Meta日本法人Facebook Japanは12月15日、「VRを活用した未来の福祉プロジェクト」を発表。福祉の現場でXR活用の研究を行う登嶋健太氏と自治体が連携し、福祉領域におけるVRやARテクノロジー活用の可能性を発信することが目的だ。
VR空間で疑似旅行を行う「VR旅行」の体験および、VRコンテンツ撮影のワークショップを通じて、シニアの地域社会とのつながり強化と、コミュニティづくりをサポートする。盛岡市・神戸市の2都市で2023年1月以降に実施される予定だ。施設で体験する場合は、懐かしい場所や訪れたことのない名所を、VR空間で楽しむこともできるそうだ。
Facebook Japanはこれまで、Meta Quest 2などのVRヘッドセットの提供や共創によるメタバース構築に向け、2022年7月に実施したMETAVERSE EXPO JAPANへの登壇などの活動を、登嶋氏とともに行っていた。
本プロジェクトには、XRテクノロジーの健康・福祉や教育といった分野への可能性への期待が背景にあるそうだ。高齢化に直面する日本で、VRやARが今後どのように社会にポジティブな影響を与えられるか、特に福祉領域における活用について発信していくと言う。
発表会当日は、老年医学や虚弱予防を専門とする東京大学の教授・飯島勝矢氏を迎え、「VRを活用したこれからの福祉」と題しトークセッションが行われた。
飯島氏は、高齢化社会の現状を踏まえて、「健康寿命を伸ばして健康で居続けるためには、社会性や人とのつながりが必要である」と話し、「テクノロジーを活用することで健康で居続けるために必要な地域社会との交流ができ、さらにつながりづくりに取り組める」と、本プロジェクトへの期待を述べた。
今後のVRの可能性やどのように活用されるべきかについて、登嶋氏は「高齢者だけでなく、VRを活用して世代間を超えた交流も生んでいきたいです」と言い、飯島氏は「物理的に離れていても、人とつながり続けて欲しいと思っていて、人とのコミュニケーションがまるで自分がその人たちと一緒にいるかのような経験ができるようになることに期待したいです」とコメントした。
登嶋氏は「Metaのプラットフォームを活用することで、オンライン上でコンテンツを共有し、感想を伝え合うなどの、コミュニケーションの幅が広がっていくことに期待しています。また高齢者だけでなく、若い世代にもVRの良さを発信していきたいです」と意気込みを語った。
●自治体からのメッセージ
岩手県盛岡市 市長 谷藤 裕明 氏
「Facebook Japan株式会社様とは令和元年7月31日に「地域経済及び地域コミュニティ活性化の事業連携に係る覚書」を締結して以来、SNSの活用に関する事業に多大なる御協力を賜りましたことに対し、この場をお借りしてお礼申し上げます。本市では今年度「盛岡市デジタル化によるまちづくり推進戦略」の策定を行っており、社会福祉分野におけるデジタル化の推進、VRやメタバースを活用した本市の魅力の発信についても、推進をすべき内容と捉えております。本取り組みでの連携を、本市におけるVRやテクノロジー活用推進の一助としたいと考えております」
兵庫県神戸市 企画調整局政策課 スマートシティ担当係長 竹村 健 氏
「「市民のプラスになること」これを神戸市では重視してスマートシティの取り組みを進めています。本プロジェクトで福祉領域におけるVRやARテクノロジー活用の可能性を一緒に模索させて頂き、市民にテクノロジーの恩恵をしっかりと感じて頂けるものになれば幸いです。また、多世代間交流の活性化やスマートシティにおけるメタバースの意義についても意識し、様々な取り組みへの波及効果も視野に入れることができればと考えています」
●ゲスト登壇者プロフィール
東京大学先端科学技術研究センター稲見・門内研究室
一般社団法人デジタルステッキ 代表理事
登嶋 健太 氏
1986年、神奈川県横浜市生まれ。高校卒業後、専門学校を経て柔道整復師として接骨院に勤務。2012年に高齢者介護施設に転職し、2014年からVR旅行サービスを開始する。2017年に総務省異能vationジェネレーションアワードで特別賞を受賞。2018年4月から、東京大学先端科学技術研究センター稲見・門内研究室学術専門職員。
東京大学 高齢社会総合研究機構 機構長・教授
東京大学 未来ビジョン研究センター 教授
飯島 勝矢 氏
1990年 東京慈恵会医科大学 卒業、千葉大学医学部附属病院循環器内科 入局、東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座 助手、同講師、米国スタンフォード大学医学部研究員を経て、2016年より現職の東京大学高齢社会総合研究機構教授。
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