Japan VR Summit 2「Session III 先駆者から学ぶ〜VRアトラクション編〜」 レポート

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グリーとVRコンソーシアムが、11月6日に東京・ロイヤルパークホテル(水天宮)にて開催した国内最大級のVRイベント「Japan VR Summit 2」において、「先駆者から学ぶ〜VRアトラクション編〜」と題した講演が開かれた。講演では、ジャーナリストの新清士氏、バンダイナムコエンターテインメントより小山順一郎氏と田宮幸春氏、ユー・エス・ジェイより中嶋啓之氏、セガ・ライブクリエイションより速水和彦氏の5名が登壇した。

 
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新 清士
ジャーナリスト。VR脱出ゲーム「エニグマスフィア ~ 透明球の謎(ENIGMA SPHERE)」の開発会社よむネコの代表。2016年5月には「VRビジネスの衝撃」という書籍を発売(関連記事)。

 
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小山 順一郎
バンダイナムコエンターテインメント、AM事業部エグゼティブプロデューサー。1990年に入社。メカエンジニアとして体感ゲームに携わり、ヴァーチャルリアリティを追求し、体感マシンを中心に開発。その後は「アイドルマスター」や「機動戦士ガンダム 戦場の絆」など、新しいコンセプトの業務用ゲーム機を立ち上げる。現在はVR技術でエンターテインメントの未体験領域を開拓する「Project i Can」にて「コヤ所長」として活躍中。

 
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田宮 幸春
バンダイナムコエンターテインメント、AM事業部VR部VRコンテンツ開発課マネージャー。1998年入社。規格開発担当として「ドラゴンボール ZENKAI シリーズ」など業務用ゲーム機を中心に、家庭用ゲームソフト、ネットワークコンテンツまで幅広く携わる。2015年からはVR技術でエンターテインメントの未体験領域を開拓する「Project i Can」にて各VRアクティビティの監督をする「タミヤ室長」として活躍中。

 
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中島 啓之
ユー・エス・ジェイ、コンテンツ開発室室長。2008年入社。大人気ファミリーエリア「ユニバーサル・ワンダーランド」や大量のゾンビがパークを占領するシーズナルイベント「ハロウィーン・ホラー・ナイト」などのお数々のアトラクションやイベントをプロデュース。2016年の「ユニバーサル・クールジャパン」では世界でVRコースター「きゃりーぱみゅぱみゅ XRライド」を新たに導入。

 
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速水 和彦
セガ・ライブクリエイション、取締役施設事業推進部部長。1998年入社。主にエンターテインメントパーク事業を担当。2004年から約10年、東京ジョイポリスの館長を務める。在任中からライセンス案件に参画。2014年から本格的にライセンス店舗及び新規店舗のスーパーバイザー業務へ移行。

 
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今回は、新氏を進行役として、ディスカッションが行われた。
 
始めの話題は「VRアトラクションで収益は上がっているのか」ということだった。
 
小山氏は、VR ZONE Project i Canについて「研究施設VR ZONEなので、得られた知見が収益です。もともと、VRという技術で何かしようというのではなく、外遊びとしての娯楽の価値をどこまで上げられるかなと考えたところ、VR技術が発達してきたので採用しました。」と収益について直接の言及は避けたが、同じくVR ZONEで活躍する田宮氏は「期間中、全ての予約が満杯で終えることができた。売上は想定より多く、当初比250%くらい。ただし、スタッフの増強をしたので人件費もかかった。」と述べた。
 
それに対し、JOYPOLIS内のZERO LATENCY VRに携わった速水氏は「うちもフル回転。ただ、VR体験料の他に入場料なども取れるJOYPOLIS内でやってるから成り立っているという感じ。」と、若干厳しい様子であった。
 
 
収益について話していくうちに、次は集客やマーケティングの話題となった。
 
この話題に対し、USJでコースターとGear VRを掛け合わせたVRアトラクションのきゃりーぱみゅぱみゅXRライドに携わった中島氏は「きゃりーぱみゅぱみゅを打ち出すのか、VRを打ち出すのか迷った。テーマパークはある意味、物語を追体験するものなので、自身がVRに通ずるところがあって、なかなか難しかった。」と、何を主軸に売り込むか悩んだようだ。加えて、「VRというものが注目を帯びている中で、エントリーユーザーを取り込みたかった。家庭ではできない、大規模なものを導入することがテーマパークにできること。我々のターゲットは女性、家族。VRのようなテクノロジーものは、アーリーアダプターが食いつく。しかし、我々はフォロワーやVRが気になっている人への入り口になるためにのインパクトのある初体験を提供することを重要視した。この場合には、きゃりーぱみゅぱみゅ、そして彼女の世界観というものを活用し、打ち出していくのがいいという結論を出した。」と述べた。

 
3つめの話題は、VR体験にあたってのホスピタリティだ。VR体験中は、没入しすぎて壁にぶつかったり、VR内にしかない机に手を置こうとして体勢を崩すなど、事故につながりやすい要因もいくらかある。中島氏は「ジェットコースターでのゴーグル使用では、意図せず外れることもあるので、装着してもらった後にワイヤーで取り付けた。あとは、待機列でかなりきつめにしめてもらえるようにお願いした。さらにスタッフは他のアトラクションと比べて相当多く配置した。現在、安全を確保するにはかなりの人手が必要になってくるので、回転率の問題がある。あとは、ゴーグルを直につけてもらっているから衛星のために清掃をするが、裏に清掃するスタッフが十数名いて対応するというもので、期間中の人件費が何千万とかかった。XRライドはもともとVR用途ではないコースターを利用したので、最適なではなく、人海戦術での対応となるので効率、コスト面での課題が山積み。」と述べた。田宮氏は「ひやっとしたことは、いずれ事故につながるので、即潰す。そうしているうちに、はじめは予測不可能だと思われた危険も、徐々にどういうコンテンツがどういう危険を孕んでいるかということが分かってきて対策ができるようになった。」という。

 
安全という話題から、小さい子供のVRゴーグル使用についての話題に発展した。
 
小山氏は「小さい子供のVRゴーグルの使用が、目に悪影響を与える可能性を示す論文が話題になる前は、自分の子供などに結構やらせていて、体験中はかなり興奮している様子だった。」と、実体験を述べた。田宮氏は「現在のVRゴーグルが必ずしも論文のような悪影響を与えるとは言い切れないので、事例重ねてデータを集めていくしかないのかなと。本当に子供がやりたがっている中で、親後さんに承諾を得てやってもらって、年齢制限に関しては突破する動きを作りたい。」と、危険性について積極的に再検証を行っていく動きを作りたいようだった。さらに、小山氏は「バンナムは小学生が好きなIP多いから、そういう層が体験できない状況というのは機会損失すごい。」と述べた。

 
5つめの話題は、「店舗型のVRアトラクションはどのように定着していくのか」だ。
小山「まずは、家庭でできることをしてはならないということ。」
田宮「高くてもいいので、しっかりと作りこんで価格に見合った内容を提供する。値段で勝負する状況ではない。」
中島「8年連続値上げなど、今どんどんテーマパークの価格を上げていっている。世界的にみると日本のパークは安い。エンターテイメントに対する値上げを心がけている。トライアルをしてもらうことは重要だが、価値あるものを提供することも重要。」
小山「あとは、現実には体験できない、またはできても一度だけみたいなスキーで崖から落ちて死ぬ体験や、戦車に乗って主砲撃てるみたいな体験などにお金を払ってもらう。代替体験としてのVR。」
中島「多人数体験って重要ではないだろうか。」
田宮「脱出病棟、ボトムズみたいな一緒にやれるやつはいいですね。ZERO LATENCYやったけど楽しかった。」
中島「どういう体験ができるのか、体験が、お客さんに支持されるものなのかというところが重要な視点なんじゃないかなと思う。」
小山「感動とか驚き重点で組み立てているが、感動は薄れていくものなので、リピートをもっと中心に置くようなものが重要。」
田宮「シミュレーションのような、練習してうまくなろうと思うようなテーマが体験として価値あるものなんだろうと思います。これが大きな1つの方向性になるでしょう。」

 
新「ロケーションどうつくる?」
小山「デバイスメーカーさん無線頑張って。」
田宮「AR・VRデバイスを日常的に装着するようになって、つけっぱで来てもらって、施設内でモード切替みたいになると最高。」
中島「体きられるとか、虫が這うとか、すごく体感できるという点を意識している。リアルとバーチャルの言葉の定義があるが、やはり音楽ライブのVRと生ライブを見たときに生のほうがいいわけだけど、そこで勝負するんじゃなくてVRならではのこと。」
田宮「人って、ハレとケみたいな切り替えが必要。非日常が欲しいなとなったときに、家だと物理的な制約もあるので、遊びに行くというのがスイッチになる。その時、ハレの場所となるように作っていきたい。」
中島「テーマパークも、誰と行って楽しかったかのような体験を共有したことが残ることが多い。終わった後も一緒にということが重要なので、個人でもOK、さらに皆で来てもらえるような場所になることも重要なのかなと。」

 
新「2020年のVRはどうなっているか?」
速水「VR特化というわけではなく、AR、MRもあるわけで、多人数でやるものもでてくるわけで、非日常となるといい」
中島「3D、4D、VRという定着がいいなと」
田宮「今までのメディアとVRは大きいジャンプがある。メディアが伝えるものであったのに、伝わる、体験するものになった。で、今手探りですけれども、想像できないものが発明されるに決まっているので、自分がそういうものを作り出せるポジションにあれば。」
小山「市場が技術革新で代替してきましたよね、うちわから扇風機、エアコンとか、パソコンからスマートフォンみたいな。VRがいろいろなものを代替していくんじゃないかと。体験としては自宅に居ながらもVR空間内で友達と集まって、ロードバイクで今日はアルプス走ろうぜみたいな、本当のスポーツよりすごいものになれば代替していくだろう。」

 
 
(取材・文/久道響太

 
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●関連リンク
Japan VR Summit 2 公式サイト
VR ZONE project i can 公式サイト
ユニバーサル・クールジャパン 2017 エヴァンゲリオン XRライド 特設サイト
ZERO LATENCY VR特設サイト

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