5年ぶりのツアー「WORLD TOUR 2025 Singin’ in the Rainbow!」をはじめ、ユニット、ソロのワンマンなど、2025年も数々の音楽ライブを開催してきたにじさんじ。2025年を締めくくる大晦日の夜にも年越しライブ「NIJISANJI COUNTDOWN LIVE “CROSSING TONES”」(以下、「CROSSING TONES」)が開催された。
2021年の「にじさんじ “LIGHT UP TONES”」(以下、「LIGHT UP TONES」)、2024年の「NIJISANJI EN AR LIVE “COLORS”」に続く、全編AR&生バンド演奏のオンラインライブ第3弾として開催された「CROSSING TONES」には、壱百満天原サロメさん、渡会雲雀さん、石神のぞみさん、赤城ウェンさん、小柳ロウさん、栞葉るりさん、榊ネスさん、珠乃井ナナさんの8人が出演。ニコニコ生放送による配信に加えて、全国の映画館でのライブビューイングも実施された全23曲、約2時間15分のライブを個性の際立つソロのフォーマンスを中心にダイジェストでレポートする。
なお、ニコニコ生放送のタイムシフトの視聴期限は、2026年1月19日(月) の23時59分まで。オンラインチケットの販売期間は、1月18日(日) の23時59分までとなっている。
開幕曲は、まさかの 「Virtual to LIVE」
2021年の「LIGHT UP TONES」と同じ音楽が使われたオープニング映像でライブはスタート。出演ライバーの名前や本ライブ用の新ビジュアルと共に、ライバーデビューした日付、ファンネーム、配信タグが表示されるのも「LIGHT UP TONES」を踏襲している。
最も先輩の壱百満天原さんからデビュー順に紹介されていく出演者を観て、若手ライバーが数多く抜擢されているライブだと改めて実感。ソロライブも大成功させ、実績や存在感は大ベテラン級のサロメ様もデビューは2022年5月21日。活動期間だけで考えれば意外と最近で、にじさんじ全体で見ると、若手寄りの中堅くらいの立ち位置なのだ。最も若手の珠乃井さんにいたっては、デビューが2024年6月19日。まだ、3Dお披露目もしておらず、出演メンバーたちによるショート動画や事前番組への出演時も1人だけLive2Dの身体だった。
珠乃井さんの3Dモデル初披露は、今回のライブの注目ポイントの一つだと思っていたのだが、オープニングが終わると、他のメンバーと一緒に1曲目から3Dの身体で登場。出し惜しみしない構成に少し驚いたのだが、それ以上に驚いたのが1曲目の選曲。「にじさんじの国歌」とも称され、「WORLD TOUR 2025 Singin’ in the Rainbow!」など数々のライブでクライマックスの定番曲だった「Virtual to LIVE」を開幕曲に選んでいたのだ。出演者の人選も含めて、新しいチャレンジをしていこうという意志を感じる。
8人のライバーは、会場の中央にある大きな八角形のステージの上に並んで歌い、1曲目からエモーショナルな空気を生み出していく。その左右には、小さな八角形のステージのステージ3つずつ並び、向かって左側でギター、ベース、ドラム、右側でキーボード、ギターと生身のバンドメンバーが演奏。バーチャルライブの技術は日々進化しているため、2021年の「LIGHT UP TONES」で感じたほどの大きな衝撃はないが、バーチャルライバーと生身のバンドメンバーが同じ空間に並び、鮮やかで複雑な光が入り混じる照明に照らされるステージでセッションを行っている光景にまったく違和感がない。
ステージの上には、数多くのウインドウが浮かび、視聴者がリアルタイムに投稿したコメントが表示されていく。非常にバーチャルライブらしい演出だが、そのすぐ横で生身のミュージシャンが生で演奏している光景は、やはり不思議。にじさんじのARライブの視聴が魔法のような体験であることは、変わらない。
全員がラララと手を振るラスサビを聴くと、条件反射でフィナーレの雰囲気を感じてしまうが、まだライブは1曲目。照明が落ちて薄らとライバーたちが見える状態の中、7人のライバーがステージを下りていく。3人の女性ライバーは、ステージに一人残る後輩を励ましている様子も見えていた。
ななたまが初ライブで「最高」のパフォーマンス
2曲目は、「VTL」で3Dモデルをお披露目したばかりの珠乃井さんがソロでSEKAI NO OWARIの「最高到達点」を披露。音楽ライブへの出演は初めてで、もちろん、ソロでのパフォーマンスも初めてだ。蘭阜(ランフー)という街で暮らす4人と1獣による同期ユニット「いずれ菖蒲あやめか杜若かきつばた」(あやかき)の一員で、サーカス団のパフォーマーでもある珠乃井さんは、初配信の冒頭から生歌を披露。その後も定期的に歌枠配信を行い、歌唱力の高さにはすでに定評がある。それでも、初ライブの2曲目で最初のソロ、しかも「VTL」の後という登場順には、大きなプレッシャーもありそうだが、それをまったく感じさせない伸びやかな歌声を響かせていく。ビジュアルも歌声もダンスも表現力抜群な蘭阜一のパフォーマーにとっては、この大舞台も駆け抜けていくチェックポイントの一つ。通過点でしかないのだろう。
初お披露目の3Dモデルは、見慣れているLive2Dやビジュアルの再現度が高すぎて、逆に驚きを感じない。軽やかなステップや、両手を大きく使った振り付けも明るいキャラクターのイメージ通りで「そうそう、ななたまは、いつもこんな風に笑いながら、動いてた」と脳内記憶が改竄される勢いだ。とはいえ、指先まで隠れる長くて太い萌え袖と、生足にショートパンツ&ショートブーツというアンバランスさに感じるフェチズムは、Z軸を得て動く身体を手にして、さらに破壊力を増している。そして、フリルまでついた太い萌え袖がこれだけ動いても自然になびき、破綻しないことには、VTuber文化黎明期の3Dライブも知るファンの1人として驚きを禁じ得ない。
圧巻のパフォーマンスを終えた珠乃井さんは、薄暗闇の中、ステージ下手に退場。入れ替わりに3人のライバーが登場する。この入れ替わりのタイミングでのライバーの何気ないやり取りを見せる演出は、このライブの全編を通して行われていたのだが、舞台裏を少し覗き見できているような感覚で非常に面白い試みだった。現地会場のあるライブや、普通のバーチャルライブなどでは難しいだけに、これもARライブならではの魅力だろう。
3曲目は、小柳さん、栞葉さん、榊さんがニコニコ生放送での配信が似合いすぎる「ルカルカ★ナイトフィーバー」を披露し、男女含めて全員が可愛かった「超最強」の後は、最初のMC。にじさんじ公式YouTubeチャンネルで行われていた生配信年末バラエティ特番のスタジオとも中継が繋がれ、番組MCの社築さん、葛葉さん、アンジュ・カトリーナさんも一緒に2026年を迎える。MC中には、渡会さんや栞葉さんがコメントのウィンドウを手に持って、視聴者を驚かせる場面もあった。
MC後の5曲目は、女性陣4人がポンポンを手に持ち怪しいサングラス姿で登場し「イケナイ太陽」をテンション高く熱唱。筆者と同じく「Idios 1st LIVE “Seize the day”」を観た視聴者は全員、「石神さん、本当にサングラス好きだな」と思ったはずだが、本人の振り返り配信によると、石神さん発案では無いらしい。
ステージに巨大な小柳さんも登場
6曲目は、にじさんじのKPニキこと、赤城さんがDISH//の「No.1」をカバー。いつの間にかステージの中央に出現したスタンドマイクの前にスッと立ち、視聴者と一緒に新年最初の乾杯をした後、爽やかな歌声を響かせていく。昨年末に完結したアニメ「僕のヒーローアカデミア」の第5期オープニング主題歌は、ヒーロー「Oriens」の一員に、ぴったりの選曲。全身から発する陽キャのオーラと、清涼感もある天性の主人公声もその印象を後押しする。
2番からはマイクを左手に持ち、八角形のステージを大きく使いながらパフォーマンス。右手の人差し指で天を差す「No.1」のポーズは、青空と入道雲に切り替わった背景や、絶妙な照明とも合わさって、まるでアニメの一場面のようにも見えた。ARライブだからこその映像だが、リアル会場でこのライブを観たいと思ったファンは多かったことだろう。また、ここまでの曲も、この後の曲もすべての演目に当てはまるのだが、ステージ演出の肝となっている光と影のコントロールが素晴らしい。
7曲目も続けてソロ。まだ薄暗いステージに石神さんが登場し、ステージ中央で背中を向けて立つ。「ピンポ~ン」というチャイムの後、ノックをすると流れ出したメロディーは、大ヒットボカロ曲のリミックス版「モニタリング(Best Friend Remix)」だ。明るくなったステージの中央には1人掛けの椅子が置かれ、その上には可愛い眷属(ぬいぐるみ)の白虎が座っている。11月に開催された「Idios 1st LIVE “Seize the day”」のソロコーナーでは、ハイテンションな「ライアーダンサー」と「ふっかつのじゅもん」で、初の音楽ライブ出演とは思えない熱いパフォーマンスを見せ、会場を大いに盛り上げたスーパーカリスマインフルエンサーが、今回のソロは、ポップだがしっとり聴かせる友情ソングで、モニターの向こうのリスナーを引き込んでいく。原曲MVを意識したカメラワークも非常に効果的だ。それにしても、軽やかな歌とダンスが「Idios 1st LIVE」よりもさらに上手くなっているように感じるのは、筆者のひいき目なのだろうか(反語)。また、同ライブではステージ上で爆散した白虎が、今回は「ベストフレンド」の象徴的に可愛がられていることに少しほっこりした
先輩と後輩のどちらもが初々しい栞葉さんと珠乃井さんの「Watch me!」と、2人のMCを挟んだ9曲目は、またもソロステージ。小柳さんが突然ステージに現れた怪しい4人のダンサーを従えて、Adoの「ウタカタララバイ」を披露した。ダンサーたちは、一見、小柳さんそっくりの容姿だが、目や口は三日月型で作り物めいた笑顔が気味悪いマスクのようになっている。紫基調の照明に照らされステージも妖しい雰囲気が漂う中、魅力的な低音でがなり、ラップを刻む小柳さん。ラップ曲のパフォーマンスとは思えないほど、激しくステップを踏み、ダンスでも魅せていく。その独特のオーラとパフォーマンスで、完全に世界観ができあがっていた。ところが、突然、小柳さんたちの背後に巨大な偽小柳さんの上半身が出現。まるで、羽虫でも退治するかのように大きな掌でステージ上の小柳さんを叩き潰してしまう。おそらく、にじさんじの音楽ライブの中でも一二を争う衝撃的な退場だった。これだけ独自の世界観を出せるライバーなのに、他の出演者と一緒に可愛いアイドルソングを歌い踊るのも面白い。一見、ダウナーそうだが、実際は相当にノリの良い性格なのだろう。
ライブ中盤もソロのパフォーマンスで熱狂
まだコメント欄がざわつく中、登場した壱百満天原さん、渡会さん、石神さん、赤城さんは、「インザバックルーム」を披露。壱百満天原さん、赤城さんは、少し治安悪めな楽曲も似合うことに少し驚かされた。そして、11曲目は、ライブ冒頭から圧倒的な歌唱力の高さを見せ付けている榊さんの「アノニマスファンフアレ」。ハンドメガホン片手にステージに登場すると、イントロから、がなって煽り、ステージの熱量をさらに上げていき、終盤では自身の顔にも汗が光る。低音から高音まで正確なピッチで歌いこなせるだけに、ボカロ曲との相性も抜群だ。いつの間にか現れていたお立ち台に乗って、ステージを大きく使いパフォーマンスしながら、バンドの生演奏にも絶妙のタイミングで歌声を合わせる。榊さんのライブパフォーマンスを観るのは、3Dお披露目配信以来だったのだが、歌唱力だけではなく、ライブ映えするステージパフォーマンス力の高さにも驚かされた。
赤城さんと、小柳さんがお立ち台に座ったまま歌い始める導入もユニークだった「カルチャ」。石神さんと榊さんの超高音ハモリの相性良さに驚かされた「逆光のフリューゲル」。赤城さん、栞葉さん、珠乃井さんの3人全員が可愛すぎた「フィクション」。歌もメンバーもバラエティに富んだ3曲が続いた後は、また2人続けてのソロ。
まずは、15曲目で渡会さんがVaundyの「裸の勇者」をカバー。しかも、ギターの弾き語りだ。このライブの出演者が発表された時から、歌声だけではなくビジュアルも含めて生バンドライブとのシナジーは、渡会さんが最も高そうだと想像していたが、ギターの弾き語りというサプライズも加わって、その予想をはるかに上回ってきた。配信限定のARライブとは信じられないほど、生のライブ感が伝わってくる。スタンドマイクの前にスッと立ち、歌声とギターだけで視聴者を魅了するパフォーマンスをやり切ると、ギターをスタンドに置いて、腰が直角に曲がるほど深々とお辞儀。ステージを下りる姿も絵になるアーティストだった。
16曲目は、にじさんじ共通衣装に着替えた壱百満天原さんが、透明感あふれて儚くもある唯一無二の歌声でYURiKAの「鏡面の波」を披露。静かに雨が降り、鏡面のようになったステージには、華麗なステップに合わせて波紋が広がっていく。このライブの全曲で共通して言えることだが、ステージの床面は、完璧にコントロールされた光と影などを映し出すスクリーン的な存在として、ライブ演出の肝となっていた。まるで、リアルライブでさまざまな映像を投影するモニターのようだ。そして、サビの途中、壱百満天原さんの全身が光に包まれると、髪型が変化。ゴージャス感は維持したまま、ポニーテールになっていた。
17曲目は、ソロのパフォーマンスを終えたばかりの2人が、共通衣装で男女デュエットアニソンの定番曲「Preserved Roses」を熱唱。ポニーテールになった壱百満天原さんは、アグレッシブな印象が増し、この曲とのシナジーがアップしていた。
18曲目は、このライブ最後のソロステージ。栞葉さんが「バカ通信」を披露した。文学に関する著書も出版するなど、学術系VTuberとして知られる才媛だが、濃いめなインターネットの住人でもある栞葉さん。ニコニコ生放送で配信されるこのライブで、この選曲はさすがだ。自身初の音楽ライブ出演となった2025年10月の「にじさんじWORLD TOUR 2025 Singin’in the Rainbow!広島公演」では、葛城リーリヤの「白線」をカバーしてファンを熱狂させたが、今回も含めて自身に求められているものを理解できすぎている。笑顔で、ウィンクも大サービスしながら、ステージ上を元気に跳びはねて歌い踊る「るりドッグ」を観ていると、こちらもなんか楽しくなってきた。最後は、周りを囲んだコメントのウィンドウをキック。ライブのクライマックスを前に、「楽しい」と「可愛い」がバカほど大量供給されるステージだった。
ラストは今のにじさんじを代表する曲「Arc goes oN」
男性陣4人の「DOGLAND」、渡会さん、石神さん、小柳さんというラップ巧者3人の「かつて天才だった俺たちへ」の後は、壱百満天原さん、榊さん、珠乃井さんが「神のまにまに」を披露。女性ライバー2人に高音で負けない榊さんに改めて驚かされる。そして、高く上がる珠乃井さんの美脚に目を引く。最後は、壱百満天原さんの先導で残りのメンバーを呼び込みステージ上に8人が勢揃い。陽キャなノリで踊りながら「CROSSING TONES」本編最後の曲を終え、新年の挨拶をしながら、ステージを下りた。
ニコニコ生放送のコメント欄で、すぐにアンコールを求めるコメントが流れ出すと、ステージ上にも、コメントのウインドウが浮かび始める。そして、その声に応えて、すぐにアンコールが開演。フレデリックの「オドループ」の楽しいイントロと共に、8人がステージに戻ってきた。原曲MVでもお馴染みのサビのダンス以外は、フリーっぽい動きで楽しく踊り歌う8人。ステージのライティングも、この日、最も派手な色使いでライブのフィナーレを盛り上げていく。
そして、告知タイムの後、最後の23曲目は、「Arc goes oN」。開催中の「WORLD TOUR 2025 Singin’ in the Rainbow!」で毎公演歌われているため、ツアーのテーマソングのような印象を抱いていたのだが、本来は「にじさんじ」の7周年を記念した楽曲。このライブのフィナーレにも相応しい選曲だ。毎回、誰が歌うのか話題になるフレーズ「夢に見てたきらめき」を担当したのは、デビューから爆速でこの舞台にまで駆け上がってきた珠乃井さんだった。
「全編ARの生バンドライブ」が破綻なく自然に実現されていること自体に、大きな衝撃を感じた2021年の「LIGHT UP TONES」。ライブ中、叶さんと葛葉さんがステージ縁の階段部分に並んで座った時、その自然な動きと実在感に驚いたことは今でも覚えている。それから4年半が経ち、技術的にも機材的にも飛躍的に向上したのは間違いないにじさんじのARライブ。リアルライブのように背後にあるモニターの映像演出も数多く使われるようになり、ライブ空間の見え方があまりにも自然なため、AR技術よりも、ライバーのパフォーマンスにばかり目が向いてしまうほどだった。おそらく、繰り返し映像を観る度に新たな気づきがあるのだろう。タイムシフトの視聴期限まで、あと約2週間。隅々まで何度も楽しみたくなるライブだ。
(C)ANYCOLOR, Inc.
(TEXT by Daisuke Marumoto)
●関連リンク
・ 「NIJISANJI COUNTDOWN LIVE “CROSSING TONES”」公式サイト
・NIJISANJI COUNTDOWN LIVE “CROSSING TONES”配信ページ(ニコニコ生放送)
・にじさんじ(X)
・にじさんじ(YouTube)



















