「バーチャル・リアルではなく、体がなく、増えて、遍在してもいい」 長瀬有花 ライブツアー「effect」1万字インタビュー

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RIOT MUSIC・汽元象レコードに所属し、2次元と3次元の両軸で活動するアーティスト・長瀬有花(ながせゆか)。彼女といえば、9月22日に大阪での「Eureka」、10月12日に横浜での「effect」を実施したばかりである。

経歴を振り返ると、最初はバーチャルな姿でデビューしたが、2022年6月にバーチャルシンガーとしては異例の全編実写でのオンラインライブ「SEEK」を配信するなど、フィジカルの姿も見せるようになった。今ではバーチャル/フィジカルの体でライブをしつつ、オリジナル曲をリリースするなどの音楽活動を続けており、同じRIOT MUSICの中でも独自の動きを見せている。

2022年に「とろける哲学」がTikTokで注目を集めて累計1億回再生を超え、2023年に自身がコレクターであったチロルチョコとのコラボを実現してオリジナル曲を制作。2024年にはスペシャルライブ映像を公開したりと、活躍の幅を広げている。

そんな彼女はどんな影響を受け、なにを大切にして表現しているのか。サウンドプロデューサーの矢口和弥氏も交え、その想いをインタビューした(以下、敬称略)。


「ずっと二次元になりたい人間だった」

長瀬有花

──最初にお聞きするのも少し変なのですが、散歩をされるのはお好きですか?。

長瀬 散歩、好きです。

 
──自宅の周りとか散歩とかで散歩される?

長瀬 自宅の周りというよりかは、出先とか仕事でちょっと電車に乗って行くときのついでとかに。降りた駅の公園とか目についた景色とかを結構ぶらぶらしたりはしますね。

 
──じゃあ決まったルートがあるわけじゃなくて、散歩ごとに歩く場所が変わるという?

長瀬 そんな感じですね。

子供の頃は好きとまではいかなくて、むしろ本当に最近になってですかね。日々を目まぐるしく過ごすようになってから、公園や自然の景色とか、面白い建物とか、そういうものを見たときの、なんかちょっと時間がゆっくりになる感じとかがいいなって思って。

 
──実は自分は音楽聴くときに大体外にいて、歩きながら聴いているんですが、長瀬さんの音楽と一緒だとすごく心地よく歩けるなと思ったんです。

長瀬 一番最初に出した「a look front」というアルバムは、その通り散歩で聴ける音楽を詰めたものになってるんです。最初に出したオリジナル曲の「駆ける、止まる」で、YouTubeに投稿したMVのコメント欄に「この曲の速さと自分の歩く速さがぴったり合う」と書いたことがサウンドプロデューサーの矢口さんの目に止まって、「歩きながら聴けるようなアルバムをつくろう」という流れになったはずです。

矢口 あんまり覚えていないですが、曲やアルバムをつくるときは、結構そういう言語的なコンセプトを設けることが多いです。きっかけが本人のコメントだったかは記憶にないですが、歩くときの音楽というコンセプトで確かに「a look front」はつくっています。

 
──変なご質問に答えていただいてありがとうございます(笑)。「長瀬有花」としてデビューするきっかけはなんだったのでしょうか?

長瀬 そもそも自分は歌手になりたいなと思って、色々なオーディションを受けたり、所属先を探していました。ただ当時コロナ禍と重なって、色々なアーティストさんのライブが次々とできなくなっていく様子とかを目の当たりにしていた時期だったんです。

そんなときに見つけたのが、RIOT MUSICのオーディションでした。「バーチャル・アーティスト」という名目で募集していて、バーチャルの世界でも歌が歌えるんだったら、コロナとか感染とかそういうリスクとかも取っ払って、いつでもどこでも歌を届けることができるなと。それって、これからの時代にすごくいいものなんじゃないかと思ってピンと来て応募して、所属が決まって……という感じで今に至ります。

 
──受かったときの気持ちはどうでした?

長瀬 そのときはもう「ここで決めなきゃヤバい」「絶対受からなきゃ」という感じだったので、驚きというよりは、とにかくホッとした方が強かったです。結構大きな事務所だし、所属してるみんなもすごく歌がうまいしで、これからがんばってついていかないとなという気持ちでした。

 
──矢口さんが初めて長瀬さんの歌を聞かれたときはどんな印象でした?

矢口 前提の話として、僕が長瀬有花のプロデュースに関わり始めたのはデビューから少し時間が経ってからなんです。でも、一応オーディションには僕も立ち会ってはいたので、そのときの印象でいえば、言葉を選ばずに伝えると、明らかに浮いていました。

彼女の声自体がすごくふわふわして丸い感じにも関わらず、声の属性として尖ったものが感じられる。売れ線かどうかは別にして、好きな人にはたぶんすごく刺さるだろうなと。カルチャー感みたいなものがめちゃめちゃある歌声だなと思った覚えがあります。

 
──なるほど。そうして活動をスタートされたわけですが、長瀬さん自身が憧れたり、参考にされているアーティストやミュージシャンはいますか?

長瀬 自分が音楽を好きになった入口は、ボカロやアニソンから来ています。ボカロで一番最初に聴いたのは「深海少女」で、アニソンではキャラクターソングとかを主にずっと聴いていて、今でも結構自分の歌にも生きてるなって思うところも結構あるんです。キャラクターが歌ってるなっていう個性の再現を参考にしていたりします。

アニソンやボカロなどを通じて音楽に興味が出てきてからは、「相対性理論」ややくしまるえつこさんを聴いて、「こういう歌の表現もあるんだな」っていう、すごい衝撃を受けてハマりました。谷山浩子さんもすごく好きになって、このお二方は今でもかなり影響を受けています。あとは親の車でずっと松たか子さんや小沢健二さんの曲が流れて、小さい頃から聴いていたのが潜在意識で影響してる感じがあります。

 
──ライブを何度か拝見していますが、振り付けや踊りなども参考にされてるのかなと感じました。

長瀬 ちょっと言い方がハッキリしすぎちゃいますけど、自分、ずっと二次元になりたい人間だったんです。アイドルアニメが好きで、「アイドルマスター」や「ラブライブ!」、「プリパラ」のライブシーンをすごく見ていて、「こういう動きをしたら映えるんだ」とか、「見てて飽きないんだな」とか影響を受けています。キャラクターの、その子がステージの上でどう歌って踊るのか、すごく個性が出るところで好きです。

あとはロックバンドのアーバンギャルドを今年に入ってからちゃんと聴き始めて、今まで知らなかったことを後悔するぐらいに自分に刺さってます。

音楽の趣味が人と違うのか、自分にハマる曲を見つけるのに苦労しているのですが、アーバンギャルドはすごく刺さってしまって。先日、ボーカルの松永天馬さんのライブを見に行ったんですが、ステージングとかがめちゃめちゃ素晴らしかったですね。

行ったときは体が疲れていたり、足がすごい痛いなみたいな感覚だったのが、ライブが始まった瞬間に全部どっか飛んでしまって、それぐらい吸引力のある、見せ方が本当に「1人のキャラクターが実在してる」みたいな感じで感動しました。

 
──コラボしてみたいミュージシャンやアーティストはいますか?

長瀬 コラボできたら面白そうだなって思っている方は、窓辺リカさんです。最近知って、ライブの映像をチラ見したのですが、パフォーマンスもそうだし、世界観の魅せ方がすごい。あとは「電影と少年CQ」のゆっきゅんさん。独自の世界をつくられていて本当にすごいなと。一緒にイベントや共演ができて、ファン層が混ざり合うと面白いんじゃないかって妄想しています。

 
──ライブを拝見していると、「下北沢」や「インターネット」、「レトロ家電」といった要素が目立ちますが、自分の中で過去に通ってきた感じでしょうか?

長瀬 「下北沢」は昨年、初めてやったワンマンライブの前に、毎月連続で下北沢をからめた企画をやってました。そこから馴染み深くなって、落ち着くというか、ふらっと遊びに行ける場所になった感じです(下北沢を舞台としたコンセプトライブ「Form」シリーズのこと)

新宿や渋谷、銀座とかは、なんか張り切って、ちゃんと身なりを整えてから行かないとみたいな気持ちなんですけど、下北沢っていい意味で色々な方が自分の楽しみたいように楽しんでいるので、すごく心地がいいなって思っています。

「インターネット」は……自分はインターネットに触れた時期が遅めなんですが、それよりもちょっと前の、インターネットが普及し始めたぐらいの空気感が好きなんです。

ブックオフとかで、たまたま昔のウェブサイトのリンク集みたいな本を見つけて買ったことがあるんです。当時のデザインって、ちょっとフォントがダサめだったりして、個人の占いサイトみたいなのも載っていたりするのですが、実際にURLを打ち込んでみるとほとんど全滅しているんです。かつてあったものに対する懐かしみとか、儚さとかを感じるなと。

あと廃墟もすごく好きなんですよね。ちょっと忘れ去られそうなものが好きになりやすくて。「レトロ家電」もそのひとつだと思います。


「言葉で結論をいわない、遠回しな感じを大事に」

──これまでにオリジナルを40~50曲ぐらい出されてきましたが、ご自身の中でお気に入りの曲、挑戦したなという曲、制作がキツかったという曲をそれぞれ教えてください。

長瀬 ふむ。まず、お気に入りは……Local Visionsさんとコラボして出したアルバムの中にある、自由ヶ丘さんというミュージシャンがつくってくださった「ゆめゆめキャット」ですかね。自分の好きな「相対性理論」とかのエッセンスをちょっと感じるようなサウンドになってるのが好みにドンピシャで、やりたいことをやらせていただけたなという。

挑戦した曲は、「Launchvox」ってアルバムに入ってる「砂漠の水」という曲です。急に拍子がガラっと変わったり、雰囲気がガラッと変わるところとかがプログレみたいな感じなんです。可愛いとか、長瀬有花らしさみたいなのが前面に出つつ、でもやってることはえげつない!みたいな。その甘辛な感じが、全部の曲の中で一番上にくるんじゃないかってぐらい、カッコいいなって思っています。

──制作が一番キツかった曲はどうでしょう?

長瀬 どれだろう。すごく難しかったという意味では、2021年の「ライカ」とかかな。そもそも音楽の制作自体はずっと楽しくやっているんですが、当時は今の自分からみたらまだ歌とか全然安定してなかったんです。この曲はピッチを取るのもすごく難しくて、自分のニュアンスや、入れたいものを入れていくっていうのにしばらく苦戦していました。この曲は、念入りにボイトレをやっていた記憶がありますし、ようやく最近になって慣れてきて、余裕を持って楽しく歌えるようになってきたかなと思います。

 
──矢口さんにお聞きしたいのですが、プロデュース側として、方向性や長瀬さんからの意図などを作家さんに伝えて制作していたりするのでしょうか?

矢口 1stアルバムをつくってるときは、本人に「どんな言葉を歌詞に入れたいか」「どういう歌い方をしたいか」みたいなヒアリングを入念にしていたのですが、年を経ていくごとに、僕らの方向性もちょっとずつ変わってきました。

ずっと2人でやってきていて、お互いに慣れてきたりとか、つくりたいものが変わってきたということもあり、実は一作目のあとは意図が明確になっていったのではなく、逆にどんどんふわっとしていっています。なので「この曲にはこういうリファレンスを設けて、本人の思ってるこういうことをも込めましょう」みたいなことは、ほぼやらなくなりました。

もちろんコンセプトは設けますが、「この曲に似た感じにしてください」「この言葉を使ってください」というのは今ではなくなって、もっと抽象的な、「こういう風景で、こういう思想を描きたい」みたいな話をまとめて、信頼できる作家さんに解釈してもらうというやり方が多いです。その分、テーマや概念的な部分に関しては、オーダーするときの文章や口頭でもしっかり伝えるようにしています。企画書を見せたときに、「ここまで物量が多くて丁寧な資料は初めてもらった」といっていただけることも多いです。

 
──企画の段階で長瀬さんはどれくらい入られているのでしょうか?

矢口 つくり始める前にちょっと話すぐらいで、「去年こういうことしたから、次こういうことしたいよね」とか、普段の雑談の流れから「こういうのってどうですか」みたいのをお互いに投げ合って、僕がまとめるみたいな形で進めています。

 
──長瀬さん的には、制作の移り変わりについて思うところはありますか?

長瀬 その点に関しては、そこまで疑問や不満もないままここまで来た感じです。お互いが音楽の趣味などで共通してる部分が多いというのもあって、自然と「この方向でいいんじゃないかな」みたいな気持ちで自分もついていきました。初期に比べて、自分も携われる範囲が広くなってきたりしてきているので、自分ももっとがっつり入っていけるところは入っていけたらいいかな、なんて思ってます。

 
──音楽の方向性としては、自分の声と優しい音色を用いたエレクトロニカ、ちょっとコアですけどフォークトロニカとかを意識されているのかなと感じていたのですが、実際のところはどうでしょう?

矢口 電子音楽クラブミュージックの方面に行こうとしている意識はないです。特に今年はトラックメーカーさんの作品にフィーチャリングとして参加させていただく機会が多くて、確かにそういった界隈ではよくある流れなので結果的にそう見えている面もあるかもしれません。僕らとしてはクラブを主戦場にしたいとか、電子音楽をめっちゃやりたいというわけではないですね。逆にいうと、自分たちでつくる曲はそこから離れる可能性もあるなとかは思っています。

 
──じゃあ長瀬さんがインディーのロックバンドにハマったらバンドものが増えたり、矢口さんがヒップホップにハマったら……。

矢口 そういう曲を作るかも知れないし、急にドリルで行こうみたいになるかもしれないですね(笑)。

 
──急にRalphばりのドリルになるんですか? あまりの変化にちょっと怖いです(笑)

矢口 僕らとしては作る音楽のジャンルは限定していないです。先ほど話した見え方のおかげだったり、界隈の文脈的にクラブイベントに呼んでいただくことが多いですが、ライブハウスにももっと出てみたいですね。いい音楽ならなんでもいいなっていう感じでやっていきたいです。

 
──長瀬さんの音楽作品についての個人的な解釈なのですが、長瀬さんの作品は例えば「a look front」の「駆ける、止まる」や「Launchvox」の「近くて、遠くて」など、自分の感情や感覚といった形のないものに輪郭を与えようという心の動きがあって、さまざまな事物を例にあげつつ、「ふわふわ」「やわらか」「まろやか」といった曖昧な言葉遣いや形容詞などを使って、音楽へ仕上げていきたい方なのかなと思ったんです。長瀬さんのなかではどういったメッセージが自身の音楽にあると思いますか?

長瀬 なるほど。その解釈について自分の中でも「確かになー」と思いながらお聞きしましたが、一方で「真に迫りすぎない」ように言葉で結論をきちんといわないようにつくっていただいているものも多かったりします。遠回しな感じを結構自分も大事にしていて、歌うときにも感情をあまり込めすぎないように気をつけていたりしているんです。音楽の楽しみ方や解釈って、聞く人によってそれぞれなんですよね。だから。解釈できる幅がちゃんとあるようにしたいというのは意識しています。

 
──矢口さんとしても、長瀬有花というアーティストのメッセージ性を持たせたいという解釈を狙って制作されていたりするのでしょうか?

矢口 狙ってメッセージ性の強いものをつくると意気込んでやっているわけではないです。ですが振り返ってみると、多分そうしたオーダーを僕自身もしていたと思います。音楽を伝える側にも向き不向きがあるとは感じていて、いわゆるみんなでがんばろうみたいな応援歌だったり、悲痛で共感を呼ぶ曲みたいなエモ〜い曲は、長瀬有花がやったところで……という感覚は初期からありました。

僕らの好きな音楽や、それらに通じる長瀬の個性を活かすことを考えると、そういうのは別の方に任せて、僕らは割と余白をしっかり持たせるというか……。こういうとあまりよくないかもしれませんが、「売れ線」の音楽はまだ狙っていないというか、つくれていないんです。もちろん本当はつくらないといけないのですが、幸いにもその辺りに縛られることなく好き勝手にやらせていただいているので、それが余白を生んでいるのかもしれません。

なので逆に、その余白をしっかり設ける音楽を狙ってつくれる環境って珍しいのかもしれません。その点では、長瀬有花の生き様だったりセンスにすごく助けられているし、「この座組で自由にやらせてもらえるなら、代替不可能な音楽をつくりたいね」という話はよくしています。「長瀬有花じゃなくてもよくない? これ歌うの」みたいな曲をつくるのは本当に意味がないので。


「基本的には自分が一番自分の歌のファン」

──その話を受けてライブについてお聴きしたいのですが、現場を拝見させていただいてすごく印象に残っているのが、よくMCで「揺れましょう」「ゆったりしましょう」と話されていることです。自分はさまざまなライブをみてきましたが、そういう風にお話をするのは面白いなと感じていました。長瀬さんは意図的にやられているのでしょうか?

長瀬 そうですね。自分の性格的にワーって盛り上がるのがあんまり得意ではないタイプというか……。曲や歌がという話ではなく、自分が観客として誰かのライブを見に行ったときに、率先して声を出したり動いたりするのが得意ではなくて、ゆっくり眺めていたいタイプなんです。

大声を出したり、思いっきり手を振り上げたりするのだけがライブの正解ではないよなというのは結構前から感じていて、楽しみ方は人それぞれだというのを伝えるためにそうしています。「無理して盛り上がろうとしなくてもいいですよ」みたいな感じですかね。

 
──今年1月、電音部やDAOKOさん、tofebeatsさんらと出演した音楽フェス「DOUBLE:」では、背景にバーチャルの姿を映しつつ、ご自身が生身で出演されていました。あの演出の意図は何かありますか?

 

長瀬 あのイベント自体が最初から最新の透過ディスプレーとかの設備が用意されていて、その環境で自分しかできないことをやるなら次元を行き来することだなと思って、自然と演出が決まりました。

矢口 リアルとバーチャルをスイッチするみたいなのは自分たちのライブでもやっていましたが、同時出演はあのライブが初めてでしたね。

 
──リアルとバーチャルの両方が同じステージに存在するのは、見る人がみると意外と重い決断なのかなと思ってしまうのですが、いかがでしょう。

長瀬 自分の中では、長瀬有花って全然、細胞分裂でどこまでも増えてもいいなって思っているんです。極論言っちゃうと、花とか太陽でもいいし、別に体がなくても長瀬有花って言い張れる。そういう風に増えるとか、遍在するぐらいの感覚なので、バーチャルとリアルの両方を同時にやっても違和感はないんじゃないかな、そこが強みになってくれたらいいなとも思っています。

 
──過去のライブで思い出深いものはありますか?

長瀬 つい最近でいえば、9月15日に大阪で「NOCAPMATE vol.02」というイベントに呼んでいただいて、Jinmenusagiさんを始めとしてこのメンツになんで長瀬にお声がけいただけたの?……ってぐらいにラッパー、バンド、アイドルみたいに本当にバラバラだったんです。

正直、アウェーではあったんですけど、出演させていただいて、本当にみなさん素晴らしいパフォーマンスをされていて勉強になりました。お客さんも音楽が好きな方が集まっているっていう共通点があったので、長瀬の曲でも盛り上がってくれて、あとからSNSでよかったという感想を書いてくれたりとか、新たな出会いと現象がまたひとつ起こったような気づきが得られたのがよかったです。

 
──デビューされた当時と比べて、この2~3年、VTuberやバーチャルシンガーという存在がどんどん認知されていますが、長瀬さん的に捉え方が変わった部分はありますか?

長瀬 自分の中ではずっと一貫してあんまり変わってなくて、やりたいことをやるための表現のうちのひとつという。バーチャルのビジュアルというのも、現実の世界でできないこととかをやるための体としてとらえています。「バーチャルシンガー」と言われることもたしか多いですが、もはやバーチャルがつかない、ただ1人のシンガーだと思っています。

 
──ご自身にとって音楽とはどういう存在でしょうか?

長瀬 深い質問ですね。ないと生きていけないものというか、自分にとってできることが「これしかない」っていう気持ちでずっと生きてきているので、命綱じゃないですけど……。
 
──自分を助けてくれるものとしての音楽や歌という?

長瀬 そうですね、自分を助けたり、酸素を与えてくれるものでもあり、たまに苦しめてくるものでもあり、という感じなんですけど、本当になくてはならないものです。

 
──一歩踏み込んで質問させていただくと、その音楽を自分が生み出しているわけですが、それに関してはどう思われていますか?

長瀬 こんな存在になれてるんだ、すごい幸せ者だな、恵まれているなと思います。これができてなかったら、自分今頃すごいニートで、もう家族に苦労かけてるなっていう気持ちもあるんですけど、基本的には自分が一番自分の歌のファンなので、「いや、いいよね」みたいな気持ちも結構でかいんです。そりゃいいよね。逆にもっと多くの人に気づいてほしいです。

 
──最後に歌手としてここまで行ければ最高だなというゴールみたいなものは思い浮かびますか?

長瀬 ぱっと思いつくこととしては、自分でつくった曲の収益で憧れのブランドの服を買い揃えて、纏うものも表現の一部にしていきたいです。アーティストさんって、着てる服の系統からもご自身の生き方が表れているのがかっこいいと思っていて、普段の自分は古着屋で買った服とかばっかり着てるので、憧れの服も着てみたいですね。



(TEXT by 草野虹

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