8月11、12日に開催された「コミックマーケット104」。記録的な猛暑が続く中でも、2日間で合計26万人が会場の東京ビッグサイトを訪れた。出展企業数は、130社。西展示棟3,4ホール、西展示棟1、2ホールの企業ブースには、VTuber関連企業も数多く出展し、それぞれに特徴的な施策を行っていたので、その一部をレポートする。
「にじさんじ」が2019年冬以来となるコミケ出展
VTuber関連企業のブースの多くが南展示棟にあった中、西展示棟に出展していたのが「ホロライブプロダクション」。通路を挟んだ隣には、大人気ゲーム「ブルーアーカイブ」などで知られる「Yostar」のブースもあったため、企業ブース全体の中でも、特に参加者の密度が高い人気エリアになっていた。会場限定ノベルティの配布やグッズ販売などが行われていたブースで、特に目立っていたのは、5月に始動したメディアミックスプロジェクト「魔法少女ホロウィッチ!」に関する展示。ブースの中央通路側は、一面すべてホロライブのメンバーが参加する魔法少女ストーリーの「魔法少女ホロウィッチ!」関連で、アニメPVの原画やグッズなどが飾られていた。
2019年の冬コミ以来、約4年半ぶりのコミケ出展となった「にじさんじ」は、「“Page of lambda” presented by にじさんじ」として出展。「Page of lambda」は、6月に始動したプロジェクトで、同じ日にデビューしたアンジュ・カトリーナさん、戌亥とこさん、リゼ・ヘルエスタさん、通称「さんばか」の「IF」をファンも一緒に創作しようという企画。公式からは、架空のアニメのオープニング映像や各話のあらすじなどが発表されている。ブースでは、「Page of lambda」とpixivの「COLLABORATION MINIBOOK」が配布され、3人のスタンディや設定資料などを展示。設定資料集やオリジナルグッズなどが先行販売されていた。
「魔法少女ホロウィッチ!」も「Page of lambda」も、所属の人気タレントを題材にした公式主導による二次創作的なプロジェクト。VTuber界のツートップが、コミケという場で最もアピールしていたのが、方向性の重なる二つのプロジェクトだったことは興味深い。自社IPのさらなる活用へのチャレンジは、VTuber界全体で、ますます広がっていくのだろう。
「あおぎり高校」ブースでは、高校の教室を再現
8月31日に新メンバー3名が加入することも発表されて、ますます勢いに乗る「あおぎり高校」は、「夏想幻日(かそうげんじつ)」をテーマに、ブース内に教室を再現。ブースの外から見たり写真を撮ったりするだけでなく、教室の中に入ることもできた。教室内のホワイトボードには、生徒たちの直筆メッセージも書かれていたが、机の一つには、学校だったら先生に怒られるレベルの落書きも。その落書きを書いたのは、まだデビュー前の月赴ゐぶきさん、うる虎がーるさん、八十科むじなさん。きっと、3人の新人も「あおぎり」らしい破天荒な生徒なのだろう。教室の中で一際目立つ美しい黒板アートは、コミケの2日間だけで消えてしまったことが本当にもったいない。
南展示棟3ホールと4ホールの境目には、VTuber関連企業ブースが複数並び存在感を見せていた。多くのVライバーも活躍している「17LIVE」のブースは、異世界のカジノがテーマ。Vライバーとゲームで対戦し、勝利するとオリジナル景品がもらえたり、当たれば豪華賞品をもらえるガラポンで遊べたりと、参加型の施策が行われていた。また、「いちプロ」こと「FIRST STAGE PRODUCTION」のブースでは、人気タレントがバーチャル売り子として接客。「サンリオ」のブースでも、グッズ購入者は、ClaN Entertainmentとの共同VTuberプロジェクト「にゃんたじあ!」のメンバーとのお話会に参加することができ人気を集めていた。
会場で最も快適な「IRIAM」の「全力冷却」ブース
昨年開催された1期生の100人オーディションでも話題を集めた「CORECATIS VIRTUAL PROJECT」のブースでは、メインモニターとサブモニター、射的ゲームが二つと、同時に4人の所属Vライバーが来場者とコミュニケーション。ブースも広く注目を集めていたが、特徴的だったのが、VTuberファンに向けての施策や展示だけではなく、VTuberになりたい人に向けてのメッセージも大きく掲示されていたこと。スタッフに話を聞いたところ、女性の来場者も多いコミケの特徴を意識した企画で、所属ライバーと話してVTuberという存在を身近に感じてもらうだけでなく、手軽に「理想の自分」の実現に挑戦できることをアピールする狙いがあったそうだ。VTuberの配信を観るのが特別なことではなくなって数年、VTuberになることも特別なことではない時代が近付いているのかもしれない。
その他にも「VEE」「Re:Act」「ハコネクト」などのVTuberグループがブースを出展。「ぶいすぽっ!」も「PACIFIC RACING TEAM」とのコラボブースを出展していた。
猛暑の中、汗まみれになって取材した成果であるこのレポートの最後に紹介したいのが、「全力冷却」ブースを出展していたVtuberアプリ「IRIAM」。屋根も壁もあるブースの中には、複数のクーラーや扇風機が並び、ブース外に比べると異空間のような涼しさ。
入口に立つスタッフが「皆さん、お気軽に涼しくなっていってください! 何回入ってもオッケーですし、関係者の方もご遠慮なく」と大きな声で呼びかけていたこともあり、取材中、列が途切れることは無かった。ブースの出口では、ペットボトルの飲料水も配布。「ぬるくてごめんなさい」というメッセージも書かれていたが、筆者が受け取った水は、十分に冷たく感謝の気持ちしかなかった。ブース内には、公式キャラクターの「ミリア」に関する物語とイラストが展示されていたのだが、正直、涼むことに夢中で、あまり内容を覚えてはいない。しかし、「IRIAM」に対する好感度は、爆上がりした。コミケという日本で最も多くのオタクが集まる場でのプロモーションとしては、百点満点の施策だったのではないだろうか。
(取材・文:Daisuke Marumoto)
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