Gugenkaは4月24、25日にバーチャル即売会「バーチャルクラフ特区」をオンライン上で開催する。NTTが提供するソーシャルVRサービス「DOOR」(ドア)を利用し、約140の個人クリエイターがバーチャル空間にブースを構えて、自身の作品を展示・販売する。参加費は無料だ。
コロナ禍以来、大規模な即売会のリアル実施が難しくなってきている一方で、オンラインでのイベントが続々と増えてきている。そして即売会は単に新しい創作物に出会えたり、入手できたりするだけでなく、クリエイターと直接話して作品の好きなところやお礼を伝えられるのがいいところだ。
今回のバーチャルクラフ特区も、出展者が集まる先行体験会を取材したところ、オンラインながらそうした即売会ならではのよさを実感できた。早速レポートしていこう。
●関連記事
・Gugenka、イラスト集や3Dモデルを販売できるバーチャル展示即売会「バーチャルクラフ特区」4/24〜4/25開催
・NTTのソーシャルVR「DOOR」でバーチャル展示即売会「クラフ特区」出店受付を開始
・アンバサダーに九条林檎、東雲めぐ、エピトが就任 Gugenka、「クラフ特区」を4/24、25に開催
・4/24、25開催のバーチャル展示即売会「クラフ特区」、声優・洲崎綾による紹介動画を公開
VR/PC/スマホなど、アクセス方法が多彩!
バーチャルクラフ特区の大きな特徴は、VR/パソコン/スマートフォン・タブレットと様々な端末からアクセスできる点だ。
バーチャルでのイベントというと、VRゴーグルや専用アプリを用意しなければいけないイメージを持つ方もいるかもしれないが、本イベントの会場となるDOORは、WebVRを活用してウェブブラウザーだけで動作するため、準備のハードルがかなり低い。
例えば、VRではSteamVR対応のPC VRだけでなく、一体型のOculus QuestシリーズやOculus Goでも参加可能。パソコンならWindows端末とMacなど、スマホでもiOS端末とAndroidなどと幅広い。
この参加のスタイルを選べるのは、イベントに少し興味を持った人にとって嬉しい要素のはず。機材の有無だけでなく、例えばバーチャル世界への没入感を求めるならVR、マウスとキーボードで座りながらならパソコン、寝ながらダラダラ見たいならスマホといった感じで、ニーズに合わせて端末を変えられるのは便利だ。
個人的には、PCでの閲覧がFPSゲームのような操作でさくさくルームを巡れてよかった。VRではバーチャル空間に手が現れて、例えばコントローラーを振って挨拶するなど非言語的なコミュニケーションできる点が、スマホではピンチイン/ピンチアウトで前後移動、左右スワイプ視点切り替えという移動操作がそれぞれ気持ちよかった。
一方でDOOR自体が2020年11月スタートのまだ発展途上なサービスなので、操作のコツを覚えておくといいとも感じた。この辺は後述しよう。
人と人とのつながりを生む即売会の楽しさ
そうした参加ハードルの低さの先に、クリエイターと直で話せるという楽しさが待っている。
今回の一般出展エリアは、「現代エリア」(C)、「SFエリア」(S)、「ファンタジーエリア」(F)、「和風エリア」(J)とジャンルで大きく4つに分けられている。出展者一覧はこちら。
さらに一般出展者とは別に、「アンバサダーエリア」には、九条林檎さん、東雲めぐさん、エピトさん、「ゲストエリア」には、おきゅたんbotさん、zenさん、リーチャ隊長さん、VR蕎麦屋のタナベさん、オレンジさんが、「Gugenkaエリア」には、Gugenka CEOのしばぱぱ(三上昌史)さん、CTOのキラドラゴン(キラプーン)さん、クリエイターのjyukoさん、サボンテさん、らげたけさんがそれぞれ出展。さらに休憩エリアの「おしゃべりエリア」も用意する。
ユーザーはログインするといったんロビーに入ったうえで、35に分けられた別の部屋(ルーム)に飛んで、各ブースを閲覧することになる。1つのルームには最大で4つのブースを用意。期間中は、出展者が任意で店番をしている「セミコアタイム」と必ずいる「コアタイム」を設けている。つまりコアタイムに訪れれば、クリエイターに会えるということだ。
●4月24日(土)
・開会式 10:30〜11:00
・セミコアタイム 11:00~15:00
・コアタイム 15:00~17:00
●4月25日(日)
・セミコアタイム 11:00~15:00
・コアタイム 15:00~17:00
・閉会式 17:00〜17:30
冒頭でも触れたように、一般的に展示会や即売会は、仲のいい友達に挨拶しに行くだけでなく、ふらっと回って自分好みのジャンルや作品に出会えるのも楽しさのひとつだろう。そうして趣味の合いそうな出展者に声をかけたら、知り合いの知り合いだったりして仲良くなる……というのもよくある話だ。出展者同士でも、たまたまブースが隣になったことをきっかけに話が弾み、コラボなどにつながることもある。
企業にとっては、新しい才能を探す場してもぴったりだ。クリエイターの中には、新しいジャンルに手を出したいけど、普段の仕事は関係ないので、まず趣味としてやってみるという方もいるはず。各ブースはある意味、実力を示すポートフォリオなわけで、リアルの即売会が作家やイラストレーターの発掘の場になっているように、CG関連の仕事につながるかもしれない。
バーチャルクラフ特区は、例えオンラインの開催であっても、そうしたつながりを生み出す力があると感じた。
今回ざっと会場を見回したところ、VRChat勢やアンバサダーのファン、VTuberといった方々を中心に、多様な方々が出展している印象を受けた。そして取材でいろいろお話ししたところ、VR空間での創作という最先端のジャンルに挑戦している人々なだけであってたくさんの刺激をもらえて、自分もがんばろうというエネルギーをもらえた。
DOORは、ウェブブラウザーで動作するぐらいに軽いサービスで、ひとつの空間には最大25人が収容可能だ。今回もロビーではあちこちで同時に会話が起こっており、それを耳にしているだけでも楽しかった。ちなみにルームにいるユーザーの音量を個別に調整できる機能も、会話したい人を聞こえやすくできて便利だった。
そもそもブースにCGが立体で並べられるということ自体も、バーチャルの展示会ならではで興味深い。リアルの展示会でCGの立体を展示しようとすると、ディスプレーを利用して平面的に見せることになるが、バーチャルなら立体のまま展示できるうえ、観る側が回り込んだり近づいたりして細部を眺められる。中にはアニメーション付きの立体を展示しているブースもあって、とてもバーチャルの特性を活かしているのが面白いと感じた。
展示しているアイテムにはリンクを仕込むことも可能で、クリックしてウェブブラウザーの別タブでリンクを開き、例えばBOOTHなどでグッズを購入できる。単純に作品を見てクリエイターと話すだけでなく、買って支援することもできるわけだ。
140というブースは膨大で、じっくり見たり、話し込んでいたりすると、2日間フルで回っても全部見切れないかもしれない量なのだが、ぜひ興味の赴くまま回ってほしい。
ポップアップブロック解除など、スムーズに閲覧するコツ
イベントの魅力を語ったところで、アクセスする際の諸注意にも触れておきたい。
まずパソコンやPC VRでは、ウェブブラウザーに「Firefox」を導入しておこう。WebVRを中心となって開発してきたMozillaが手がけるブラウザーなので動作が安定する。
VRでもPCでもスマホでも、ウェブブラウザーのポップアップブロックを解除しておくことが必須になる。ルームを移る際、別ウィンドウが開く仕様のため、ポップアップをブロックしていると移動できなくなる。なお、HTC VIVEなどのPC VRでは、部屋を移動する際にうまく動かない場合、いったんVRゴーグルを外してPCのディスプレー側でマイクの利用などを操作することになる。
ルームを移動した際、相手の音声が聞こえないというケースでは、マイクが古いウィンドウ側で認識されている可能性がある。元のルームのウィンドウを閉じて、新しいルームを再読み込みすると聞こえるようになるケースがあった。
またルームは、移動すると古いウィンドウ側のセッションが自動で閉じられる仕組みなのだが、グッズを購入するために別ウィンドウを開いてBOOTHなどの外部サイトに飛ぶと、今訪れているルームのセッションが切れることがあった。これもセッションを切らないように指示したり、ウェブページを再読み込みすればいい。
PC VR(Valve Index)で閲覧した際は、地面に体がめり込んで極端に視点が低くなってしまうこともあった。DOOR内で身長をリセットする機能はないため、起動時に頭にかぶるなど体験する位置にVRゴーグルを置いておこう。また1度だけ、ジャイロセンサーが狂ったように視界がぐるぐる回る不具合にも遭遇したが、これは再ログインしたら直った。
ソーシャルVR自体がまだまだ発展途上中で、どのサービスでも「あちらを立てればこちらが立たず」という状況がある。今回のDOORは、なるべく多くの端末で気軽にアクセスできるところがメリットなのだが、そもそも特性が異なる機器で同じ体験を目指すこと自体が難しいことだ。サンプルブロックを公開しているので、事前に試しておくと当日の入場もスムーズにいくはず。対策がわかればすぐにリカバリーできるし、今後、どんどんよくなっていくはずなので、長い目で見ておくといいだろう(DOORのFAQはこちら)。
長い目という点では、バーチャルクラフ特区の出展者も同じだろう。今回、初めての試みなわけで、同じブースに手を加えていって、またバーチャルクラフ特区が開催されるときにパワーアップして出展することもできるわけだ。リアルで必要なイベントごとの設営/撤収をせずに、同じものをアップデートして作り込めるのもバーチャルならではのよさだろう。
今回は国内中心だが、オンライン展示会だからこそ今後、海外クリエイターが参加できる余地があるのも可能性を感じさせる。古くは「六角大王」や「Shade」、近年では「MikuMikuDance」などのツールで培われてきた日本の趣味3Dクリエイターが、海外からの来訪者にどう評価されるのかも気になるところだ。
VRゴーグルがじわじわ普及してきて、コロナ禍の影響でソーシャルVRにも注目が集まってきている今。ぜひ、バーチャルクラフ特区の会場を訪れて、気鋭のクリエイターたちの想いを体験しておこう。
(提供/Gugenka、TEXT by Minoru Hirota)
●関連リンク
・クラフ特区公式サイト
・DOOR