【潜入レポート】ついに日本発売!! 50台のApple Vision Proが集結したホルダー限定Meetupで感じた現在地

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7月8日、Apple Vision Pro所有者限定のミートアップイベント「Apple Vision Pro ホルダー限定Apple Vision Proホルダー限定Meetup #2」。このミートアップイベントのドレスコードはその名の通り、Apple Vision Pro。会場となったambrと、MESONSTYLYGraffityの4社合同での開催となった。

初回のミートアップでは、2024年2月にアメリカ国内限定で販売されたばかりのVision Proを購入した先鋭たち25名が集結。日本での発売を待たずに、デバイスを購入するためにアメリカに行ったり輸入代行を利用するなど、祭りのような熱狂の最中にいるユーザー達が集まった(関連記事)。

そして今回集まったのは、前回と比べてちょうど2倍となる50名。日本発売から10日後というタイミングで開催された今回は、これから未来を作ろうという熱気あふれる初回の活気と比べると、これまでに数か月使っているエンジニアたちや、日本発売を待ち望んで購入した方がたの熱気が交わる交流地点となっていたと思った。


日本でVision Proが買えるようになって変わったこと

6月28日に日本国内で発売されたVision Pro。日本円で約60万円という、XRデバイスとしてかなり高額な部類のデバイスを購入しているのはやはり、XR関連の開発をしているエンジニアがメイン。しかし、他でもないAppleのデバイスというだけあり、従来のXR関連のエンジニアだけではなく、普段はアプリ開発やウェブ開発などをしているという、XR業界の外の方も多かったのは特徴的だった。

参加者に向けた事前アンケートで使用頻度を調査したところ、全体の40%が2、3日に1回使用。そして、1回の使用につき半数以上が1~2時間という結果になった。日常的にVRゴーグルを使用して遊んでいるユーザーからすると少ないような気もするが、VRChat等のソーシャルVRのような場がないことを考えると妥当な数字かもしれない。中でも目立つのが「ほぼつけたまま(1.8%)」という数字。

ambr CEO西村氏によると「ほぼつけたまま生活している方がひとりだけいました。本日最年少参加者の中学二年生の子です」とのこと。まさかの事実に会場が拍手につつまれた。

高額のデバイスというと個人で購入するというより、企業が研修や業務用途で購入するケースが多かった。しかし、(さすがに中学生というのは驚きだが)エンジニアでもなんでもない一般ユーザーも買って日常的に使っているという事実は、Vision Proというデバイスが今までの高額デバイスとは異なるユーザー層を感じさせた。

2月時点で渡米して購入していたというエンジニアのごんびぃー氏に話を伺ったところ、発売当初と現在での違いは「Apple側が一般利用を意識していること。特にOSのバージョンが上がって、ジェスチャー操作でメニューを出せるようになったのはかなり大きい」」と語る。

また、Vision Proといえば本体外付けの充電器の取り回しに悩むという話題が度々出るが、「充電器用のアクセサリを買ったんですよ」というので見せてもらった。充電器を胸ポケットに差し込む方が多いが、クリップになっているのでズボン等に装着できるという。筆者はVision Proを持ってはいないが、こうしたアイテムを知れるのも交流会のいいところだと思った。

また、日本での発売をきっかけに購入したという方に話を伺うと「発表を見た時からチャンスを感じたので、日本の発売を待っていました」とのこと。日頃はウェブ開発をするエンジニアで「XRは初めてで、完全に手探りです」と言いつつも、ウェブやアプリ開発の業界ではまだ買っていない方が多いからこそ、いち早く手にして触りたいという情熱を感じた。


LT会に見る、Vision Proの開発シーン

前回同様、Vision Proの開発関連のLTも開催。共同主催の4社をメインに、ゲストも含め合計6名のLTが行われた。

Vision Pro発売と同時に自社アプリを発表しているMESONのエンジニア安藤氏による、Unity上でVision Pro用のコンテンツを作成するためのキット「PolySpatial」で開発をする上でのヴィジュアル面の制約の多さをどのように解決していったかという知見の共有や、ambrのエンジニア・サックー氏による「あえて今UnityでやるVision Pro開発」など、Unityでの開発の話題が目立った。

Vision Proの開発で使用できないUnityの機能があるなど、Unityを用いた制作が最適とは言えないまでも、これまで培ってきた知見や、3Dモデルや空間の扱いの使い勝手の良さを鑑みると、UnityにはUnityの良さがあるというのが発売から5ヵ月経っての感覚だろう。

STYLY CEO山口氏が発表したのが、Vision Pro上に自分専用のAIを常駐させる「マルチモーダルAI」のデモ。音声と(Vision Proの)カメラから取得した画像を同時に解析して質問に答えてくれるというもだという。山口氏の人格を学習させているというAIに「今日何人くらいいる?」と聞くと、会場をスキャンして「ざっと見た感じやけど、40人くらいやな」と答え、拍手に包まれた。

Graffity CEO Totti氏は前回のミートアップにて会場でゲームをして盛り上がった「Ninja Gaze Typing」に続く二作目のゲーム「Shuriken Survivor」の開発秘話を披露。ハンドジェスチャーの気持ちよさを意識して作られたというこのゲームでは、VisionOS側で用意されているジェスチャーが少ないこともあり、やはりUnityで制作されているという。

Limes氏は、UnityでもSwiftでもなく、Godotでの開発環境の事例を発表。基本的には2Dゲームを作ることが多いゲームエンジンだというが、「Godot Vision」というドキュメントが公開され、Vision Proの開発ができるようになったとのことで、試してみたという。英語ですら情報がないという中でやり方を試行錯誤してきた知見を共有していた。

Daiki Shimizu氏は、知見の共有というわけではなく出来事の共有として発売までの一年をスライドにまとめた発表。また、Shimizu氏はなんと日本のAppleストア最初の1人だったとのこと。

前回と比べると二倍の人数が集まったこともあり、Vision Proのアクティブなユーザーたちの賑わいが増したのは間違いない。私はエンジニアではないが、最近Vision Pro向けのコンテンツ制作に触れてみたところであり、従来のVRデバイスやスマホARに向けた開発環境との違いにはかなり悩まされているため、そうした面でも学びになった。

これまでXR関連の開発を続けてきたエンジニア達の知見がそのまま通用しないことも多いVision Pro開発の現場の中での苦労は、初回からも言及されてきている。今回も、通常の開発ではなかったような壁に当たりながらも、ずっと使われてきたUnityでの開発の知見や、3D空間上のコンテンツ制作という点においては優位だという点など、開発環境が大きく変わってもこれまで培ってきたものを使って開発できるということが見えてきた気がして、XR開発コミュニティの強さを感じたミートアップだったと思う。


(TEXT by ササニシキ


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