にじさんじ ジョー・力一 1stライブ「カーニバル・リヴ」レポート「VTuberには夢しかねえなあ!」

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6月14日(金)、人気VTuberのジョー・力一が初めてのワンマンライブ「ジョー・力一 1st LIVE『カーニバル・リヴ』」品川プリンスホテル ステラボールで開催。にじさんじが誇る多芸多才のエンターテイナーは、1stミニアルバム「カーニバル・イヴ」の収録曲をはじめとする全16曲のパフォーマンスで、会場を埋めつくしたジョー児(力一のファンネーム)たちを魅了した。

ミラーボールの輝くライブホールで催された一夜のカーニバルは、にじさんじの公式YouTubeチャンネル冒頭4曲目までが無料配信され、ライブ配信サービス「Stagecrowd」では全編有料配信もされたが(アーカイブの視聴期限は2024年06月30日の23時59分まで)、この記事では、現地会場で体感した熱気も含めてレポートしていきたい。

【ライブ本編】ジョー・力一 1st LIVE 「カーニバル・リヴ」 / 無料パート #ジョー力一_1stライブ


アルバムと同じく「レイテストショーマン」で開演!

かなり横長の長方形という特徴的な構造をしているステラボール。会場の入場券は前売り完売ということで、オールスタンディグの1階席は、端から端まで整然と並んだジョー児たちでいっぱいだ。正面には、バーチャルアーティストにとってのステージである横長のディスプレイが設置。その上には半分くらいの幅のディスプレイも並べられ、ちょうど「凸」の字のような形になっている。メインディスプレイの左右には、少し高い位置に1枚ずつサブディスプレイもあり、その下には、バンドの楽器も並ぶ。ステージに向かって左側にはベースとドラム、右側にキーボードとギターという配置だ。

会場に流れていた音楽が止まり、ディスプレイに映し出されていたライブロゴが消えると、客席から歓声と拍手が響き、様々な色のペンライトが一斉に灯される。正面のディスプレイには、「2024.06.14」「Shinagawa Stellar Ball」「Joe Rikiichi Presents」の文字。続いてサーカスのテントが映り、その中へと誘われるかのようにカメラがズームすると、夢の世界か万華鏡のような映像の中、巨大な手が現れて手拍子と共にカウントダウンが始まる。映像に合わせてジョー児たちも大きな声でカウントをはじめ、0になった後、ライブのキービジュアルが映ると、歓声は最初のピークを迎えた。

一旦、灯りの消えたステージには、巨大なシルクハットが置かれている。流れてくるコーラスと共に、ゆっくりせり上がってステージに現れる白いスーツ姿のピエロ。左右に大きく手を広げて、ジョー児たちの歓声を一身に浴びると、まるでディナーショーのように丁寧で力一らしい開演の挨拶。

「品川ステラボールにお越しの皆さま、お会い出来て光栄です。ジョー・力一でございます。一夜限りのショー、最後まで楽しんでいってください」

最初の曲は、ミニアルバムでも1曲目に収録されている「レイテストショーマン」。映像に合わせて盛り上がっていたときとは、まったく比べものにならないテンションへと一気に高まる会場。サビ前の「アブラカタブラ!」は、ステージの主役に負けないくらいのボリュームで、ジョー児たちも声を合わせて叫んでいた。

左右に広いステージの端から端までを使いながら、持ち前の美声を響かせていく力一。正面上部と左右のディスプレイは、バストアップの映像や、客席も一緒に捉えたステージ奥からのARカメラの映像が映し出されていく。「にじさんじ」のライブでは、すでに定番のARカメラだが、筆者が今までに観てきたライブでは、構図に収まるのは客席前方のファンまで。しかし、客席エリアの前後が狭いステラボールでは、2階席の奥までがARカメラのフレーム内に収まっており、初めて観るアングルの映像だった。

「『カーニバル・リヴ』へようこそ」という言葉と共に会場は暗転。主役の消えたステージには、四角い缶の箱の映像が映っている。缶の蓋が開いて、中から飛び出てくる手。ホラー映画のような展開の後、会場中に響いたのは、恐怖の悲鳴ではなく、悲鳴にも似た黄色い歓声。映像が切り替わると、ステージ上には、ミニアルバムのジャケットとライブのキービジュアルに描かれていたマント姿の衣装を着た力一が立っていたのだ。キービジュアルと同じく、手にはおしゃれなステッキを持っている。ステージに再登場した力一が、初披露の新衣装を着ていると分かった瞬間の歓声は、この日のライブ全体を通しても一、二を争う大きさだった。

ステッキも巧みに使った華麗なダンスを見せながら、ミニアルバム収録曲「ジョン・ドゥ・パレード」を伸びやかに歌っていく力一。この曲の中でもう1か所、特に大きな歓声が上がったのは、2番のサビ前。間奏のダンスが終わり、客席に背中を向けた力一が首だけを回して振り向いたとき、顔の下半分は高い襟に隠れ、目から上だけが見える形に。その瞬間、振り向きざまの視線に射貫かれたジョー児が「キャー」という一際大きな悲鳴を上げた。まるで写真かイラストのように映える構図で、計算され狙っていたポーズなのは明らか。若干メタな感想にはなるが、自然な流れの中、どうやって顔と襟の位置関係などを微調整したのか気になった。

3曲目は、「カーニバル・イヴ」の初回限定版にも収録されているjon-YAKITORY「フェイキング・オブ・コメディ」のカバー。ダンス用のステッキをステッキ型マイクに持ち替えて、よりリズミカルなダンスと共に、前の2曲からはがらりと変わったロックなステージングを見せる。


世界観の重なるさまざまな名曲もカバー

最初のMCでは、「服が違う! どう見たって!」とサプライズ披露した新衣装をさらにアピール。YouTubeで配信された3Dライブでも使っていたステッキマイクのデザインが「カーニバル・イヴ」仕様に変わっていることも紹介した。

次に歌う曲について、「(デビューした頃から)ずっとよくしてくださっている大事な友人の曲でございます。ここ品川という地でライブをやると決まった瞬間、これをカバーしたいなと思った」と語り、個人勢VTuberあくまのゴートが作った「品川シーサイド」を披露。会場には、「品川」という言葉が出た瞬間、歓喜の声を上げる勘の鋭いジョー児もいた。生バンド演奏での「品川シーサイド」を聴いたのは初めてだったが、元々、ギターの存在感が強いからか、非常にライブ映えする曲だ。また、綺麗なメロディーと、「品川シーサイド」をはじめとした実在の駅名や都市名を含んだ歌詞が組み合わさるユニークさは、カッコ良いと面白いの狭間で反復横跳びし続ける力一の芸風にも重なった。

長年の友人の代表曲をカバーした後は、自身が所属するユニット「Rain Drops」(無期限活動休止中)の曲をセルフカバー。える三枝明那と3人で歌った「ソワレ」をアレンジした「ソワレ another rum ver.」を披露した。オリジナル版からはガラリとテンポが変わりバラード調になった自身の作詞曲を一人で歌い上げる力一。新作詞のラップパートでも会場を盛り上げる。

オリジナル曲と力一自身に深い縁のある曲のカバーが続いていたこのステージ。6曲目からは、道化師である力一や「カーニバル」と題したライブの世界観との親和性が高い楽曲を続けてカバー。キタニタツヤ「化け猫」では、路地裏をさまよっているような映像演出も楽しく、Azari「Nightmare」では、巨大な鉄の鳥籠が登場し、その中で歌い続ける。一度、会場が暗転した後、照明が点くと、ステージ右から力一がムーンウォークで登場し、言葉遊びのような歌詞も楽しいFAKE TYPE「FAKE LAND」を披露。間奏では、ライブグッズとして販売されていた楽器カズーも吹いて、会場を和ませた。

2度目のMCの冒頭で、「何が良いって、ペンライトの色がまちまちなのがいい。そういうちらし寿司みたいなの僕はすごく好きです。変わらないで欲しい」と語った力一。これは、筆者もライブの冒頭から感じていたこと。ライブを取材する際は、現地でしか分からない会場の様子をレポートするためのちょっとした補足情報として、曲ごとのペンライトの色の変化もメモするのだが、この公演での客席は、どの曲でも、力一の髪の色のようにさまざまな光が混じっており、早々にメモをやめていた。自然に形成された会場の景色が、ステージ上の演者が求めるものと重なったことに、少し大げさだが両者の絆を感じる。


客席のジョー児たちも一緒にカズーを演奏

「アルバムの楽曲、まだ歌ってない曲がたくさんありますから。聴いていただきましょう」という曲振りから、9曲目は「道化恐怖症」を意味するタイトルの楽曲「コルロフォビア」。客席のジョー児たちを再びカーニバルへと引き込んでいく。

「皆さん、まだ元気ですか? まだいけますか? 皆さんから僕に、僕から皆さんにエールを送り合いましょう。まだまだ僕たちくたばるわけにはいきません。少なくとも、今日、このライブが終わるまでは」

ジョー児たちに語りかけた後の10曲目は、強烈なメッセージ性を持った、こっちのけんとの曲「死ぬな!」のカバー。タイポグラフィを使ったステージ演出も、力一の力強い歌声にこもった思いを後押しする。11曲目は、ミニアルバム収録曲「明転」。力一の綺麗な高音が響く中、ステラボール名物ミラーボールの放つ光は流れ星のようで、幻想的な光景を生み出していた。

12曲目は、2021年10月にぴあアリーナMMで開催された「NIJIROCK NEXT BEAT」でもカバーした七尾旅人「サーカスナイト」。またたく光の中、赤い傘をさして歌うというシチュエーションも3年前の伝説のライブと同じだが、光の演出や手に持った傘のディテールなど、バーチャルライブとしての表現力は飛躍的に向上。しっとりと歌い上げる力一から漂う大人な男の色気も増していたかもしれない。

本編最後のMCでは、ライブを前に感じていた不安も吐露。全曲作詞を手掛けたミニアルバムに対する思いなども語っていく。真面目な口調で熱く話したことが照れ臭くなったのか、「もうすぐライブが終わるから、校長先生がやってきました(笑)」と自分に突っ込み、会場を笑わせた。しかし、1stワンマンライブのクライマックスを迎え、ジョー児たちに伝えたい言葉が次々と浮かんでくるのか、校長先生の話はさらに続く。

「みなさんに見せたいもの、理想に対して、自分が一生懸命食らいついて行きたいなという気持ち。経験を踏むにつれて、すごく増えてきました。(それが)すごく幸せで、すごくしんどくて。でも、やり続けたらまだ何かありそうだなって。また、自分が過去に伏線を張ったんですけど。たぶん、一生『カーニバル・イヴ』なんだろうなと思いました。なので、皆さんも一生、この『カーニバル・イヴ』にお付き合いいただければ幸いです」

改めて、感謝の言葉を伝えた後の最後の曲は、ミニアルバムでも最後に収録されている「Stream Key」。歌唱前には、ラスサビの「ラララ」をジョー児と一緒に歌う練習をしたが、その必要はなかったと思うほど、一回目からコーラスは完璧。力一も思わず「練習してきた?」と尋ねていた。さらに、ラスサビ前の「バカ」も一緒に声を上げて欲しいとリクエストした後、青春ソングのように爽やかな歌声で「Stream Key」を歌っていく力一からは、ピエロの怪しさは微塵も感じない。

天井から無数の風船が振ってきた後のラスサビでは、会場中のジョー児がリクエスト通りに「ラララ」と熱唱し、主役に負けないほどの大きな歌声になっていた。歌い終えた力一は、手を振りながら退場。しかし、ディスプレイにライブのロゴが映ると、ジョー児たちからは、すぐにアンコールの声が上がる。


アンコールでは、新曲をサプライズで初披露

激しいドラムの後、会場が明るくなると、ステージ中央にステッキマイクを持った力一の姿があった。

「アンコールありがとうございます。何を隠そうこのライブ。ここからが本番です。ぐちょぐちょになるまで、帰しはしませんよ!」

歓喜する客席を激しく煽ると、「サーカスナイト」と同じく「NIJIROCK NEXT BEAT」でも披露した筋肉少女帯「サンフランシスコ」を熱唱。「ここからが本番」という言葉を証明するように、この日一番の力強いボーカルと激しいステージングを披露する。

「もっと光を浴びたいですか?」と怪しく問いかけた後は、左右に大きく広げた腕の先、10本の指から緑に輝くレーザーを照射。指の動きに合わせてレーザーも大きく動き、まるで某デストロイなロボットの全方位ビーム攻撃のような圧巻の光景だった。バーチャルステージ上だけでなく、会場も同じ色のレーザー光で照らされている。

この日一番の熱いステージを披露した後、「改めまして、『カーニバル・リヴ』へようこそ!」と叫ぶ力一。その言葉に呼応して歓声を上げるジョー児たちを手の動きで煽った後、「アンコールは、キャラが変わるよ」とワイルドな口調で語りかける。2022年10月に自身のYouTubeチャンネルで配信した3Dライブで、指から謎レーザーという芸を初披露した力一。レーザー芸が人気を集めたことで、ジョー児たちに「いつか有観客のライブでも」と語っていた約束をついに実現。客席から「ありがとう!」の声が聞こえると、「指からレーザー出してお礼を言われる。VTuberには夢しかねえなあ!」と絶叫。会場の熱は、さらに高まった。

「アンコールはキャラが変わるよ」というさっきの言葉は何だったのかと思うほど、いつものように優しく語りかけながら、サービス満点のARカメラによる記念撮影を行う力一。

そして、このライブに関わるすべての人への感謝を伝えた後は、音楽活動に対する素直な思いも吐露。

「ここまで、皆さんの前で歌を歌って、何かずっとうじうじしていたものが吹っ切れたなという感じもありました。吹っ切れたピエロは怖いよ、本当に。どっちに転ぶか分からないけど、地球で玉乗りだ!」

「ずっとうじうじしていた」という告白は正直、驚き。何でもできる多才なエンターテイナーであることが、逆に音楽活動に対する迷いへと繋がっていたのだろうか。何にせよ、初めてのソロライブは、アーティスト、ジョー・力一にとって大きな一歩となったようだ。一旦、ステージ袖に消えた力一は、記念撮影用に持っていたステッキの代わりに拡声器を持って登場。サプライズで新曲を初披露することを告げると、会場からは歓喜の声が上がる。「今の皆さんの気持ちをそのままタイトルにしました」という言葉に続いて明かされた曲名は、「翻弄」。疾走感あふれるメロディーに乗せた、少しラフな歌い方が新鮮だ。最後は、拡声器をステージ袖に投げ捨てるという乱暴な締めも面白い。

そして、会場全体の手拍子の中、4人のバンドメンバーを一人ずつ紹介。バンドメンバーと、会場や配信で見守ってくれたジョー児たちに、この日、何度目かの感謝を伝えた。さらに、「完全なアドリブなんだけど」と前置きした後、「さんばかにエールを送っとこう!」と呼びかける。同じにじさんじ所属のアンジュ・カトリーナ戌亥とこリゼ・ヘルエスタによるユニット「さんばか」は、翌日に同じステラボールで5周年ライブを開催予定だったが、出演者の体調不良により、急遽、延期が決定していたのだ。そんな仲間に向けて、力一が「300%の最高の3人のパフォーマンス、見せてください。『さんばか』、頑張れ!」とエールを送ると、ジョー児たちも「頑張れー」と叫ぶ。温かい人柄がさらに伝わってくるシーンだった。

全員でコールアンドレスポンスの練習をした後の最後の1曲は、開幕の曲でもあった「レイテストショーマン」のライブアレンジバージョン。1曲目に歌ったときもジョー児たちのコールは十二分に大きかったが、約1時間40分のライブを経て、その声はさらに大きく熱くなっていた。最後は銀テープの舞う中、アカペラで「The show must go on」と伸びやかに歌い上げる。

「『カーニバル・リヴ』、これにて閉幕。また、どこかでお会いいたしましょう。ジョー・力一でした。ありがとうございました!」

両手を広げて、目を閉じたまま、ジョー児たちの歓声を受けとめる力一。感動的なフィナーレのすぐ後、「出し切りました。これで、日曜日のラジオはお休みできます(笑)。でも、振り返り雑談はすぐやるからね」と急に配信メインのVTuberらしい発言をしたことには、記者席で思わず笑ってしまった。再度、感謝を述べながらバンドメンバーの退場を見送った力一は、ステージの左右の端に移動して深々とお辞儀した後、2階席に向かってもお辞儀。最後に「すべての皆さんに、本当にありがとうございました。ジョー・力一でした」と感謝の思いを伝えた後、「また、お会いしましょう」と告げてステージを下りた。

最後の影ナレでも、「死ぬかと思うくらい楽しかったです」と感謝を述べた力一。「また、どこかの会場で必ずお会いしましょう。ありがとうございました」という未来の約束と感謝の言葉で、一夜のカーニバルを締めくくった。


ジョー・力一というエンターテイナーが持つ様々な才能や努力の成果に加え、怪しい道化師姿でもにじみ出る人柄などが伝わりすぎるほどに伝わってきた1stライブ。にじさんじのバーチャルライバーとしてデビューしてから約6年目での大舞台だったが、退場直前のジョー児たちとの再会の約束は、そう遠くない未来に実現することを期待したい。

© ANYCOLOR, Inc.

(取材・文:Daisuke Marumoto


●ジョー・力一 1st LIVE 「カーニバル・リヴ」セットリスト

01.レイテストショーマン
02.ジョン・ドゥ・パレード
03.フェイキング・オブ・コメディ
04.品川シーサイド
05. ソワレ another rum ver.
06. 化け猫
07.Nightmare
08.FAKE LAND
09.コルロフォビア
10.死ぬな!
11.明転
12.サーカスナイト
13.Stream Key
14.サンフランシスコ
15.翻弄
16.レイテストショーマン(ライブアレンジver.)


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