コンポーザー&DJのyopi(ヨピ)さんと、ボーカルのSorte(ソルテ)さんによるVR音楽ユニットYSS。2020年にVRChatの音楽イベントで出会った二人は、ユニット結成後、良質のオリジナル曲を次々と発表し、VRとリアルを越境しながら精力的にライブ活動も展開。「SANRIO Virtual Festival」などの大規模VR音楽フェスでも注目を集めている。今年の4月26日(土)・27日(日)の「VTuberのあそびば × おしゃべりフェス in 超会議2025」にて開催された「VTuberストリートライブ」でも、オリジナル曲だけで会場を行き交う多くの人の足を止めさせ、配信の視聴者も魅了。ニコニコ生放送ギフト2位という好記録を残した。
2025年7月21日(月)には、5枚目のアルバム「Noctilux」をデジタルリリースした二人に、これまでの5年間の歩みや現在VRChatで開催中の「𝐘𝐒𝐒 𝐌𝐀𝐑𝐊𝐄𝐓」など、さまざまな活動について語ってもらった。
*本インタビューは、「VTuberストリートライブ」ニコニコ生放送ギフトの2位入賞者に贈られた記事です
これは、もう一緒にやっていくしかない
──最初にYSSがどんなユニットなのかを教えていただけますか?
Sorte(敬称略・以下同) YSSは、北海道を拠点に活動している二人組のVR発音楽ユニットです。
yopi(敬称略・以下同) ジャンルとしては、(ドラムマシンの)「808」を核としたオルタナティブユニット……と名乗っています(笑)。最近は、Y2Kな2000年代の感じのサウンドで、クラブ系のミュージックだったり、ヒップホップのハイパーポップやトラップだったりといったジャンルも織り交ぜながらVRChatなどのVR空間、メタバースを中心に活動しつつ、リアルのイベントにも精力的に出ている感じです。
──では、YSSの活動でどのようなことを担当しているのかも含めて、お二人の自己紹介もお願いします。
Sorte YSSのボーカリストとして活動しているSorteです。ボーカル以外だと、最近はライブ用のワールドを作ったり、3Dの小物を作ったり。あとは、Xとかの広報関係を担当しています。
yopi YSSの作曲兼盛り上げ担当、yopiです。
Sorte ライブでは、ダンスで観客を煽る担当です(笑)。
yopi 動き担当をしてます(笑)。メインは、作曲、編曲、作詞。あとは、ミックス、レコーディング、マスタリング。ジャケットやコンセプトアートなどのアート関係。MVの撮影と映像編集。他に何をやってるかな……。
Sorte すごく、いっぱいで分かんない(笑)。
──全部の作業をお二人でやっているのですか?
Sorte そうですね。基本、全部2人でやってます。
──お二人は、2020年12月19日にYSSを結成されたそうですが、お二人の出会いやユニットを結成することになった経緯を教えてください。
Sorte 最初は、VRChatの音楽イベントで知り合いました。私がカバーを歌っていて、そこに、yopiが遊びに来ていたんです。
yopi それから、自分がDJをしているイベントにSorteが遊びに来てくれたりして。
Sorte yopiのリミックスした楽曲を私がすごく気に入って歌ったことから、「今度一緒にイベント出よう!」という話になって。一緒に出た時、すごく意気投合して「楽しかったね。また、何かやろうよ」となり、そこからYSSの活動が始まった感じです。
──音楽イベントでは、大勢のミュージシャンと出会う機会があると思うのですが、その中で一緒にユニットを組むという大きな決断をした決め手はありますか? やはり、音楽性? それとも、特に気が合ったとかですか?
Sorte 私はyopiの音楽を初めて聴いた時、すごく良い音作りをしていてカッコ良いと思って。一気にファンになった感じでした。だから、いつかは、この人の曲を歌えたらいいなと思っていたのが叶った感じです。
yopi 自分は、ずっと一人で活動していて。コミュ障なので、誰かにボーカルを頼むこともできなかったんです(笑)。でも、Sorteに歌ってもらった歌が、めちゃくちゃ上手いというか、今までに聴いたことがないってくらい、すごかったんです。それですごいと思ってたら、いつの間にか一緒に一回ライブに出るってことになって。これは、もう一緒にやっていくしかない。この出会いは逃せない、そんな気持ちでした。
「超会議」では初めての人もゲーム感覚で一緒に騒いでくれた
──基本的な活動スケジュールは、決まっているのですか?
yopi 1週間に1回のYouTubeでのライブ配信は、ずっとコンスタントに続けているYSS中核的な活動です。それに加えて、毎月、VRでのライブイベントを1、2回とか。あとは、リアルでのイベントも毎月1、2回くらいやっている形です、そして、毎月、1曲は新曲を出すようにしています。
──持ち曲も非常に多いですし、週1のYouTubeでの配信ライブでセットリストを決めるのも、大変なのでは?
Sorte 毎週、ライブの1時間前にミーティングするんです。
yopi でも、ミーティングをするようになったのも今年に入ってからくらい。それ以前は、まったく何も決めてなかったです(笑)。
Sorte 本当にその場で「じゃあ、これ」って、いきなり曲流されて、「わ! これか!」って歌い出すっていう(笑)
──その他のライブでも、そういう形だったのですか?
yopi ライブは、さすがに……。
Sorte 昔は、そうだったよ(笑)。
yopi あ、そうだった(笑)。
Sorte もちろん、リアルイベントとか他に主催者さんがいるところでは、事前にセットリストを決めていたんですけど。自分たち主催のライブでは、ちょっと前まで、その場の雰囲気でyopiが曲を流し出して、「次、これいくんだ?」みたいな。「DJ vs ボーカリスト」みたいな感じでライブをしていました。
──以前、VRアイドルのえのぐさんが主催している定期対バンライブイベント「VRide!」でのステージを観たのですが、会場全体を盛り上げるパフォーマンスに圧倒されました。
yopi どのイベントにも必ず、クルー(YSSファンの総称)の人たちが来てくれているんです。クルーと一緒に作るのが、YSSのライブだと思っています。
──クルーらしき人だけでなく、他の出演者のファンであろう人たちも、たくさん巻き込んで盛り上げていた印象があります。「これに乗らないと、損」みたいな空気を感じました。
Sorte そうだったら、すごく嬉しいです。クルーに向けてというのは、大前提としてあるんですけど。せっかくなら足を運んでくれた人たちみんなと一緒に騒ぎたいし、楽しみたいという気持ちもすごくあるので。
yopi もちろん、そうですね。
Sorte セットリストも、そういうたまたまYSSを観てくれた人も盛り上がるようなセットリストで、yopiがDJ的に繋いだりしています。そして、歌と煽りとyopiの動きで、みんなを誘導するみたいな(笑)。そうしたら、きっと知らない人でも楽しめると思うし。そうすることで、やっぱり、自分たちが一番楽しいんですよね。
──「ニコニコ超会議2025」の「VTuberストリートライブ」も、そういう形で盛り上がった結果、ニコニコ生放送ギフト2位という記録を残せたわけですね。
Sorte 現地でのライブではなかったのですが、配信画面のコメントがすごくて。花火や絵文字のギフトで画面がいっぱいになったり、古の職人みたいな人が何かを描いてくれていたり。ずっとコメント欄も賑やかでした。
yopi 最初から最後まで花火が上がってたから、YSSが見えないくらいでした(笑)。
Sorte そのくらい、みんな一緒に大合唱してくれて。多分、初めて観てくださった方も、YSSクルーがコメントで一緒に歌っているところで、同じようにコメントを打ってくれたりしていたみたいで。きっと、みんなも「なんだ? これを打てばいいのか?」とゲーム感覚で騒いでくれてたのかなと思っています。
──その場の流れを読める鍛えられたオタクが多かったわけですね。
yopi どのライブでも、クルーが絶対に現地で騒いでくれるんです。それが周りにも伝播するよね。
Sorte そうだね。みんなのおかげで、逆にこっちが「盛り上がっていくぞ!」みたいな気持ちにさせられます。
新たな出会いや物語が詰まった5thアルバム
──楽曲製作の進め方について教えてください。
yopi 基本、自分がまずトラックを作って。作詞をして仮歌もやって、それをSorteさんに渡して、歌を入れてもらうという形です。
──新しい楽曲が生まれる最初のきっかけを教えてください。0から1になるためのエネルギーやアイデアは、どのようにして生まれるのですか?
yopi すべて、YSSの活動からです。今までクルーたちと一緒にYSSをやってきて、いろいろと感じること、それをそのまま曲にしていて、YSSの活動記録みたいな感じです。
Sorte そうだね。
──そうなると、YSSの活動を追っているファンはより深く曲のことを理解できるし、曲への思いもより深くなっているのですね。
Sorte そう言ってくださる方もいます。「自分たちがこの曲にもいるんだと思うと嬉しい」って言ってくれたりして。
──7月21日にリリースされた5thアルバム「Noctilux」は、どのようなアルバムになりましたか?
yopi ちょうど1年前くらいに、YSSの活動が幅が大きく広がったタイミングがあって、ファンの数もすごく増えたんです。そこからの新たな出会いとか、新しいクルーのみんなとの物語とかが詰まったアルバムになっていると思います。
Sorte うんうん。
──1年前に何があったのですか?
yopi 1年前、(人気配信者の)スタンミさんの配信に出たタイミングで、YouTubeのチャンネル登録者数も一気に1万5000人くらい増えて。
Sorte 2日くらいで増えたよね。
yopi 配信の同接(同時接続数)も最大1000人くらいになりました。今は落ち着いたんですけど。その中で、YSSに対する推し方というか思いが明らかに違う人たちが増えて。
Sorte 熱量がすごいんです。
yopi もちろん、それ以前からのファンの人たちもすごいんですけど、また別のベクトルのすごさを持った人たちがたくさん増えて。こちらも、その人たちに影響を受け、「それだったら、こうしたい、ああしたい」って事が去年までと比べて、たくさん出てきました。
──そうやって、毎月曲を作っていった積み重ねがこのアルバムになった?
yopi はい。
──曲を作るタイミングでは、アルバムとしての完成形やコンセプトも考えながら曲を作ることが多いですか? それとも、その時その時のYSSの物語を重視して作っていく形ですか?
yopi どちらかと言えば、今、起きていることを大切にしているんですけど、実は、アルバムのコンセプトは初期の頃から全く変わっていなくて。とても大きなコンセプトの中で、
その時の思いを曲にしているんです。
──そのコンセプトが気になります。
yopi それは、まだ明かせません(笑)。
Sorte 明かせないんだ(笑)。
──でも、YSSとして活動している限り、絶対にそこからは外れないようなコンセプトになっているわけですね。
yopi はい。
Sorte そうですね。
──サブスクやYouTubeなどでは、非常に多くのYSSの曲を聴くことができます。YSS初心者にお薦めの曲をいくつか挙げていただけないでしょうか。
Sorte ビギナーさんにということであれば、「Wednesday」かな。キャッチーですし。
yopi 「Wednesday」だね。YSSの曲の中では、かなり聴きやすい部類の万人受けしそうな曲です。
Sorte YSSは、けっこう尖った曲もあるので(笑)。
yopi あとは、「Beyond our dreams」。
【オリジナル曲MV】YSS -Beyond Our Dreams(404チャイナ展 Ver)/おんゆー【Vtuber / VRChat】[#YSS_VRC]
Sorte 「おんゆー」(曲中で繰り返されるフレーズ)ですね。
yopi 「WE ARE YSS」という自己紹介曲もあります。
──7月12日(土)から27日(日)には、VRChatで「-YSS MARKET Creative Showcase-」というイベントを開催されたそうですね。これはどういったイベントだったのですか?
Sorte 最初は、VRChatに自分たちでワールドを作り、21日(月)にリリースされる5枚目のアルバムの紹介、展示をしようという企画だったんです。でも、YSSクルーから「自分たちもYSSのファンメイド作品を出したい」という声をいただいて。もし展示しても良いよって方がいたら、YSSとYSSクルーのショーケースという形にして、展示会のワールドを作ってイベントにしようという企画になりました。
──観て楽しむだけではなく、出展者になりたいというファンもいたのですね。
Sorte YSSのグッズとかを作って身に着けてライブやイベントに来てくれる方とか、ファンアートとかを描いてくださる方が結構いらっしゃって。そういった方たちからお声掛けいただきました。
──YSSの出展物としては、例えば、アルバムの音源が聞けたり、MVが見れたりするのですか?
Sorte はい。そういう感じです。あとは、期間中にそのワールドでライブイベントもやりました。
──その他、直近にライブの予定などはありますか?
Sorte 12月20日(土)にYSSの結成5周年を記念したリアルワンマンライブ「NEBULOSA」を秋葉原エンタスで開催予定です。チケットも発売中なので、ぜひチェックしてください。
VRってみんなと会える場所なんです
──お二人にそれぞれ伺いたいのですが。VRの世界は、ご自身にとって、どのような存在ですか?
yopi VRChatを始めてから、もう8年になります。ここ最近は、昔みたいに毎日、VRChatをしているみたいなことはないんですけど、始めてから2年くらいは、ほぼ毎日。24時間の内、VRにいる時間の方が長いという生活をしていました。そのせいか、VRというものに対して違和感がないというか、ある意味、特別視していない。当たり前にあるものだから、VRChatに行くのは、(リアルで)どこかのライブハウスに行くのと変わらない感じなんですよ。
──この質問は、私が「あなたにとって、この世界はどんな存在ですか?」と聞かれるようなものだったのですね。
yopi はい。そのくらい当たり前のものではあります。
──おそらく、VRのキャリアよりも、音楽のキャリアの方が長いと思うのですが。音楽活動に関しては、バーチャルという世界が加わったことで、どのような変化がありましたか?
yopi 届けられる人の深さというか。ある意味、まだ人口が少ないからこそ、そこに来ている人たちに音楽を届けられる機会が増えたというか。リアルで始めたばかりのアーティストがライブに人を集めるのはとても大変じゃないですか。
──集客は厳しいと思います。
yopi でも、VRでは、ライブイベントだというだけで来てくれる人たちがいる。(活動初期の)イベントで30人、40人と来てくれた時、本当にすごく特別なことだと感じました。現実のライブで40人も集めるってかなり大変ですから。
──たしかに、リアルで、誰が何をやってるか分からないライブハウスにフラッと行く人は、かなりの音楽マニアだけな気がします。
yopi それがすごく嬉しいことで、それまでは届けられなかった音楽を届けられるようになったことが、一番大きい変化だと思います。
──Sorteさんは、いかがですか?
Sorte yopiと同じような内容を言っちゃいそう(笑)。
──同じ気持ちなら、それでも構いません。
Sorte ライブの時に限らないのですが、VRってみんなと会える場所なんですよね。VR機器を持っていれば、VRを中継地点にして、北海道にいる私たちが、物理的にすごく遠い場所にいる人たちとも会うことができる。先日は、海外の人たちのVRChatイベントにも参加しました。しかも、リアルで会っているような目線、顔の近さでおしゃべりできる。そういう場所です。そこで出会った人たちと、自分たちの音楽で一緒に騒げる。それが本当に嬉しいです。VRを始める前は、誰かとユニットを組んで人前で歌うなんて活動はしてないし、本格的にリリースをしたりしていません。もちろん、サンリオさんのフェス(Sanrio Virtual Festival)やニコニコ超会議のような大きなイベントに出られたのもVRがあったから。結局、VRで出会えたからこそ、yopiとユニットを組めたし、クルーとも出会えて応援してもらって、みんなで騒げている。一言では言えないけれど、そういう場所です。
──では、最後にYSSの今後の目標、長期の目標と短期の目標の両方を教えてください。
yopi ずっと言っていることですが、長期の目標は「トゥモローランド」という海外のDJフェスに出ることです。
Sorte VRアーティストとして出たいですね。短期の目標は、まずは、YouTubeチャンネル登録者数10万人です。とにかく、まだまだ、YSSを知ってもらわなきゃいけないので。
yopi そうだね。まずは、知名度をもっともっと上げていって、いろいろな方にYSSの音楽に触れていただきたいと思っています。
(TEXT by Daisuke Marumoto)
●関連リンク
・YSS(X)
・YSS(YouTube)
・YSS(公式サイト)
・YSS結成5周年記念ワンマンライブ「NEBULOSA」(チケット販売ページ)

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