2023年12月23日(土)~24日(日)に東京ビッグサイトの東棟で行われた人気バーチャルライバー(VTuber)グループ「にじさんじ」最大のイベント「にじさんじフェス2023」。24日(日)には、生バンドによる音楽ライブ「にじさんじ 5th Anniversary LIVE 『SYMPHONIA』Day2」が開催されました。出演者は、月ノ美兎さん、ジョー・力一さん、リゼ・ヘルエスタさん、星川サラさん、不破湊さん、⻑尾景さん、壱百満天原サロメさん、渡会雲雀さん。2018年2月にデビューした元・1期生の月ノさんから、2022年7月にデビューした渡会さんまで、幅広い世代の人気ライバー8名が、約2時間半で23曲を熱唱した「『SYMPHONIA』Day2」の会場での模様をダイジェストでレポートします。
開幕直後のMCで爆笑のアクシデントが発生?
開演前のお楽しみ、ライバーによる影ナレを担当したのは、今回が初のライブ出演となるサロメさん。「皆さま方、こんにちは~。どうも、どうも。壱百満天原サロメですわー」と、いつもの美声とお嬢様口調でライブの注意事項を紹介。この日がライブ初出演のサロメさんは、初めての客席とのコールアンドレスポンスも経験し、感動していました。
影ナレも終わった後の開演直前、前方の客席から急に大きな歓声があがりました。実は、前日の「Day1」でも同じことがあり、何事かと不思議に思っていたのですが、どうやら前方の席に座る観客には、登場間近の出演メンバーがマイクを通さず叫んだ円陣の声が聞こえていたようです。メンバーを紹介するオープニング映像の後の1曲目、「Day2」のオープニング目は、「Day1」と同じく8人全員での「Hurrah!」。会場のテンションは最高潮まで一気に高まり、「にじさんじフェス イメージソング」の開幕適性の高さを改めて感じました。
最初の全員でのMCでは、1番左に立つ月ノさんから順番に、この日、着用している自分用デザインの「にじさんじライブ 共通衣装」の推しポイントを紹介していったのですが、ここで小さなアクシデントが発生。1番右に並んでいたリゼさんが話しはじめようとしたタイミングで、次の告知MCの担当だった長尾さんが話しはじめてしまい、まるで、リゼさんの存在を忘れていたような状況になってしまったのです。ミスに気づいて大慌てでリゼさんの側までフォローに走る長尾さんと、ショボンとうなだれて「緊張していて拾えなかったけど、今のボケだよね?」と弱々しく尋ねるリゼさんの姿に客席は爆笑。予期せぬ形で、会場はさらに盛り上がりました。ちなみに、ライブ後に行われたリゼさんの感想配信で語られた裏話によると、進行台本や歌詞を映すプロンプターの画面では、リゼさんの隣の渡会さんが話していた時から、すでに長尾さんの告知の画面に切り替わっていたため、長尾さんのミスとは言えないような状況だったそうです。
「ダンスロボットダンス」のダンスに衝撃
オープニングとアンコール以外、5~6曲ずつごとのブロックに分かれ、ブロックとブロックの間にはMCが入る形で構成されていた「SYMPHONIA」。「Day2」のライブ本編で、トップバッターを務めたのは、5月に3Dお披露目配信を行い、この日、初めて有観客のライブに出演する渡会さん。デビュー配信のときから歌の上手さは話題になっていましたが、ステージ上で披露したオリジナル曲「skylark」のパフォーマンスも、初めてとはとても思えないクオリティでした。
渡会さんのポテンシャルとステージ度胸のインパクトも大きかったのですが、最初のブロックで同じくらい驚いたのは、月ノさん、星川さん、長尾さんによる「ダンスロボットダンス」。VTuber黎明期から数多くの歌ってみた動画が作られ、超高音の難曲ということでも有名なボカロ曲ですが、3人は大人気音ゲー「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」に収録されたダンスと一緒に披露。イントロの時点から、すでにダンスの手数はすさまじく、動きもキレキレ。この運動量で1曲踊りきれるのかと心配になるくらいでしたが、3人とも見事に踊りきりました。
圧巻のパフォーマンスを披露した3人と入れ替わりに登場した力一さんが、静かにステージの中央まで歩いてきて、スッと前を向くと流れ出す「Get Wild」のイントロ。力一さんが真剣なトーンでセリフを語りはじめても、会場は笑い声と歓声が混じり合っていました。笑いを取るようなムーブはまったく見せず真剣に熱唱する力一さん。さすがの歌唱力と絵になる立ち振る舞いでしたが、「年に一度の周年ライブのステージで『Get Wild』を本気で歌うジョー・力一」というシチュエーションは、やはりどうにも面白く、笑ってしまいました。
バーチャルライブで社交ダンスも披露!
第1ブロック後のMCでは、力一さんとサロメさんが登場。再び客席とのコールアンドレスポンスを行って、はしゃぐサロメさんの姿は可愛く、力一さんはさすがのアドリブ力でした。
第2ブロックの1曲目は、サロメさんの「INTERNET YAMERO」。前日の「Day1」で魔界ノりりむさんが披露した「INTERNET OVERDOSE」と同じく人気ゲーム「NEEDY GIRL OVERDOSE」の関連曲。メロディ、歌詞、曲構成のどれもが緩急激しい楽曲を、持ち前の美声と高速でも崩れない綺麗な滑舌で歌い上げていくサロメさん。「全然、上手ではないんだけど、今日のためにめっちゃ頑張ってきました!」というダンスでも魅せます。2022年5月、突然、バーチャルの世界に現れたときには、「こんな天才、どこにいた」と驚きましたが、猛練習の成果を緊張しながら披露する等身大の姿も魅力的でした。
星川さん、不破さん、長尾さん、渡会さんの楽しく陽気な「神のまにまに」と、札束の舞う中、月ノさんとサロメさんが歌い踊った「今宵フェスティバブル」。お祭り感の強い曲が続いた後、会場の雰囲気をガラリと変えた10曲目は、リゼさん、不破さん、渡会さんの3人による「ヴィラン」。委員長以上に委員長属性の高いリゼさんと、確実に善人だけど夜の街の気配がにじみ出る不破さん、どこかやんちゃそうな雰囲気の渡会さんはミスマッチな組み合わせ。しかし、歌声の相性はバッチリで、ムーディーな怪しい魅力を放っていました。
月ノさんとリゼさんの仲良し先輩後輩コンビによる「少年よ我に帰れ」のデュエットでは、二人が手を取り合って、優雅に社交ダンスを踊る場面もありました。その昔、ステージへの接地感さえ曖昧で、マイクを手に持つこともできない時代のバーチャルライブも観てきた筆者は、二人の手が近付くだけで、百合的な意味ではなくドキドキしましたが、そんな心配はまったく無用。二人は美しいホールドを維持しながら、華麗なステップやターンを披露してくれました。
祓魔師が二刀流でド迫力の剣舞を見せる
力一さん、星川さん、渡会さんの「Beat Eater」の後、ソロ曲のパフォーマンスが4人続いた第3ブロック。星川さんは、人気ボカロ曲「メルト」を披露。「ダンスロボットダンス」のときにも感じましたが、超高音でも尖ることなく綺麗で可愛い歌声は、高音が多いボカロ曲との相性抜群。個人的に星川さんには、「HoneyWorks」楽曲のイメージが濃かったのですが、ボカロ曲適性の高さを改めて感じました。
リゼさんが歌った14曲目の「リテラチュア」は、リゼさんの友人で、大好きなゲーム「原神」の嫁キャラの中の人でもある声優、上田麗奈さんの2ndシングル。リゼさんの透明感あふれる歌声にもぴったりの選曲で、ここまでファンの熱気がこもってきた会場の空気も一気に浄化されました。
不破さんは、ステージの中央にスッと立ち、「夜明けと蛍」を熱唱。歌詞の一言一言を丁寧に客席に届けていきます。ふざけるときの適当なノリと、真剣にパフォーマンスするときの大きすぎるこのギャップが不破さんの大きな魅力なのでしょう。
扇子を手に舞いながら和ロック「吉原ラメント」を歌った長尾さん。どこか中性的な魅力もある歌声とキレのある動きに惹きつけられていたのですが、サビで2つに増えた扇子は、さらに2本の日本刀に変化。間奏では二刀流による華麗な剣舞を披露していきます。そして、最後のサビでは、日本刀が何かの力をまとったかのようなエフェクトを放ち出しました。身体を旋回させながら刀を振るったときには、エフェクトも綺麗にZ軸回転の軌跡を描きます。右が紫に、左が青く輝く日本刀を巧みに振りながらのパフォーマンスは、SF映画の殺陣を観ているようで、バーチャルライブの魅力を堪能させてくれました。
幻のライバー鹿鳴館キリコがステージに登場
星川さん、不破さん、長尾さん、渡会さんのMCを挟んだ最後のブロックの1曲目は、月ノさんの「ラビットパニック」。月ノさんは、次々に切り替わる背景の前を散歩するように歩きながら歌っていきます。背景の中には立て看板の形で、この日の出演メンバーも登場。遊び心にあふれたステージでしたが、この曲の演出に関しては、月ノさんが自ら絵コンテを作成したそうです。さすがのクリエイティブへのこだわりと、エンタメ魂を感じました。
月ノさん、リゼさん、星川さん、サロメさんの女性組4人が一人の男(アンジュ・カトリーナさんの元彼氏だった書き割り)を取り合った「Girlish Lover」。
続いてステージに登場したのは、力一さんとサロメさん。そして、2人の間には縦型のディスプレイ画面らしきものがあり、そこには「にじさんじ所属バーチャルライバー、ジョー・力一」のもう一つの可能性だった幻のライバー「鹿鳴館キリコ」の姿がありました。100満点のお嬢様になりたい一般人サロメさんと、自称セレブのキリコさん、そして、力一さんの3人が歌ったのは、アニメ「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」の主題歌「乙女のルートはひとつじゃない!」。サロメさんとキリコさんのライブでの共演というまったく想像してなかったお嬢様コラボにはピッタリの選曲でした。
ショーを観ているように楽しく、男女混声のハモリも心地良かった力一さん、リゼさん、不破さん、長尾さん、サロメさんの「ニジイロストーリーズ」の後、「Day2」のライブ本編のトリを務めたのは、男性ライバー4人によるKing Gnuの「Teenager Forever」。力一さん、不破さん、長尾さん、度会さんは、全員がイケボな上に歌唱力も高く、少しコミカルな振り付けの可愛さも相まって、客席からは黄色い声援が飛び交いました。「ありがとう!」と手を振りながら4人がステージを去ると、すぐにアンコールの声が自然と巻き起こります。
ライバーも観客も全員が主人公に!
アンコールの声に応えて再登場した8人は、告知とバンドメンバー紹介の後、1人ずつ挨拶。この日のステージに対する思いや感想などを各々の言葉で語っていきました。パフォーマンスとMCの両方で抜群の存在感を発揮してきた力一さんは、この最後のMCでもトリを務め、「主役になろう」という「にじさんじフェス2023」のテーマも絡めながら、応援してくれるファンに熱いメッセージを届けて、綺麗に締めました。
「皆さんのおかげで。あるいは、皆さんのために。いやいや、皆さんと一緒に。今日まで、そして、これからも我々は主役になります。ありがとうございます」
ARカメラを使って、ワチャワチャと客席との記念撮影をした後、ステージ中央で、V字のフォーメーションに並ぶ8人。「皆さんが大好きなあの曲で締めさせていただきます」という力一さんの言葉に続いて、全員で叫んだ曲名は「Virtual to LIVE」。どれだけの時間が過ぎて、VTuberや「にじさんじ」を取り巻く環境がどんなに大きく変わっても、まったく色褪せることのない「にじさんじ」のアンセムは、ますます深みを増して心に染み入ってきます。今、ステージに立つ8人のパフォーマンスに心を動かされたのはもちろんですが、これからもいろいろな場所で、さまざまな「にじさんじ」ライバーが歌う「Virtual to LIVE」を聴いていきたい。そんな気持ちになりながら、ステージを去る8人を見送りました。
規制退場を促すはずの影ナレでは、渡会さんが「みんな楽しかったよね? 『にじフェス』、最高だったよね?」と呼びかけ、客席の熱気を再び高めます。そして、最後は、おそらく出演者全員で声を揃えて「ありがとうございました!」と改めて感謝を伝え、今度こそ本当に5周年記念ライブ「『SYMPHONIA』Day2」は終了。次の「にじさんじ」のライブや次の「にじさんじフェス」が楽しみな気持ちになりながら、帰路につきました。
●関連リンク
・「にじさんじフェス2023」公式サイト
(Text by Daisuke Marumoto)