2025年にはホロライブや赤見かるびさんなども本格参入し、VTuberからの注目も高まりつつあるVRChat。
しかし、機材やアバターなどのハードルをクリアしたとしても、権利的にどうなってるかわからないワールドや、招かざる客を呼び込む可能性などから、ここでの配信を見送っている人も多いはず。
そんな中、長瀬有花さんなどを輩出してきたバーチャルアーティスト事務所・RIOT MUSICが、とあるワールドを公開しました。

その名は「誰でもお気軽配信ワールド AdHoc -アドホック-」(以下、AdHoc)。ワールド名に恥じず、ここは誰でも、手軽にいい感じのVRChat配信が実施できる環境が整ったワールドです。
本記事では、 AdHocとはどのようなワールドなのかを解説しつつ、なぜこうしたワールドが生まれたのか、今後どんな展望を描いているのか、トークイベントのレポートを交えながらお伝えします。
出演者制御も、カメラアングルも自由自在。AdHocってこんなワールド
「AdHoc」は大きく2つのエリアに分かれています。

メインとなるのはスタジオエリア。巨大な倉庫のような空間の中に、3つのステージが設営された区画です。



3つのステージは単純に空間としての完成度も高いですが、大きな特徴は配信向けに特化したシステムが内蔵されていることです。
まず、各ステージには「出演者」の概念がシステム的に存在。メインの出演者、ゲスト出演者3人、さらにオペレーター1人までをステージ上に登録することができます。


これらのロールが付与された人だけが、ステージに上がることができます。それ以外の人は、一定距離からは先には立ち入ることはできないため、ステージ上に飛び乗られて荒らされる心配はありません。

専用のカメラスイッチギミックも大きな特徴の一つ。デスクトップモードなら画面上に、VRモードならばカメラ映像をジャックする形で、複数のアングルや動きを伴うカメラ映像を表示させることができます。各アングルは自動切り替えもできるため、さながらテレビ番組のような映像になります。
また、運営企業であるRIOT MUSICはJASRACおよびNexToneと包括契約を結んでいることから、同社が管理できる場所(具体的には「RIOTMUSIC_AdHoc のGroupインスタンス」)では、それらの管轄化にある楽曲を歌うことも可能です。詳細な条件などはこちらを確認してほしいですが、こうした体制が取られているワールドは他に類を見ません。
従来のVRChat配信は、カメラ操作は自分かスタッフの手で行う必要があり、また周囲にいる人の干渉を防ぐには専用のワールド構築などが求められるものでした。VRChatに不慣れな人でも、手軽にいい感じの映像で、しかも安心して観客入りのVRChat配信ができる。配信者にとって、これ以上とない好条件がそろっているのが「AdHoc」なのです。

ちなみに、スタジオエリアと反対側のエリアには、1on1に特化した小部屋が3つ用意されています。この部屋は、オーナーとゲストだけが入室可能かつ、一定時間になるとゲストが自動的に部屋外へ移動する、「自動はがし」つき1on1が実現できます。お土産用のツーショット撮影機能や、強制退出機能も完備しているので、厄介なお客さんが来ても安心です!
きっかけは「VTuber3Dライブのハードル」への課題。AdHocが生まれた理由とは
VRChat史上類を見ないワールドを送り出したRIOT MUSICは、冒頭でも記した通り、バーチャルアーティストに特化した芸能事務所です。

いわばVTuber業界側の組織が、このようなVRChatワールドを送り出したのはなぜか。3月5日に「AdHoc」にて実施されたトークイベント「MIGIRI SALON vol.02 “AdHoc“」で、その一端が語られました。
登壇者は、RIOT MUSICプロデューサー・ディレクターの新井政道/あらじるさんと、制作を手がけたMIGIRIのTakaomiさん、藍上アオイさん。司会進行はRIOT MUSIC運営プロジェクト「RIONECTION」所属で、「AdHoc」アンバサダーもつとめる胡虎あくびさんが担当しました。

あらじるさんによれば、「AdHoc」開発経緯の根っこにあるのは、VTuberのフル3Dライブのハードルの高さ。
現状、3Dライブは大がかりなモーションキャプチャースタジオや高額な機材が必要となり、多大な金銭的・技術的コストがかかります。また、配信が主体となるこうしたライブでは、オフラインのライブハウスで得られるような“生きた体験”や熱量をどう伝えられるかも大きな課題となっていました。
これらの課題を解消し、VTuberが恒常的かつ手軽にパフォーマンスを披露できる場を提供するために、「AdHoc」制作プロジェクトが始動したのだそう。ちなみに、 「AdHoc」という名前は「特定の目的のため」「その場限り」という意味があり、路上ライブや突発的なセッションを行う場所にふさわしいとして名付けられたそうです。


こうした場を作るためにいくつかクリエイターの候補が挙げられた中、選ばれたのがVTuberライブ制作などに大きな定評のあるMIGIRI。企画から数えると1年ほど費やしたそうですが、ディレクターのTakaomiさん、モデリング担当の藍上アオイさん、エンジニアリングのAyanoさんの3名がフル稼働したことで、実制作期間はなんと約2ヶ月だったそう。
ちなみに、最初は収録スタジオのような小部屋が並ぶワールドから出発。しかし、いろいろ考えた結果作り直しとなり、藍上アオイさんの過去の経験から、映画の撮影所をヒントにした現在の空間に落ち着いたようです。
ライブ、ラジオ、演劇――幅広い活用方法が模索
2025年12月にプレオープンが始まり、2026年1月から本格運用を開始。そして2月に一般公開となった「AdHoc」。1月10日のこけら落としライブ「はじめのるつぼ」開催後、このワールドでは様々なイベントが実施されています。
とりわけ、現在特に盛況なのが毎週水曜に開催されているオープンマイクイベント。バンド、歌手、朗読など、様々なジャンルの活動者が、一定時間ごとに入れ替わりでステージに立てるイベントは、その自由度の高さから毎回多くの人で賑わっています。21時〜26時という開催時間も人気の秘訣かもしれません。
また、老舗VRChatラジオ「そのらじ」が出張してラジオ配信を行ったり、「VR劇団 纏愚連-TenGuRen-」が全てのステージで同時並行で実施する演劇企画「AdHoc×TenGuRen コンカレントシアター 〜マチアイマルシェ 〜 Feat.タノシメッタラ×雅縁寝子座」を実施したりと、音楽以外のユニークな活用も進みつつあります。特に「マチアイマルシェ」は運営サイドも想定外のおもしろい使い方だったそう。
もちろん、本来の狙いでもある配信活用も見られます。一例ですが、アンバサダーの胡虎あくびさんはここで歌枠配信を実施しています。
VTuber業界生まれのVRChatワールドが目指す先
より多くの人に活用してもらえるように、RIOT MUSICは現在、VTuberや活動者向けの「VRChat講習会」も定期的に開催しています。
講習会では、デスクトップモードでの使用を前提に、アカウントの作成方法から「AdHoc」の配信ギミックの使い方までを、オンラインでレクチャー。VRChatに不慣れな人が、VRChatの第一歩を踏み出すための取り組みと言えます。

VTuber業界に身を置きながら、精力的に展開されているVRChat事業としての「AdHoc」運営。RIOT MUSIC内部での評判について聞いてみたところ、「はじめのるつぼ」で現地を見た社員が増えたのを境に、おもしろい取り組みとして受け入れられているそう。社長にも好評らしく、VRChat事業には今後さらに前向きな動きが期待できるそうです。
実際にその後、「AdHoc」では様々なイベントが企画されています。1テーマ決めた座談会や朗読劇など、音楽ライブに囚われない多種多様な使い道が模索されています。
今後の展望として掲げられたのは、マルチインスタンス配信の実装。複数のインスタンスに向けてパフォーマーの姿を同時配信することで、VRChatのワールド収容上限の80人を超えた人数がその様子を楽しむことができるようになることから、いずれ取り組みたいのだそう。また、チケッティングによる収益化も構想されているようです。
いずれも実現すれば、VTuberなどの活動者が、オンラインで大勢の観客を前に、有料ライブを開催する、まさに「オンラインのライブスタジオ」とも言える場になることでしょう。
つい先日には、このワールドとDiscordサーバーを第一弾展開とする、VRChat活動総合支援サービス「AdHoc」の展開も発表したRIOT MUSIC(外部リンク)。バーチャルな活動の場として、VTuberとVRChatの可能性をさらに押し広げていく、同社と「AdHoc」の今後に大いに期待したいところです。
(TEXT by 浅田カズラ)
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