企業・個人を問わず、毎日何十人もの新人がデビューしていくVTuberの世界。一方、すでに業界内には多くの才能が存在しているため、今の「推し」の動画・配信を追うだけで精一杯、新人まで気が回らないというVTuberファンも多いはず。そんな方に向けて送るのが本連載「データで見る、ツイ伸び新人VTuber」です。
分析・執筆は、Twitterのリストから随時2万人以上のVTuberのデータを収集して分析しているmyrmecoleonさんが担当。直近の7日間でTwitterのフォロワー数が急増したVTuberを数名紹介します。
こんにちは。myrmecoleonと申します。今回も最近勢いのあるVTuberを紹介していきます。以下は直近にTwitterのフォロワー数が急増したVTuberを並べたグラフです。今回はここから、いずれもフォロワーが20%以上増加したゴールドシップさん、橘（たちばな）ひなのさん、淡雪（あわゆき）みるくさんの3名をピックアップ。伸びた原因も推測しつつ、プロフィールをまとめました。
ゴールドシップ
- Twitter：https://twitter.com/pakatube
- YouTube：https://www.youtube.com/channel/UCAWxPGGuIfWME2KTLUmSCHw
ゴールドシップさんは「ウマ娘プロジェクト」の公式宣伝担当のウマ娘。通称ゴルシちゃん。ウマ娘プロジェクトはゲーム・アニメ・マンガ等のメディアミックス企画で、実在の競走馬の魂を受け継いでいるという設定の少女たち、「ウマ娘」の活躍を主題としており、ゴールドシップさんも同名の競走馬をモチーフとしています。
2018年4月に彼女も出演したテレビアニメ「ウマ娘 プリティーダービー」が放送、それに先立つ3月末からVTuberとして活動を開始しており、以来3年以上この宣伝担当を務めています。放送中のテレビアニメのキャラクターがVTuber化した初期の例の一つです。YouTubeのチャンネル名は「ぱかチューブっ！」。動画中心で、3DCGで動くゴールドシップさんがさまざまな企画をする動画が投稿されています。
ウマ娘は2018年のアニメ以来、企画の中心となるゲーム版のスタートが待望されていましたが、延期につぐ延期で約3年が経過、今年2月24日についに念願のゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」がリリースされました。放送中のテレビアニメ2期と合わせて現在大きな話題となっており、今回の注目はこれに由来するところです。今回の7日間では32%増となる7400名以上が彼女をTwitterでフォローしました。
なお実はYouTubeでの彼女の活動は2020年に入って少なくなっており、以降はプロジェクト関連の宣伝にときどきの出演となっています。ゲームのリリース直前には複数の動画を出しましたが、リリース後となる今回の期間は動画・ツイートともしていません（YouTubeチャンネルはプロジェクト全体としても使用しているため、ゴールドシップさん以外の動画は投稿されています）。こうした点から、今回の伸びは彼女のVTuberとしての活動によるものとは言いづらいです。ただし今回伸びている「ぱかチューブっ!」のTwitterアカウントはこの活動のみに使われていることから、この伸びはゴールドシップさんへの期待の表れと思われますので紹介いたしました。
7日間に増加した新規フォロワーの傾向（該当アカウント群から300名超を無作為抽出の上フォローしているアカウントを集計。以下同じ）を見ると、多くはもともとウマ娘プロジェクトやアニメの公式アカウントのフォロワーで、やはりゲーム・アニメの人気に基づく伸びなのが分かります。一方で月ノ美兎さん、白上フブキさんなどVTuberのフォロワーも目立ち、VTuberをフォローしているアカウントは1/3以上いました。ウマ娘はYouTubeでの配信が公式に認められていることもあり、すでに配信しているVTuberも多数います。こうした配信をきっかけとしたプレイヤーや、もともとファン層の重なりが大きいことなどで、フォローされやすかったのかもしれません。
ゲームはついにリリースされましたが、VTuberはウマ娘の今後の展開においても重要と思われ、ゴールドシップさんがこれまで活動してきた実績やノウハウは今後も有益と思われます。今後の活動が期待されます。
橘ひなの
- Twitter：https://twitter.com/hinano_tachiba7
- YouTube：https://www.youtube.com/channel/UCvUc0m317LWTTPZoBQV479A
橘ひなのさんはバーチャルeSportsプロジェクト「ぶいすぽっ！」のチーム「Iris Black Games」メンバー。以前紹介した如月れんさんのチームメイトです。2020年8月に初配信。ピンクと黒のツートンカラーの髪の自称メンヘラの女の子。配信ではほかのメンバーと同様に「APEX Legend」を中心にFPSなどのゲーム配信が多く、APEXはデビュー以前にプレデター経験もあり。歌も好きで、歌枠もしばしば、歌ってみた動画も投稿しています。
今回の7日間では27%増となる4400名以上が新規に彼女をTwitterをフォローしました。同期間にYouTubeでも8000名以上が新規登録しておりこちらも伸びています。
きっかけとしては彼女が参加しているゲーム「Valheim」のマルチプレイ配信が挙げられます。「Valheim」は2月にアーリーアクセス版がリリースされた北欧神話をモチーフとしたオープンワールドRPGで、マルチプレイサーバでの協力プレイができクラフト要素もあるなど、VTuberで人気のある「Minecraft」や「Ark: Survival Evolved」と似たところがあるタイトルです。
彼女は2月25日から「Valheim」のマルチプレイに参加、彼女が参加するサーバではぶいすぽっ！の胡桃のあさんや英リサさん、バーチャルゴリラさんや白雪レイドさん、にじさんじの叶さん、ほか配信者の方などAPEXで関わりのある方が参加しており、共同で冒険や建築などをしています（彼女の初参加時の様子は英リサさんの配信などで見られます）。中でも橘ひなのさんと元プロゲーマーの配信者Kamitoさんのお互いの距離感を探るようなやりとりが微笑ましく、これをきっかけに3月5日行われた二人の1対1でのAPEXコラボも注目されました。
7日間の新規フォロワーを見るともっとも多いのはにじさんじの葛葉さんのフォロワーで2/3弱。ほかAPEXの大会などに参加しているVTuber・配信者が目立ち、特に「Valheim」で一緒にプレイしている胡桃のあさん、Kamitoさん、バーチャルゴリラさん、白雪レイドさん、YouTuberのカイトさんの視聴者が関心を持ったのが分かります。
彼女らの「Valheim」配信は恋愛にからむネタにするシーンがしばしばあり、男女が同じ世界で共同生活してることから「テラスハウス」に例えられたりもしています。ぶいすぽっ！は女性VTuberのグループですがAPEX配信の関係上男女コラボがもともと多く、視聴者も（他の女性VTuberと比べれば）抵抗が薄いのか、こうした空気自体がエンタメとして昇華されているのが興味深いところです。
淡雪みるく
- Twitter：https://twitter.com/awa_milk1040
- YouTube：https://www.youtube.com/channel/UCezt32WhHXGwTnHlP5yUsfw
淡雪みるくさんは3月6日に初配信をしたバーチャル液体。可愛らしさとクリーチャーのようなグロテスクさの同居したビジュアルが魅力で、本人の好きなポイントはお腹の口と顔が割れて出てくる口。好きなお酒は芋焼酎とのこと。まだ初配信しかしていませんが、食べ物なら虫でもなんでも食べるとのことで、YouTubeチャンネル登録1500人・Twitterフォロワー2000人の記念にドッグフードを食べる配信を今後予定しています。
初配信をはさんだ今回の7日間では以前から80%増となる1000人以上の新規のフォローがあり、チャンネル登録も2200名以上増加しました。やはりインパクトのあるビジュアルが目立ったものと見られ、以前紹介したばぶかすさんと同様、グロテスクさとカワイイが同居したデザインは海外でも人気が高く、淡雪みるくさんの配信にも海外の視聴者が多数訪れていました。
7日間の新規フォロワーを見るとやはりホロライブEnglishのGawr GuraさんやNinomae Ina’nisさんを筆頭にホロライブEnglishのメンバーをフォローしている人が6割近く、ほか日本やインドネシアのホロライブメンバーが並ぶ英語圏のホロライブリスナーの傾向でばぶかすさんと似ています（実際にばぶかすさんのフォロワーの1%前後が今回淡雪みるくさんをフォローしていました）。英語圏のVTuberファン群のひとつの傾向のようです。
ばぶかすさんと同様に淡雪みるくさんも特徴的なギミックの動画をTwitterに投稿しており、初配信前から注目されていました。こうした強みのあるVTuberには有効な手法と言えるでしょう。
（TEXT by myrmecoleon）
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