少女革命計画 1st LIVE/第一幕 「改変」ライブレポート 多彩な22曲で鮮烈な初ソロライブを飾った心世紀・罪十罰の6人

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KAMITSUBAKI STUDIOのプロジェクト・少女革命計画が、2025年7月11日にCLUB CITTA’で「KAMITSUBAKI WARS 2025 神椿川崎戦線 少女革命計画 1st LIVE/第一幕 『改変』」を開催した(アーカイブページ)。

昨年8月に開催した「KAMITSUBAKI FES ’24 THE DAY THE EARTH STOOD STILL」にて、「少女革命計画」の2ユニット「心世紀」(しんせいき)「罪十罰」(つみとばつ)は初ステージに立ち、アーティストとしてデビュー。その後はKAMITSUBAKI STUDIOに関係するいくつかのライブにゲスト出演してきた。

その後、「少女革命計画」YouTubeチャンネルではオリジナルショートアニメを、公式サイトでは各メンバーを主題にしたマンガが公開され、メンバー6人もYouTubeチャンネルをもって配信活動も行なうなど、さまざまな経路で発信を続けてきた。

そんな「少女革命計画」の6人が、初めてのワンマンライブを開催するということで、多くのファンは集まったわけだが、この日どのようなライブを見せてくれたか。その姿を文字にしたためてみようと思う。


集まった観客を魅了するダンスポップ 川崎で歌い踊る6人のヒロイン

時刻は18時30分ちょうど、会場が暗転してスッとライブがスタートした。大きな歓声が会場から沸き起こるなか、大型スクリーンの中では都市ビルの数々が半透明なかたちで描かれていく。

心世紀の御莉姫(おりひめ)、佳鏡院(かきょういん)、硝子宮(がらすみや)、罪十罰の氷夏至(ひなげし)、美古途(みこと)、夕凪機(ゆうなぎ)、計6人の紹介も兼ねた映像は、スピーディーな流れでスタイリッシュ。ライブタイトルが現れると拍手と歓声が再び沸き起こった。

2つのユニットを大雑把にいうならば、心世紀は実際のライブの場では素顔を隠す形ながら生身の姿でパフォーマンスを行なうユニット、罪十罰は多くのバーチャルシンガーと同じくアニメルックな3Dビジュアルでパフォーマンスを行なうユニットに分けられる。

そんな彼女たちだが、先にも書いたようにライブ出演は指折りで数えられるほどで、配信や動画投稿の活動が主となっている。デビューしてからわずか1年にも満たないにも関わらず、ファンのなかで大いに期待と注目を集めていたのだが、その要因のひとつは心世紀と罪十罰・2組の楽曲リリースペースにあるだろう。

心世紀が「フェイクナイト・シンデレラ」を、罪十罰が「弔花」を2024年8月上旬にそれぞれリリースしてから、その後はグループ・ソロ曲合わせて30曲以上を世に送り出してきた。

つまり「少女革命計画」というプロジェクトとして考えると、1ヵ月あたり約3曲をリリースしてきたわけで、このハイペースぶりはさすがに特筆すべきところ。ファンの注目を飽きさせることなくこの日を迎えたわけだ。


約1年の間にリリースしてきた数多くの楽曲から、「どれが1曲目なのか?」と期待が高まる中、暗転してすぐに、鍵盤の音色とともにポエトリーが語られ始める。硝子宮の柔らかな声で伝えられた情動。その言葉とともに心世紀のメンバーがステージに姿をしてきた段階で、「あの曲だ!」と勘づいた観客がいただろう。心世紀のデビュー曲であり、少女革命計画にとっても第1弾の楽曲となった「フェイクナイト・シンデレラ」が、この日の1曲目となった。

トップバッターとして登場した心世紀のメンバーである御莉姫、佳鏡院、硝子宮の3人。ステージは姿形を曖昧にみせるために暗くライトアップされる。よく見てみると、3人ともしっかりと衣装と髪型を表現しており、ステージの彼女たちに注目してしまう。

2曲目「パーフェクション」ではディスコライクなサウンドの中で歌い踊り、白いライトの瞬きが印象的に3人を飾っていく。観客の反応も、合いの手やハンドクラップが途中途中で起こり、ライブ冒頭のポップな流れについていけているようだ。

3曲目は「Ephemeral」。ダンサブルな4つうちビートを軸にして、途中で挟まるリズムパターンが印象的、拍子の取り方やボーカルメロディのリズムにもヒネリが効いた1曲だ。ライブではリズム感のヒネリがスパイスとなり、疾走していくような爽快感ある曲へと仕上がり、観客を捉えていた。

一度3人が退場すると、ふたたびポエトリーへと移っていき、罪十罰の3人が登場。美古途、夕凪機、氷夏至がスッと並び、始まったのは「Synapse」だ。

液体同士が溶け合うようなあやしげなミュージックビデオがスクリーンに流れ、その下で3人は歌っていく。ベースサウンドがゴリッと効いたダンスポップに、観客たちは肩を揺らしていく。

「SHOCK」「弔花」では黄・緑・紫の照明が会場を染めていく。観客のバンドクラップや合いの手もバッチリ、EDMやベースミュージックの影響をモロにうけたダンスサウンドの2曲で、観客を大いに楽しませていた。


ソロパートから加速し、広がっていく感情の物語

佳境院の語りが終わると、ここからは「少女革命計画」1人1人のソロパートへと移っていった。

トップバッターとして登場したのは心世紀の硝子宮で、ウィスパーな歌声でボーカルをみせる「well」を披露した。淡々としたボトムサウンドに、キラリとしたシンセサウンドも混ざっていく。ポエトリーとボーカルを行き来しながら、心の奥にある感情を会場へと滲ませていった。

続くは罪十罰の氷夏至による「ジャンク」だ。観客たちが一斉にペンライトを緑色にかえ、彼女へとエールを送っていく。ほかメンバーに比べて声色が低めかつ太く、歌うとやはり存在感がある。どことなく緊張感を漂わせていた彼女だが、うまく歌いこなしてみせた。

鍵盤による印象的なイントロから、ハウス・ミュージックらしいトラックの「宇宙逃避行」が始まる。クールなバックトラックに佳鏡院の細めな声色が重なると、徐々に彼女の可憐さが実像を帯びていくような、不思議な高揚感を生み出していく。

続くは美古途の「セルフィッシュ」。柔らかいシンセサウンドがリードするシンセポップで、穏やかなグルーヴと水槽、魚、泡、水中を思わせる映像、ソフトタッチな美古途のボーカルが観客を魅了していく。

ここまでで10曲を披露してきたのだが、前半で歌い踊っていた強圧なダンスチューンの連打から、このソロパートを通じて徐々にチル&クールダウンしていく流れとなっていることに気付くだろうか。ライブ全体・選曲の妙で観客をうまく導いていたわけだ。

そうしてクールダウンをしていけば、盛り上がる楽曲も欲しくなるところ。そんななかで登場した心世紀の御莉姫は、wotakuが作詞作曲を手掛けた「シンユウ」を歌う。エレクトロ・スウィングらしい横ノリのグルーヴとウォーキングベースにノッて、御莉姫が歌うのは繊細な心が些細な出来事で揺らぎ、苛立ちをつのらせていく様。

先程までの寒色系のライトアップから一転して赤と黄色の照明が会場を染め、その過激さを巧みに観客へと届けていく。間奏部分ではステージ最前まで出ていって「CLUB CITTA’!!」と観客を煽り、観客のボルテージを上げていった。

ソロパートの最後は罪十罰の夕凪機による「アバウト」だ。眼の前で観客をグンッと盛り上がった直後だったが、大きく前へとジャンプするようにステージへと登場した彼女は、あくまで普段通りといった面持ちでパフォーマンスしていく。

これは筆者の所感で恐縮なのだが、この「少女革命計画」のメンバーの中で歌・パフォーマンスともに高品位で披露できるのが夕凪機で、この日も明瞭な歌声とパフォーマンスで観客の目を奪っていた。黄色と黒の色合いが彼女のイメージといえるが、彼女に対して緑や赤の照明をあてていった演出で、彼女のムードをより特別なものにしていた。


さらに御莉姫のポエトリーがはさまり、ここからは再び心世紀と罪十罰、2ユニットに分かれてのパフォーマンスへ。心世紀は「ココロト」「うそ鳴き」「ミリオン・コンプレクシティ」の3曲を、罪十罰は「blindness」「DIGGER」「SURVIVAL」の3曲を歌っていった。

心世紀はどちらかというと柔らかい音色やファンキーなベースラインやホーンセクションが特徴的な、バンドアンサンブルを感じさせる楽曲が多くリリースされている。対して罪十罰は歪んだ音色が主になっており、3人のボーカルが混じり合うことでどこかスケール感のあるエレクトロな楽曲が多い。同じ”ダンサブル””踊らせる”曲という共通点はあれど、こうも毛色が違うものかと感じさせてくれる。


心世紀による「ココロト」では風鈴、コーヒーカップ、風になびく草原といったアニメーション映像に、空間や隙間を感じさせるバックトラックと3人のボーカルリレーもあり、優しく心を通わせていくエンパシーを綴る。

逆に罪十罰の「SURVIVAL」は、ドラムンベース~ジャングル系のビート、歪んだベースサウンド、管楽器の曲間からポエトリーとラップ&フロウ、ガバミュージックを思わせる強烈なシンセサウンドへ、コロコロとサウンドが変幻していき、強烈かつ変幻なサウンドで観客を置いてけぼりにしてしまうほどだった。

こういった様々な音の中で、怒り、哀しみ、冷たさなど心の痛みを歌い上げていくのだ。


いざ「改変」へ 6人で歌い進んでいく

美古途のポエトリーが終わり、最終盤となったこのタイミング。ついに心世紀と罪十罰の2ユニットがステージで一堂に介し、最新リリース曲「鈍色幻灯」と「現世回帰」を披露した。

さきほどまでのダンスサウンドを軸においた流れから、リズムを落としたミドルテンポで、ストリングス隊とボーカルが前面にでたパフォーマンスで、観客の注目をグッと集める。特に「現世回帰」では、そのドラマティックな曲展開と6人のボーカルリレーという目くるめく流れに飲み込まれ、観客みなが酔いしれたのだった。

6人がステージを去ると、会場全体からアンコールの声で大いに湧いてくる。少しずつ熱を帯びていくうちに、鍵盤の音色とともに6人全員によるポエトリーが始まる。そしてメンバー6人が姿を現すと、「アンコールありがとう! 新曲です!」と短く言葉をとどけ、「主人行路」を初披露した。鍵盤や管楽器の音色とダンスビートが印象的で、メインとなるメロディに独特なヒネリが入ったアップテンポな1曲だ。おもむろにメンバーが横に手を振っていくと、観客たちも彼女たちに手を振っていく。六色のライトがその光景を鮮やかに彩っていた。


再び6人のポエトリーが語られると、「次の曲で本当に最後になります」「来てくれてありがとうございます」という公演を締めくくる言葉に続き、新曲「改変」を披露した。

ストリングスやボーカルを主体にした楽曲は、さきほど披露した「現世回帰」と同系統なのだが、よりもメロウで、なにより力強さを感じるスローテンポなナンバーとなっている。

その力強さの核は「書き換えるのわたしを 過去の痛みが光になる」というサビにあるように、「自分自身を変えていこう」とする意思を強く打ち出している部分にある。

彼女らがポエトリーや歌詞などで触れてきたように、多くの楽曲で心の痛みや闇について、またその痛みに悩む心を優しく触れるように歌ってきたが、この曲で彼女ら6人は意を決するように、心を「改変」していこうと力強く歌っているのだ。

踊ることなく一心を注いで歌っていく6人を、白い光が照らしていく。その光景を「心が浄化されていくよう」という風に書くのは簡単だ。今後長く続いていくであろうこのプロジェクトにおいて、おそらくこのようなシーンは今後何度も訪れ、同時にそのどれもが特別なワンシーンになるはず。

だがこの瞬間に何よりも大事なのは、初のソロ公演、クライマックスを迎えたこと。そして一つの節目を迎えたという達成を迎えたことにある。この約1年にわたって様々な活動を行なってきた彼女たちにとって、込み上げる想いはこちらの想像をはるかに超えるもののはず。照明がステージを白く染めたそのシーンは、そんな彼女らを祝うかのように見えたのだ。

楽曲を披露し終え、大きな拍手とともにステージから去る前に観客らへ手を振る6人は、暗がりの中でも明るい表情を浮かべているようにみえた。


「少女革命計画」にとって初めてのワンマンライブということで、ペンライトを振りながら彼女らのライブを楽しんだり、音とともに体を踊らせて歓喜に湧いたり、腕を組んでじっとステージを見守ったりと、ファンの反応は様々だった。つまり「6人はどんなライブをするのだろう?」と見守る観客が、大半を占めていたように筆者には見えた。

これまでリリースしてきたダンスチューンを連発しつつ、こうしてライブハウスで披露されると、その大きなスケール感で圧倒されてしまう楽曲もあるなど、意外な一面を見せてくれる楽曲に驚いたファンはすくなからずいただろう。

今後彼女らがどのような楽曲をリリースし、どのような物語を繰り広げ、歌い、聴くものの心に綴っていくか。その歩みには多くの注目が集まっていくはずだ。

最後に、彼女ら6人が退場したあとにこの日最後のポエトリーが読まれたわけだが、それがどのような言葉と意味を成していたかは、記さずにしておこうと思う。ぜひアーカイブ配信を最後まで見て、あなた自身の目と耳で捉えてほしい。

●セットリスト
1. フェイクナイト・シンデレラ/心世紀
2.パーフェクション/心世紀
3.Ephemeral/心世紀
4.Synapse/罪十罰
5.SHOCK/罪十罰
6.弔花/罪十罰
7.well/硝子宮
8.ジャンク/氷夏至
9.宇宙逃避行/佳鏡院
10.セルフィッシュ/美古途
11.シンユウ/御莉姫
12.アバウト/夕凪機
13.ココロト/心世紀
14.うそ鳴き/心世紀
15.ミリオン・コンプレクシティ/心世紀
16.blindness/罪十罰
17.DIGGER/罪十罰
18.SURVIVAL/罪十罰
19.鈍色幻灯/心世紀×罪十罰
20.現世回帰/心世紀×罪十罰
21.主人行路/心世紀×罪十罰
22.改変/心世紀×罪十罰

(TEXT by 草野虹、Photos by 小林弘輔)


●関連事項
アーカイブページ
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罪十罰(公式ページ)
少女革命計画(公式ページ)