#4 VΔLZ「青春応歌」【Pop Up Virtual Music 】

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Pop Up Virtual Music」第4回目に取り上げるのは、にじさんじに所属する甲斐田晴長尾景弦月藤士郎の3人によるユニット・VΔLZ(ヴァルツ)である。

甲斐田、長尾、弦月の3人は2020年4月2日にデビューした、いわゆる同期組である。デビュー当初は3人が全員揃った上での配信が多かったものの、2021年以降数年は3人それぞれに配信活動をこなす日々続けていった。

VΔLZとしての活動が本格化したのは2023年に入ってから。オフコラボ歌配信の最後に有観客ライブ「一唱入魂」がKT Zepp Yokohamaにて開催が発表、数ヵ月後には無事にこのライブを完遂した。

すると、この初ライブで初披露したオリジナル曲2曲を数日後に正式リリースし、「VΔLZ」としてのYouTubeチャンネルも開設され、そこからオリジナルコンテンツを徐々に投稿していくことになった。加えてVΔLZとしてイベントやライブに出演することもあるなど、それまで数年では見られなかった活動が目に見えて増えたのだ。

加速していく流れの中で、ファーストミニアルバム「三華の樂」が2024年6月5日にリリースされた。加えてこの秋には横浜・難波・仙台を回るライブツアー・VΔLZ LIVE TOUR 2024「三華の樂」も開催される予定だ。

甲斐田はギターを弾けるということでデビュー当初から弾き語り歌配信をすることがあり、弦月もギター、キーボードにドラムなどさまざまな楽器を弾くことができ、なによりこの2人は活動を通して作詞・作曲としてさまざまな楽曲をすでに生み出していた。

そんな2人に、ダンス上手かつ運動神経抜群な長尾が加わることで、どのような音楽・パフォーマンスを見せてくれるのか?とファンから期待の目が集まっていたわけで、ここ1年と少しの間でそのタレントを発揮しようと試みているところなのだ。

そんな3人によるファーストミニアルバム「三華の樂」を聴いてみると、冒頭「青春応歌」「黎明の轍」「ムーンウォーカーズ」の3曲がロックサウンドでまとまっていることに気づく。「黎明の轍」「ムーンウォーカーズ」の2曲はシンセサイザーや鍵盤の音も加わっているのだが、ことギターやドラムスの音だけを聴いてみればメタルにも通じるような質感となっている。

buzzGが作詞作曲、K from 有感覚が編曲を担当した「ムーンウォーカーズ」での一瞬のウネリが効いたギターリフも印象的だが、筆者としてはDOESの氏原ワタルが作詞・作曲した「青春応歌」がキモとなっているように感じた。

VΔLZとして初めてのファーストミニアルバム、その冒頭とあれば、リズムやグルーヴが速い曲を続けて並べ、勢いにノッて後半の曲を楽しませたいといった構図も考えられる。だが実際のところ、2曲目に配された「青春応歌」は腰の据わったドシッとした1曲なのだ。

イントロから鳴らされるギターリフとともに楽曲が進み、3人のボーカルもいつにも増して力強く聞こえてくる。この曲はギターリフのグルーヴ・フレーズが楽曲のキモとなっており、楽曲の柱といえるギターの存在感に負けないよう、メロディ一音・歌詞一字に合わせて普段よりもハッキリとしたボーカルで3人が対抗している。

かなりストレートな言葉遣いの歌詞は、にじみ出る不安や後悔が頭をちらつきつつ、なお前へと向かおうと綴っている。リズムの速さにノって駆け出しそうになる疾走感を表現するのではなく、苦々しさと共に心のなかに気持ちや決意を刻もうという表現を、ドッシリとしたグルーヴのなかで仕上げているのだ。

氏原は、VΔLZ3人のイメージとファンの皆さまを想って制作したと語っている。

氏原がギターボーカルを務めるDOESというと、「銀魂」関連作品の主題歌となった「修羅」「曇天」「バクチダンサー」「道楽心情」といった楽曲をご存知なかたも多いだろう。九州地方生まれ3人が揃ったDOESといえば、a flood of circle、MO’SOME TONEBENDER、The Birthdayといった、ブルースを基調としつつもパンクの苛烈さを漂わせたロックバンドらとの系譜を征くバンドである。

タイトなアンサンブルとギターリフの芯の入ったサウンドでロック好きの多くに愛されるバンドであるが、氏原が提供した「青春応歌」がDOESの匂いをまとっているのにはニヤリとさせられる。DOESで聞かせてくれるある種の「雄々しさ」「精悍さ」がミニアルバムの冒頭で示されることで、その後に続く楽曲の印象もずいぶんと変わるのだ。

(TEXT by 草野虹

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