最高の出演陣とスタッフ陣が贈るテレビクオリティのARライブ「V-Carnival」徹底レポート

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V-Carnival実行委員会は4月3~4日、VTuberオンラインライブ「V-Carnival」(以下、Vカニ)をSPWNにて実施した。

お台場のフジテレビに組まれた特設ステージに総勢21名のVTuberが出演し、2日間に渡る約5時間でカバー・オリジナル合わせて41曲を披露した。当日は、SPWNのコメント欄のみならず、Twitterにも多くのファンが感想を呟き、DAY1では一時、日本トレンド第3位を記録するなど盛り上がりを見せた。

特別ゲストとして、1日目はコスプレーヤーのえなこさん、2日目はタレントの叶姉妹が登場。MCには、ニッポン放送アナウンサー・吉田尚記さん扮するバーチャルアナウンサー・一翔剣さんを起用し、リアル/バーチャルを交えたここでしか見られないトークを展開するなど、単純な音楽ライブというよりはテレビの歌番組に近いバラエティーに富んだ構成だった。

タイムシフトは、4月18日まで公開されており、今からでも視聴可能だ。ここではライブの見どころを凝縮してレポートしていこう。


「FNS歌謡祭」スタッフとラテグラによるステージ演出

Vカニでまず特筆すべき点は、テレビクオリティのARステージ演出だろう。

通常、VTuberのライブでは、透明ボードやスクリーンなどをステージに立てて、出演者を出現させることが多い。バーチャル会場の場合は、出演者もステージも観客も完全CGで構成する。

一方、Vカニでは、出演陣はAR技術でリアルステージに登場。その様子を複数カメラで様々な角度から映して映像を構成していた。文章でさらっと書くとその価値がなかなか伝わりにくいが、ステージセット、カメラワーク、AR合成のすべてのクオリティーが高く、どこまでが現実でどこからがバーチャルか分からないほど調和がとれていた。その圧倒的なクオリティーは、それぞれのプロの仕事が組み合わさった結果だ。

まず、ステージセット。これは、ライブ中のMCで明かされた通り、1974年よりフジテレビ系列で放送している年末歌番組「FNS歌謡祭」の制作スタッフによる取り組みだ。40年近く続く看板歌番組を支えているだけあり、細かいところまでよく作りこまれている。

CG演出はラテグラが担当。同社は、国内ではニコニコ超会議の「超歌舞伎」や、スマホゲーム「グランブルーファンタジー」のイベント「グラブルフェス」でのスペシャルステージなどを手掛けている企業だ。

Vカニでは、特に照明との連動が見事で、例えば現実で赤色の照明が照らされると、AR出演しているタレントの肌も赤色になるといったように、リアルとバーチャルが全く違和感なく調和していた。

観客席には、通常の無観客ライブでは空っぽの様子が映し出されるところ、バーチャルのペンライトを掲げた観客が出現していた。そのペンライトは出演者や曲に応じて色や動きが変化し、歓声も演出として自然に取り入れているため、無観客ライブでありがちなさみしさをまったく感じなかった。

そうしたステージを鋭く切り取るカメラのカット割りは、「アニメロサマーライブ」のステージプロデューサーも務める森田純正さんが担当。背景のボケを生かした寄りや、クレーン、ドリーをフル活用した動きのある引きのカットなどをテンポよく組み合わせ、見る心地よさを生み出していた。

演出で特に印象に残ったのは、1日目の14曲目に披露した月ノ美兎さんによる「アンチグラビティ・ガール」だ。歌い始めの「イェーーーヘェーーー!」の声に合わせてステージがせり上がって来たところからすでに圧巻で、サビの「いつか浮かんで宇宙まで」の歌詞に合わせて、会場全体が一気に宇宙に包まれる部分に引き込まれた。

まさに「アンチグラビティ・ガール」の通り、重力を感じさせない魔法の演出だった。筆者はここで、劇場アニメ「とある魔術の禁書目録 -エンデュミオンの奇蹟-」に出てくる無重力空間でのライブシーンを思い出したのだが、まるでSFアニメの中の世界が目の前で行われているかのような錯覚を覚えた。

樋口楓さんの「ただ君に晴れ」において、天井が青空に包まれるARならでは演出も印象に残った。歌詞に合わせて青空が夕空に変わり、さらに星空になるなど現実では不可能なこともバーチャルなら実現できてしまう。

常闇トワさんの「-ERROR」や、YuNiさんの「透明声彩」など、まるでMVのようなクオリティーの映像が次々とライブで展開されていく。


VTuber音楽シーンを牽引する出演陣と王道の選曲

そんな演出が引きたてた出演者とセットリストは、まさに王道の一言だ。

出演者でいえば、ホロライブにじさんじという業界大手の「箱」はもちろんのこと、Re:ActKAMITSUBAKI STUDIOHIMEHINAYuNiさん、富士葵さんとVTuber界の音楽シーンを牽引するメンバーが名を連ねていた。披露した楽曲も、出演者がこれまでYouTubeに投稿してきたカバー動画やオリジナル曲を中心とする外さない選曲となっていた。

まず、DAY1の1曲目を飾ったのはHIMEHINAの2人とホロライブ・星街すいせいさんの3人による「ロキ」。これまでも多くのVTuberがカバーしてきたボカロの「神曲」だ。HIMEHINAによる「歌ってみた」動画は現在、再生回数465万回を記録している。

ホロライブの中でクールな歌声では右に出るものがいない星街すいせいさんと、HIMEHINAのコラボレーション。特にブリッジの「実は昨日から風邪で声が出ません」のところで3人揃ってハモった上でのロングブレスが印象に残った。1日目の1曲目から圧倒的な歌唱力で殴ってきた感覚だ。

1日目のトリを務めたのもHIMEHINAだった。「相思相愛リフレクション」「流れゆく命」とオリジナル曲を2曲立て続けに歌い上げ、最後には「劣等上等」でフロアを最高潮に沸かして締める。「劣等上等」は、HIMEHINAのこれまでの動画の中で最も再生されているカバー動画で、その再生数は1500万回を超える。

2日目の冒頭は、ときのそらさんと富士葵さんの「創聖のアクエリオン」、富士葵さんソロでの「鳥の詩」獅子神レオナさんによる「ピースサイン」「紅蓮華」と人気アニソンのカバーが続いた。

ときのそらさんと富士葵さんは、ともに2017年後半にデビューし、歌のジャンルに力を入れて活動してきたというVTuber音楽シーンでは大御所的存在だ。その歴史ある2人による、こちらも王道のアニメソングである「創聖のアクエリオン」。2005年に放送された同題アニメの主題歌で、いまだに様々なかたちで歌い継がれている、名曲中の名曲といえる。

2日目の11曲目には、KAMITSUBAKI STUDIOより理芽さんが出演して、「食虫植物」を披露した。同曲は執筆時点で再生回数が2725万再生を超える人気で、昨年末にPANORAがユーザーローカルと協力し算出した「2020年VTuber再生ランキング」でも1位を獲得した2020年VTuberシーンの顔ともいえる楽曲だ。

この後、同じレーベルの花譜さんも登場して、独特のテンポで会話を交わしていた。KAMITSUBAKI STUDIOのメンバーは歌声が特徴的なのはもちろん、ステージに立つだけで場の空気を一変させ、観客の心を引き込む独特のオーラがある。今回のステージもそう感じさせる仕上がりだった。

ソロのラストを務めたのは花譜さんで、オリジナル曲の「戸惑いテレパシー」「過去を喰らう」を2曲続けて披露した。VTuber業界は現在、生放送が主流になっているが、花譜さんはほぼ歌の動画のみでYouTubeの登録者数が50万人を突破している生粋のバーチャルアーティストになる。のちのMCで一翔剣さんも触れていたが、これで現役高校生だというのだから、本当に末恐ろしい。

Vカニ最後のオオトリは、2日目の出演陣オールスターによる「君の知らない物語」。10名が同時にステージに立ち、それぞれのパートを歌っていく様は圧巻だ。1日目のカバー楽曲はボカロ楽曲が多かった印象だが、DAY2は「創聖のアクエリオン」に始まり「君の知らない物語」に終わると、アニソンを中心としたセトリになっていた。


えなこが文野環コスに 「うちの野良猫がすみません」

王道といえば、テレビの歌番組のように心地いいトークパートも同様だ。1日目のスペシャルゲストであるえなこさんは、屋外に設けられたMCステージにて、ハートの女王を意識したオリジナル衣装、そして「にじさんじで仲いい子」という文野環さんのコスプレも披露した。

この文野さんのコスプレは、仕事ではなくプライベートの衣装だとのこと。文野さんはえなこさんの家によく通うほど仲がよく、えなこさんが「三面図ない?」と聞いたところ快く提供してくれたという。

えなこさんが「私は猫缶あげたりしてるんですけど、たまちゃん会うたびにポテチ10袋持ってくるんですよ。おうちに30袋くらいあってどうしようかと思ってます」と話すと、その場にいた同じにじさんじメンバーである樋口楓さん、本間ひまわりさん、月ノ美兎さんは「うちの野良猫がすみません」と謝っていた。その場にいないのにこの存在感、さすが文野さんだ。

その後は、えなこさんとこの3人で「スクリーンショットカーニバル」と称したコーナーを実施。背景を桜や教室などのシチュエーションに変え、それぞれえなこさんと一緒に写真を撮っていく。バーチャルタレントとリアルタレントのはずなのに、お互い全く違和感がないのがすごい。夏の海を舞台にしたシチュエーションでは、えなこさんが樋口楓さんにセクシーポーズを伝授する一幕もあった。


叶姉妹・美香様が「こんばんみぉーん!」の貴重シーン

2日目の叶姉妹は、生憎の大雨の中、レッドカーペットに後光が差した演出で登場。MCの白上フブキさんとは、「ジョジョ好き」(ジョジョの奇妙な冒険)という共通点で盛り上がる。恭子さんが「ちなみにどなたがお好きなんですか?」と振ると、フブキさんが「私は三部が一番好きでして、承太郎とかでもポルナレフとかすごく大好きなんです!」とコメント。美香さんが「ポルナレフ私も大好きです」と返して、オタクトークを繰り広げていた。

さらに叶姉妹は、立つだけで美しくなれるという「叶ポージングエクササイズ」を白上フブキさん、大神ミオさんの2人に伝授していた。叶姉妹が普段、インスタグラムやブログなどで紹介しているエクササイズとのことで、おそらくVTuberで直接教わったのは2人が初めてだろう。

そのポーズ伝授のお礼にと、白上フブキさん、大神ミオさんそれぞれが自分たちの挨拶とポーズを叶姉妹に説明した。美香さんが、「こんばんみぉーん!」や「こんこんきーつね」を真似てみるという、ここでしか見られない貴重なシーンもあった。


意外な「はじめまして」が見られたMCパート

そうしたリアル/バーチャルを交えた掛け合いだけでなく、VTuberファンとしては事務所の垣根を超えたコラボも見どころだった。

1日目では、にじさんじの月ノ美兎さんと、ホロライブの星街すいせいさんという珍しい組み合わせが実現した。2人とも話をするのは初めてとのことで、星街すいせいさんが、「すいちゃんはー?」といつもの掛け合いをすると、委員長が「今日も可愛いー!!」と返して、限界オタク化する。

すいちゃんも負けじと「委員長の子の衣装がほんとに可愛くて!!」とほめると、委員長が「色の相性よくないですか?」と返す。「ユニット組みますか?」「じゃあ、お願いします」と2人で握手。事務所の枠を超えた何かが成立したようだ。

2日目は、白上フブキさんと獅子神レオナさんの絡みも興味深かった。VTuberにも人気のFPSゲーム「Apex Legends」つながりで、過去に「VTuber最協決定戦 ver.APEX LEGENDS Season 2」など同じ大会に出ていたことはあったが、きちんと会話するのは今回が初めてとのこと。

2人は、ゲームの課金について「とりあえず上限までやっておけば」「足りなければカード買ってくる」「月々支払うカードが止まってしまった場合は、コンビニに駆けこむ」と廃課金トークを繰り広げたり、白上フブキさんの「English very very nice speak yes!」など勢いだけのドタバタ英会話を見せたりと、初対面とは思えないテンション高めのトークを繰り広げていた。

他にも、あまり雑談配信などをやらない花狭キョウさんが見せた意外な一面など、トークパートも盛りだくさんの内容だった。


テレビマンの努力が伝わった最高のVTuberライブ

テレビ局とVTuberといえば、これまでもテレビ朝日系列のバラエティー番組「超人女子戦士 ガリベンガーV」や、日テレが展開するVTuberネットワーク「V-Clan」、中京テレビの主催するイベント「ナゴヤVTuberまつり」など、少なからず関係があった。

今回のVカニはフジテレビが関わっており、当日までの宣伝もそのネットワークをフルに活用していた。1日目に出演した角巻わためさんは3月31日に「めざましテレビ」のコーナー「めざましじゃんけん」に、2日目のMCである白上フブキさんは3月23日深夜放送の「プレミアの巣窟」にそれぞれ出演するなど、当日までの期待感を煽っていた。

ラストMCにて2日間通してMCを務めた一翔剣さんはこう語る。

「同じ放送人として、テレビマンの努力がめちゃめちゃすごいなと思ったんです。あのARのステージ、心の底から感動しませんでしたか? ARというのは、VRと現実の間にあるみたいなものじゃないですか。『VR vs 現実』みたいに捉えてる人が世の中ほんのちょっとだけいますけど、VRと現実って絶対仲良くできませんか? っていうのを今日めちゃくちゃ強く感じたんですよね」

これまでのVTuberライブとは、また違う角度から新たな価値を生み出した本イベント「V-Carnival」。SPWNのタイムシフトは4月18日まで公開されており、アーカイブチケットは同日21時まで販売中だ。期間内は何度でも視聴できるため、未見のVTuberファンはぜひチェックしていただきたい。

●セットリスト
・Day1
M1. ロキ(HIMEHINA、星街すいせい)
M2. 天球、彗星は夜を跨いで(星街すいせい)
M3. NEXT COLOR PLANET(星街すいせい)
M4. ヴィラン(緑仙)
M5. 夜に駆ける(緑仙・竜胆尊)
M6. からくりピエロ(竜胆尊)
M7. アディショナルメモリー(花鋏キョウ)
M8. アンノウン・マザーグース(花鋏キョウ)
M9. かくしん的☆めたまるふぉ〜ぜっ!(本間ひまわり)
M10. 完全放棄宣言(本間ひまわり)
M11. ただ君に晴れ(樋口楓)
M12. アンサーソング(樋口楓)
M13. チュルリラ・チュルリラ・ダッダッダ!(月ノ美兎)
M14. アンチグラビティ・ガール(月ノ美兎)
M15. ウミユリ海底譚(猫又おかゆ)
M16. ボンバーキングのテーマ(戌神ころね)
M17. ヒャダインのじょーじょーゆーじょー(戌神ころね・猫又おかゆ)
M18. 相思相愛リフレクション(HIMEHINA)
M19. 流れゆく命(HIMEHINA)
M20. 劣等上等(HIMEHINA)

・Day2
M1. 創聖のアクエリオン(ときのそら・富士葵)
M2. 鳥の詩(富士葵)
M3. ピースサイン(獅子神レオナ)
M4. 紅蓮華(獅子神レオナ)
M5. -ERROR(常闇トワ)
M6. Palette(常闇トワ)
M7. シャルル(YuNi)
M8. 透明声彩(YuNi)
M9. メランコリック(角巻わため)
M10. 愛昧ショコラーテ
M11. 食虫植物(理芽)
M12. 命に嫌われている(理芽・花譜)
M13. スパークル(大神ミオ)
M14. STARDUST SONG(大神ミオ・白上フブキ)
M15. Butter-Fly(白上フブキ)
M16. Say!ファンファーレ!(白上フブキ)
M17. エイリアンエイリアン(ときのそら)
M18. ぐるぐる・ラブストーリー(ときのそら)
M19. 戸惑いテレパシー(花譜)
M20. 過去を喰らう(花譜)
M21. 君の知らない物語(Day2オールスター)

(TEXT by アシュトン

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