KAMITSUBAKI STUDIOに所属するバーチャルシンガー・花譜(かふ、敬称略)は13日、2ndワンマンライブ「不可解弐 Q2」をYouTube Liveにて無料配信した。
「不可解弐」のために用意したバーチャルライブハウス「PANDORA」のステージに降り立ち、本編ではソロを中心に、アンコールでは同じスタジオの仲間たちとのユニゾンで全20曲を約2時間で熱唱。生放送の同時接続数は4万人(!)を超え、Twitterでは「#不可解弐Q2」のハッシュタグが日本と世界のトレンドで1位に入るなど、ネット上で大きく注目を集めた。
「セカンド」と銘打っているものの、彼女にとってはリアルでの「不可解」、無観客オンラインの「不可解(再)」、カバー曲でオンラインの「アイスクリームライブ」と実施してきて、昨年10月にバーチャル会場からオンライン配信した「不可解弐 Q1」に続く4回目のライブだ。
ステージで明らかになった新要素としては、6月11、12日、豊洲PITにてリアルライブの「不可解弐 REBUILDING」を開催することを予告したり、理芽(りめ)・春猿火(はるさるひ)・ヰ世界情緒(いせかいじょうちょ)・幸祜(ここ)さんとともに5人組のバーチャルアーティストグループ「V.W.P」(Virtual Witch Phenomenon)の結成をお披露目したりと盛り沢山だった。
今回の大舞台をリアルタイムで見て感じたのは、KAMITSUBAKI STUDIOという場の豊穣さと、彼女自身の成長だ。
正直にいえば、ライブ中は幾重にも重なった才能に圧倒され続け、ラストの凛とした語りには花譜という世界に重なるいくつものストーリーを感じて、その美しさに涙してしまった。「実は花譜はリアルタイムで展開している魔法少女アニメなのでは?」と錯覚したほどの深さだ。
ライブ自体については、「Z-aN」にて3月21日23時59分まで特別再放送アーカイブを公開しているので、そちらを見ていただいた方が早い。本記事では、筆者が「観測」した、その価値をまとめていこう。
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バーチャルだから花開いた「不可解」なステージ
ライブは花譜ソロ中心の本編と、実写映像を挟んだアンコールのパートに大きく分けられる。アンコールでは、V.W.Pの5人が集結して「魔女」シリーズの7曲を歌い上げた。花譜のライブで定番となる「おまけが本編」であり、「ソロライブ詐欺」でもあるという裏切り方だった。
スタートは、まるで映画の始まりだった。荘厳なBGMに合わせて、「神椿市」と描かれた構造物やコンテナがこちらに向かって飛んでくる映像を挟み、ビルの屋上に立つ花譜が「不可解」シリーズで定番の「呪文」を詠唱する。
「うみ。そら。かぜ。ゆき。あさ。よる。あめ。おんがく。せかい。いのち。いいたいこと。みたされること。なつのにおい。あいすくりーむ。ねこ。かみさま。だいきらい。だいすき。ひなどり。ともだち。たからもの。わすれたいこと。ゆるせないこと。……とどかない」
ピンクのオーラに包まれた彼女が目を見開く。
「とどけなくちゃ。やくそく。なみだ。ゆめ。はな。ほし。きみ。何十年経っても、全部、全部、忘れないように」
「恋をする。大人になる。卵を壊す。瞬きをする間に、花が散ってしまったら、私の声は溶けてしまう。それだって世界は愛おしい。私は今日、不可解の花になる。今日から明日の、世界を変えるよ。すべてを歌に変えて、歌う。バーチャルと、リアルの、つなぎ目から、今ここにいるよ。ここにいる!」
そうして現れたのが、静謐に包まれたバーチャルライブハウスのPANDORAで、彼女の声で「花譜、セカンドワンマンライブ 不可解弐、不可解弐、不可解弐……」とタイトルを読み上げる。1曲目「夜行バスにて」のイントロが流れ出すと、「花譜です!不可解弐Q2、始まりました! 今日は楽しんでいきましょう!」と打って変わっての明るい声で高らかに宣言した。
ライブで語るべきところはいくつもある。
まず音楽。いつもながらバンドアレンジがとてもいい。個人的に好きなのは、8曲目、理芽さんのカバーとして2人で歌った「食虫植物」。ピンク主体の映像演出もあって、だいぶセクシーさが強調されて驚いた。曲間で演奏をやめずに数曲、メドレー気味に歌を続けるのもライブ感があって気持ちが上がった。
配信というだいぶ限られた環境にもかかわらず、音の調整も心地よく感じた。うねるギター、跳ねるベース、粒揃いのハイハット、弾けるピアノ、そして花譜さんの美声。すべてが引き立つミックスかつ、ホールのエコーもうまく再現していた。ヘッドホンで聴くとより浸れるはずだ。
花譜さん自体の歌声の成長も感じた。ライブにおける歌は、単純にうまく歌うだけでなく、総合的なパフォーマンスとして観客を魅了する必要がある。レコーディングして突き詰められたものとは異なり、アレンジなり息遣いなりその瞬間にしか生まれない表現がステージにあり、だからわれわれは現地に足を運ぶわけだ。
その点、今回のステージパフォーマンスは、見事の一言だった。派手な振り付けもなく、堂々たる歌声一本で聴くものを魅了していた。筆者が特に好きなのは、3曲目の「エリカ」で、「エリカが咲く」を繰り返すところの歌い分けに魅了された。10曲目、日本沈没のグランドエンディングテーマ「景色」では、ピアノのみの劇場版アレンジで、高域の伸びの気持ちよさに引き込まれっぱなしだった。
カバー曲を「わたしがすきなうたをうたうよ」としてネットに投稿し始めた頃は、あんなに震えて、か弱さや儚さを感じさせていた歌い方だったのに、もとの声質のよさを残しつつこんなにも変わるのか。場数を踏んで慣れたのではなく、表現力を高めてきたところに、彼女のポテンシャルを実感した。
圧巻のパフォーマンスの一方で、等身大の高校生に戻って、ボソボソと話すMCもギャップがありすぎて魅力的だ。特に最高なのは理芽さんとの掛け合いで、今回はこんな感じだった。
理芽 今日の花譜ちゃんの調子を聞いてみようかな……。今日の花譜ちゃんの語彙力はどれくらいですか?
花譜 えー、今日の語彙力は……マイナス53万です。
2人 (口に両手を当てながら、笑)
理芽 可愛い。
花譜 可愛くはない。
理芽 マイナス53万、ヤバイな。私何万かな……。
花譜 理芽ちゃんは、今日の語彙力は何万ですか?
理芽 今日の語彙力は花譜ちゃんに負けちゃうから、プラスに行きたいけど、マイナスで。
花譜 (笑)
理芽 マイナス……、マイナス……、マイナス37ぐらい。
花譜 ちょっと上なんだ。
理芽 やっぱ花譜ちゃんの方が語彙力すごいから。
花譜 がんばります。
「ちょっとお水を飲みます」といって、ごくごく音を立てて飲む「ダイナミック給水」も毎回笑ってしまう。コメントでも「お水助かる」との声がよせられていた。
カバー曲を歌った後のMCでは、いい意味で「早口オタク」のように曲への想いを語り倒していた。それは彼女が歌と音楽が本当に好きだということの裏返しに他ならない。だから、適切に支える人々の下でどんどん成長していっているわけで、次のライブが楽しみだ。
歌声でいえば、CeVIOとのコラボで生まれた音楽的同位体「可不」との共演も外せない。ものすごくざっくり言えば、花譜の声を使った「初音ミク」のような存在で、バーチャルのステージに立つバーチャルの存在の隣に、人工的なキャラクターが立つというシチュエーションに驚いた。
ボーカロイドでも、GACKTと「がくっぽいど」、ピコと「歌手音ピコ」、夢眠ねむと「夢眠ネム」といったように実在のアーティストを元にしたものはあるが、バーチャルシンガーとのバーチャルステージでの共演は異例だ。2人が微妙に違う声で、ポリスピカデリーの「不埒な喝采」をデュエットしているのを目にして新時代を感じた。これも次のライブでの進化が楽しみだ。
そしてビジュアル面。「不可解」シリーズといえば、力の入った背景映像と、彼女の前に映し出される歌詞のモーションタイポグラフィによる演出が特徴だ。ライブでありながら、ステージのすべてを合わせて映像作品という側面も持っているわけだ。
今回もその魅力をいかんなく発揮しており、逆にバーチャルライブハウスでの開催にしたことで、魚のようなキャラである「らぷらす」が飛び回るなどの空間演出が加わって、花譜のライブという世界観の再現が容易になったのではと感じた。そんな素晴らしいビジュアルを、容赦なくざくざくと切っていくカメラワークや、ピント使いにも引きつけられた。
結局、この「不可解」というステージは、音・映像・イラストなどの才能が幾重にも重なり調和しているところに大きな価値がある。通常、こうした裏方はあまり表に出てこないが、「不可解」シリーズに関しては、ライブ後にクリエイター自身がTwitterで「ここを担当しました」とPRしているのも、どんどん名前を出してもらって、もっと大きくなって欲しいという意志が感じられていい。
バーチャルシンガーだけに止まらず、何か新しいものを生み出したい人々が集う場。それがKAMITSUBAKI STUDIOを運営するTHINKRという箱の豊穣さなのだろう。
歌でリアルを救うV.W.Pという「魔女」たち
アンコール以降に明かされた花譜とV.W.Pに込められた想いについても語っておかなければいけない。
それはリアルの世界に生まれてしまった「怪物」を、バーチャルの「魔女」たちが歌で浄化していく物語だ。
人間関係、貧困、事件・事故、病気、災害──。人は特に何の理由もなく、たまたま運が悪くて不幸な状態に陥ってしまうケースがままある。今でいえば新型コロナウィルスが該当するだろう。そうした環境に心が傷つけられ、世の中のすべてに絶望してしまうと、誰かに呪いをぶつけたり、辛さを自分の中に閉じ込めてしまう負のループが生まれる。特に人生経験が少なく、自由も効かない学生時代は視野が広げにくい。
歌と音楽が放つメッセージは、いつの時代もそうした若者の「怪物」を包み込み、優しさや気づきを与えてきた。似たようなテーマをアニメや映画などが取り上げて、作中の世界が救われて共感を呼ぶというパターンもある。
一方、花譜とV.W.Pはその両方の特徴を併せ持っている。生きづらさをカンザキイオリの楽曲で表現し、「中二病」のような尖った世界観でまとめて、5人の「魔女」たち歌声で聴くものに魔法をかける。バーチャルの存在が、リアルに直接作用して「あなた」を直接救おうとするわけだ。これはVTuberならではの表現で、とても新しい。
本編とアンコールの間には、モノクロの実写ドラマが流れた。
田舎に住む女の子はクラスに馴染めず、休み時間は花譜の動画を見たり、絵を描いたりしてして1人で過ごしている。希望は、東京で行われる花譜のライブに行って、ネットで知り合った同じ「観測者」(花譜のファンネーム)の女の子と会うこと。
しかし、そんな夢は新型コロナウィルスの感染拡大で潰えてしまった。間髪入れずに花譜のナレーションが流れる。
「世界は突然、それまでの形を失った。人々は見えない何かに恐怖し、顔をなくした。疑心暗鬼な時代。出口の見えないトンネルを、彷徨い続けてる。今日もたくさんの名もなき怪物が生まれ、腹を空かせて周りを食い散らかしている。その怪物はすべてを食い尽くして、最後には己を尻尾から丸呑みするに違いない。自分がどうして生まれて、死んでいくのかも知らずに」
シーンは東京の女の子に変わり、「アンサー」が流れて「正解のない日常へ そこではきっと1人じゃない」と歌われる。続けて、母親から東京行きを反対される田舎の女の子が映し出される。
「何ひとつ確かなものなんてないこの世界で、私たちは何を信じればいいんだろう」
自ら描いた花譜のイラストを目にして、田舎の女の子がつぶいた言葉は「魔女」だった。
そこから屋上に立つ花譜の映像にスイッチし、特殊歌唱用形態「星鴉」(ほしがらす)に着替える。歌い出したのは、もちろん「魔女」だ。
「魔女」はVTuberがテーマの歌で、アンコールで歌われた一連の楽曲の始まりになる。
「今己を証明する言葉に魂はあるか?」
そんな歌詞が今、思い返すとリアルに作用するバーチャルの存在という始まりだったのかもしれない。
続けて、理芽と「魔法」、春猿火、ヰ世界情緒と「祭壇」を力強く歌い上げる。「音楽は魔法」「ここには誰かの笑顔が 誰かの涙が混ざっては 溶けて流れて散りゆく ここでは願いが魂がないまま繋がる」など、歌詞でV.W.Pへの布石が打たれていく。
さらに変身バンクに切り替わり、幸祜が加わって、5人お揃いの衣装、魔女特殊歌唱用形態「花魁鳥」(エトピリカ)をお披露目。V.W.Pの結成を宣言し、「宣戦」と「言霊」、新曲の「電脳」を熱唱。特に「言霊」は、アンコール冒頭の実写映像に対するアンサーのような歌詞が心に響き、とても美しいと感じた。
「想いはここにあって あなたを探していて
これが愛という名前になるなら
悲しみに飲まれてどこにも行けなくて
それでも言葉は届くなら
偽物でもいいと歌うよ
愛よ言霊となって 世界を救って」
ボーカリストとして色の違う5人の声が合わさると、本当に魔法のように心を動かされてしまう。最後は、魔法陣のような床模様を囲んで、5人向けに再編された始まりの歌である「魔女(真)」(まじょとぅるー)を歌い上げた。
「戦え 抗え 今を抱きしめるように
あなたの産声を 頭の悪い慟哭を
答えて 歌って 電子の海を舞い踊って
この世界は私たちの証明を探している」
V.W.Pは、THINKRのFLAT STUDIOが手掛けたQ1/Q2のエンディングアニメにも出演していた。今後、どんな手段で魔法をかけてくれるのか、とても楽しみなプロジェクトだ。
「好きな歌を、好きなように歌わせてくれて、ありがとう」
めちゃくちゃ長くなってしまったが、もうひとつだけどうしても伝えたいことがある。花譜自身の物語だ。Q1/Q2通しての締めとなるシーンでは、花譜が1人で登場し、今までのMCが何だったのかと仰天するぐらいの強いメッセージを口にしていた。長くなるが全文起こしたので、まずは読んで欲しい。
理芽ちゃん、春猿火ちゃん、情緒ちゃん、幸祜ちゃん、ありがとう。みなさん、最後まで見てくれて、本当にありがとうございます。花譜、セカンドワンマンライブ「不可解弐 Q2」、いかがでしたか? 盛り沢山すぎてね、もはやワンマンライブじゃないですね(笑)。通算で言うとセカンドでもない。嘘、いっぱい嘘ついてますね(笑)。すいません。
でも音楽とか、ライブの形なんてね、いっぱいあったほうが楽しいし、いいと思うし、自由なんだよーって思います。もし、全体的にね、見てくれて、楽しかったと言ってくれるならば、お許し下さい。これもまた、ひとつの不可解です。
今回も本当にたくさんの方々に支えられて、今日を迎えることができました。プロデューサーさん、運営さん、カンザキさん、カワサキさん、PALLOWさん、KAMITSUBAKIのみんな、関係してくださっているたくさんのスタッフのみなさん、そして観測者のみんな、本当に本当にありがとうございます。
そして今日のライブを全編無料公開したいと運営さんたちがいってくれて、私もそうしようと決めたときに、それを許してくれた会社の方々もありがとうございます。私は、全然難しいことがわかってなくて、きっと見てない、見ることができていないところで、本当にたくさん、大変なことがあるんだと、いつも思っていて……。でもきっとこれは、すごいことになるんだと思います。
去年起きた、コロナから始まった前代未聞の出来事たちが今、色々なことを変えてしまっていて、それは全然終わってないと思うし、たくさん傷ついた方々がいると思います。音楽なんて、聞いている場合じゃなくなった人たちもたくさんいると思うし……。私の同世代の子たちも、お父さんとか、お母さんとかが、仕事的に、経済的に大変になってしまったという人たちがいっぱいいると聞きました。
なんかコロナが始まる前からそうですけど、こう生きていれば、悲しいことも、辛いことも、楽しいって思うことも、嬉しいって思うことも、死にたいなぁって思うことも、いっぱいあって。それが普通で、当たり前……のことで、でもその自分でいっぱいいっぱいの中で、人間一人では生きていけないので、相手のことも思いやって、生きていかなきゃいけなくて。こう、我慢することだったりとか、やるせない気持ちになることだったりとかが、いっぱいある……あったと思うし、これからもあると思うんですよ。
で、その、そこでグッって押さえたものを昇華する手段、方法のひとつが、私の歌であったらいいなっていうのをいつも思っていて、どうですかね、今私はみなさんに歌を届けたいと思って今日、歌っていたんですけど。もし受け取ってくれた方が、いたら、幸せなことです、本当に。
私は本当に……何も、できなくて(笑)。すぐいじけるし、すぐ調子に乗るし、なんか「すごい努力家だね」とかいっていただくことがあったんですけど、なんかもう全然そんなことなくて。本当に、本当に何もできないんですけど。
なんか、私の歌で、「いつもなんか元気もらってるよ」だったりとか、「明日もがんばろうって思えたよ」とか、そういうことをいってもらうたびに、本当に嬉しくて。誰かの、なんか少しでも誰かのプラスの力に私の歌が変わってるって、いうのが、本当に幸せなことです。少しでも、誰かの力になれたら、私が今までこう生きてきた意味が……。意味になるんじゃないかと思えるし、だからこれからも命をかけて、歌を歌い続けます。
……あんまり好きじゃない自分のことも。みなさんが、私の歌を受け入れてくれるおかげで、少し自信が持てる気がします。私が歌を歌うのは、歌が好きだったってわけさ!(編集註:「そして花になる」の歌詞) ……(笑)
好きな歌を、好きなように歌わせてくれて、ありがとう。
あなたの生活の一部にしてくれて、ありがとう。
花譜を観測してくれて、ありがとう。
本当に、本当に、いつも、ずっと、ありがとう。
みんなが私を花譜でいさせてくれています。
何にもない自分に、がんばる自信と、元気と、力をくれています。みんなのおかげで仲間が増えました。あなたがいるから、私は私になれます。
私はみんなを愛しています。この世界を愛しています。そして……。くじけそうになっても、張り裂けそうになっても、たとえ魔法がなくても、怖がる必要はないから。もう一人じゃないから。
君は一人じゃない。だからまた、絶対、生きて生きて生きて! 生きて! 死なないで! また! 会いましょう!
花譜でした。またね。
最後にみんなに感謝を伝えて、「あなた」と世界を救おうと強く意思表示するところで、毎回涙腺が緩んでしまう。彼女の本当の言葉は、圧倒的な説得力を持っていた。今辛い人のもとにぜひとも届いて、「6月のライブで会えるなら、生きていてもいいんじゃね?」という気持ちになってほしいと願った。
花譜は、つまるところ普通の歌が好きな女子高生にバーチャルの魔法をかけて成立している存在だ。
しかし、器を見出されて見習いになって歌声という魔力を磨き、並行して花譜との「シンクロ率」を高めてきたのも事実だ。そうして花譜になった(つまり「そして花になる」)彼女が、今、仲間と共に魔女として世界を救う──。「ただの女子高生に課された世界の救済」という魔法少女アニメのようなストーリーが、リアルかつリアルタイムで進行しているところに鳥肌が立ちっぱなしだ。「自分が高校生の頃に同じことができたか?」というのを考えると、彼女とそれを支える周囲の偉大さがわかるだろう。
「魔女」というキーワードの下に、さまざまな伏線を回収していった「不可解弐 Q2」。「不可解」シリーズで違和感のある変身シーンを入れてたのは、この本人から花譜に生まれ変わらせるための儀式だったのかもしれない。彼女もQ1にて「変身はドキドキします。プリキュアみたい(笑)」と語っていたのが印象に残っている。
花譜の世界は、ライブを重ねるたびにどんどん面白さが増している。今回のライブも一度無料のYouTubeで見たという方も、特別再放送が3月21日の23時59分まで何度でも視聴できるので、再び感動を味わってほしい。未見ならぜひチェックしておくべきだ。部屋に鍵をかけて、すべての感情を開放して1人でヘッドホンで見るのがおすすめしたい。そこで「観測者」になったら、6月11、12日のリアルライブ「不可解弐 REBUILDING」のクラウドファンディングにも参加すると、より次のライブも楽しくなるだろう。
●セットリスト
M1:夜行バスにて
M2:夜が降り止む前に
M3:エリカ
M4:サリンジャー(The SALOVERS カバー)
M5:人間ビデオ(ドレスコーズ カバー)
M6:朝焼けと熱帯魚 平田義久 Remix(ぼくのりりっくぼうよみ カバー)
M7:nerve 一二三 Remix with VALIS(BiS カバー)
M8:食虫植物 with 理芽(理芽 カバー)
M9:不埒な喝采 with 可不(可不 カバー)
M10:景色
M11:花女
M12:畢生よ
M13:戸惑いテレパシー
M14:魔女
M15:魔法 feat.理芽
M16:祭壇 feat.春猿火&ヰ世界情緒
M17:宣戦 V.W.P
M18:言霊 V.W.P
M19:電脳 V.W.P
M20:魔女(真) arranged by rionos V.W.P
(TEXT by Minoru Hirota)
●関連リンク
・花譜2nd ONE-MAN LIVE「不可解弐Q2」特別再放送(Z-aN)
・花譜(YouTube)
・花譜(Twitter)
・KAMISTUBAKI STUDIO