Shiftallは10月10日、新型VRヘッドセット「MeganeX superlight 8K」(税込・24万9900円)の予約受付を開始。同製品の発表会およびデモ機体験会を都内某所にて実施した。
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Shiftallといえば、これまでもSteamVRトラッキング(Lighthouse方式)向けのVRコントローラー「FlipVR」や、VRヘッドセット「MeganeX」、さらにはフルボディトラッキング用デバイス「HaritoraX ワイヤレス」など「メタバース向け製品」と銘打った各種関連デバイスを販売していたXRハードウェアメーカーだ。
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今回、突然の発表となった「MeganeX superlight 8K」は、もともとは今年夏ころに発売される予定だった「MeganeX」の後継機「MeganeX superlight」が開発中止となり、それに代わるものとして登場したもの。しかし、「8K」とついている通り、片目4KマイクロOLEDパネルとパナソニックグループが独自開発したパンケーキレンズを搭載するなど、これまで予定していた「MeganeX superlight」とは大きく異なるVRゴーグルとなっている。
本記事では、発表会で明らかにされた「MeganeX superlight 8K」の開発背景および、実際にデモ機を使用したファーストインプレッションをお伝えしていく。
多様化するVRゴーグル市場とShiftallが狙うニッチ「VRChatユーザー」
記者会見の前半は、Shiftall 代表取締役CEOの岩佐琢磨氏より現状のBtoC向けヘッドセットの市場分析から始まった。「Meta Quest」シリーズなど、大手の製品を除くと、むしろ汎用機よりも「用途ごと」の特色が重要になってきていると語る岩佐氏。
中でも、Shiftallが注目するVRアプリがソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」だ。
同氏がSteamの提供するアプリ別の瞬間同時接続者数を独自にプロットしたグラフによれば、VRChatの同時接続人数は2020年より堅調に伸び続けている。特に、今年に入ってからの伸びは顕著であるという。
そこで、同社が掲げる目標が「VRChat等VR SNSユーザーに向けた、最高のVRヘッドセット」。これを実現したものが、今回の「MeganeX superlight 8K」であるとのこと。
中でも力を入れたのが「圧倒的な軽さと圧倒的なパネル性能の両立」だ。「MeganeX superlight 8K」は、重量が本体のみで185g未満(ストラップ等合わせると約250g)。そして、画素数は「Apple Vision Pro」(2300万画素)を凌ぐ2727万画素を実現している。
その他、ソーシャルVRユーザーをターゲットに「MR/XR機能を切り落とし、代わりに周辺確認がしやすい物理フリップを実装」「最高解像度を引き出し、バッテリー要らずにするために有線のみのPC VR接続」「電動IPD調節、ピント調節機能は実装」「ストラップを柔らかい素材にし、後頭部をフリーにすることで、VR睡眠なども快適に」「額のみで重量を支えるため、長時間の装着でも目の周りに負担をかけない設計」など、取捨選択を通じた特化型のデザインとなっている。
BtoB市場を強く意識した「Varjo」対抗のスペック
また、本機器はパナソニックグループによるBtoB市場へ向けたデバイスとしても売り出される模様。同社が特に力を入れている「デジタルツイン」や「バーチャル設計・製造」の用途において、「Varjo XR-3/4」などの業務用ハイエンドヘッドセットと比較しても優位性を保持できるように設計されている。
特に従来の業務用ハイエンドヘッドセットは重量や装着に難があることも多かったため、Shiftallの考えるtoC向けコンセプトとしての「軽量・長時間装着想定」と課題感がマッチしたという。
さらに、業務用途において「ハイエンド業務モニターレベルの色や素材感(高画質化)」を重視したとのこと。このように、解像度(画素数)、色域、階調数、コントラスト、リフレッシュレートの5軸において、「Varjo XR-4」と同等、それ以上の性能を実現しているという。
こうしてみると、「Apple Vision Pro」(税込59万9800円~)、「Varjo XR-4」(税込71万600円~)などと比較しても、「業務用ハイエンドヘッドセット」としてはお手ごろな価格感であることがうかがえる。
VRChatを体験してみた:装着感と解像感
さて、会見終了後にはさっそくデモ機での試遊体験を行う機会を得た。今回は、読者も気になるであろう「VRChat」で使ってみたファーストインプレッションを共有していこうと思う。ちなみに、筆者が体験したPCに搭載されたグラフィックカードはGEFORCE RTX 3090となっている。
まず、実際に実機を目の前にしてみると確かに軽い。筆者が利用しているスマートフォンが「Redmi note 9S」なのだが、これが209g。ほぼスマートフォンと変わらない重さである。
実際に装着してみたところ、やはり「額だけで支える」というのはかなり圧迫感が少なくて良い。これであれば、長時間装着していても跡が気になることや、頬が引っ張られるような不快感はほぼないだろう。
また、ヘッドセット上部には「物理フリップのボタン」「前後調節のスライダー」「角度調節のつまみ」と3か所の調節機能が付いている。正直、それぞれの位置がかなり近く、操作方法も「ボタン」「つまみ」など異なるため、慣れるまではどれがどの調節であるのか把握するのが少し大変そうだ。
ちなみに、目との距離が近い関係で、眼鏡をかけたままの装着は難しい様子だった。しかし、ピント調節機能を用いることでディオプトリー 0D ~ -7Dまで視力矯正ができるため、近視ユーザーにも優しい設計となっている。
意外に見落としがちな点として、本製品には内蔵スピーカーが搭載されていない。USB拡張ポートを用いて接続できるオーディオデバイスが必要だ。
今回は、VRChatの中で「遠郷の冬めく夜 -Nostalgic Winter Night-」と「銀杏並木-Ginkgo Street-」の2つのワールドにお邪魔させてもらった。前者は、夜の温泉旅館をモチーフにしたワールドで、「暗さ」と「明るさ」のコントラストを見てみようと、後者は逆に明るいワールドにも行ってみようということで、選んでみた。
デモ機のため、「マスターモニターのような階調表現を優先させたため、色合いがとても地味(本来の色)、シャープネスも効かせていません」とのことで、若干色合いが暗めな印象は受けたが、やはりさすがの高解像度。普段の環境(※PICO 4をPC VR接続)と比べると、同じワールドに行ったとは思えないほどに感じた。また、夜空と降ってくる雪とのコントラストも、確かにより臨場感がある。
また、接顔部は柔らかいラバー素材でできているのだが、これは簡単に取り外し可能で、外した状態で(Quest Proのように)使用しても、十分に実用レベルだなと感じた。もちろん、額以外の部分が完全にフリーになるため装着感はその方がぐっと上がる。
出荷予定は来年の1月以降とのことで、まだまだ今回のデモ機から微調整が入るとのことだったが、ファーストインプレッションとしては「お金に糸目は付けないから、とにかくハイエンドで付け心地のいいLighthouse系VRゴーグルが欲しい」ということであれば、十分に検討の余地がある製品だと感じた。
●製品概要
・品名:MeganeX superlight 8K
・品番:SVP-VGC3B
・先行予約特典:3年保証(標準1年+延長2年)
・価格:249,900円(税込)
・発送開始予定日:2025年1月~2月
(TEXT by アシュトン)