キリンと「塩味強化箸」の共同開発も ディスプレイを舐める先にある味覚メディアの可能性【CEDEC 2022】

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8月23〜25日に開催されたゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2022」。本稿では明治大学・宮下芳明教授によるセッション「「味覚ディスプレイ」が切り拓くコンテンツ・エンタテインメントの未来」についてレポートする。


テレイートがあればGoToイートしなくてもよかった

現在で働き方として一般化した「テレワーク」はもちろん、「テレビジョン」「テレフォン」のように人間が物理的に移動することなく「仕事」「映像」「会話」といった要素を技術によって移動から切り離すことに成功しているが、現在は食べることと移動することを切り離せていない。

もし味覚のメディア技術が発展し「テレイート」が一般化していたら、GoToイートをするまでもなく家にいながら食を楽しめたかもしれない。

本セッションからは、視聴覚メディアのように、味覚メディアが発展した未来のコンテンツの可能性や、エンタテイメントの新しい形を感じられた。


2023年商品化を予定「塩味を増強する箸」

薄味の減塩食を1.5倍の濃さに感じられる、塩味を増強する箸をキリンホールディングスと共同開発しているという。腕時計型のデバイスとケーブルで繋がっている箸から流れる電流で食品に含まれるナトリウムイオンを制御することで、塩味を強く感じられる仕組みとのこと。

こちらはキリンホールディングスによって今後各地の社食などで実証実験がはじまり、2023年に発売される。

また、塩味を転送する技術「TeleSalty」の実験も紹介され、味を転送することができる「テレテイスト」の実現がすぐすこまで迫っていることを感じさせた。


「味わうテレビ TTTV」から未来のキッチン家電へ

DCEXPO2021や蔦屋家電+二子玉川店にて展示・デモを行ったさいに注目を集めた、ディスプレイを舐めることで味わえる「味わうテレビ TTTV」。こちらは5つの味覚「甘味・塩味・酸味・苦味・旨味」をメニューに合わせて調合した液体をディスプレイに噴霧し、それを舐めるというテレテイストを実現したもの。

TTTVを活用することで、ソムリエ特訓や味見できる料理アプリといったフード業界で有効活用できそうなものから、味ガチャや味覚スロットといった味覚にゲーム性をもたせたコンテンツなど、新しいメディアの可能性を感じさせる。

また、 TTTV を活用したゲームとして「五味夢中」と「味加減」の2作品が9月に発表されるという。

味覚を頼りにするゲーム「五味夢中」は出力される味のどの味覚かを当て、敵の攻撃を防御するゲーム。

協力プレイで遊ぶ「味加減」はグループで1人1人味覚を担当して最終的な味を当てるゲームだ。TTTVの活用で、ゲームの新しいメディアの可能性を模索している。

TTTVはディスプレイを舐めて再現された味を楽しむテレテイストの形だが、現在どこの家庭にも炊飯器があるように、ゆくゆくは「調味家電」としてプロの味加減を自動化する家電を製品化し、テレイートを実現したいという。


食べ物の限界を超える研究

甲殻アレルギーの人でも楽しめるカニクリームコロッケを開発中で、レシピが9月の学会で発表される。牛乳にかけることでカニクリームコロッケの味になるそうだ。

また、同学会で口臭を気にせずニンニクを食べるシステムも発表するとのこと。

アレルギーで食べられなかったものや、匂いが気になって食べられないといった壁を技術を用いて超える発想と研究と聞くと、能力の拡張性を感じてワクワクさせられる。

*スクリーンショットの一部にライターのメールアドレスが映りこんでいるため画像を加工している箇所があります。

(TEXT by ササニシキ


●関連リンク
宮下芳明教授Twitter
CEDEC2022