Brave Groupは21日、同社の運営する音楽事務所「RIOT MUSIC」に所属するVSinger5名による1stライブ「Re:Volt」を横浜ベイホールにてリアル・オンライン同時開催した。アンコールを含め全20曲。これまで各チャンネルにて投稿してきたカバー曲を中心に披露した。
RIOT MUSICは、2020年4月に歌唱コンテスト「RISING HOPER」にて優勝した道明寺ここあさんが加入したことでスタートした音楽事務所。その後5月に芦澤サキさんが加入。6月にバーチャルアーティストオーディションを実施し、その結果9月に松永依織さん、長瀬有花さん、凪原涼菜さんが所属した。
これまで、カバー動画投稿を中心に各チャンネルにて活動をしてきた5人。筆者は以前より、長瀬有花さんによるカゲロウプロジェクトメドレー配信や、DAOKO「水星」のカバー、芦澤サキさんによるReolの「No Title」や「第六感」のカバーなど、その世代を射抜いた絶妙な選曲に心を打たれていた。
今回のライブでも、「Q&Aリサイタル」や「Hacking to the Gate」、そしてアンコールに初出しとなる「Butter-Fly」と、2000年代後半~2010年代頃のアニソンを中心に、ちょうど現在20代の世代のオタクに突き刺さる「神セトリ」となっていた。そうした選曲にも注目をしてさっそくライブのレポートをしていきたい。
「ETERNAL BLAZE」→「創聖のアクエリオン」で会場のボルテージは急上昇 MCでは初々しい姿を
まず、開幕と同時に会場を盛り上げたのは道明寺ここあさんによる「ETERNAL BLAZE」。言わずと知れたアニソンアーティスト・水樹奈々の代表曲だ。さらに、この楽曲は道明寺ここあさんが現在の「COCOA CHANNEL」にて活動を再開した際に、再デビューを飾った1曲目の歌動画でもある。
1曲目の披露が終わったところで、5人全員が登場した。メインMCを務めるのは、道明寺ここあさん。「テンション上がっちゃうとドジっちゃうところがある」と話し、緊張した様子で初々しい司会を見せた。
自己紹介のパートでは、普段の歌動画でのカッコいい歌声とはギャップのある、気だるげな喋りで「緊張している」と話す芦澤サキさんが印象的だった。歌声とのギャップでは、凪原涼菜さんも負けていない。
イメージカラーの通り、水のように透き通るような歌声が特徴な凪原涼菜さんだが、MCでは自己紹介が始まると同時に「すごい!すごい!水色や」と関西弁で登場。
「私も朝から傘を折ってきてしまったんですけど、みなさんの傘を折っちゃうくらいのテンションで頑張ろうと思いますのでよろしくお願いしまーす!」とボケるも、ツッコミがもらえずに「突っ込んで!突っ込んで!」と漫才のような掛け合いを見せた。
そして、続く4人それぞれのカバー曲。トップバッターを切るのは、凪原涼菜さんで「創聖のアクエリオン」。2005年放送の同題アニメ主題歌で、サビの「1万年と2000年前から愛してる」が有名な王道のアニソンだ。「ETERNAL BLAZE」からの「創聖のアクエリオン」。奇しくも2005年のアニソンが2曲続いたが、オタクであれば誰でも盛り上がれるといっても過言ではないこの2曲で会場のボルテージは急上昇した。
観客の心の叫びが聞こえる 最高潮の「Q&Aリサイタル」
続くは、不思議で独特な雰囲気を持つ長瀬有花さんによる「ヴィーナスとジーザス」。3月はじめにカバー動画も投稿している同楽曲。2010年放送のTVアニメ「荒川アンダーザブリッジ」のOPテーマだ。
金星人を自称する電波系美少女や自称620歳の河童、神谷浩史演じる重度のナルシスト主人公と、シャフト制作のまさに電波系なアニメで、「Os-宇宙人」なども歌っている長瀬さんらしい選曲だ。
そして、ここでアニクラでも定番扱いの「盛り上がれるアニソン」代表、戸松遥の「Q&Aリサイタル」。松永依織さんによるカバーだ。コロナ禍ということで、大声を出してコール&レスポンスができないのが非常に残念だが、間奏ではアレンジで「イ・オ・リ イ・オ・リ L・O・V・E イ・オ・リ!」とオリジナルのコールが。他4人のメンバーがレスポンスをしながらステージに登場する演出も。
落ちサビでは、自然と会場全体で咲きクラップが生まれ、ラスサビでさらに大盛り上がり。声を出せない会場だが、観客全員の心の叫びが聞こえんばかりの沸きあがりだった。
4曲連続披露最後を飾るのは、芦澤サキさんによる「サムライハート」だ。2011~12年放送の「銀魂’」のEDテーマだ。会場のペンライトも、赤一色に染まり、先ほどとは打って変わって一気にロックへ様変わりした。「配信は声出せよ!」「もっとペンライト振ってー」「肘の位置低いぞ」「腕あがってないよ、あげてあげて!もっともっと!」と配信・会場それぞれ煽っていくスタイルを見せた。
後のMCでも、ここあさんが「みなさんほんとにペンライトめちゃくちゃ振ってくれて、よく見えました。ありがとうございます!」と伝えると、サキさんは「見えてるけど、肘が低いんだって!もっとあげていこうよ」とダメ出しをする。こうして煽ってくれることで、もっとあげないと!と会場もさらに盛り上がりやすくなる。声が出せないからこその盛り上げ方だ。
ここで、次の5曲へ向かう前に、ここあさんによるバックバンド紹介が入る。ギターは、ささきさくらさん、Gassyさん、ベースはAyanoさん、キーボードはMAKIさん、そしてドラムは二千翔(にちか)さんが担当する。生バンドによる演奏があってこその、会場のこの臨場感が形成される。
ガールズデュオ「VESPERBELL」がゲスト出演 10年代アニメソングが光る選曲
そして、ここからはカバー曲ラッシュ。1990年代末~2010年代のアニソンを中心としたメドレーだ。ちょうど、90年代後半~00年代前半に幼少~少年期を過ごし、10年代が学生時代だった20代のオタクには聞き馴染みのあるアガる曲が続けざまに登場した。
1曲目は松永依織さんが歌唱する、1998年リリース「まもって守護月天!」のOPテーマにも採用されたSURFACEによる「さぁ」。カバー動画より格段にテンション高く熱唱した。
依織さんは、RIOT MUSICの中でも特にカバーの範囲が広く、これまで「ロマンスの神様」や「シュガーソングとビターステップ」など、男性ボーカル・女性ボーカル・ボーカロイド、アニソン・J-POP問わず幅広く投稿している。
続く、長瀬有花さんの「気分上々↑↑」、芦澤サキさん「CORE PRIDE」、道明寺ここあさん「only my railgun」、凪原涼菜さん「アンインストール」と歌唱。特に、「only my railgun」は、南條愛乃さん率いるfripsideの代表曲だ。言わずと知れたTVアニメ「とある科学の超電磁砲」のOPテーマで、10年代に全盛期を過ごしたオタクにとってはアンセムともいえる。
そして、5曲メドレーが続いた後は、凪原涼菜さんと松永依織さんが登場。依織さんが「お待たせー、待った~」と入ってくると「今来たところ~」と涼菜さん。デートの待ち合わせのような掛け合いを見せた。
ここで、REALITYプロダクション所属のバーチャルガールズデュオ「VESPERBELL」の2人がゲスト出演。2人とは、先月27日にYouTubeにて実施した「SPECIAL COVER LIVE with 松永依織、凪原涼菜」以来のコラボレーションとなった。
ヨミさん、カスカさんそれぞれハイテンションで登場し、依織さんに「お笑い芸人だよ(笑)」と突っ込まれると、「生粋のアーティストなので」と返す場面も。全3曲のコラボを披露した。
まず、歌唱したのはヨミさんと涼菜さん。TVアニメ「STEINS;GATE」のOPテーマ「Hacking to the Gate」だ。力強いヨミさんの歌声と、透明感のある涼菜さんの歌声。少し毛色の違う2人の声が美しくユニゾンする。筆者は、個人的に「STEINS;GATE」が特に思い入れのある作品で、今ここでこの楽曲が聞けていることへの感動と歌声の美しさが相まって、つい涙してしまった。
次は、元気いっぱいな声が特徴なカスカさんと依織さん2人による緑黄色社会の「Mela!」。昨年4月にリリースされ、その力強いポップなメロディーと、「スッキリ」によるコロナ禍で活動や発表の場を失ってしまった全国の高校ダンス部を応援するプロジェクト「ひとつになろう! ダンスONEプロジェクト」の課題曲として2020年に流行した楽曲だ。
カスミさん、依織さんそれぞれが自身のYouTubeにてカバー動画を投稿している。間奏の「らららい らららい」のところでは会場全体が一体となって2人と一緒に手を振る。まだ先の見えない情勢が続く中だが、音楽によって少しでも気分が上向きになる。
あっという間にVESPERBELLとのコラボは次で最後に。TVアニメ「僕のヒーローアカデミア」OPテーマである米津玄師による「ピースサイン」をヨミさん、カスミさん、依織さん、涼菜さん4人で熱唱した。
それぞれの個性があふれるオリジナル曲メドレー
この後は、いよいよオリジナル曲メドレー。道明寺ここあさんと、芦澤サキさんは既にリリースしている「Fall in Sunset」と「孤独に咲け」をそれぞれ披露した。
お酒を飲みながら弾き語り配信をしている松永依織さんは、ジャジーな雰囲気でカシスソーダ、カクテルグラスなどの歌詞を散りばめながら片思いの気持ちを歌う「カクテルライツ」。
最初のMCでも「雨にも負けず、風にも負けずここまで来てくれて」と宮沢賢治を引用するなど文学少女な凪原涼菜さんは、雲の隙間から降る太陽の光を意味する「雲透きの詩」。劇場アニメの主題歌のような荘厳な雰囲気で、言葉選びが繊細な小説のような歌詞を丁寧に歌唱した。
長瀬有花さんの「駆ける、止まる」は、まさに有花ワールド全開。タイトルの通り、軽やかなメロディーと区切るような歌い方が特徴の同楽曲。ブリッジでは、語りのようなパートも。印象がコロコロ変わる楽しい曲だ。筆者は、これを聞いたときふと、TVアニメ「世界征服〜謀略のズヴィズダー〜」EDの「ビジュメニア」を思い出した。
サビではオーケストラの指揮者のような可愛らしい振り付けがある。歌う前に観客と振りのレクチャーをして、会場ではオレンジ色のペンライトがきれいに振られていた。
あっという間の2時間 ラストMCで各メンバーが語った言葉
あっという間に2時間が経過。最後の楽曲披露を前にして、それぞれがコメントを残す。
芦澤サキ「ということで、RIOT MUSIC初のリアルバンドオンラインライブ。冒頭でも話したんですけど、足の悪い中、コロナの時期の中ここにお越しくださってありがとうございます。配信を見てくださってる方ありがとう。やっぱりね、来れない人もいるじゃん。距離的に無理だったりとか、いろいろあるじゃん。いろいろな形で多く見せようと思った結果こうなって。初ってことでトラブルもいっぱいあったし、いろいろあって紆余曲折してここにたどり着いたんだけど、ここから始まるということでね。RIOT MUSICの成長をこれから見ていただけたらなって私は思います」
松永依織「私本当にリアルライブやるのが夢で。叶っちゃったんだけど。次の夢は声を出せる現場で。みんな本当に声出したかったと思うけど、よく我慢できた。心の声は聞こえたかもしれない(笑)。間違いなく見てくれたみんなのおかげで最高の一生忘れられないライブになったと思います。みなさんありがとうございました!」
長瀬有花「みなさん本当にね、暖かい応援をたくさんいただきまして。心があったかくなりました。ありがとうございます。これからも長瀬有花、初めて知ったって方もね、よかったら名前覚えて帰ってもらったら嬉しいです!」
凪原涼菜「みなさんの熱を感じながら、こういう風に歌うことができて本当に私幸せでした。ありがとうございます。残念ながら、こういう情勢でもありますし、来れなかった方もいると思いますが、次はもっとおおきなところでたくさんの人に来てもらいたいなと思いますので、これからもよろしくお願いします!」
道明寺ここあ「今回の1stライブなんですけど、本当にみなさん頑張ったと思うんですけど、一番頑張ったのはプロデューサーさんなんです。プロデューサーさんがいなければ、このライブは成立しなかったので、本当にみなさんプロデューサーさんにおっきい拍手をしましょう!
改めてバンドの皆さんも本当にありがとうございました。演奏してくださったバンドの皆さんにも大きな拍手をお願いします!最後に、見てくれた皆さんに向けて。せーの、ありがとうございました!!」
「ここから始まる」RIOT MUSIC これまでを振り返る「Butter-Fly」MVも公開
最後の曲として披露したのは、2007年リリースの嵐「Happiness」。ちょうどライブの直前となる13日にカバーを投稿している楽曲だ。最後のメッセージでサキさんが「RIOT MUSICの成長をこれから見てほしい」と語っていたことが歌詞と重なり、ラストのはずなのに「ここから始まるんだ」という力強い意志を感じた。
ここで、エンドロールも流れ終演かと思いきや、会場全体の拍手が徐々にアンコールを求める拍手へ。本来は、ここあさんが再登場し、アンコールを促すつもりだったとのことだが、想定よりも早く会場が一体となってアンコールを求めた。
配信は終了し、このアンコールはリアル会場限定での披露。20代オタクに刺さるセトリ、アンコールでの最後の楽曲は、まさに「世代」を感じるTVアニメ「デジモンアドベンチャー」の「Butter-Fly」だ。
ここでは、静止画による撮影が解禁に。翌日に投稿したMVでは、ファンが撮影しTwitterに投稿した写真も使われ、これまでの歩みを振り返る映像に。こちらもぜひ視聴してほしい。
アカペラで始まった5人による歌唱。ここあさんがリードし、それぞれのパートが光るユニゾン。第1小節を歌い終わると、バックバンドによる演奏も開始した。「Stayしがちなイメージを染めた ぎこちない翼でもきっと飛べるさ」と、まさにこれから更に羽ばたこうとするRIOT MUSIC始まりのライブの最後を飾るに相応しい最高の選曲だ。
最後に、幕が閉じると会場のプロジェクターには、先日中学校を卒業した道明寺ここあさんの新衣装配信を告知するスライドが映し出される。4月1日。ちょうど新年度が始まる日に新衣装をお披露目するとのことだ。こちらの詳細は後日の発表となる。
オリジナル曲5曲、カバー曲15曲の全20曲に渡るRIOT MUSIC 1st Live「Re:Volt」。それぞれ、メンバーが本当に好きな楽曲であることが伝わってくる絶妙な選曲で、特に20代オタクには、「私/俺のためのセトリだ!」と思えてしまうほどにぶっ刺さるものだと感じた。同ライブのアーカイブは、3月28日23時59分まで視聴が可能。現在、SPWNにてアーカイブ配信チケットを販売中だ。
4月には設立1周年を迎える同事務所。MCで芦澤サキさんもいっていた通り、「ここから始まる」その宣言に相応しい最高のライブだった。今後も、どんな選曲のカバーが、テイストのオリジナル曲が生まれてくるのか、それぞれのアーティストに注目していきたい。
●セットリスト
M1. ETERNAL BLAZE/道明寺ここあ
M2. 創聖のアクエリオン/凪原涼菜
M3. ヴィーナスとジーザス/長瀬有花
M4. Q&Aリサイタル/松永依織
M5. サムライハート/芦澤サキ
M6. さぁ (saxa) /松永依織
M7. 気分上々↑↑ /長瀬有花
M8. CORE PRIDE/芦澤サキ
M9. only my railgun/道明寺ここあ
M10. アンインストール/凪原涼菜
M11. Hacking to the Gate/ヨミ(VESPERBELL)・凪原涼菜
M12. Mela/カスカ(VESPERBELL)・松永依織
M13. ピースサイン/VESPERBELL・凪原涼菜・松永依織
M14. 孤独に咲け/芦澤サキ
M15. カクテルライツ/松永依織
M16. 雲透きの詩/凪原涼菜
M17. 駆ける、止まる/長瀬有花
M18. Fall in Sunset/道明寺ここあ
M19. Happiness/RIOT MUSIC
EC.1. Butter-Fly/RIOT MUSIC
*お詫びと訂正:初出時、「Mela」アーティストの緑黄色社会に関して誤植がございました。お詫びして訂正いたします。(2021年3月25日12時13分)
(TEXT BY アシュトン)