Meta Japanが主催で27、28日に開催したメタバースをテーマにしたイベント「METAVERSE EXPO JAPAN 2022」(オープニングセッションのレポート)。イベントは企業間や産官学の「共創」をテーマにしていたが、その実、Metaは日本市場をどう捉えているのか?27日早朝に発表したQuest 2の値上げも含めて、気になる最近のトピックをMeta Japanの代表取締役・味澤将宏氏に会場にて共同インタビューを行った。
実は「あの」Gear VRの発表会会場にもいた
──今回のイベントについて、ゴールはどこにあると考えていますか?
味澤氏 メタバースは1社で作るものではなく、オープンにインターネットのような形でつくっくっていくものだとわれわれは考えています。そんな中、今回のEXPOはテーマを「共創」に置きました。これは仕組みやコンテンツをみんなでつくっていくだけでなく、ルールメイキングも行っていくことを意味します。産官学で集まって、メタバースの将来、特に日本からメタバースを推進してく、その話せる場を作るというのが今回の趣旨です。
──メタバースを広めていくにあたって、現実世界とメタバースの関係ををどう発展させていきますか?
味澤氏 まずメタバース自体が、バズワード的になっている現状がありますが、実際には始まったばかりで、今後5〜10年かけて発展させていくものだと考えています。現在、MRのプロトタイプだとか、開発向けのSDKを出したりして、現実とバーチャルの世界を行き来できる、そういったメタバースを作っていくためにはまだまだ課題も多いと思っています。
例えば、通信速度やインフラ、ハードウェアの装着感といた課題があって、そういったことを今後解決するひとつの手段として、ハイエンドなヘッドセット(Project Cambria)を今年中にリリースしたりします。そうしたことも含めて、みんなで進歩させていくことで、理想としているメタバースに近づいていくことになると考えています。
──メタバースの発展にはハードウエアの普及が必須と思われます。理想の出荷台数に対して、今、どれくらい御社のハードウェアが広まっているか教えてください。
味澤氏 まだ始まったばかりだと思っていますが、ただ、日本に関していうと、われわれのQuest 2の販売台数は伸び率も高いですし、グローバルの中でも大きな市場になっている。そして、ユーザーに非常に熱心に使っていただいている、いわゆるエンゲージメントの高い市場です。なのでどちらかというと出荷台数を伸ばすというよりは、われわれの提供するテクノロジーを活用してもらったユースケースが先に広まっていくことが重要なのではと思っています。
ジャンルとしては今、ゲームやエンターテインメントが主要になっていますが、働き方や教育、医療・福祉などの分野でも、離れている人と人とがつながれることで生まれるメリットがあると思っていて、そうしたユースケースが広まっていくことで自ずと一般的になっていって、結果として出荷台数も増えていくものだと思っています。なので、台数を増やすことだけを目指しているわけではありません。
──27日早朝のタイミングで、Quest 2の価格改定がありました。苦渋の決断だと思いますが、為替レートの変動などもあってだいぶ高く感じます。その価格が決まった背景を教えてください。
味澤氏 サプライチェーン問題で製造コストが上がっている、日本に関しては以前に比べて為替レートの差額が大きくなっていますが、日本に関してはメタバースへの投資をわれわれ続けていきたいということで、価格を調整させていただいたというのが実際のところです。
──オープニングのセッションにて開発者やクリエイターを支援していくという話が出ていました。日本にもVRやメタバースの分野で個人開発者が多くいます。そうした方々もMetaは支援していく予定はありますか?
味澤氏 それが開発者なのか、クリエイターなのかという捉え方の違いはあるかもしれないですが、サステイナブルに、エコシステムとしてメタバース上で創作活動ができる、開発ができることが重要だと思っています。
こうした支援は、メタバースに限らず、既存のInstagramやFacebook上でのクリエイターも含めてわれわれは展開しています。今お聞きした内容はそちらに近いかなと感じました。教えるということも含めて、単純にお金だけを出すいうことではなくて、健全なエコシステムを構築していく支援をしていくということです。
──話が変わってしまいますが、味澤代表が過去に体験されたVRやメタバースのコンテンツで、これは価値観が変わったというものはありますか?
味澤氏 最初にQuest 2を使ったときです。中には重いと思われる方もいるかもしれませんが、「この軽さで、この解像度で、この動きか」と、すべてがセットになっていることに驚きました。実は2016年、サムスンがFcebookと組んでスマホ向けのVRゴーグル「Gear VR」を作り、バルセロナで発表会を行ったときにもその場にいたんです。
──なんと! あのみんながGear VRをつける中、ザッカーバーグ氏が歩いてる写真で知られる場にいたとは!
味澤氏 ええ。あのときから比べると、ここまで進化したかという感慨深さはあります。あとはいろいろな方からお話を聞く中、例えばVRアーティストのせきぐちあいみさんから、お年寄りに使ってもらうと、彼らが自分ができない体験ができるようになったと非常に喜ぶというエピソードも教えていただきました。
そうした話を聞くと、お年寄りだったり、障害がある方が新しいコミュニティー、今まで参加できなかったコミュニティーに入っていける、しかも国境を超えてコミュニケーションできるというのは、今までにない世界だなと感じます。まさに我々がやろうとしているコミュニティーを支援するということの延長線上で、非常に飛躍した世界になると思っています。
──お話を聞いていると、今はギークだったり、アーリーアダプターが中心に触っているVRやメタバースについて、より一般の人にも魅力を知っていってほしいという思いを感じます。
味澤氏 そうですね。インターネットが始まった時のワクワク感に近いものを感じています。
──今、メタバースがバズっていて一番注目されているタイミングだと思われますが、今後、5年や10年と継続させていくために、Metaはどう取り組んでいくのか教えてください。
味澤氏 インターネットの黎明期も似ていて、例えば、パソコン通信とか、AOLのようなクローズドなサービスがいくつかありましたが、インターネット自体がオープンなのでやっぱり上手くいかなかった。それと同じでオープンな経済環境、そしてオープンに技術にアクセスできる、みんなでルールメイキングしていけるいうことが非常に重要で、だから今回のテーマとして「共創」を掲げています。そこが何か早い者勝ちで領地を抑えるみたいな発想になると、なかなか広がっていかない。なのでオープンなメタバースを作っていくのが鍵だと思います。
(TEXT by Minoru Hirota)