にじさんじに所属するVTuber ローレン・イロアスが、2026年7月30日にファーストワンマンライブ「FACE」を開催した。
4月22日にファーストミニアルバム「No One」をリリースし、今回のライブを開催することとなったわけだが、東京国際フォーラム ホールAには熱心なファンが集まり、客席をビッシリと赤色に染めてみせたのだった。
自身のミニアルバムからの楽曲だけでなく、2010年代~20年代のボカロ~ヒットソング、何よりインターネットカルチャーに浸透した楽曲を主にチョイス。「ファンに求められているローレン・イロアス」を表現したライブとなった。
その勇姿を、レポートしてみようと思う。

定刻の18時キッカリにスタートしたローレン・イロアスのファーストソロライブ、その始まりはファーストミニアルバム「No One」の楽曲から。
先日MVも公開されたnqrse制作のリード曲「BRB」から、「SPY-DER」「赤の他人」と歌っていくローレン、普段の低い声色がより艶っぽく響くのはライブ会場の音響ゆえだろう。事前に収録したであろう自身のコーラスとも相まり、観客たちをうっとりとさせていった。
「こんにちワッサー! これ! 言いたくなって言っちゃってます。義務じゃないです!!」
自分の初ツイート&普段あまりしない挨拶構文から、あえてちょっと自虐気味なMCで観客を笑わせていく。満面の笑顔で観客たちと話すローレンだが、ここからの選曲を思えば、「こっから驚くやろなぁ~!」という笑顔だったんじゃないかと想像してしまうほどだ。

ここから始まったさまざまなカバー歌唱は、”よくぞ期待通り!”と”まさかその曲を?”で心を揺れ動かしていく、ドキドキなチョイスの連発だったのだ。
4曲目に歌ったのが、Ado「逆光」。赤黒に塗られたトラメガ(トランジスタメガホン)を持って歌っていくローレン、Ado本人のあのしゃがれた声を表現するため、あえてトラメガを使って少々霞んだ響きにしていたのかもしれない。

続く楽曲はボカロPのnikiによる「ジッタードール」、TVアニメ「ダンダダン」の第2期オープニングテーマであるアイナ・ジ・エンドの「革命道中」、そして自身の歌ってみた楽曲の中でもっとも視聴されているピノキオピーの「神っぽいな」。特に「神っぽいな」をライブで披露するというのは、この日のライブを見るファンたちには願ってもないことだったろう。
その後も「乙女解剖」「Overdose」「ロミオとシンデレラ」「ノンブレス・オブリージュ」と、往年のボカロヒットソングや2020年代のヒットソングを織り交ぜながら歌っていく。

「Overdose」は以前に歌ってみた動画として投稿したものをライブで披露するという流れであり、「乙女解剖」「ロミオとシンデレラ」は一昔前のネット~オタクカルチャーに詳しいローレンらしさのある選曲でもある。
何より、「Overdose」ではタバコを吸って煙が宙を舞うなかで歌っていくという演出がなされ、「乙女解剖」「ロミオとシンデレラ」は恋愛色や女性の心情を歌った内容。それぞれの場面で会場内から歓声がワッと沸き起こる。その歓声を一言でローレン風に言いあらわすなら、「マ?!」である。
甲斐田晴、ローレン・イロアス、叶と3日間でライブが開催されているが、彼らの近くには水とともに酸素缶が用意されており、好きなタイミングで吸えるようになっていたようだ。
これは、初日に出演した甲斐田晴が以前のライブで酸素缶を用意していたことをうけての配慮だったようだが、これをみたローレンは「富士山でももらっていないのに、今日なんだ!?」とツッコミを入れる。曲の話題になると、ちょっと意味深なことを言いつつMCを終え、実際に披露したときに事前のフリになっているという、計算された内容で客を驚かせていた。
「少女レイ」「トンデモワンダラーズ」と歌っていくと、曲の途中で新衣装としてカジュアルな王子様風衣装をお披露目。ポップでキラキラとした「トンデモワンダラーズ」の最中に衣装チェンジしたこともあり、白と黒のツートーンでありながらも、どこか多彩な印象を抱かせてくれる衣装だった。
続く楽曲は「シュガーソングとビターステップ」「神のまにまに」とグルーヴィかつ軽やかにステップを踏めそうな2曲、しかも求められるボーカルが少々高めということもあって、歌う声も爽やかさにあふれている。

ポップ&ダンサブルなサウンドと共に、新衣装となった王子様衣装で爽やかに歌っていくその様は、まさに絵本やマンガに描かれたプリンスのよう。王子姿のローレンをこれまで想像していたファンからすれば、まさに夢が叶ったと叫んでしまっても不思議じゃない瞬間だった。
そんな王子様なローレンがプロポーズしてきたら?
ボカロPの内緒のピアスが制作した楽曲「プロポーズ」で、相手に強く向けられた愛をまっすぐに歌っていくラブソングは、どこか痛々しくて切実で、彼の低い声色とともに集まったファンの心を溶かしていったのだ。
ボカロ曲「春嵐」から自身の楽曲「ヤミナリボーイ」へアップテンポな2曲でつづけると、いよいよライブも後半戦に。

大型イベントで着ることとなる共通衣装へとお色直しして、楽曲はなんと「モエチャッカファイア」。まさしく低い声で歌っていく代名詞ともいえる曲で、ファンからも「きた!」と言わんばかりの大歓声が上がる。「ようこそお越しなさったご主人様 隣に座ってせーの 萌萌萌萌」と歌うと、ステージには炎がワッと湧き上がり、ローレンも自身の低めの声色を存分に活かして歌い上げていった。
「楽しんでいただけましたか?」
「この曲はこういう感じのテーマじゃないのかなって、皆さんわかりました?」
「こういう顔もできるのか!っていうの、みんなあったでしょ?」
こうして笑顔で語りかけるローレン。その明るいムードで、本編最後の楽曲として、女王蜂の「メフィスト」を歌っていった。
この曲といえばサビの部分でファルセットを使ってグイッと高い音程を発する部分があるのだが、ローレンはうまくこの部分を歌い、持ち前の低い声とファルセットをうまく行き来しながら歌っていく。
以前、Quick Japanにてnqrse氏にローレンの歌声について聞いた際、「意外と高いキーも歌える」という旨の話をしてくれていたが、まさかライブの最後の最後で「なるほど! ここか!」などと合点させられるとは。
「むかし雑談で話してたんだけど、歌ってみた動画だと暗い曲が多いオレが、ライブだと明るい曲を歌っていったら面白いんじゃね?みたいなことを言ってたんだけど……今日やっちゃってます!」
MCでこのように話し、ニカっと笑っていたローレン。彼にとってこの日のライブは、集まった観客たちを驚かせるステージとなった。ファンの予想通りに、または予想を裏切り、はたまた予想の斜め上へと、さまざまな演出で観客たちを楽しませていく。

またこの日が初めての音楽ライブであろう観客のために、普段早口になりがちな彼が、比較的ゆっくりで聞き取りやすい声でMCをしていた。リスナーのため、ファンのため、この日のステージを見る観客のために、できるところからやってみようという彼なりの誠実さが伺い知れた。
「一生忘れられない思い出になりました」とアンコール中のMCで話すローレン、そこに涙や大げさな笑みはなく、静かな達成感に満ちたムードで話していた。清々しくやりきったというそのムード感は、彼のさまざまな配信でもほとんど感じられない、静かな高揚感に満ちていた。

●セットリスト
1.BRB
2.SPY-DER
3.赤の他人
4.逆光
5.ジッタードール
6.革命道中
7.神っぽいな
8.乙女解剖
9.Overdose
10.ロミオとシンデレラ
11.ノンブレス・オブリージュ
12.少女レイ
13.トンデモワンダーズ
14.シュガーソングとビターステップ
15.神のまにまに
16.プロポーズ
17.春嵐
18.ヤミナリボーイ
19.モエチャッカファイア
20.メフィスト
21.ダーリンメランコリー
22.リロービート
23.鬼ノ宴
24.ファタール
(TEXT by 草野虹)
●関連リンク
・FACE(公式サイト)
・ローレン・イロアス (X)
・ローレン・イロアス (YouTube)
・にじさんじ
