あの超豪華サプライズゲストたちも参戦! 月ノ美兎2ndワンマンライブ「Paper Rabbit」レポート

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4月18日(金)東京のJ:COMホール八王子で、「にじさんじ」所属のバーチャルライバー月ノ美兎さん2ndワンマンライブ「Paper Rabbit」が開催された。

2021年11月16日(火)の「月ノ美兎は箱の中」以来となる3年半ぶりのワンマンに臨んだ「にじさんじの先駆者」は、音楽活動開始以降、進化し続けるボーカリストとしての魅力だけでなく、デビュー時からブレることのない「エンタメの化身」の本領も存分に発揮。ピーナッツくんぽんぽこさん電脳少女シロさんという「にじさんじ」外からの超豪華サプライズゲスト3人を含む8人のゲストらと共に、音楽ライブの枠を超越するエンターテインメントショウを展開した。

この記事では、会場で撮影されたオフィシャル写真やネット配信(ニコニコ生放送)のスクリーンショットと共に、現地での体験をレポートしていく。なお、ニコニコ生放送のタイムシフト映像は、2025年5月9日(金)の23時59分まで視聴可能だ


2ndワンマンは「アンチグラビティ・ガール」で開幕

JR八王子駅から歩いてすぐのビル4階にあるJ:COMホール八王子。ホールの中に入ると、正面のステージは大きな紗幕で塞がれており、中央にライブロゴが映っている。

開演時間、ほぼジャスト、聴こえてきたのは今年の2月19日(水)にリリースされた1stミニアルバム「310PHz」の収録曲「アルクユニバース」。実写映像の中を月ノさんが歩き、ユーザーの選択肢によって行き先も曲の内容も変化していくゲーム形式のMV「アルクマルチバース」でも話題になった楽曲だ。

紗幕には、最初の選択肢で「駅に向かう」のルートを選んだ時の映像が投影。しかし、多摩川駅から電車に乗った月ノさんが降り立ったのは、筆者も先ほど通ってきたばかりの八王子駅。「アルクマルチバース」には、収録されていない映像に会場がざわつく。駅から徒歩すぐのビルに入り4階まで上った月ノさんは、楽屋口らしき扉から会場に入り暗い舞台裏へと進んで行く。

そして、「月ノ美兎、2ndワンマンライブ『Paper Rabbit』」という本人によるタイトルコールの後、紗幕が一気に下ろされると、1stワンマンで初披露された詰め襟風アーティスト衣装姿の月ノさんが登場。代表曲の一つ「アンチグラビティ・ガール」の冒頭、「イエーイ」のロングトーンを高らかに響かせる。

紗幕の奥に隠れていたのは、4枚のディスプレイ。中央に横長のディスプレイが上下に2枚、「凸」の形のように並べられ、左右の少し高い位置に縦長のディスプレイが1枚ずつ配置されている。メインのステージとなるのは、中央下の最も大きなディスプレイ。この曲では、上段のディスプレイには、映像と共に大きく歌詞も表示されている。本公演では、この4枚のディスプレイの活用の仕方も巧みで、ステージ演出の肝になっていた。

これまで月ノさんが出演したライブを何度も鑑賞し、その大半でレポート記事を書いてきたのだが、毎回のように繰り返してきたのが「歌唱力がさらにレベルアップしている」という感想。今回も1曲目から同じ感想が頭に浮かぶ。特に歌声の出力が大きくなっている。ラストのロングトーンが最も印象的で、この後のパフォーマンスの中でも、出力アップに伴う歌声の安定や表現の広がりを感じる場面は多かった。

2ndワンマン最初の曲を歌い終え、満面の笑顔でテンション高く「起立! 気をつけ! こんにちは、月ノ美兎です!」とお決まりの挨拶をした月ノさんは、客席からの歓声に「声がある~」と感動。2021年の「月ノ美兎は箱の中」では、客席からの声出しは禁止されていたため、月ノさんにとっては、観客と声で掛け合いができる初めてのワンマンライブなのだ。最初のMCでは、オープニングの映像が、この日のために作った特別版「アルクペーパーバース」であることを紹介。そして、1stワンマンの最後の曲「アンチグラビティ・ガール」を2ndワンマン最初の曲に持ってきたことも説明し、3年半ぶりのワンマン開催をファンと共に喜んだ。


サプライズゲストのぽこピーも登場!

客席の声出し練習をした後の2曲目、ラジオ番組風の楽曲「みとらじギャラクティカ」では、お悩み相談を送ったリスナーとしてゲストの笹木咲さん椎名唯華さんも声だけで登場。

さらに、この曲のお約束アイテムである洗濯機がステージ中央に現れると、客席から大きな歓声が上がる。なぜかシュレッダー機能も搭載された洗濯機に、配信から生まれたモンスター的存在で「謎ノ美兎」の立て看板を強引に突っ込む月ノさん。すると、これもこの曲のお約束で洗濯機が爆発。

バラバラに散らばった紙くずが、実際に観客の上にひらひらと降り注ぐ。一方、大きな煙に包まれて吹っ飛んだ月ノさんはよろよろと立ち上がり、歌を再開するが、その姿には何か違和感がある。違和感の理由に気づくのとほぼ同時に客席からも驚いたような歓声が上がる。ロングのストレートだった月ノさんの髪がくるくると丸くなり、縦ロールのツインテールに変わっていたのだ。

サプライズ披露された新髪型のまま歌う3曲目は、ミニアルバム収録曲「恋星ペリコ」。ラジオ企画「みとらじ」に届いたリスナー「H.N ペリコ」の投稿が元ネタという異色の出自を持つ曲で、オンラインゲームで生まれた淡く幼い恋を綴った歌詞は、まるで完成度の高いショートショートのような物語性も持っている。リスナーの黒歴史から生まれたはずなのに、どこか切ない世界観は、ウィスパー気味で甘く優しい月ノさんの歌声にもマッチしていた。ステージには白いカーテンが登場し、時折、月ノさんはその裏側へと移動。歌詞に合わせて、バスタブを使った入浴シーンやブーケを被っての結婚式などがカーテン越しにシルエットで表現されていった。ツインの縦ロールは、シルエットで動いた時にもよく映える。

オープニングから3曲続いて、凝りに凝った演出と月ノさん自身の高いパフォーマンス力に魅了された後、一旦、無人になったステージに、「にじさんじフェス」などでも人気の着ぐるみ「みとちゃん」が登場。歓声と共に、会場の空気が一気に緩くなった。

まるで月ノさんが少しヘリウムガスを吸ったような声のみとちゃんは、これから歌を歌うけれど、一人じゃ寂しいからお友達を連れてきたと話し始める。早くもゲストコーナーのスタートだ。同期の静凛さんと樋口楓さんは、序盤に登場するとは思えないため、おそらく椎名さんと笹木さんの「さくゆい」が着ぐるみで登場するのだなと、確信に近い予想をしながらステージを観ていると、月ノさんと観客からの「出ておいで」という声に応えて現れたのは、まさかのサプライズゲスト。個人勢屈指の人気を誇り、着ぐるみの姿でも活動するVTuberの第一人者でもある「ぽこピー」の二人、ぽんぽこさんピーナッツくんが登場したのだ。

開幕から何度も驚きの声を上げていた客席からは、これまでとは数段違う特大ボリュームの声が聞こえて来た。3人は、児童向け番組をネタにした楽曲「こころのアビッシー」を披露。個性の尖った曲ばかり揃うミニアルバム「310PHz」の中でも特に異彩を放つ曲だが、3体の着ぐるみが可愛く踊りながら歌うステージで披露するには、ぴったり。月ノさんは、この光景もイメージしながら「こころのアビッシー」を作ったのだろうか。4枚のスクリーンに映る映像の中では、可愛い兎と一緒に、アニメ「オシャレになりたい! ピーナッツくん」に登場する相棒のチャンチョも踊っている。2本足で立って踊る兎の姿は可愛いが、妙に人間臭い動きは少しシュールで不安も誘う。

中盤の悪夢のようなパートでは、謎ノ美兎が登場。二人の謎ノ美兎が何をしでかすのかドキドキしながら見ていると、サビのフレーズ「オンドゥルアビッシー」(蘇生の黒魔術らしい)の時、手に持っていたスケッチブックを開き、「みんなも一緒に」と客席にアピール。ずっと敵対してきた謎ノ美兎が月ノさんのライブを盛り上げようとしている姿に驚き、危うく感動しそうになってしまった。

3人でのMCが始まると、咳が止まらなくなったピーナッツくんは、みとちゃんとぽんぽこさんが心配そうに見送る中、一旦、舞台袖に退場。ステージに残った二人がゆるいトークを続けていると、ピーナッツくんのうなり声と共に会場が暗転。明かりが回復すると、ステージの上には、血まみれのピーナッツくんが倒れ、無惨に開いたお腹の穴からは、3人目の謎ノ美兎が現れていた。

不敵にウォーミングアップを始める3人を撃退するため、武器を探して舞台袖に移動するみとちゃんと、付いていくぽんぽこさん。ピーナッツくんの亡骸(抜け殻)は、二人の謎ノ美兎が回収し、なぜかステージには、謎ノ美兎が一人で残る事になってしまった。

ステージを左右に大きく使いながら、身体の動きだけで客席を沸かせる謎ノ美兎。月ノさんのファンで埋まっているはずの客席は、異常にパフォーマンス力が高い謎ノ美兎の虜になってしまったようだ。ステージの中央にスッと立ち、右手の拳を天に突き上げると、客席から「かっこいいー!」と歓声も上がる。

背後のスクリーンが炎に包まれた後、制服姿の月ノさんと3人の謎ノ美兎も登場し、5曲目「ルナティックウォーズ」のパフォーマンスが始まった。両手に小型の斧を持って歌いながら4人の謎ノ美兎と戦う月ノさん。スクリーンの中と、リアルなステージ上という次元を越えた戦いながら、お互いに攻撃を繰り出す位置とタイミングが奇麗に合っているので、正面から観るとヒーローショーのようなバトルが繰り広げられていた。月ノさん、今度は殺陣まで身につけたのか。


レゲエのすがたも現われた「てんやわんや、夏。」

月ノさんの奮闘にもかかわらず、4人でステージに陣取りエアギターをやるなど、やりたい放題の謎ノ美兎。さらに、左側のスクリーンに巨大な謎ノ美兎が現われたと思うと、巨大な下半身が中央のスクリーンの上から下へと落下。月ノさんは、悲鳴と共に踏み潰されてしまった。

スタンディか、最初期のLive2Dのようにペラペラの姿になってしまった月ノさんは、シュレッダーで存在ごと消されそうになり、観客に力を借りようとする。「会場の皆さん、お願いします。わたくしの名前を呼んでください!」という呼びかけと、スクリーンに表示された「思い思いに月ノ美兎の名前を呼ぼう」というメッセージに反応し、大きな声を上げる観客たち。そんな熱い応援を糧にして「月ノ美兎、満を持しての3D化だー!」という雄たけびと共にZ軸を取り戻した月ノさんは、全身から炎のようなオーラを放ちながら謎ノ美兎カルテットと巨大な謎ノ美兎を撃破。これまで以上の力強さで叫ぶように歌い始める。音の響きもまさに厚みを増しており、ボーカルの出力アップを特に実感したパフォーマンスの一つでもあった。

無人となったステージに、「良すぎて泣いたわ」とコアな月ノ美兎ファンのような感想を言いながらぽんぽこさんが登場。観客と一緒に二人の名前を呼ぶと、3Dモデルの小さな姿になって復活したピーナッツくんと、月ノさんが再登場した。3人での短いMCの後、ぽんぽこさんは退場。

6曲目は、月ノさんとピーナッツくんのデュエット曲で、ピーナッツくんの4thアルバム「BloodBagBrainBomb」収録曲でもある「Birthday Party」。ピーナッツくんの熱い煽りに、MCでまったりムードになっていた会場が瞬間沸騰すると、月ノさんは思わず「慣れてるわー」と感嘆の声を洩らす。まったく混じり合わないけれど、相性抜群な二人の歌声で会場はさらに盛り上がって行く。

ヒップホップ界でも注目されているアーティスト・ピーナッツくんが作った曲に続く7曲目は、2020年9月、笹木咲さん椎名唯華さんが月ノさんの誕生日記念配信に向けて深夜テンションで作った「委員長おめでとうの歌」。「Birthday Party」を聴き、月ノさんの誕生日だと勘違いをした二人が強引に乱入して歌い出すという繋ぎも面白い。

そして、この3人がステージに揃えば、次に披露されるのは当然、衝撃の実写男性コスプレMVで話題を集めた「てんやわんや、夏。」。作曲者の弦月藤士郎さんもDJとして登場するスペシャルバージョンだ。

歌う4人の頭上のスクリーンには、月ノさん、笹木さん、椎名さんのコスプレをした成人男性たち通称「レゲエのすがた」の3人が可愛くはしゃぐMVも流されている。さらに、途中からは、1階客席の後方からレゲエのすがたの3人が登場。

第二のサプライズに、またも大きな歓声が起こる。バーチャルYouTuberのライブに来た観客が、女子校生のコスプレをしたおっさん3人の登場に大歓喜しているのは、おかしな状況な気もするが、これぞ月ノ美兎ワールドと納得もしてしまう。

にじさんじライブの名物、ARカメラを使った記念撮影後の9曲目は、久しぶりに月ノさんがソロでパフォーマンス。ミニアルバム収録曲「人ってただの筒じゃないですか」を披露した。上のスクリーンには、可愛く踊る月ノさんなど描いたアニメーションMVが流れ、下のスクリーンにいる月ノさんは、MVとシンクロするようにダンス。左右のスクリーンは、基本、全身が映り、ダンスでも魅せたい楽曲なのだと分かる。

それでも、力強く伸びやかな歌声は、常に安定していた。また、このステージが初披露だったMVは、動きを含めて非常に可愛く、月ノさんのYouTubeチャンネルで公開後、繰り返し視聴している。

10曲目は、月ノさん、樋口楓さん静凛さんの同期ユニット「JK組」のオリジナル曲「NEVER GLOW UP」。制服姿の3人が登場した瞬間の客席の反応で、結成7周年を越えた今も変わらないJK組の人気が分かる。3人が永遠にJK組ならば、我々も永遠にJK組のファンなのだ。JK組の本質を語り、鋭く斬り込みそうでもある歌詞は、ライブで聴くとさらに面白い。

中盤では、「ちょっと着替えまーす」という歌詞に合わせて、それぞれのステージ衣装に早着替え。後半、回線トラブルが起きるパートでは、VTuber文化の初期、たまに見たことあったような配信事故レベルの全身大回転を披露するなど、演出面の遊びの幅も広く、惹きつけられる。

3人でのMCでは、月ノさんが「Paper Rabbit」というライブタイトルの由来も披露。デビュー当時は、紙のようにペラペラなLive2Dの体だった自分たちが、3Dモデルの体で豪華なライブも開催できるようになったことへの感謝も語っていた。


第2のサプライズゲストは、電波少女シロ

少し不穏な言葉を残して樋口さんと静さんが退場した後の11曲目は、怖い話にまつわる曲と紹介する月ノさん。白い布を被った4人の幽霊ダンサーと共に披露したのは、ミニアルバム収録曲「百cd融怪点」。歌詞やメロディーに沿った歌声のバリエーションの豊富さや、巧みなラップ、そして、終盤のロングトーンには驚かされ、恐怖とは違う感情で背中がゾクッとした。

ミュージシャン原口沙輔さんとのコラボ曲「贋ト旧称」では、全身にLEDを貼りつけた二人のダンサーと一緒にパフォーマンス。会場の照明が消えると、アーティスト衣装の白と青のラインだけが発光し、両手の軌跡が残す光と共に幻想的な光景に。「人ってただの筒じゃないですか」と並んで、ダンスが強く印象に残る曲だった。

そして、13曲目では、おそらくほとんどの人がまったく予想していなかったスペシャルなサプライズゲスト電波少女シロさんが登場。月ノさんが以前からファンだと公言し、VTuber活動を始めるきっかけにもなった存在と一緒に、二人も出演したTVアニメ「バーチャルさんはみている」のオープニング曲「あいがたりない」を披露した。

間奏で「大好きだー」と叫ぶなど、いつものようにテンションの高いシロさんは、MCで「VTuber界では化石でしかない」と自虐的に自己紹介。さらに、「美兎ちゃんの一般通過リスナー」と語り、月ノさんを焦らせる。トークの主導権は、ずっとシロさんが握っている状況だ。

「私のこと、好きだったりするんですか?」という可愛い問いかけに、「好きどころか、親」と返す月ノさん。月ノさんを観て、にじさんじに入った、いわゆる「美兎チル(ドレン)」は、「シロさんの孫」とまで語り、その存在の大きさを伝える。また、シロさんが「美兎チル」の一人であるリゼ・ヘルエスタさんと月ノさんの仲の良さに焼きもちを焼くような素振りを見せると、即座に「遊びです」と返答。シロさんと会場を爆笑させた。

全ゲストも揃っての第14曲目は、機材トラブルで一時中断、しかし、会場からはすぐに大きな「月ノ」コールが巻き起こる。トラブルを乗り越えて、9人で歌ったのは、人気ボカロ曲「一千光年」。9人の歌声の重なりと曲調や夜空の流れ星を描いた映像演出の力もあり、まるでフィナーレのような盛り上がりだった。

ゲスト全員が退場し、ステージの中央に一人立つ月ノさん。そこに聴こえてきたのは、にじさんじ最初の全体曲「Virtual to LIVE」のイントロだ。にじさんじ一周年を記念した楽曲で、かつてはにじさんじの全体ライブのクライマックスには欠かせない名曲だったが、7周年を迎えた今、全体曲のレパートリーも増え、「今回は、『VTL』が無かったな」と思う機会も増えてきた。個人的に、そんな「VTL不足」な状況だったところに、まさかの月ノさんによる「国歌独唱」は、二組のシークレットゲストの登場と並ぶくらいに嬉しいサプライズ。やはり、にじさんじの象徴には、にじさんじの国歌がよく似合う。

そして、ライブ本編最後の16曲目は、月ノさんとにじさんじにとっての1stオリジナル曲「MOON!!」。完全に古参ファンのとどめを刺しにきたセットリストだ。「VTL」からの繋ぎも心地良い。デビュー当初からの魅力的な声に、年々、成長してきた歌唱力が加わって披露された2025年の「MOON!!」。左右のスクリーンに懐かしい映像が流れる中、ステージで歌っているのは、間違いなく清楚なバーチャルアイドルだった。終盤、夜空に浮かぶ三日月を見上げる姿は、この構図のために二段積みのスクリーンにしたのかと思うくらい美しい絵になっていた。


アンコールで最新のファンメイド曲も披露

「一旦、バイバイ!」と退場した月ノさんは、アンコールを求める声の中、ステージに再登場。すると、観客の声が歓喜から驚きに変わる。上のスクリーンがあった場所に月ノさんの巨大なバルーンが現われたのだ。

巨人のような自分に見下ろされながら、1stアルバム収録曲の「光る地図」と、1stミニアルバム収録曲「寝言は寝て言え」を歌い上げた月ノさんは、客席に背を向けて呪文のように何度も「バーチャルの夢」と繰り返しながら、ジャージ衣装姿に変身。月ノさんのファンが作った7周年記念サイトで発表されたファンメイドのオリジナル曲「みちくさイズム」を軽快に歌い始める。間奏では、笑顔で手を振りながら「この曲、ファンからいただいたんですよ。いいでしょー」と笑顔で絶叫した。

MCでは、2月に投稿された「みちくさイズム」を「みんな絶対に嬉しいと思うから」と、すでに確定していたセットリストに「無理矢理、ねじ込んだ」という裏話を披露。残りは、あと2曲ということを発表した後、グッズ販売などの告知を挟み、現地の入場チケットを入手できなかったファンへの優しい思いも語った。

「数日間はエゴサーチが苦しかったですよ。『何に外れた』『リセールに外れた』みたいな(投稿を)『ゴメン、ゴメン』って思いながら観ていましたけど。皆さん、画面の前でも腕とかペンラ(イト)とかを振ってくれていたら嬉しいです」

「知る人ぞ知る曲」と「歌ったことが無い曲」という紹介に続いて、ラスト2曲のステージが始まる。まずは、2019年の「REALITY FESTIVAL2」で初披露された後は、同年に上海で開催されたイベントでしか歌ったことがないという幻のオリジナル曲「JUMP!!」。制服姿に着替えた月ノさんは、王道アイドルソングを可愛く歌い上げる。筆者は初めて聴く曲だったからか、初々しさと安定感が共存して不思議な魅力を放っていた。

2ndワンマンライブ最後の曲は、「iruさんが作ってくれた『MOON!!』の続編! B面! 二次創作! 『コスモノート』」。疾走感にあふれるメロディーと、未来への希望を感じさせる歌詞は、7年の歴史を歩んで来ても、まだまだ止まる気配を感じられない月ノさんの今にぴったりで、まさに新たなイメージソングだ。この日、月ノさんが何度も見せてきた、ここぞというポイントでアクセルを踏み込むような歌声は心地良く、月ノさんの歴史を振り返るような映像もフィナーレに相応しい。

「今日があなたの人生の中で、ちょっとだけ忘れづらい日になったらいいなって思うんですけど。いけそうですか?」

間奏で月ノさんが問いかけると、客席からは当然とばかりに大きな返事が返ってくる。最初から最後まで濃厚すぎる2時間半は、きっとすべてのファンの海馬にしっかりと刻み込まれているはずだ。

3年半ぶりの2ndワンマンライブで、7年間の歩みを振り返りつつ、多くの驚きと感動を供給してくれた月ノさん。きっと近い将来、実現するであろう3rdワンマンでは、どのようなエンターテインメントショウを見せてくれるのか? 気は早すぎるが、何が起きるかまったく想像ができず、楽しみでたまらない。

(C)ANYCOLOR, Inc.

(TEXT by Daisuke Marumoto

●関連リンク
月ノ美兎 2ndワンマンライブ「Paper Rabbit」公式サイト
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