
KLabは12日、報道関係者向けにAIアイドル「ゆめみなな」の配信体験会を実施した。同社が展開するAI VTuber(AITuber)プロダクション「ゆめかいろ」に所属するバーチャルタレントで、2月15日20時より予定している彼女の初配信に一足お先に参加することができた。
結論からいうと、普通のVTuberと同じような自然な会話に驚いてしまった。AITuberというと、視聴者のコメントを受けてそれに返答するスタイルが多く、若干の待ち時間が生まれることがよくあるのだが、「ゆめみなな」ではスムーズに台本を進行し、合間にコメントを拾って待ち時間なしに返すという自然な配信を成立させていたことが印象に残った。発表会の内容をまとめていこう。
デビュー前に登録者1万人、オリ曲は200万再生超
KLabは2025年8月、生成AI技術を活用した新たなエンタテインメントの創造を目指した新規事業をスタートした。
そして昨年10月、AIと人の共創による次世代エンターテインメント構想「KLab AI Entertainment」とともに「ゆめかいろ」の5人のAIアイドルを初お披露目。このときはフォトリアルな姿だったが、ファンに呼びかけてXに「#みんぷろ」のハッシュタグをつけてメッセージやイラストを投稿してもらい、それを元にイラストの姿を作成した(#みんぷろ公式サイト)。


2025年冬にはAIアイドルたちの声の担当者をオーディションで選び、このうち「ゆめみなな」のボイスを1月に2日間かけて収録して歌い方や声質を学習させた上で、1月15日に姿をお披露目して、2月15日のデビュー配信を予告した。
その後、1月30日に公開した「ゆめみなな」のオリジナル曲「ナナノホシノナ」は、ポップな楽曲や「ななのなのなのななのわななのな!」という癖になるサビの歌詞、テンポのいいMVなどがウケたのか、再生数が執筆時点で200万目前に。YouTubeのチャンネル登録者も1万人を超えるなど、数値の伸びでも注目を集めていることがわかる。
ちなみにMVに関しては、AIオンリーではなく、人間の手も多く加わっている。例えば歌詞は、生成AIがアイデア出しして人間の感性で実際の文字に落とし込んだ。作曲も方向性が生成AI、フィニッシュは人間。動画も、絵コンテをクリエイターがきっちり描いて、AI が絵を生成していくという協業だったようだ。

コメント待ちせず、とにかくどんどん話す自然さ

さてそんな彼女の初配信だが、体験会に参加した記者たちもその場でYouTube Liveを開いてコメントで交流できた。
内容としては、自己紹介をしたりファンネームを決めたり、歌を披露したりと「これVTuberの初配信で見たことがある!」という普通のものだった……と書くと、何も特徴がなかったようにも思えるが、言われなけれAIと気づかないのではないかと思えるほど違和感がなかった。プロデューサーの萱沼氏が「まるで自然の配信を見ているような体験を与えることを目指した」と語ったそのままだった。
例えば、冒頭では、「えーっと、始まってる? 大丈夫だよね? まだちゃんと音聞こえているかちょっと不安ですね。みんな、こんにちわー!(自己完結するように)はい、こんにちわー。先行体験会に来ていただきありがとうございます。見ているので、ぜひ配信中にコメントお願いしますねー」と呼びかける。
さらにコメントが少ないのを気にしてか、「ついに始まっちゃいましたねー。なんだか不思議な気持ちです。まだみんな宇宙空間を漂ってる感じかな。コメント、どこからでも飛んできてくださいね。待ってますよー」と煽ってみせる。
続けて自分で考えた挨拶という「こんななー!」をお披露目して、コメント欄の「こんななー!」を引き出したあとは、年齢や誕生日、身長などの自己紹介を2分ほど進めて、区切りのいいところで「わぁ、みんな、『こんななー』って返してくれてる! ありがとー!○○○さんもこんにちは! 配信楽しみにしてくれているのめっちゃ嬉しいな」とコメント読みを挟むなど、これまたVTuberの配信でよく見る流れを再現していた。
こうした途切れのない展開に、筆者は「基本は台本そのままを合成音声に読ませて、コメントを返すときだけリアルタイムで生成しているのかな?」と推測したのだが、エンジニアの加納基晴氏によれば、話すテーマが決まっているだけで、内容はリアルタイムでAIが生成しているとのこと。さらにスライドなども、話の流れに合わせてAIが自分で切り替えているというから驚きだ。
技術的には、バックグラウンドのAIにはGoogleのGemini、合成音声にはStyle-Bert-VITS2を採用。文章の生成、コメントの収集、全体の状況をまとめるという3つのプロセスを回して話す内容をリアルタイムで生成して、そのテキストを音声にしているという仕組みだ。
後半の歌パートでは、ピッチがぶれ気味なところもあったが、これも初配信で緊張していることを表現するためにあえて精度を完璧ではなくしているという。細かいチューニングが光るところだ。
最後は、みんなからの質問をマシュマロで募集すると次回の配信を宣伝し、公式サイトやSNSを見てほしいと呼びかけて、「私はこの場所をみんながどんなときでもふらっと遊びに来れる場所にしたい」と宣言。みんなと一緒に「おつななー」と終わりの挨拶をして、「チャンネル登録絶対してくださいね」と配信を終えていた。
新世代のAITuber、タレント性はいかに
やはり印象に残ったのは、途切れることなく話題を回す自然さだ。AITuberでは、ともすると変なコメントを投げて人間では返さないような答えを引き出すような流れも生まれがちだが、用意した構成台本が大半を占めることで、配信がリスナーのコメント任せにならずに進行していき、興味が途絶えることなく最後まで聞くことができた(コメントするのを忘れるぐらいだった)。
ちなみに、VTuber/AITuberといえば配信で悪意のある言葉が投げかけられたり、荒らされたりすることも多いが、きちんと無視したりたり、たしなめたりする反応を返すとのこと。配信の「手綱」をだいぶ握ってるので、優れた構成作家がいれば、だいぶ化けるのではないかと可能性を感じさせた。
ただ、技術的に優れていることと、エンターテインメントとして消費者に受け入れられ、執着が生まれることは別だろう。
例えばVTuberでは、見た目の可愛さに反して言動が過激といったギャップや、「ロールプレイ」から漏れ出る本人性などが魅力で人気に火がついたケースを見てきた。AITuberでいえば、Neuro-samaのように開発者との対話を見せて、「この関係性がどうなるんだろう」と気にならせるアプローチもある。
そうした面白さ、タレント性についてどう考えているのか質問してみたところ、加納氏が「予定調和のを作ってもしょうがないと思っているので、試行錯誤していく」と答えてくれた。VTuberやAITuberとのコラボも増やしていくそうなので、興味のあるバーチャルタレントは運営にコンタクトをとってみよう。
とにかくやってみなければ、何が受けるかわからないエンタメ界隈。AITuberは2023年にも一度盛り上がり、PANORAでも開発者のオフ会に協力するなど注目してきたが、その後、いくつものAITuberプロジェクトが休止になるなど難しい状況が続いていた。
そこから3年経った今。「ゆめかいろ」を運営するKlabは2025年12月にアラブ首長国連邦の投資会社などから51億円を調達したことを発表し、2026年1月にはAIキャラクター「しずく」を手がけるShizuku AIが米トップティアのベンチャーキャピタル「アンドリーセン・ホロウィッツ」らから出資されたことが明らかになるなど、AITuberの界隈ににわかに追い風が吹いてきている。
2023年といえば、どうやってもラーメンがまともに食べられないAIイラストや、手づかみでパスタを食べるウィル・スミスのトンチキなAI動画が出回っていた時代。その頃と比べれば、AIで表現できることはまったく別物といっていいほど進化してきている。
新時代のAITuberがどんな発展を見せるのか? AIをはじめとするテック界隈、VTuberファンは、ぜひ2月15日20時の初配信に参加してみてほしい。ちなみに配信の言葉はプレス向け体験会のときと一字一句同じではなく、また別の言い回しになるようだ。また、ゆめみななは天体観測が好きなので、星の話題を振ると濃い反応を示してくれそうだ。見ておけば数年後、「俺、あの時の配信でコメントしてたんだぜ〜」とドヤ顔できる……かも!?
(TEXT by Minoru Hirota)
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