チュパカブラも暴れる「アイマス ミリオンライブ!」MRライブレポート アイドルの個性まで実感できる劇場公演が目の前に

LINEで送る
Pocket

765 MILLIONSTARS LIVE 2023 Dreamin’ Groove」が2023年7月1日、2日と東京・神田スクエアホールにて開催されました。

タイトルにある「765 MILLIONSTARS」とは、「アイドルマスター ミリオンライブ!」という作品に登場する、「765プロダクション」という芸能事務所に所属する52名のアイドルのことです。今回のライブでは彼女たちの中から34名が出演、12曲を披露しました。

「アイドルマスター」が掲げる「“MR”-MORE RE@LITY(モア リアリティ)-プロジェクト」の一環として開催された本ライブ。3DCGで描かれたアイドルと現実の私たちがともに夢をみた現場をレポートしていきます。

*本レポートは、7月1日に開催された公開ゲネプロをベースに、7月2日の本公演での様子も踏まえて執筆しています。


「765 MILLIONSTARS」とは

今回のライブに出演した「765 MILLIONSTARS」のメンバーは、先輩組である「765PRO ALLSTARS」からは、天海春香さん、如月千早さん、星井美希さん、萩原雪歩さん、高槻やよいさん、菊地 真さん、水瀬伊織さん、四条貴音さん、秋月律子さん、三浦あずささん、双海亜美さん、双海真美さん、我那覇響さんの13名。

「MILLIONSTARS」と呼ばれる39名のアイドルからは、春日未来さん、最上静香さん、伊吹 翼さん、徳川まつりさん、野々原 茜さん、望月杏奈さん、七尾百合子さん、高山紗代子さん、高坂海美さん、天空橋朋花さん、エミリー スチュアートさん、木下ひなたさん、横山奈緒さん、馬場このみさん、宮尾美也さん、福田のり子さん、真壁瑞希さん、永吉 昴さん、ジュリアさん、白石 紬さん、桜守歌織という21名、総勢34名となっております。

彼女たちは、日頃は自前の劇場である「765プロライブ劇場(シアター)」で活動をしており、その活躍はスマートフォンアプリゲーム「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」(以下、「ミリシタ」)で見ることができます。また、2023年後半には「MILLIONSTARS」39名が主役のアニメも決定しています(8月18日より3幕を順次劇場先行公開、10月よりTVアニメ放映)。

なお、「アイドルマスター」シリーズのゲームは基本的にプレイヤーがアイドルをプロデュースするという形をとっていることから、作品のファンの事を「プロデューサー」と呼称することが多いのですが、今回のライブでは、観客の事をアイドルを応援しにきた「ファン」として扱っていました。


アイドルひとりひとりの性格が透けて見える構成

開演ブザーが鳴り幕が開いて(写真左から)高山紗代子さん、馬場このみさん、星井美希さん、天海春香さん、春日未来さん、最上静香さん、徳川まつりさん、福田のり子さんの8名によって披露されたライブの1曲目は、765 MILLIONSTARSを代表する1曲であり今回のライブタイトルにもある「Dreaming!」。

スマホの画面で日々見ている彼女たちが、リアルの照明を浴びながら我々と同じような背丈でステージ上で歌い、踊る姿に、会場のファンの熱も早速ヒートアップ。

その中でも、小柄な馬場さん(写真左から2人目)が履いている靴が、周りのアイドルと比べると小さめであるのを発見したとき、筆者的には「彼女たちはスクリーンの中ではなく、目の前にいるのだ」と実在性のスイッチが入りました。

最初の曲の披露が終わり、幕の前に登場したのは春日未来さん、最上静香さん、伊吹翼さん。最上さんにちょっかいを出しながら進むMCが終わるとステージが一遍。こういうことができるのがCGによるライブのいいところですね。

そして登場したのは(下記写真左から)高槻やよいさん、秋月律子さん、我那覇響さん、双海亜美さん、水瀬伊織さんのユニット「レジェンドデイズ」。青系の舞台照明の中、衣装のスパンコールの部分に光があたり、夜空に輝くエメラルドがごとくキラキラに輝いています。

ここで気が付いたのは、今回のステージでは「ミリシタ」でのステージよりもふんだんに照明を使っていること。リムライト(後ろからのライト)によってアイドルの輪郭はより深く強調され、スクリーンに描画された照明とリアル舞台の照明が混じりあってアイドルに色を付けていく様子は、これまたアイドルの立体感、実在感を際立たせてくれます。

3曲目は(下記写真左から)七尾百合子さん、真壁瑞希さん、高山紗代子さん、ジュリアさん、伊吹翼さんによる「Vault That Borderline!」。ポップなロックナンバーに合わせて力強く踊る高山さん、ジュリアさん、伊吹さんの中、張り切っている七尾さんや、少し控えめに動く真壁さんなど、人それぞれの動きが見えて、それぞれのアイドルらしさを堪能できたステージでした。

続く4曲目、霧が立ち込める丘の上のようなステージに現れた(写真左から)菊地真さん、水瀬伊織さん、三浦あずさが歌うのは、珠玉のミドルバラード「my song」。優しく、時に力強い歌声に彼女たちの活動の歴史を重ねながら聞き入っていたところ、上空からブランコが3台が現れました。

ブランコに座っていたのは後輩にあたる伊吹翼さん、真壁瑞希さん、ジュリアさん。ときに前を見据えて、ときに隣の人を見守りながら歌う3人は、水瀬さんたちとはまた違った歌声の絡み方をしていて、両方を聞き比べられるのは先輩後輩が共演するライブならでは。伊吹さんは足をバタつかせがちであったなど、ブランコに座っているときの動きに性格の違いが出ていたことにも触れておきます。

空からのブランコについて会場である神田スクエアホールの天井の高さを活かした演出だなあと感心していたところで、ステージセットは突如都会的なイメージに。レーザーが会場を照らし激しめなナンバー「電波感傷」のイントロが流れると、デュオ「オフィウクス」の(写真左から)白石紬さんと桜守歌織さんが2人が巨大アームに繋がったリフトに乗って現れました。

曲の強さにあわせる如く縦横無尽にかつ高速で動き回り、時には歌詞にあわせて合体するリフトの上でのパフォーマンスはスタントアクションを見ているかのようで、さらに歌いながらこれをやってのけるのは現実では難しいのだろうなあと驚嘆させられました。

治安が悪そうなイントロと共に現れたのは(下記写真左から)永吉昴さん、エミリー スチュアートさん、天空橋朋花さん、七尾百合子さん、伊吹翼さん。そして、断崖絶壁をイメージした背景にマスコットキャラ?である緑色の生物、「チュパカブラ」が。歌うは「Do the IDOL!! ~断崖絶壁チュパカブラ~」です。

「私たちはチュパカブラです」などという奇怪な名乗りから始まるこのハードコアテクノは火花散る中で歌われ、盛り上がりと共に背景が爆発、爆音も会場中に鳴り響きます。チュパカブラが3体になり目から光を発し、「崖を登る」様子を表現しているのか背景が高速でスクロールして、最終的には白煙が舞い上がるというやりたい放題の演出に、観客も時には縦ノリでコンサートライトを振り、時には激しいクラップで応えます。

しかし、なんでステージ上の彼女たちはそんな環境の中平然と踊り続けられるのだろうか……これが特殊な訓練というやつなのか……。

MCコーナーでは、先程「電波感傷」を歌ったオフィウクスの2人が登場。白石さんは「ミリシタ」で描かれた仕事の様子を振り返ったり、「プロデューサー」の投票によりトンチキな方向性に決まった「Do the IDOL!! ~断崖絶壁チュパカブラ~」の制作過程に触れて、「プロデューサーは一体何を考えているのか」と発言していました。

白石さんは、「プロデューサー」に対しては「やはりあなたはバカなのですか?」と語気を強めて毒づく事も多いのですが、観客であるファンに対して控えめな口調でスタッフの仕事っぷりを報告している姿を見て、このライブ会場を抜ければ「プロデューサー」でもある筆者としては、ステージ上の彼女の姿は少し新鮮に見えました。

MCが終わって7曲目は新曲「春風満帆スターティング」(写真左から最上静香さん、菊地真さん、萩原雪歩さん、福田のり子さん、永吉昴さん)。普段はおとなしめの萩原さんが元気あふれるメンバーと一緒に盛り上げていたのが印象的でした。なお、このパートは公演によって別の新曲「リベレイシング / アロン -LiberaSing Along-」「夢みがちBride」が歌唱されていました。

続く8曲目は高槻やよいさん(写真中央)の代表曲「キラメキラリ」。イントロが流れた時点で客席から歓声があがり、続いてオレンジ色のコンサートライトで埋め尽くされていきました。その応援に応えるように高槻さんはひとりでステージ狭しと駆け回り、客席を煽っていきます。

途中からは野々原茜さん(写真左)と白石紬さん(写真右)も参戦。

間奏での「ギターソロ カモン」の声に、野々原さんがノリノリでエアギターを操り、白石さんも特技の三味線のエア演奏で応えます。その中で、先輩である高槻さんはより腰を落としての動きなどメリハリの効いたパフォーマンスをして、小さい体ながらも存在感をアピールしていました。

9曲目は、「大好きだよ」という歌詞があることからアイドルからの愛を受け取りつつ観客もコールを入れることで合法的に「大好きだよ」と愛が伝えられるという楽曲「アマテラス」。歌うのは(下記写真左から)木下ひなたさんとエミリー スチュアートさん。晴れやかな恋の歌に木下さんのちっこくてかわいい姿とエミリーさんのひたむきに取り組む姿が重なると、応援したくなる気持ちが溢れてきます。

後半からは、この曲のオリジナルメンバーである(下記写真右から)三浦あずささん、秋月律子さん、(下記写真右から)萩原雪歩さん、四条貴音さんも参加。列になってステージを動く振りでのところで、迷子になりがちな三浦さんがちゃんと後ろについてきているか秋月さんが気にしてる場面もありましたが、何と言っても四条さんの優雅な所作は、和のテイスト溢れるこの楽曲にピッタリでした。

続いて披露されたのは、(写真右から)真壁瑞希さん、伊吹翼さん、春日未来さん、七尾百合子さん、望月杏奈さんのユニット「乙女ストーム!」による「Growing Storm!」。2曲目の「合言葉はスタートアップ!」と対になるとも言える曲で、後輩組でもある5人が憧れの先輩と共演するこのライブで、自らのパフォーマンスを自信をもって行う姿が観れたのは感慨深いものがあります。この曲から登場した望月さんも弾けていました。

MUSIC♪」は上下2段構成のステージにて披露されました(前列左から双海真美さん、天海春香さん、星井美希さん、三浦あずささん。後列左から四条貴音さん、如月千早さん、萩原雪歩さん、菊地真さん)。8人が息をあわせてパフォーマンスする部分だけでなく、ソロ歌唱パートもあり見どころたっぷりでした。

ここで幕が下り、先程まで歌っていた天海春香さんから次が最後の曲であることが告げられると会場中から「えー」とライブの終わりを惜しむ声が。そこで望月杏奈さんを呼び込み、2人で最新曲「グッドサイン」を歌い始めました。

歌い出しが終わると幕が開き、後ろから双海亜美さん、双海真美さん、野々原茜さん、高坂海美さん、横山奈緒さん、宮尾美也さん、桜守歌織さんも登場。親指を立てたりクラップしたりする振りが特徴的でもあるフレッシュな楽曲で、ライブの最後を締めくくりました。

ライブの最後には望月さんが再度登場。このライブが開催できたのはプロデューサーやスタッフの尽力、そして「ファンのみんなのおかげだよー」と感謝の言葉を告げ、ライブを締めくくりました。


さまざまな技術を丁寧に複合させることで目の前に生まれた劇場

今回のライブは、アイドルマスターが掲げる「“MR”-MORE RE@LITY(モア リアリティ)-プロジェクト」の一環として計画されたもので、「765 MILLIONSTARS LIVE 2023 Dreamin’ Groove」という名前から2018年~2020年に「765PRO ALLSTARS」が出演したMRライブ「THE IDOLM@STER MR ST@GE!! MUSIC♪GROOVE☆」(以下、「MUSIC♪GROOVE☆」)の発展系にあるといえます(クレジットを確認したところ、共通するスタッフもいました)。

「MUSIC♪GROOVE☆」の特徴として、「ホログラフィック投影装置を用いて舞台上に3DCGのアイドルを立たせる」「リアルタイムのモーションキャプチャとボイスアクトによる、観客との会話を含む緊張感のあるパフォーマンス」「3DCGのアイドルと現実の人間との共演」などがあり、そこからアイドルが現実にいるという存在感を作り出していました。その後「765 MILLIONSTARS」も配信番組でホログラフィック以外のことを行っています。

一方で今回の「Dreamin’ Groove」では最新技術を活用しつつ上記の方法とは別のアプローチで、アイドルが「現実にいる」という存在感を作り出す試みをとっていると思われます。

上記レポートで見てきたように、今回のライブではかわいく歌うアイドル、力強く踊るアイドル、はっちゃけるアイドル、おしとやかに舞うアイドルが同じステージで共演していました。このように、「複数人のアイドルが並ぶ中で、各人の振りや仕草、表情の違いをしっかりと描き分ける」ことでアイドルの個性を強調し、そこから彼女たちの個々の存在感に重みが与えられていました。

また「現実空間とCGの中との、照明や特殊効果の連携」を以前のステージよりもパワーアップさせることで、現実とCGの境目を無くしています。

これらを積み重ねることで、スクリーンを媒介として現れたアイドルが「目の前にいる」、そしてステージが「目の前にある」と感じることができました。そのうえで、高速で動くリフトや爆発する断崖といった現実を超えた演出も「目の前の舞台で起こっている」と説得力を持たせることができていたと思います。

さらに言うと、日頃アイドルたちと「プロデューサー」として接してきた人にとっては、今回のステージで「ファンに見せる表情」を目の当たりにすることで、複数の視点で彼女たちを見ることができ、より彼女たちの存在を立体的に感じることが出来たものではないでしょうか(少なくとも筆者はそのように感じました)。

「765 MILLIONSTARS」のアイドルがMCパートで口々に「今度は劇場(シアター)に来てね」と言っていましたが、(作中で劇場がある場所のモデルとされる)豊洲に常設劇場があったら通うだろうなあと「ファン」として具体的な景色を頭に思い浮かべ、夢みながらライブ会場を後にしたのでした。

なお、2023年7月26日(水)12:00から今回の公演のアーカイブ配信が行われるということで、現在配信チケットが発売中です。

©窪岡俊之 THE IDOLM@STER™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.

(TEXT by 田端秀輝

 
 
●関連記事
星井美希SHOWROOM生配信レポート ファン視点で語る、あの日「そこに彼女がいた」と確信した理由
アイマス・MRプロジェクトでアイドルたちが現実世界に進出! AnimeJapanの春日未来ブース案内などをレポート
いよいよ5/2本日から初個人配信! アイマスライバーアイドル「PROJECT vα-liv」のチュートリアルを振り返る

●関連リンク
アーカイブ配信
ライブ公式ページ