目を焼き切るような彗星の輝き 星街すいせい「Live Tour 2024 “Spectra of Nova”」埼玉公演ライブレポート

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2024年11月14日、ホロライブ・星街すいせいがライブ「Hoshimachi Suisei Live Tour 2024 “Spectra of Nova”」をさいたまスーパーアリーナにて開催した(アーカイブ)。

14日の埼玉公演のあと、12月10日に大阪、28日に福岡と、実は彼女にとって初のツアー開催となる。さらに12月31日には「COUNTDOWN JAPAN 24/25」に出演するという予定であり、星街本人としてもファンにとっても、ここから1ヵ月でのライブラッシュのスタートとなる一夜であった。

それでなくとも、「ビビデバ」の大きなヒットにテレビ番組出演も果たすなど、今年の星街すいせいはまさに「飛躍の1年」といっても差し支えなかったわけで、この日この場所でどんなライブをするのかには大きな注目が集まっていた。そんな大きな注目や期待のまなざしが集まっていたライブをレポートしていこう。

ライブ前から熱気ムンムンといったさいたまスーパーアリーナ。エキサイティングなムードがどれほどのものだったかといえば、、「すいちゃんはー!?」「今日もかわいいー!」という配信の挨拶を観客同士でコール&レスポンスしていた、といえばわかってもらえるだろうか。

筆者は今年さまざまなライブにレポートさせてもらっていたが、配信の挨拶を観客同士でコール&レスポンスするというノリはさすがに見たことがない。彼女(ホロライブ)のファンがいかにライブ慣れして、なにより楽しみにしていたかがわかるだろう。

会場が暗転し「Are you Ready?」の文字とともに始まった映像。これまでリリースされた楽曲の一部がダイジェストのように流れ、アッパーに会場を盛り上げる。「5……4……3……2……1……!」のカウントダウンから始まったこの日最初の楽曲は、「駆けろ」だった。

アグレッシブなギターリフとドラミングによるアッパーなバンドサウンドに乗っかり、星街のボーカルが一気に放たれる。星街のイメージカラーである青だけでなくオレンジ色のペンライトも観客は振っている。

続けて2曲目「灼熱にて純情(wii-wii-woo)」が始まると、バンドアンサンブルはよりアグレッシブなロックサイドへとシフト。「いくぞ!埼玉スーパーアリーナ!」という星街の煽りに合わせ、会場は赤の照明に、観客はペンライトを赤に、ステージには火柱はいくつもブチあがる。序盤2曲目にしてフルスロットルに盛り上がっていった。

一気に高まったボルテージのまま、新曲「AWAKE」が初披露された。GigaとTeddyLoidによるトラックメイクで非常にライブ映えするダンスチューンであり、先ほどの2曲目から一転して青・紫のサーチライトが会場を駆け巡り、観客らは青や白色へとペンライトをかえる。会場の一体感ははやくもバッチリだ。

「アタマ3曲から!ブチアガリ過ぎじゃないですか!?」と声を上げる星街。「今夜新曲『AWAKE』のMVを投稿しようと思うんだけど、いまここで待機所を立ち上げて良い?」と言い、スマホを持った手でパパっと動かすと、本当に「AWAKE」の待機所が立ち上がった。このリアルタイム感・同期性を感じさせる演出は、なんとも心ニクイ。

MCで盛り上げた勢いで4曲目へと移っていく。バンド隊によるサウンドから、一呼吸おいて「Je t’aime」へ。ギターカッティングとスラップが上手く挟まったベースサウンドが織りなすファンキーなバンドアンサンブルにあわせ、星街はダンス&シングしていく。衣装も白を基調にしたドレッシーな装いへとかわり、シックな一面をみせてくれる。

そのまま「Starry Jet」へとメドレーのようにつながっていく。さきほどのファンキーなアンサンブルにホーンセクションが強調され、会場は青色から黄色のペンライトへ輝きが代わっていく。

続く楽曲「GET THE CROWN」は、星街がリーダーを務める「Hoshimatic Project」の面々を集めたライブパフォーマンス。ときのそら夏色まつりアキ・ローゼンタール大空スバル常闇トワ桃鈴ねね博衣こより風真いろは──といった同じホロライブのメンバーに星街を加えた9人によるダンスに重きをおいたプロジェクトとして発進したわけだが、この大舞台では息の合ったフォーメーションダンス&ボーカルを見せてくれた。

「みちづれ」では、曲調がさきほどから打って変わってスウィンギーなグルーヴに和風なサウンドアレンジがからまり、ダンサー4人が和傘を使った踊りを見せてくれる。星街も「Shout in Crisis」でお披露目したブラックな衣装へチェンジ。しかもこの衣装、黒色のあいだに花柄がスッと入り、スカートには右足を大胆にみせるスリットも入っていて、この曲の華やかさやなまめかしさにバッチリと合う。加えて艶やかな声色とボーカルを披露するのだから、会場も彼女にウットリとしたことだろう。

続く「TEMPLATE」では、歪んだギターリフと星街のロングローンが会場へ一気に突き刺さっていく。その満ち溢れらエネルギーには観客もそのエネルギーに思わず圧倒されているようだ。

バンド隊によるアンサンブルを通じてバンドメンバーを4人紹介したあとに、トラックメイカー・Kanariaとのコラボ曲「ネバーフィクション」を唄い始める。ライブパフォーマンスということもあり原曲よりも鍵盤がグッと前に出てアンサンブルをリードするなか、星街はノビノビとメロディーを紡いでいった。

「ありがとうございました。ノンストップでお届けしました。わたしはぜぇぜぇ……といったところですが、みなさんまだまだいけますよねぇ!?」

「後半戦にいきたいと思うんですけど。次の曲はあるアパートから生まれた曲です。」

そんな風にMCで会場を軽く煽って歌い始めたのは、映画「トラペジウム」の主題歌としてリリースされたMAISONdesとsakumaとのコラボ曲「なんでもないや」だ。

星街といえば、その低めに響くボーカル。大人びつつ色気があり、ロングトーンではスッと伸びていく声色は、シーンを飛び出して多くの人に刺さったわけだが、この曲では大人へと成長する決意を込めた内容として彼女の声がバッチリとハマっていた。

そんなクールな空気を突き抜けるように歌い始めたのは「ビビデバ」だった。「さいたまー! 声出したりないんじゃないのー!?」と会場を煽る星街、ペンライトの色が一気にピンク色へと染まるなか、サビに入った瞬間に彼女は新衣装へと一気に変身!

ウルフカットのヘアカットに白いタートルネック・黒いスボン、袖や裾がフレアのように膨らんだ上下の衣装をあわせ黒のヒールを履き、こちらもまたファッショナブルな衣装へと決め込んで唄っていく。

途中から楽曲はライブオリジナルなアレンジへと突入。「みんなー! 声出し足りないんじゃないのー!?」という煽りのあと、彼女の号令にあわせて「ビビデ! バビデ! ブーワッ!」とレスポンスする観客たち。

「ビビデバ」で会場からの大歓声を生んだあと、星の瞬きのような映像とゴスペルのようなコーラスが流れ、会場は一気に静まり返る。

その一瞬の静寂あとに星街がアカペラで唄い始め、続いて鍵盤が、そしてバンド隊が一気に加わって披露されたのは初期の楽曲「Andromeda」だった。センチメンタルさに満ち満ちたなかで、星街の歌声がまっすぐに響く、真摯さすら感じられるほどだ。

そんな穏やかなムードから「放送室」「ムーンライト」が立て続けに披露された。グルーヴの効いたミドルテンポなバンドアンサンブルに、自身の声のなかでも低めな質感をつよく押し出し、クールで穏やかなムードを生み出していく。会場のなかで煌々と輝くペンライトも、観客らが曲に合わせて白や黄色とつけなおしていることもあり、より没入感あるムードが生まれていた。

ライブも終盤を迎えた中で話を始めた星街。

「次歌う曲の話しをしたいんですけど、『VTuber』とか『バーチャル』の文化が成長途中じゃないですか? 私たち1人1人が一生懸命にいきてこの活動を頑張ってるんですけど、存在が新しすぎて『なんかよくわからない』『曖昧すぎない?』と揶揄されたりするじゃないですか?」

「でもわたしは、この仕事に誇りを持って頑張っていますし、みんなはそれについてきてくれてる! ありがとう!」

「そういう『わたしはここにいるのに、まるでいない』みたいな苦悩を込めた歌を歌います。わたしここにいるよね?見えているよね?では聞いてください『GHOST』」

「GHOST」がリリースされたのは2021年4月のころ。彼女がブレイクを果たす直前、ファーストアルバムをリリースする以前の楽曲だ。鬱屈とした感情を叩き殴るようなアグレッシブなドラミング、その力強さを中心にしたバンドアンサンブルのなかで、星街は自身の感情を丁寧にボーカルに込めていく。

「今日最後の曲です! みんなで盛り上がっていきましょう!」とアピールしてから始まったのは「ソワレ」だった。タメの効いたダンサブルなサウンドにあわせ、星街は笑顔を見せながら唄っていった。

本編が終わるやいなや始まった「アンコール!」という大きな合唱。少し時間があり、バンド隊の演奏とともにステージの真ん中で楕円形の光があらわれ、グルグルとまわり始める。

そこからパッと登場した星街は「アンコールありがとう! まだまだいけるよね!?」と会場をもりあげ、「天球、彗星は夜を跨いで」へ。「天球〜」は彼女にとっての初期の楽曲なのだが、さいたまスーパーアリーナに集まった観客から大きな歓声を集めており、ファンの中にはグッときた方もいたのではないだろうか。

アンコールに感謝しながら話し始めた星街は、ファーストアルバムとセカンドアルバムをかいつまみつつ最新曲を入れ込んでセットリストを組んだこと、ファーストアルバムをリリースした3年前と現在の比較、この日出演したHoshimatic Projectのメンバーについてなどを話してくれた。

この日最後の曲は「Stella Stella」。バンド隊とホーンサウンドがドンッと鳴り響き、星街のボーカルと鍵盤へと移っていく流れは、ゴージャスさとセンチメンタルさを上手くつなぎ合わせ、そのままサビの爆発へと繋がっていく。

このサウンドメイク・曲構造は、彼女が持ち合わせているパワフルさや想いを一身に浴びるかのような感覚を生みだすのだが、この日のライブでも相変わらずの威力を見せてくれた。声を挙げたり掛け声を合わせるということはこの曲には必要ない、青い光とともに放たれるその威光を浴びるのみなのだ。

「今日は来てくれてありがとう!」

星街は最後にそう声をかけてステージを去っていった。

ライブ公演中にはライブ用のハッシュタグ「#かけめぐるほしまち」がSNSでトレンド入りするなど高い注目度を見せていたが、ライブを終えると驚きのニュースが。なんと日本武道館でのライブ開催と新作アルバム「新星目録」のリリースが2025年1月から2月にあるというのだ(ニュース記事)。

こういった重要なトピックをライブ中に告知するアーティストはたくさんいるわけだが、この日、星街すいせいは一切そういった素振りすら見せなかった。そのスタンス・判断には、「ただ純粋にいま自分の音楽でのみを楽しんでほしい」というピュアな願い、なにより「音楽でのみ盛り上げてやろう」という高い熱量があったのだろう。

この日、まさに彗星が降り注ぐかのような光とパワーで観客を圧倒したのは言うまでもない。このあとに続く2公演、どのような内容になるか注目であろう。


●セットリスト
1.駆けろ
2. 灼熱にて純情(wii-wii-woo)
3. AWAKE
4. Ja t’aime
5. Stary Jet
6. GET THE CROWN
7. みちづれ
8. TEMPLATE
9. ネバーフィクション
10. なんもない
11. ビビデバ
12. Andromeda
13. 放送室
14. ムーンライト
15. GHOST
16. ソワレ

*アンコール
17. 天球、彗星は夜を跨いで
18. Stellar Stellar

●バンドメンバー
Keyboard. Ren(SUIREN)
Guitar. 坂本夏樹
Bass. 中村圭
Drums.  伊藤彬彦(androp)
Manipulator. 毛利泰士

(TEXT by 草野虹

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