アンケート調査「メタバースでのアイデンティティ」の結果が公開

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スイスの人類学者ミラとVTuber/作家バーチャル美少女ねむによる研究ユニット「Nem x Mila(ねむみら)」は25日、ソーシャルVRユーザーのアイデンティティの在り方を調査した定性レポート「メタバースでのアイデンティティ」を無償公開した(レポート配布ページ日本語/英語)。調査の概要とスーパーバイザーとして調査に協力した産総研(産業技術総合研究所)人間拡張研究センター(HARC)の大山潤爾博士の総評が掲載されている。

「VRChat」や「cluster」といったソーシャルVRをVRゴーグルを装着して使っている人物を対象に、アイデンティティのあり方を分析する目的で実施された。本調査は同ユニットがこれまで実施してきた定量調査である「ソーシャルVRライフスタイル調査」と異なり、自由筆記形式の質問を数多く含む定性調査だ。メタバース関連のメディアやコミュニティが拡散に協力し、1,012件の回答があった。回答者の居住地域は日本・北米・ヨーロッパ・アジア等となっている。

●調査概要
・目的:ソーシャルVRのユーザーのアイデンティティの在り方について定性的な理解を深めること
・対象:VRヘッドマウントディスプレイを用いて、ソーシャルVR (VRChat、Neos VR、cluster、バーチャルキャストなど) を直近1年以内に5回以上使ったユーザー (デスクトップ・スマホからのみの利用者は今回は対象外)
・方法:2024年6月24日~7月12日、 日本語・英語でのGoogleフォームによる公開アンケート
・募集:日本語・英語でプレスリリースを発行。各種メディア・関連コミュニティ経由で拡散
・運営:研究ユニット「Nem x Mila」


●レポート概要

<第1章 ユーザープロファイル2024>
・ソーシャルVRサービス:2021年から引き続き、地域に関わらずVRChatが支配的。2023年に開始されたResoniteが3地域でNo.2になった。
・物理性別: 2021年から引き続き、地域に関わらず男性が多め。北米・ヨーロッパで昨年より”その他”が大きく増加。
・年齢:VRChatでは半数が20代以下。VRChat・北米・ヨーロッパで昨年より”19歳以下”が増えた。

<第2章 アバターデザインの背景にある動機>
・アバターの種類・性別・年齢・物理世界の自分との類似性のそれぞれについて、デザインの背景にはユーザーによって様々な動機が存在する実態が浮かび上がった。
・サービス・地域・物理性別を問わずアバターの「可愛さ」が非常に多く理由として挙げられた。
・単なるファッション・個人的嗜好・所属コミュニティなどがアバターデザインの動機になる場合が多いが、中にはより切実な理由が存在しているケースもあった。 
・アバターの利用により他者とのコミュニケーションが物理世界と大きく変化することや、仮想現実が可能にする自己のアイデンティティ表現の理由からアバターデザインを選んでいるケースもみられた。

<第3章 ソーシャルVR生活による影響>
・行動の変化:ソーシャルVRでの行動について62%が「ある程度変わる」と回答。特にヨーロッパでは79%と高い数値を示した。変化の内容は多種多様だが、活発になる・リラックスできるなど、ポジティブなものが多く見られた。
・良い影響:ソーシャルVRでの生活の影響について、92%が「良い影響」と回答。具体的には、社会の輪が広がったこと・精神衛生・学びなどが挙げられた。
・悪い影響: 「悪い影響」は比率としては少なかったがアジアでは12%と他地域に比べてやや高かった。最悪の場合、のめり込みすぎて心身にダメージを負うケースも見られた。

<第4章 多様なアイデンティティの在り方>
・VRアイデンティティを隠すかどうか:過半数の55%が「隠さない」と回答し、やや優勢であった。
・VRアイデンティティを「隠す」理由としては、他者からの偏見を恐れる声・仮想現実と物理現実を分けておきたい、等が上がった。「隠さない」理由としては、物理現実と仮想現実はつながっているから・メタバースを広めたい、等が上がった。
・人生のメインのアイデンティティ:39%もの回答者が、現在の感覚あるいは将来の希望として、VRアイデンティティをメインのアイデンティティとして生きる意向を示した。
・「VRをメインのアイデンティにしたい」理由としては、なりたい自分・よりよい自己表現を目指す声等が上がった。逆に「したくない」理由としては、アイデンティティを別々に分けておきたい・(物理) 現実世界も大事、等が上がった。

また11月30日22時から、調査を実施した研究ユニット「Nem x Mila」がYouTube Liveでメタバースから調査報告会を実施する。視聴者からの質問もリアルタイムで受け付けている。

●大山潤爾博士

産業技術総合研究所 人間拡張研究センター(HARC) / 筑波大学大学院 認知インタラクションデザイン学研究室
researchmap
研究室公式サイト

●公式サポーター(英語圏)
IMMERSIVE WIRE:メタバースや空間コンピューティングに関する情報を発信する英国を拠点とする Web メディア
AXON PARK:デジタル学習のためのメタバース空間のバーチャルキャンパス
GLITCHES.VR:アーティスト、科学者、VRファンによるコミュニティから生まれたVR集団
VR CLUB AT UIUC:米国の名門州立大学・イリノイ大学(UIUC)を中心とした大学生によるVRコミュニティ
VIVERSE:VRヘッドマウントディスプレイ「VIVE」シリーズを開発するHTCが提供するメタバースプラットフォーム

●公式サポーター(日本語圏)
株式会社HIKKY:メタバース上で世界最大のVRイベント「バーチャルマーケット(Vket)」を企画・運営
PANORA:「日本にVRを広める」をミッションとする日本初のVR専門ニュースメディア
メタカル最前線:ソーシャルメタバースの”いま”と”可能性”を“メタバース住人”の視点から届ける発信するニュースメディア
VRアジト:TGS2022でDiscord社おすすめサーバーに選ばれた、MyDearest株式会社によるVRコミュニティ
株式会社ブイノス:「Vの者がVのまま社会参画できる未来」を目指す実践検証組織

●Nem x Mila(ソーシャルVRライフスタイル調査委員会)

「メタバースでのアイデンティティ(ソーシャルVRライフスタイル調査 重点探求シリーズ)」はミラとバーチャル美少女ねむがVTuberやメタバースが人類に与える影響を調査するために結成した研究ユニット「Nem x Mila(ねむみら)」による第5弾大規模調査プロジェクト。Nem x Milaは昨年2023年には国際連合の国際会議「IGF京都2023」でも登壇発表を行った。
ソーシャルVRライフスタイル調査2023
メタバースでのハラスメント (2022)
ソーシャルVR国勢調査2021
新型コロナはバーチャルコミュニケーションを加速したか (2020)

●関連リンク
レポート公開ページ(日本語)
レポート公開ページ(英語)