コンシューマー最高峰のVR「Varjo Aero」と軽・安・高性能なトラッカー「Tundra Tracker」を体験 その実力は……?

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「メタバース」の流行語化とともにさらに注目度を高めるVR業界。最近では、新型VRゴーグルの相次ぐ発表や、VR空間上などでアバターの動きと自身の動きをシンクロさせる「トラッカー」の選択肢の広がりなど、ハード面でも新しい動きが次々と生まれている。

そんな中、PANORA編集部は、12月都内某所にて、いま注目の二大VRガジェットである「Varjo Aero」(ヴァルヨ エアロ)と「Tundra Tracker」(ツンドラ トラッカー)がいっぺんに体験できる機会があるとの情報を得た。Varjo Aeroといえば、コンシューマー向け最高峰と噂される約30万円の超ハイエンドVRゴーグル。Tundra Trackerは、昨年3月に量産型開発に向けクラウドファンディングを実施したところ、1週間で1億円が集まったという赤外線式トラッカーだ。その真価を見極めるべく、さっそくその体験会に潜入してきたので、レポートをお届けしていきたい。


最高峰は伊達じゃない 「Varjo Aero」驚異の高解像度

「Varjo Aero」を実際に被る様子(広田)

Varjo Aeroは、フィンランドのVarjo社より今月出荷予定の新型VRゴーグル。価格は税抜で30万円前後だ。視野角115度で、解像度は片目2880×2720ピクセル。ディスプレイにはミニLED・LCDを使用しており、最大35PPD(Pixel Per Degree、視野角1度当たりの解像度)を実現している。これは、VIVE Pro2が20.4PPDであることと比較しても、かなりの角画素密度を実現しているといえる。なお、人間の眼が認識できる最大の角画素密度は60PPD程度とされている。Varjo社が展開する業務用上位モデルである「Varjo VR-3」は、これを上回る最大70PPDを謳っているが、コンシューマー向けとしてはこの「Varjo Aero」が最高ランクといえるだろう。


実際に被ってみると、噂通りの視覚的忠実度。体験したコンテンツは、「VRChat」「バーチャルキャスト」「Project CARS 3」およびオリジナルコンテンツとなったが、いずれも普段使用しているVRゴーグルでは体験できないクオリティーでの視界のクリアさを実感できた。

オリジナルコンテンツは、高解像度テクスチャを使用したモデルハウスの内覧のようなものだったが、しゃがんでカーペットをじっと見ても、全く粗さを感じさせず、本棚に置いてある本も1枚1枚の紙の質感がわかるほど精細に表現されていた。驚いたのは、このように細かい部分をじっと見たとしても、今までのVRゴーグルではぬぐい切れなかった、ピクセルのドットが本当に目立たなかったことだ。

また、こうしたハイスペックVRゴーグルで問題になりがちなのはVRゴーグルの重さだ。しかし、「Varjo Aero」の本体重量は487g。これは、筆者が普段使っているOculus Quest2の503gと比べても軽く、ヘッドバンドが後頭部とおでこの部分の2ヵ所で調節できるため、装着感はかなり快適に感じた。約30万円という価格から万人向きとは言い難いが、とにかく高クオリティーの映像体験・VR体験を追求したいという人にはぜひおすすめしたい製品だ。そうでない人も、このVR体験は機会があればぜひ一度試してみてほしい。

「Varjo Aero」装着:正面
「Varjo Aero」装着:側面

軽い!安い!高性能! 感動の「Tundra Tracker」

左から「VIVE Tracker 3.0」「Tundra Tracker」「VIVE Tracker(2018)」

「Tundra Tracker」は、世界最小・最軽量を謳うSteamVR対応トラッカー。今年3月に量産版開発に向けたクラウドファンディングを実施すると、1週間で支援金が約1億円(90万4585米ドル)集まるなど大きな話題を呼んだ(関連記事)。量産版の価格は、1つあたり1万円台を予定。現在、クラウドファンディング支援者に向け、発送準備をしている段階だ。

なによりもの特徴としてはやはりそのサイズと重量だ。現在主流のトラッカーであるVIVE Tracker 3.0と並べてみるとその差は一目瞭然だ。重量も1つ辺り50g以下を実現しており、VIVE Tracker 3.0の75gと比較すると実に3分の2となっている。

左:VIVE Tracker3.0 右:Tundra Tracker
「Tundra Tracker」を手の上に乗せた様子。非常に小型かつ軽量

実際に装着してみた感想としては、もはや装着ベルトの締め付けでのみ装着していると感じるレベルだ。サイズも小さいため、動き回っても邪魔にならない。VRゴーグルを被って、アバターを動かすことに集中してしまえば、もはやトラッカーを付けていることを忘れられるんじゃないかというほどに軽やかな装着感だった。

「Tundra Tracker」装着の様子:全体

それでいて、精度もかなり高い。もちろん、精度は体験環境にもよるため、実際の自宅環境でどのようにパフォーマンスするかは正確には分からない。しかし、赤外線方式のトラッカーが苦手とするような動きをしてみても、筆者の体験中にはトラッキングが失われて「トラッカーが飛ぶ」ような光景は一切なかった。実際に「VRChat」上で様々なポーズを試してみたため、その写真とともに所感を伝える。

片足をあげるようなポーズはお手の物。ブレや遅延もほぼなく、アバターとのシンクロ感はかなり高かった。
寝そべりも完全にトラッカーを隠すと当然少しズレてしまうが、大きな違和感なくトラッキングできていた

小型軽量かつ高精度。それでいて、バッテリーも平均8時間以上は連続使用できるとのこと。現在は、クラウドファンディングの支援者向けのみの発送となっているが、今後新規予約も受け付けていくだろう。すでにベースステーションを持っているユーザーや、ダンス、パフォーマンスなど慣性式のものよりさらに精度を求めたいユーザーには、強くおすすめしたい。


選択肢広がるVRガジェット メタバース普及に一役買うか

今回紹介した2製品のほか、最近では注目のVRハードが増えている。VRゴーグルなら「VIVE Flow」や国外なら中国の「HUAWEI VR Glass 6DoFゲームセット」などのサングラス型軽量VRゴーグル、2022年第4クォーター頃の販売開始を予定しているPimaxによる超高性能VRゴーグル「Pimax 12K QLED」などの超ハイエンドモデルなど(関連記事)。トラッカーであれば、「HaritoraX」「Uni-motion」などベースステーションを不要とする慣性式のトラッカーの台頭など、VR環境を整える選択肢が急速に広がってきた。

「メタバース」の流行語化とともに注目度を高めるVR/ソーシャルVR領域。これを支えるVRガジェットに、これほどまで選択肢が広がってきているのは僥倖だろう。自分の予算感やニーズ、環境に合ったガジェットを選択して、より満足度の高いVR環境を構築していってほしい。


(TEXT by アシュトン

●関連リンク
「Varjo Aero」国内代理店製品ページ
「Tundra Tracker」Kickstarter概要ページ