「Meta Quest 3」レビュー 解像度もレスポンスもアップ、次世代のベーシックVR/MR HMDか

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10月10日、「Meta Quest 2」の後継機となる「Meta Quest 3」が発売を迎えます。新型のVRヘッドセットとして注目していた方も多いでしょう(ニュース記事)。

価格は128GBモデルが7万4800円、512GBモデルが9万6800円となっており、Quest 2の4万7300円(128GBモデル)からは大幅な価格アップという印象が否めません。はたしてこの価格差を納得できるほどの性能を持っているのか。Metaからお借りした製品をテストして、各機能をチェックしてみましょう。


高解像ディスプレイパネル&薄型パンケーキレンズで画質UP

Quest 3のディスプレイパネルは液晶で、解像度は片目2064×2208ピクセル。またQuest 2の上位モデルである「Meta Quest Pro」譲りのテクノロジーを採用したパンケーキレンズを使っています。

Quest 2の片目解像度1832×1920ピクセルと比較すると、約30%ほど高解像化。Quest Proの1800×1920よりも精細な描写が可能です。

レンズ越しにはどのように見えるでしょうか。Meta Quest Pro、Pico4も含めて撮り比べてみました。

撮影環境はiPhone 14 Proのメインカメラ(広角)をHMDの内部に当てた状況で、露出もピントもしっかりと合わせたわけではないため1つの参考例として見ていただきたいのですが、実際に試すとシャープに見えるという一点においてQuest 3は群を抜いています。

特にフルネルレンズを用いているQuest 2との差は圧倒的といえるほど。Quest 3の高解像性能に合わせたアプリ/ゲームの画面を見ると、PC VR環境の映像ではないだろうかと勘違いできるほどです。

視野も水平110度/垂直96度になりました。Meta Quest 2と比較して、わずかではありますが広い印象を受けます。


音質もアップ 特に低音の量感が増している

分解まではしていないので詳細は不明ですが、ヘッドバンドアームを見るとスピーカーの開口部が2箇所ずつとなっています。どうやらスピーカーユニットは片側2機ずつ使われている模様。

アクションゲームをプレイすると、爆発音などのSEの音圧が増しており、低音域の量感アップに貢献していることがわかります。


微調整が可能なホイール式のIPD調整機構

Quest 2のIPD(瞳孔間距離)は58/63/68mmの3段階式。そのため、目と目の感覚が合わないユーザーによっては、最もシャープに見える設定ができない仕様でした。

対してQuest 3は本体下部に備わったホイールを回して、53〜75mmの間でユーザーごとに異なる最適なセッティングが可能となっています。


イヤホン端子の仕様はQuest 2と同様

本体左側面には3.5mm径のイヤホン端子が備わります。なおマイクつきのゲーミングヘッドセットを装着しても、マイクは本体内蔵のものが使われます。


USB Type-Cの仕様もMeta Quest 2と同等か

本体右側面には充電/通信用のUSB Type-Cポートが備わります。USB DAC&ゲーミングヘッドセットを接続すると、やはりマイクは本体側のものが有効に。Quest 2と同じく、外部のマイクは使えない(マイクチャンネルは開放していない)模様のようですね。


ヘッドバンドのフィット感は大幅に改善

後ろが逆Y字となったQeest 3のヘッドストラップ。かなりよくなりました。締め付けやすいし外れにくい。髪型が崩れやすいというデメリットはありますが、身体を動かすゲームで遊ぶときには重要です。


数値上は軽くないけど軽く感じるボディー

Qeest 3の質量は515g。対してMeta Qeest 2は503gです。手に持って比べると差がわからないほどですが、スペックリスト上はやや重くなりました。

しかし薄くなったことと、ヘッドバンドのホールディング性が高まったことで、Meta Quest 2よりも多少軽く感じます。頭を振るようなアクションゲームで疲れにくくなったという印象もあります。


深度センサー/デュアルRGBカメラでAR/MR画質はQuest Pro超え

最も大きなアップデートポイントは、HMDをかぶったまま周囲の様子が見られるカラーパススルーです。距離を計測する深度センサーに、2機のRGBカメラを搭載したことで、立体表現が可能なパススルーを実現しました。

Quest 2ではモノクロ、PICO 4ではカラーですが単眼のパススルーで距離感がわかりにくい。10万円以下のVR/MRヘッドセットでは、初の両眼カラーパススルーとなります。

交互にかぶって確かめてみたところ、Quest 2はもちろん、15万9800円のQuest Proよりも明らかに高画質。

手元など、近い場所にあるオブジェクトを写し込むと背景部が補正しきれずに歪むのは相変わらずですが、Meta Quest Proよりも抑えられているのはお見事というしかありません。世界で初めて採用された最新型のVR/MR機器用SoCである、Snapdragon XR2 Gen 2の処理能力の高さを実感できるポイントです。

(想像にすぎませんがアップルのVision Proは、こういったちょっとした違和感を感じさせないような作りにするべく、極めてハイスペックなチップを採用していると予想します)

なお、この写真はパススルーが特に歪みやすい条件(ガラスを通じた外の光景およびデュアルRGBカメラから近い位置にある手元)で撮影したもので、通常、Quest 3のパススルーで見る分には、かぶったまま部屋の中を歩いても違和感がないレベルでした。Pico 4は手元を映しても歪みがありませんが、これはシングルカメラだから。座っている、立ち止まっている状態であればスッキリとした描写だと感じますが、歩きながら使うとパススルーで映し出されている背景やオブジェクトとの距離が測れなくなります。

白地に細かい黒文字でも読めるほどの解像度にもご注目ください。白飛びが少ないRGBカメラの性能を感じられるでしょう。


リングレスコントローラは腰の後ろへのトラッキングも可能

コントローラも大きく変わりました。トラッキング精度を高めるために必要だったリングのような意匠がなくなり、Quest Proのコントローラのようにすっきり。軽量化にも貢献し、疲れにくくなりました。

トラッキング精度に差はあるでしょうか。VRChatで試したところ、真横や、背中の後ろ方面への追従力が改善したという印象です。Quest 3本体側のトラッキング用カメラの位置が変わったことで、トラッキング範囲が広くなったのではないでしょうか。

またSnapdragon XR2 Gen 2の恩恵と見られる点として、コントローラーを持たないハンドトラッキング状態の遅延も低減しました。手を動かすとわずかなタメが感じられたQuest 2に対して、Quest 3はほとんど違和感がありません。自分の手と同じものだと脳が理解してくれます。


メガネ派でも安心できる可動式フェイスクッション

フェイスカバーが4段式の伸縮構造となりました。目とQuest 3のレンズの距離を調整することが可能で、メガネをつけていても無理なく装着しやすくなりました。


全方位的にクオリティアップ! 7万4800円はお買い得

前述したように128GBのローエンドモデルが7万4800円となったQuest 3。円安の影響もあって購入しにくい、と感じる方も多いと思われますが、フラットな視点でQuest 2と比較すると、全体的に性能も品質も向上しています。個人的には価格差を納得するだけのアップデート要素があると実感しました。

とはいえ画質面に関しては、Quest 3の映像性能に合わせたゲームやアプリが増えるまでは実感しにくい。MR機能に関しても、MRであるべきアプリが登場しない限りメリットとは感じられないでしょう。

ここはVR/MRのゲームやアプリの開発者に期待をしたいところです。


(TEXT by 武者良太

 
 
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