤坂BLITZの思い出”を集約してつくられた世界」をコンセプトに制作。それを示すように、ワイヤーフレームやノイズのようなものが見える空間となっている。
その上で、野外ステージも屋内ステージも、非常にスタンダードな「ライブステージ」に仕上がっている。屋内は収容人数などを考慮して、元の「赤坂BLITZ」よりもコンパクトに調整しているとのことだが、リアルな機材や構造物が見えるステージは、ライブの現場が好きな人によく刺さるだろう。
実力派アーティストが「赤坂の野外ステージ」に立つ
ここからは体験会のキモである、アーティストライブのリハーサルを観覧した。今回は、Week1〜4に出演するアーティストから、各日それぞれ1人ずつが登場した。
Week1〜3にかけては、野外ステージにてスタンダードな音楽ライブが開催される。過剰なエフェクトはなく、現実さながらのライティングが盛り上げる。シンプルさゆえに、実力あるアーティストのパフォーマンスに集中できるステージ演出だ。
一方で、観客が立つエリアには、楽曲に合わせて明滅するような演出が一部存在する。足元がささやかに輝くことで、会場全体が盛り上がるような印象だ。
そしてなにより、TBSのビルがすぐそばに見えるロケーションビューが、ライブ会場に大きなリアルさをもたらしている。著名なバーチャルアーティストから、VRChat生まれの気鋭のアーティストまで、実力派ぞろいの出演者によるパフォーマンスを”リアルな場”で体験できるのは、なかなかに乙な体験だ。
なお、今回のライブは全てのインスタンスで同時かつ同内容のものが上演される。収容上限の50人で埋まったにぎやかな会場でも、友人だけを集めた落ち着いた会場でも、好きなスタイルで観覧できるのも大きなポイントだ。
ちなみに、ステージ上には「カメラ侵入禁止エリア」が設けられているので、フライングカメラでアーティストの接写は行えない点には注意。また、本イベントは写真撮影は許可されているが、動画撮影は禁止されている点はおぼえておこう(そのほか注意事項などはこちらを参照)。
最終週は「パーティクルライブ」でVRならではの体験
続いて、Week4のリハーサルも観覧した。出演したのは、Week4の大トリを務めるVTuber・名取さなさんだ。
Week1〜3と比較して、非常に華やかな演出であることに気づくだろう。Week4は屋内ステージでの開催だけでなく、いわゆる「パーティクルライブ」と呼ばれる、エフェクトやオブジェクト操作を伴う空間表現が演出として採用されているのが大きな特徴となる。
ステージ上はおろか、観客席にまで大々的にエフェクトが炸裂するステージは、まさにVR空間ならでは。リアリティある音楽ライブだったWeek1〜3に対して、Week4はアーティストの世界観が全面的に押し出される、没入感あるライブが体験できるだろう。
きっかけはキヌのライブ 大手テレビ局がVRChatで音楽ライブを開催するワケ
さて、多くの人が疑問に思うのが「なぜTBSが『VRChat』で音楽ライブを?」という点だろう。メタバースにそれほど縁が深くない大手テレビ局が、『VRChat』上で、著名なVTuberだけでなく、かなりカッティングエッジなアーティストも招いた音楽ライブを開催する――そんな異例づくしの内容に、多くの人が驚いたはずだ。
その理由をTBS 新規IP開発部・木村氏にうかがったところ、その大きなきっかけはバーチャルYouTuber/アーティストのキヌさんにあるという。もともと、TBSでは数年前よりメタバースでの施策を計画しており、その中で『VRChat』とは別のプラットフォームで、チケッティングのある音楽ライブの開催を検討していたとのことだ。
しかし、木村氏はキヌさんのパフォーマンスを目撃した際に大きな衝撃を受け、「これほどの才能を多くの人に届けることがマスメディアとしての使命だろう」と考えたのだそう。そこから方針を転換し、”キヌさんの出演を前提とした”ライブイベントを開催するべく、豊かな表現が実現できるVRChatを会場として選択したとのことだ。Week4がパーティクルライブを表現の軸に採用しているのも、同週にキヌさんが出演するのが最大の理由だ。
また、キヌさんに限らず「新たな才能を発信する場」となるべく、出演者にはVRChat現地で活躍する人もふくむアーティスト選出になった。さらに、土曜日のライブとは別に、毎週日曜日にVRChatコミュニティーとコラボした「サイドイベント」が企画されたのも、こうした流れからだと言う。
そして、新鋭のアーティストが集まるイベントで方向性が固まりつつも、「TBSとしての色も出したい」というオーダーにも応えるべく、TBSが有していたある種のIPとして「赤坂BLITZ」が会場として推挙。こうして、『VRChat』に再現した「赤坂BLITZ」で開催される、前代未聞のメタバース音楽フェスが始動した、とのことだ。
なお、本イベントは完全無償のイベントとして開催される。ユーザーにはうれしいが、当然ながら赤字事業となる。それでも、キヌさんのくだりはもちろん、自身でもTakaomiさんの手引きのもとVRChat現地を歩いたエピソードなど、開催にあたっての想いを語る木村氏の口調からは、静かながら並々ならぬ熱意を筆者は感じた。
もちろん、次回以降の開催は、今回の反響次第だろう。大手テレビ局とバーチャルアーティストが合流する「META=KNOT 2024 in AKASAKA BLITZ」。貴重な機会となるのは確かなので、動画配信はもちろん、VRChat会場に行ける方はぜひ”現地”でその熱気を味わってほしい。
ちなみに、本イベントに合わせてフィジカルグッズとデジタルグッズが発売中だ。デジタルグッズは『VRChat』に対応した規格になっているので、アバター改変に造詣がある方はライブ仕様の装いで会場に足を運んでみるとよいだろう。
●関連リンク
・『META=KNOT 2024 in AKASAKA BLITZ』公式サイト
・『META=KNOT 2024 in AKASAKA BLITZ』公式グッズストア(BOOTH)