7月1日より東京・池袋にプレオープンするアイドルキャラクターに会って話せるエンターテインメント施設「Prhythm☆StellA」(プリズムステラ)。「女神×アイドル」がテーマなアイドル3人が登場して、彼女たちのライブを楽しんだり、個室で1対1で対話できるという内容になる(関連ニュース)。
6月30日に開催したメディア向け内覧会では、キャラクターを「召喚」する装置やAI搭載をうたう会話システムなど技術的な側面でも見所が多かった。その体験をレポートしていこう。
名前を登録して会話時に呼んでくれる嬉しさ
まずは大まかな流れから説明していこう。池袋のアニメイトやハレスタに近いビルの9階に入ると、真新しい綺麗なエントランスが迎えてくれる。
受付では番号札のほか、「個室でのお話までは中を見ないでください」と念を押される謎のカードと会員証を受け取る。
続いて、受付の後方にある登録端末に会員証の裏面のQRコードかざし、名前を登録する。なんとPrhythm☆StellAでは、個室でのお話で名前を呼んでもらえるのだ! なので、ちゃんと呼んで欲しい名前を登録しておこう。筆者は迷わず本名の下の名前を登録した。
時間になると、ライブステージに通される。透過スクリーンに等身大で映し出される彼女たちのパフォーマンスを鑑賞しながら、光るプレートや指輪で応援できる。歌やダンスだけでなく、MCの掛け合いも楽しく、世界観もわかりやすい。
彼女たちは火・水・雷の女神であり、プラーナ(信仰の力)を集めるのが目的らしい。勝ち気な火の女神・クナト、おっとりな水の女神・ミズハ、マイペースな雷の女神・でんこ。
ライブが終わると、いよいよ個別のお話だ。ライブ会場の収容人数になる21人分の個室を用意しており、受付で渡された番号札に従って個室に入っていく。
個室の中にはしっかりした機材があり、目の前のボックスに女神が立体的に投影される仕組みだ。
個室での会話は、来場客側も音声のみでのコミュニケーションとなる。ボタンは緊急でスタッフを呼ばなくてはならなくなったときに使うものが一つあるだけ。会話によるコミュニケーションを提供したいという強い意志を感じる作りだ。
最初のキーワードは「女神降臨」。マイクに向かって女神降臨と唱えると、先ほどステージで歌い踊っていた3人が天から現れた。めっちゃ綺麗で、メタなことを言うなら、かなりの高画質!
ここからは合成音声になる。ついさっきステージで歌ったりMCしたりしていた声とちょっと違うので、最初こそ違和感があるかもしれないが、トークのテンポが良いのですぐに慣れる。トーク中の仕草がいちいち細かく可愛いこともあり、筆者はあっという間に違和感がなくなってしまった。
最初は3人で登場するが、誰か一人を選ぶことになる。筆者は初見から好みだった水の女神ミズハちゃんとお話しすることにした。選ばれたことを喜んでくれていて、こっちも嬉しくなる。
そして、ちゃんと、名前を呼んでもらえる! これは想像以上に嬉しい。古(いにしえ)のオタクなら、「ときメモ2」を初めて遊んだときの感動を思い出すかもしれない。会話の中で何度か名前を呼んでもらえるので、そのたびに嬉しくなってしまった。
トークの内容はぜひみなさん自身で楽しんで欲しいので詳細は控えるが、よく出来ていて退屈しない。
来場客が話すタイミングになると右奥のキャンドルがともるので「女の子とサシで話すなんて緊張する、いつ口を開いていいのかわからない」なんて筆者みたいなコミュ障にも安心だ。こちらの発話が文字起こしされてキャンドルの煙のように流れていくので、自分の声がちゃんと届いていることがわかるのもありがたい。
ちゃんと計測していないが、30分くらいはたっぷりお話ししていたように思う。トークだけでなく、受付で渡された謎のカードを使った「試練」というゲーム要素もあり、体験の感覚としては音声で遊ぶギャルゲーという雰囲気もある。
途中で飲み物を持ってきてくれるスタッフさん(リアルな人間)も、世界観を守って案内してくれる配慮もある。
体験が終わると、番号札の返却と同時に、ブロマイドのようなカードがもらえる。さまざまなバリエーションがあるようなので、集める楽しさもありそうだ。
見ての通りのかわいいイラストをあしらったグッズも売られている。アイドル衣装以外にもイラストのバリエーションは豊富だ。
壁面には、クナト、ミズハ、でんこの身長を表す印も。彼女たちの実在を感じながら写真を撮るのも楽しいかもしれない。
技術的な部分が気になる読者もいると思うので、さらに取材で聞いた話もまとめて紹介していこう。
会話を覚えていて会うたびに成長する「女神」
Prhythm☆StellAを運営するウェイブは、コミック・アニメといったコンテンツ制作事業や、Webサービス・アプリ開発を手がける企業。この店舗に登場する女神たちの3Dモデルからシナリオまでほとんど自社で製作しているという。
音声合成の強みとしてテキストデータさえ用意すれば音声ができるため、頻繁なトークスクリプトのアップデートも可能なはず。行く度に成長していく女神たちに出会えることだろう。スタッフさんによると、過去の来店情報をトークに反映させて、回数を重ねるごとに親密な会話になっていくという。つまりは女神たちがファンを「認知」してくれるというわけで、バーチャルとリアルの面白さを合わせた体験型エンターテインメントになりそうだ。
個室に女神が登場する装置は、俗に「ホログラム」と表現されることもあるが、正確にいえばペッパーズゴーストだ。斜めに置いた反射板を用いる古くからある技術で、今年4月に閉店した横浜のDMM VR THEATERでも採用していた。他にもテーマパークなどで豊富な実績ある仕組み。Prhythm☆StellAで体験した画質はかなりよかった。
音声合成については、公式サイトの末尾にも記述があるとおり、エーアイの「AITalk」を用いている。来場客の音声を認識する部分にはごく普通の会議用マイクが用いられていたが、十分な認識精度だった。
来場客の受け答えによりトーク内容が分岐していくため、Unityで開発しリアルタイムレンダリングで表現されているとのこと。
VR/ARに関心がある人ならば、VR/ARに近い技術領域の社会実装事例としても、興味深いものになっていることだろう。
(TEXT by Yuichi Matsushita)
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