講演もデモもSAOづくし! 「サイバー攻撃を目撃せよ!2017」イベントレポート
内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)と情報処理推進機構(IPA)は、毎年実施している「官民連携サイバーセキュリティ月間」の一環として、3月4日~5日にベルサール秋葉原にて、VR/AR/MRの展示・体験なども交えたイベント「サイバー攻撃を目撃せよ!2017」を開催した。
イベントは「劇場版ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」(SAO)ともコラボレーションしており、同シリーズの原作者や制作スタッフたちによるトークショーを行ったほか、「ソードアート・オンライン プログレッシブ」を連載中の漫画家、比村奇石氏による書き下ろし短編を収録したサイバーセキュリティハンドブックなどのグッズも配布した(PDF版はこちら)。
キリト役・松岡禎丞氏のSAOへの思い入れ
イベント冒頭のトークセッションでは、アニメ版や劇場版のSAOでキリト役を担当する声優、松岡禎丞氏が登壇して、オーディション当時を振り返っていた。
「出会いは5年前、オーディション期間を含めると6年前かな。とあるスタジオでオーディションがあったんですけど、その頃は経験が少なく、また、名前は出せませんが周りの方が座っているだけでガクブルするような大先輩の方々だったので、これは落ちたなと思いました。これだけすごい人達相手なら自分も落ちてもいいと思いましたが、だからと言って投げやりにやっていいわけではなくて、自分の考えてきたものを思いっきり出そうと思える相手でした。キリト役決定を聞いたときは信じられなくて、オーディションをやっていた時点でもかなり売れていたラノベだったので、いざキリト役となってみるとうれしさは40%で、本当に自分でいいのかという不安が60%でした。SAOは現場でやり切る礎をつくってくれた作品なので感謝しています」(松岡氏)
また、公開中の劇場版については、「スタッフの皆様が築き上げてきたものを出し切ったものになっているのでぜひ劇場でご覧になってください」と宣伝していた。
劇場版ソードアート・オンライン トークショー
劇場版SAOのトークショーでは、原作者の川原礫氏、劇場版監督の伊藤智彦氏、総作画監督・キャラクターデザイナーの足立慎吾氏、欅坂46の土生瑞穂氏、内閣官房 内閣サイバーセキュリティーセンターの文月涼氏、という5名が登壇。事前にTwitterなどで募集していたファンからの質問に解答していた。
例えば「VRと人工知能についてどう思いますか?」という質問に対して、川原氏は「VRは、専用ゲームもでてきているし、これからどんどん広がっていくだろうが、現在のヘッドマウントディスプレーはメガネマンにはつらいところがある、AIはNarrow AIについてはかなり進歩しているが、僕はユイみたいに汎用人工知能、人間とすごい自然に会話できるものを期待している」とコメント。
また、「仮想世界に行けたらどんなことがしたいですか?」という質問に対しては、「僕は原稿を書きます、あらゆるシチュエーションでいつでもかけるじゃないですか、ありとあらゆるロケーションやシチュエーションを試して、一番原稿が捗る環境を追求したい。担当編集のアバターがいつもいると捗るかも」と述べていた。
さらに「これからのSAOシリーズはどうなっていきますか?」という質問については、「今まではVRのことを取り上げてきたが、今後はAIについて重点的に取り上げていきたい。いつになるかはわかりませんが」と答えていた。
また、「サイバーセキュリティとSAOの関係」について、内閣サイバーセキュリティーセンターの文月氏は「話は違うんですけど、災害が起こったときに事前に知識があった人は難を逃れることが多いんですよ。これからVRやARの世界になっていくときに、『こういうことが起こるかもよ』ということを示してくれるのがSF作品なんです。なので、ぜひこれから生まれてくる世界の脅威を、まぁデスゲームとかは困るんですけど、そういうことを描いていただきたいなという想いでSAOとのタイアップをお願いしました」と解説していた。
ソードアート・オンライン ザ・ビギニング Sponsored by IBM
イベントでは講演だけでなく、VR/ARに関係した展示もあった。リコーの360度カメラ「THETA」シリーズやマイクロソフトのMRゴーグル「HoloLens」が体験できたほか、「ソードアート・オンライン ザ・ビギニング Sponsored by IBM」も展示していた。SAOの世界観を体感できるVRコンテンツで、昨年3月に体験会が行われていたものだ。今回のイベントでは、スタッフによるデモンストレーションの展示が行われた。
筐体は、SAO作中に登場するフルダイブ用マシン「ナーヴギア」の前身である「ナーヴギア プロトタイプ」という設定でOculus Rift DK2、ビデオシースルーのためのOvrvision Pro、手の動きを検知するLeap Motion、身体の動きを検知するKinect、歩く動作を検知するための加速度センサー付きの靴という組み合わせだ。円形の枠は体験者の安全を確保するためのもので、センサーなどの仕組みはないという。
現実からVR空間へ移行するログイン演出後、プレイヤーは広場に立っており、チュートリアルを受けた後は足踏みして自由に移動することができる。また、広場には様々なお店が広がっており、机や棚の上に置いてあるものをつかんで投げることができるなど、相互作用性がある。
しばらくするとダンジョンへ転移し、「グリームアイズ・ジ・アンセスター」との戦闘が始まる。戦闘では、選択したソードスキル発動のために大きく振りかぶったりするなど、なかなか激しい動きをするようになっていた。作中でおなじみのメニュー(UI)まで再現されており、実際にそれを使って操作する場面もあったことは驚きだ。
VRが悪用されるとどうなるか
ゴーグルを用いたインタラクティブコンテンツの研究なども行ってきた、バンダイナムコエンターテインメントの原田勝弘氏による「VRがもたらす未来とは?」と題された講演では、ネットワークやソフトウェアの脆弱性によりVRが悪用された場合に人体に与えうる影響の可能性について語られた。
「体験時間が10分あるコンテンツならば、ほとんどの人を酔わせるものをつくることができる」と、VR酔いを簡単に引き起こすことを示したうえで、将来VRの利用環境が普及し、VR映像をストリーミングで数千人が視聴している時に、その映像を乱すような攻撃をしかければ、酔って気持ち悪くなった人を同時多発的に作り出すことができる、と想定を語った。また、酔いやすい映像への対処法として、片目または両目をつぶるという簡単な方法があるが、VRの没入間が高すぎるため、気持ち悪くなっているのに見続けてしまう人も多いとのこと。
研究段階ではあるが、VRの特性が悪用される可能性として、高い視覚効果からもたらされる精神への影響を洗脳などに用いられるかもしれないことや、様々なモノや状況に対する人間の生理的反応を悪用して健康被害を発生させることができる可能性を挙げた。「最悪の場合を想定するととても危険なものであるように思えるが、PTSDの治療や、効果的な宣伝などにも効果的。最新のテクノロジーは、最新の悪用手段になり得るが、悪影響よりも、テクノロジーがもたらす恩恵のほうが大きい」とまとめていた。
© SWORD ART ONLINE THE BEGINNING PROJECT
(取材・文:久道響太)
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