【詳報】VRChat、現在開発中のロードマップを公開 独自アバターダイナミックや、クリエイター経済圏など

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VRChatは日本時間14日、同社の公式Twitchにて「VRChat Developer Stream」を実施した。約2時間に及ぶ配信の中では、今年1年間のうちに実装を目指す各種新機能などの発表を行い、大型アップデートに向けたロードマップを公開した。

今回発表した、ロードマップの全体図は以下の通りだ。なお、本ロードマップはあくまで開発予定であり、実装時期や詳細の内容に関しては変更となる場合がある。最新の情報は、VRChatの公式TwitterDiscordサーバーなどにて確認してほしい。

・アイデンティティーアップデート(数週間以内)Identity Update(weeks)
・新しいUI(夏)
・アバターダイナミック(夏)
・グループ機能(今年中)
・クリエイター経済圏(今年中)
・VRC+ ギフティング(夏)
・VRC+ Oculus(夏)
・Udonネットワークアップデート(数週間以内)

メニューUIやプロフィールをアップデート

まず、「アイデンティティーアップデート」では、VRChat上でのプロフィール欄を改善する。これまでは、ウェブサイト上でしか確認ができなかった「bio」欄がVR上においても確認できるようになったり、メニューを開いた際、ネームプレート上にステータスメッセージが表示できるようになる。

「イメージギャラリー」と呼ばれる新機能も実装。これにより、VRChat上で撮影した写真や、ウェブサイト上からアップロードした写真を、ギャラリーに保存できる。ギャラリーに保存した画像は、現在、課金プランである課金プラン「VRChat Plus」のユーザーが使用できる画像付きのInviteやプロフィールイメージなどに使用できるとのことだ。

これに伴い、「新しいUI」に関しても順次実装していく。UIは、急激に差し替えるのではなく、まずは「Quick Menu」からアップデートをはじめ、徐々に実装していくことでユーザーが困惑しないよう配慮する。まず、バナーをクリックしイベントにアクセスできる機能や、ソーシャル、カメラアクション、インスタンス情報、セッティングやオーディオメニューなどを「Quick Menu」上で確認できるようにする。

カスタムメニューでは、マップ表示やテレポート位置などワールド開発者がSDKを用い設定することで、アドベンチャーゲーム系のワールドなどの自由度を向上させるとのこと。UIアップデートのロードマップは下記の通りだ。

フェーズ1.5:新「Quick Menu」をローンチ、メインメニューは変わらない
フェーズ2.0:メインメニューのアップデート、検索性を上げ、ソーシャルメニューを改善する
フェーズ2.5:カスタムメニューや、SDK hooksなどの実装

独自アバターダイナミック「Physics Bone」を導入

今回の配信で最も注目を集めたのは「アバターダイナミック」だろう。従来、VRChat上のアバターでの揺れモノの表現は、外部のUnityアセットである「Dynamic Bone」を使用していた。VRChatは、これに代わる独自のアバターダイナミック「Physics Bone」を導入し、サービスへの最適化を図るとともにアバター間での干渉などインタラクションを可能とする。

VRSNS「Neos VR」では、これまでも独自のダイナミックボーンを使用し、ユーザーは「Dynamic Bone」を購入せずとも、揺れモノを表現したりお互いのアバターの干渉を楽しむことができた。

「Physics Bone」も同様に、今後SDKに同梱するため、ユーザーは新たに購入する必要なく、無料で使用できる。手にあるコライダーを用いて、相手の髪やしっぽ、耳などへの干渉を実現する。勝手に身体を動かされたり、引っ張られたりすることがないよう、VRChatでは、同機能の使用に許可制の導入を考えている。現在、そのシステムについて検討しているところだとのこと。

また、Unityのバージョンについても今後アップデートを控えている。これまで、VRChatでは「Unity 2018 LTS」を使用した開発運用を行ってきたが、サポート期間終了に伴い、使用するバージョンを「Unity 2019 LTS」へとアップデートする。正確な更新時期は未発表だ。

ソーシャルVRとしてもさらなる機能充実を図る

そのほか、「グループ機能」「クリエイター経済圏」など、よりソーシャルVRとしての機能充実を図る施策も準備している。前者は、VRChatユーザーの多様性と、コミュニティーへの所属を両立させるため、長い間開発を進めてきたという。

主な機能としては、リーダーがおり、運営者、モデレーターなどの権限を付与でき、「Join」や「Leave」などの機能に加え、「Follow」なども導入する予定。グラフィックや、ロゴ、bioなどプロフィールページのようなものを持ち、発見性も担保するとのことだ。また、所属の公開/非公開などの設定も可能になる見込みだ。

「クリエイター経済圏」では、まずユーザー間サブスクリプション制を導入する。対象となるクリエイターは、ワールド制作者、アバター制作者のほか、アーティストやミュージシャン、配信者など多岐にわたる。クリエイターは、有料会員限定のワールドギミックやアバターへのアクセス権の付与、限定コンサートの実施などのコンテンツが提供できる。また、月額プランを数種類用意するなどの機能も実装する見込みとなる。

日々、ユーザー数が増加し、先週末における同時接続者数は4万8200人の新記録を達成したという「VRChat」。今回の様々なアップデートは、昨年11月より導入している月額9.99ドルの課金プラン「VRChat Plus」により開発資金に余裕が生まれたことに起因する。

日本人コミュニティーによる課金は、特に注目され、新規に導入する地域別サーバー導入においてもヨーロッパに並び日本が選ばれる結果となった。新型コロナウイルス感染症による巣ごもり需要の増加や、Oculus Quest 2をはじめとする各種VRデバイスの普及、メタバース、ソーシャルVRへの注目など、様々な要因が重なり、これまで以上に成長をしている「VRChat」。今後の発展にも注目していきたい。

(TEXT by アシュトン

●関連リンク
「VRChat Developer Stream」配信URL(Twitch)
VRChat公式Twitter
VRChat公式Discordサーバー
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