えのぐがリベンジに挑んだ今年最後のワンマンライブ「X-DAY 〜REVENGE〜」レポート

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「世界一のVRアイドル」という壮大な目標を目指して活動を続けている「えのぐ」鈴木あんずさん白藤環さん日向奈央さん)が、2025年最後のワンマンライブ「enogu online one-man Live X-DAY 〜REVENGE〜」(以降、「X-DAY 〜REVENGE〜」)12月6日(土)に開催。ライブストリーミングサービス「Z-aN」で生配信が実施された。

8月23日(土)に行われたオンラインワンマンライブ「enogu online one-man Live X-DAY」」(以降、「X-DAY」)では、チケット販売枚数2000枚を目標に掲げながら、最終販売枚数が1571枚だったえのぐ。しかし、2000枚という目標に再挑戦するため、早々にリベンジ公演の開催を決意。「X-DAY 〜REVENGE〜」は、そのタイトル通りにリベンジを懸けた公演だったのだ。

「次こそは絶対に目標を達成するため『X-DAY』を超える過去最高のライブをつくることはもちろん、ライブの魅力をお伝えするため、より一層努力することをお約束いたします」

ライブの公式サイトに、えのぐらしさ全開の熱すぎるメッセージも掲げてリベンジに挑んだ約2時間半、全27曲のステージをダイジェストでレポートする。

【冒頭無料配信】enogu online one-man Live X-DAY〜REVENGE〜【#えのぐXDAY_R】

最新曲でタイトル曲の 「X-DAY」 でリベンジ開始!

「X-DAY」と同じくバーチャル空間に作られた特設ステージで開催されるオンライン限定ライブ「X-DAY 〜REVENGE〜」。武骨な鉄骨や照明、「X-DAY」のフラッグなどで構成されたステージが配信画面に映ると同時に、徐々にテンションを上げていくお馴染みのOVERTUREが流れ出す。ところが、OVERTUREは突然スローダウンして停止。「X-DAY」で発表された最新曲『X-DAY』(以降、曲名は二重カッコで表記)をアレンジしたであろうメロディーが流れ出す。

フラッグを持った3人がステージ中央のリフトに乗って下から登場するのは、「X-DAY」と同じ流れだが、着ているのは「X-DAY」でお披露目された5年ぶりの新衣装「レガシー」だ。音楽が止まり、無音となった会場で手にしたフラッグをステージに立てた後の1曲目は、日向さんのパワフルなソロからはじまる『X-DAY』。「X-DAY」のリベンジを懸けたステージの開幕に『X-DAY』を持ってきたことは、今回のライブに対するえのぐの姿勢を現しているのだろう。最新かつ最強の曲で、開幕から観客に強烈な一撃を与えていく。一歩一歩、丁寧に踏みしめながら前に進んで行くような曲『プロローグ』で始まった「X-DAY」とは、まったく異なるライブが始まったことを宣言するようなオープニングと1曲目だった。

8月の「X-DAY」以降も数々のライブや配信の歌企画に出演、参加し、その多くで歌ってきた『X-DAY』。ラップ、がなりなどの力強さがアップし、王道感あるサビとの振り幅がさらにアップしているようだった。

2曲目、3曲目にもライブの山場の常連曲でもある『Possible』『ヴァーチャルバーサーカー』を連発。また、1曲目の冒頭から「X-DAY」との大きな変化を感じたのが、激しく動くけれど、煩わしくはないという絶妙のカメラワーク。特に、画面をグルリと回転させる映像はインパクト抜群で、「X-DAY 〜REVENGE〜」の大きな特徴と言えるくらい全編にわたって効果的に使われていた。また、3人の歌声にシンクロしたカメラの寄り引きやアングルの変化、スイッチングなども心地良くハマっている場面が多く、3人のパワーアップしたパフォーマンスをさらに引き立てる。

『Possible』のラスト前、日向さんの超ロングトーンは、筆者の観測史上、過去最長に力強く伸びていた。鈴木さん、白藤さんも同様なのだが、えのぐの歌声は本来の可愛さを守ったまま、年々、パワフルになり、治安の悪い表現も巧みになっていく気がする。3人の表現力の幅が広がったことで、それを活かせる激しい曲も増えているのだろうか。

えのぐのオリジナル曲の中でも「激しさTier1」に入る『ヴァーチャルバーサーカー』を歌い終えた後、一瞬で息を整えて笑顔で「こんばんわー」と手を振り、いつもの明るいテンションでアイドルらしい自己紹介を始める3人。何気ない行動にも、まさにバーサーカー的な強者感が出ていて少し面白い。


10曲をノンストップで披露

白藤さんのリードで2025年最後のワンマンライブ「X-DAY 〜REVENGE〜」の開幕を宣言した後、「わー」「イエーイ!」と大はしゃぎしながらカメラ前を走り回る。パフォーマンスとのギャップは可愛いが、スタミナは無限にあるのだろうか?

続けて、鈴木さんが「X-DAY」のリベンジ挑戦と、「世界一のVRアイドル」という最大の目標に対する思いを熱く語っていく。

「他の誰でも無くて、私たち自身が『世界一になる』って決めたから、私たちはこの目標に人生を懸けています。『X-DAY 〜REVENGE〜』で(2000枚の)目標を達成し、誰にもどこにも負けないライブをして、私たちは前に進みます。そうすることで、今日、この場所に立てた旗が次世代でバーチャルアイドルを目指す方々の道しるべになるって信じています。グループ結成8年目、この8年間、1年、1日、一瞬をアイドルに懸け続けてきた私たちの生き様を皆さんの目と心と、そして歴史に一生消えないように深く刻みます。今日、歴史が変わる瞬間を目撃してください!」

「あんず先生」のMCの熱量まで、すでにライブのクライマックスのようだなと思っていると、白藤さんが突然、叫ぶ。

「さあ、ここからは、えのぐ史上初、全力で10曲ぶっ続け! ノンストップで駆け抜けたいと思います。えのぐ、オンラインライブ『X-DAY 〜REVENGE〜』。今日のパフォーマンスが8年間の集大成! 反撃の咆哮です! 全員、ぶち上がれ-!」

『アンプリファー』
『とぶらぶっ!!!』
『ビリパリッ!!!』
『Present for you!』
『It’s 笑 time!』
『フラストレーションガール』
『BAD DANCE』
『Armor Break』
『Defiant Deadman Dance』
『星は三度瞬く』

宣言通り、バラエティに富んだ10曲をノンストップで披露した3人。『アンプリファー』から『It’s 笑 time!』までは明るく可愛く楽しい曲が続き、『フラストレーションガール』でえのぐの格好良さもアピール。『BAD DANCE』からは激しく力強い曲が3連発で、最後の10曲目は、爽やかで青春のまぶしさを強く感じる『星は三度瞬く』。

もちろん、ノンストップで歌い踊り続ける体力や気力には驚かされたのだが、えのぐオリジナル曲見本市のような10曲での表現力の幅広さを改めて実感した。1曲1曲のダンスやフォーメーションを細かく記憶できているわけではないため、卓越したカメラワークによる印象の変化が理由かもしれないが、「この曲で、こんなにポジションチェンジしていたかな?」と思う楽曲も。おそらく、この10曲が初披露されたライブは、すべて観ているはずなのだが、歌もダンスもレベルアップし、パフォーマンスがさらに磨き上げられている。

ちなみに、このブロックの4曲目、通算7曲目で披露されたクリスマスソング『Present for you!』は、2020年の年末ライブ(「えのぐワンマンLIVE2020 -だからいま、ここにいる。-」)で初めて聴いた時、「あんずママ」の演技に驚いたのが、ゲームの声優、舞台出演などの経験を重ねた鈴木さんの芝居は、さらにママ感が増している。

8曲目の『It’s 笑 time!』までは、YouTubeの冒頭無料配信の範囲内なので、えのぐファンでは無い人も、ぜひ視聴して「あんずママ」の魅力を知って欲しい。えのぐや鈴木さんのことを知らなくても、声だけで刺さるオタクは多いはず。また、「子役」の白藤さんと日向さんの自由で可愛い演技もハマっており、この3人が数曲後の『Defiant Deadman Dance』では、治安悪く叫んで、がなりまくるのだから、えのぐのライブは面白い。


ソロでの「1ヶ月挑戦企画」の成果も発表

10曲連続のパフォーマンスが終わった直後、少し息を乱しながらもはしゃぎ回る3人。白藤さんが、水分補給のため舞台袖に下がった間は、鈴木さんと日向さんの二人でトークを展開していたが、アドレナリンが出まくっているようで、妙にハイテンションだ。そして、ステージに戻って来た白藤さんが、10曲連続というハード過ぎるセットリストに挑戦した理由を語る。

「私たち、2018年にグループを結成して、3月に丸8年になるわけなんですよ。ゼロからスタートした当時みたいに、練習すればするだけ上手くなるってわけでもないし、だからこそ、定期的に自分たちの限界を越えるような挑戦をしないと停滞しちゃうんじゃないかなって恐怖心があって。だから、今回、精神的にも肉体的にも、自分たちがこれまで経験したことないくらいの負荷をかけて、それを乗り越えられたら、心を剥き出しにした、心臓の鼓動が聞こえるような。『命』って感じのライブができるんじゃないかなと思って、10曲連続でやることを決めました」

チケット販売枚数2000枚への再挑戦という目標を掲げながら、そのセトリでも自ら過酷な挑戦に挑む。この熱すぎるスタンスがえのぐの真骨頂だ。さらに、「X-DAY 〜REVENGE〜」までの1か月間、メンバーの1人1人が「アーティストとして進化するため」の新たなスキル修得に挑む「1ヶ月挑戦企画」も実施してきたのだ。MC後の「1ヶ月チャレンジ」発表パートでは、その成果が披露された。

一番手は、口や鼻などの発声器官だけで音楽を奏でる「ヒューマンビートボックス」の修得に挑戦した白藤環さん。成功か失敗かを決めるのは観客のコメントということで、筆者のように「ヒューマンビートボックス」について詳しく無い人には判定が難しいのではと懸念していたのだが、最初の一音から完全に人の声ではなく楽器のような音が聴こえてくる。バスドラム、ハイハット、Kスネア、Pスネア、リムショット、リップベースと、6種類のスキルを披露し終わった後の採点では、配信のコメント欄が「合格」という文字で埋まっていた。ちなみに、「ヒューマンビートボックス」は、2022年末に家庭の事情によりアイドル活動を引退した元メンバーの夏目ハルさんも練習していたスキル。夏目さんが担当していたハモリパートを引き継いでいる白藤さんが、ヒューマンビートボックスも修得したことは、偶然かもしれないが素敵なことだ。

二番手の日向さんのチャレンジは、「楽曲のMIXと高難易度ダンス」。自己紹介でも「歌とダンスは誰にも負けない!!」と語っている日向さんが、えのぐではあまり踊らないジャンルの高難易度ダンスに挑戦するのは分かりやすい流れだが、楽曲のMIXは完全にゼロからの挑戦。挑戦した理由の一つは、歌動画などを公開する際、自分たちでMIXもできればコストを抑えて、その予算を別のことにも使えるという経営者目線の理由。3人が自身たちのマネジメント会社「えのぐ合同会社」の経営者でもあることを改めて実感した。

日向さんのチャレンジも、素人の筆者に合否判定は難しそうだと思っていたが、パフォーマンスが始まると、すぐに「合格」だと確信。日向さんは、「RIOT MUSIC」所属のバーチャルアーティスト松永依織さん『“超”インフルエンサー→☆』をカバーしMIXした音源と共に、ノーマイクでえのぐでは観たことがない激しさのダンスを披露していったのだ。パフォーマンス後には、日向さんが息も絶え絶えになっているという珍しい姿も観られた。MIXの技術については、知識不足で判定できなかったが、日向さんの高難易度ダンスにぴったりマッチした音源になっていたのは間違いない。当然のように視聴者の判定も合格だった。

トリを任された鈴木さんが挑戦したのは、「1stソロ曲『シラユキヒメ』、全編英語バージョンの歌唱」。日本語が分からない海外のえのぐファンにも「私たちの歌を感情が込もった言葉で届けたい」という思いからの挑戦で、「世界一のVRアイドル」を目指すえのぐにとっては、大きな武器になりそうなスキルだ。しかし、英検三級の筆者では判断が難しいなと思っていると、「英語が分かる方は、私の発音で英語圏の方々に伝わるかで、成功と失敗を審査して欲しくて。分からない方は、言語が分からなくても、曲として感情が込められていたかで審査をお願いしたいと思います」と明確な審査基準が明かされた。

『シラユキヒメ』の英語バージョン『Snow White』は、いつもの鈴木さんと変わらないくらい感情のこもった歌で、すぐに合格だと確信。コメントを見る限り、英語が分かる観客からも高評価ばかりで、3人全員が個人のチャレンジを大成功させた。ちなみに、一週間前の通しリハサールでは全員がチャレンジに失敗したらしく、3人の成長力と勝負強さが発揮されたということだろう。


チケット2242枚を販売してリベンジ達成!

「1ヶ月挑戦企画」の後、ライブも後半戦に突入。疾走感あふれる『絵空事』の後は、「X-DAY」で初披露されたソロ曲のコーナー。日向さんの『ユメノツヅキ』、白藤さんのソロ名義である「×××中毒(らぶりーぽいずん)たまきちゃん」の『愛して♡推されたイズム』、鈴木さんの『透明の雫』が続けて披露された。

さらに、熱いMCも挟みながら『Colors』『栞』『BRAVER』を熱唱。ライブのクライマックスが近付いていることを感じさせる選曲とパフォーマンスだった。MCでは、またもえのぐならではのトークを展開。「皆さんに報告したいことがある」と切り出した白藤さんが語ったのは、3人が経営するえのぐのマネジメント会社「えのぐ合同会社」の経営について。設立1年目は、廃業した前事務所時代から技術面でサポートを受けていた企業からの助けもあったらしいが、2年目を迎えた2025年は、単独黒字となる見込みだと発表。アイドルライブのMCでは、なかなか聞く機会の無い報告だが、チャット欄でファンも大歓喜する非常に嬉しい報告だった。

続いては、2025年の振り返りと総評を一人ずつ語っていく。外部とのコラボもさらに積極的に行っていた日向さんは「出会いと音楽の年」と語り、さまざまなチャレンジ企画に挑んだ白藤さんは、「挑戦と感謝の年」と振り返る。最後の鈴木さんが、「正直に言うと、少し迷走していた1年」と語った時には少し驚いたが、「毎日すごく忙しくて、充実した1年」でもあったそうだ。

MCの最後に改めて「隣で支えてくれる」ファンへの感謝を語った後の21曲目からは『Re:all』『真っ白は色褪せない』『僕色インフィニティ』と青春感の濃い爽やかな曲を続けて披露。そして、鈴木さんの「私たちがアイドルとして掲げる誇りを歌った歌です」という紹介の後に歌われた24曲目は、4人体制で発表された最後の曲『LIVE IV LIFE』。続いて、本日二度目の『X-Day』。「X-Day」でも、21曲目での初披露とアンコールの2度パフォーマンスされたのだが、リベンジライブということで、あえて同じ回数の『X-Day』を歌ったのだろうか。この日、25曲目となるパフォーマンスだが、1曲目にもまったく負けない力強さで、ライブのクライマックス感がさらに高まっていく。

改めて、2025年の感謝を伝えた後、鈴木さん熱いMCを語る。

「えのぐは、アイドルという生き方に人生を懸けています。そして、ライブという生き様に誇りを持っています。私たちがそういう自分を貫き続けられるのは、メンバーと、志を共にする戦友たちと、支えてくれる方々と、そして、応援してくれる皆さんがいるからです。『チームえのぐ』という名の舟に乗る皆さんは、かけがえのない仲間で、代わりがいない唯一無二の存在で、舟の進路を照らす灯りそのものです。『X-DAY 〜REVENGE〜』ラスト2曲。この場所から世界一への道のりに灯りを灯しましょう。聴いて下さい、えのぐで『燈し火』」

ライブを観る側にも前半からの熱が残っているのか、MCの熱さに感化されたのか、エモーショナルな『燈し火』にも熱さを感じる。そして、2025年のえのぐワンマンライブは、再会の約束の歌『またね、って言うよ』で爽やかなフィナーレを迎えた。ラスト2曲と最後のMCで、3人はどれだけの回数、手を振ったのだろう。

そして、ライブの終了から数時間後、鈴木さんのXでライブ終了直後のチケット販売枚数が2242枚だったことが発表された。目標の2000枚を200枚以上も上回り、宣言通り見事なリベンジを達成したのだ。きっとこの3人は、「世界一のVRアイドルになる」という目標が現実になるまで、どんな困難があったとしても有言実行を目指し、失敗したらリベンジをして、突き進んでいくのだろう。そう信じさせてくれる、熱くポジティブなリベンジライブだった。

(TEXT by Daisuke Marumoto


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