
個人のVTuberとして活躍するピーナッツくんが、2025年8月20日にアルバム「Tele倶楽部II」をリリースした。その後、バーチャルライブ「PQ」を11月23日に開催し、ピーナッツくんの2025年は幕を閉じたのだった。
ライブ「PQ」における「Tele倶楽部II」を中心にした選曲と人選チョイスからみるに、この2作品は彼にとっておおよそ一本道となって繋がっていたプロジェクトなのは間違いなく、彼の”やりたいこと”がこれでもかと詰め込まれたプロダクトとなったのはいうまでもない。
今回はそんなアルバム「Tele倶楽部II」について、2026年をまたいだ今だからこそ感じ取れることを踏まえながらレビューしていこうと思う。
東奔西走 南船北馬 全国を飛び回ったピーナッツくんとぽんぽこさん
オシャレになりたい!ピーナッツくんという存在について、今更言葉を多く使う必要はないだろう。
ピーナッツくんは、2017年6月よりYouTubeに投稿されていた個人制作ショートアニメ「オシャレになりたい! ピーナッツくん」の主人公であり、そこから派生したバーチャルYouTuber(VTuber)/バーチャルタレントとして活動してきた。
2020年にファーストフルアルバム「False Memory Syndrome」をリリースして以降、ヒップホップ好きな嗜好性を押し出した音楽活動に力を注ぐようになり、ヒップホップフェス「POP YOURS」への出演や自作アルバムのツアーも行なうなど、その堅調な活動にシーン内外から支持が集まっていた。
そんな彼だが、ここでいちど2024年末ごろから2025年にかけての動きを見てみようと思う。
アルバム「BloodBagBrainBomb」をリリースした彼は、相方でもある甲賀流忍者!ぽんぽことともに、2024年4月から「ぽこぴーの回覧板」というリアルイベントツアーを開催しており、2025年にも同じくツアーを開催した。
滋賀、北海道、宮城、熊本、沖縄、香川、大阪、埼玉、新潟、秋田、和歌山、広島、静岡と全国13カ所のホール会場で開催しており、ほとんどの会場で満員札止めの大盛況ぶりだった。
これにくわえ、たまごっち・スイーツパラダイス・極楽湯・ラグーナテンボスとのコラボイベント(ポップアップストア)の開催し、特に愛知・名古屋とのラグーナテンボスとのコラボイベントでは、ぽんぽこ&ピーナッツくんによる公式VRワールド「ぽこピーランド」をテーマにした内容となっていた。
もちろんVRワールド「ぽこピーランド」は健在であることにくわえ、加えて”没入型”展覧会「Who_Is_Pokopea_?展」を開催。CG/実写/アニメーションを手掛けるコレクティヴ・釣部東京が制作した展覧会で、東京・仙台・静岡・福岡と開催されており、2026年4月25日から名古屋PARCOで開催予定となっている。
これに加え、ピーナッツくん個人のライブ活動も重ねてみよう。2024年中頃から「BloodBagBrainBomb」のアルバムリリースツアーを行なったあと、2025年からは高知での野外イベント「ラララ音楽祭 2025」へ出演したのち、パソコン音楽倶楽部との対バンイベント、「group_inou×ピーナッツくん×PAS TASTA」、「TOFUBEATS VS PEANUTSKUN」、漢 a.k.a. GAMIが主催する「漢 kitchen Fes. 渋谷編」にラッパーYDIZZYのリリースパーティ「MASTERPIECE!!!」へ出演。
「SPOOKY PUMPKIN 2025 ~PURO ALL NIGHT HALLOWEEN PARTY~」でオールナイトイベントに出演したかとおもえば、オンラインイベント「SANRIO Virtual Festival 2025」に出演。そしてMCバトルイベント「MC BATTLE MATSURI -大説教2025-」へ参戦し、気鋭のMCであるピラフ星人を見事に倒してみせたのだ。
VTuberからネットミュージック、ヒップホップへ。オンラインからオフラインへ、ホールレベルの会場から大小さまざまなライブハウスへ。ピーナッツくんは全国津々浦々、その脚を止めることなく進み続けたのだ。
ビッグなタレントと”公にイチャイチャする” 『Tele倶楽部II』
そういった流れのなか、ピーナッツくんの頭と口はより加速度的に回り続けた結果、「Tele倶楽部II」が生まれたのだ。
漢 a.k.a. GAMI、PUNPEE、Kamui、幾田りら、Daoko、Elle Teresa、ファイルーズあい、魔界ノりりむ、轟はじめと、様々な役者をキャスティングしたわけだが、まさにこれは彼が歩んできたフィールドやカルチャーから呼び出してきた面々である。
ラインナップをみるといったいどんな音楽アーティストがこの作品を作ったの?と素で疑問に思えてしまうほどの越境性は、彼のアイデンティティがハッキリと滲んでいるのだ。
それでいて、作品名が「Tele倶楽部II」であったことも、ファンからすれば驚きだったろう。 2021年にリリースした「Tele倶楽部」と同じタイトルであり、 こちらはもちひよこ、yaca、KMNZのLIZ、おめがシスターズ、名取さな、市松寿ゞ謡、そしてラッパーのMarukidoというラインナップ、主にVTuberシーンからのキャスティングで制作された。
多数のタレントやアーティストが関わるフィーチャリング・アルバムとなっており、「ピーナッツくんが女性VTuberさんと公にいちゃつくためのアルバム」(外部リンク)という評価について笑いながら賛同しつつ、「みんな連絡が取りやすい人たち」で制作されたのだ。
その点、「Tele倶楽部II」はどうだろう。確かに多数のアーティストが関わって制作されたフィーチャリング・アルバムであり、それも魔界ノりりむ、轟はじめ、ファイルーズあい、幾田りら、Daoko、Elle Teresaというビッグな女性タレントを中心にして、ピーナッツくんが多数のアーティストと”公にイチャイチャする”という点で、同じ血脈を受け継いでいる。
とはいえ、「Tele倶楽部」はそんなイチャイチャするのみの作品でもなく、ピーナッツくん自身の自己批判や、肩の力を抜いたポップなビートで茶目っ気をみせたりと、彼自身の表現が詰まった作品である。「Tele倶楽部II」も当然血脈を受け継ぎ、後に行われるバーチャルライブ「PQ」にもつながるような部分がアリガリとしていたわけだ。
リリース前のニュースなどでアメリカの高校で卒業前に開かれるパーティー・プロムをテーマにしたと報じられたように、女性と自分とのやり取りや距離について、そのあいだに漂う悶々ウジウジとした内面、そして恋愛の中で突如として現れるある種の全能感すらも「Tele倶楽部II」に封じ込めたのだ。
これまでピーナッツくんと楽曲を制作してきたnerdwitchkomugichan、ヤギ・ハイレグ(Yagi Highleg)に加え、本作にはtofubeats、Yohji Igarashi、lucwhatscooking、growbeatzが参加。本作の魅力は、彼らトラックメイカー陣が制作したバラエティ豊かなトラックにある。ときにダンサブルで、ときにパンキッシュで、ときにグルーヴィでロマンティック。本作が詰め込んだメッセージやイメージを、より彩り鮮やかにしているといっても過言ではない。
じゃあ『Tele倶楽部II』を順に聴いてみよう。
アルバム1曲目、ピーナッツくん一人でラップされる「豆舞」では、「Looking for my vibe」とラップしながら自身を見ろとアピールする。My Vibe→豆舞と軽く韻踏みながら、豆舞(ピーナッツくんの動き・パフォーマンス)と連想をつなげていくのは流石だ。
「パーティはまもなく幕が上がる 今夜だけにかかるよ魔法が」という出だしから始まる「Destoroy My Pants」は、本作のテーマであるプロムの開幕を告げる曲で、出だしは鍵盤の簡単なフレーズからファニーな音使いとElle Teresaのボーカルと絡み合い、まるで幼児向け番組のBGMのよう。
つづくはtofubeatsによる「Stop Motion」で、魔界ノりりむとともにデュエットしていく。ディスコチックな軽快なグルーヴにのって、ピーナッツくんは張り切って……いやイキがるように、大げさに歌ってみせる。「カックッサッナッキャ!!!」とラップするピーナッツくん、横目にしながら笑う魔界ノりりむ、とてもシアトリカルかつ立体的に「男女の2人デート」が見えてくる。
このシアトリカルで立体的な一面は、歌を歌っていないときにも発揮される。ラップしているピーナッツくんの横から「えっ!?きもっ!」とツッコんだり、「本当に何も無いの?」「いや、これそういう歌だから」と呆れるように窘められるピーナッツくんのやり取りだ。
「ああ、そういうこと?」とショゲるピーナッツくんに、「えぇ?どういう意味!?」と気分を損ねたかと聞き返すりりむ、そこから一層気合の入ったラップ&フロウをカマす。
Have a Nice Day
遊び足りない奴らが集結
ジャケットコサージュに
Put on a Dress
This is the プロム
に集まるシューベルト
誰も誘ってないなんてピーキー
バックパスばかりじゃ
マジグリーリッシュ
君とスポットライトを浴びたい
からgonna make a big dream
フルスキルなラップの裏に、保守的なスタンスじゃいけない!奮い立つ心持ちと女の子にモテなかったという悔しさが滲む。こういった浮ついた気持ちも、軽薄な振られ方も、届かなかった悲しみも含めて、”そういう芸”としてコントロールされているのが、ハッキリと伝わってくるのだ。
プロム(パーティ)に足を運んだけどもうまくいかなかったピーナッツくん。そのまま楽曲は「できたらいいな」へと繋がっていく。「I’m a 気取りおませ屋のB-BOY」と自分をあらわし、弱気になってしまうピーナッツくん
そこに、漢 a.k.a. GAMIが現れる。
この街から飛んだ達の行方
責任を伴う言葉なら武器となる
表に1歩出れば リアル泥警なう
背伸びをすると なめた態度が命取り
背負うもがあるそれリアル俺のセオリー
フローだけ立派でハリボテなバースだな
カラオケでライブする
スタジオギャングスター
ラップと同時に一気にサウンドが歪み、音割れ気味なサウンドで圧力を表現。そしてこの攻撃的かつ過激なラップ。直後にピーナッツくんはこうシャウトアウトする。
しのごの言わずにやるしかねぇ
わかってんだろ?おい!やるしかねぇ
管巻いてる暇ありゃやるしかねぇ
口八丁手八丁でやるしかねぇ
しのごの言わずにやるしかねぇ
わかってんだろ?おい!やるしかねぇ
管巻いてる暇ありゃやるしかねぇ
口八丁手八丁でやるしかねぇ
この楽曲の合間合間で漏れ出るピーナッツくんの声には、この曲の完成について、いやそもそも自身の活動すらも「できたらいいなぁ」と投げやり気味なニュアンスが帯びている。
そんな弱腰なときは、つまりそう、”気合い”である。
楽曲の最後には、「おい、できたらじゃなくてできるまでだよ。お前やる気あんのかよ?」と詰め寄り、ピーナッツくんは「はい…!」と返事する。
ピーナッツくんという姿は透け、楽曲を聞くリスナーに向けて問いかける。「やる気あんのか?」「できるまでやんだよ」と発破をかける。強面のヤンキーや不良の言葉遣い(漢さんはそれ以上の存在ではある)でストレートかつ真正面から説き伏せ、だがある種の怖さなどはかなり薄い。楽曲コンセプト・設計がとても素晴らしい1曲だ。
そのままピーナッツくんは、Daokoとの「Tokyo Jumpers」へ。クールに滲むエレクトロニカなトラック、2人とも声に加工をくわえて交わう。スクエアなリズムのなかで、どこか低温度で人肌の温かみが薄いやり取りは、まるで都市で生きる者同士の隔たりのよう。
「Skit」で女性(CV:ファイルーズあい)を待たせて苛立たせているのが描かれ、つづく「免許」の途中で「バカッ!」と罵られて車から降りる状況が描かれる。しかもそれまでのビートから、なんとここでビートチェンジする。
Make money and money
刺す月の明かり
ひとり飛ばす車
助手席には君がいてたはずでも
限りある Life time
I’m spending all my own
一人の女性と別れて、「こんなPop Songじゃ踊れない」とセンチメンタルなマインドをヒップホップ・ビートにあわせて歌っていくのだ。
つづく「KIRINAI」ではラッパーのKamuiとともに自身をフレックス(自慢・誇示)する。自身がライブで関わったことがあるキティやピューロランドをあげながら、「今じゃ憧れたステージ立つ毎週」とラップしていく。Kamuiがこの曲で「ピラフ星人より先 曲出す」とラップしており、リリースされた当初このバースでアガったファンは多いのではないだろうか。
なお、冒頭でピーナッツくんがMCバトルイベント「MC BATTLE MATSURI -大説教2025-」へ参戦してピラフ星人を倒したと書かせてもらったが、この曲はイベント開催直前の夏にリリースされている。ちなみに、2025年12月にはKamuiのTwitchチャンネル「ラフスタ」の配信にピラフ星人が、そしてピーナッツくんが出演している。
Yohji Igarashiによるキックサウンドで誘われる「Clione」では、ボーカルエフェクトがかかった轟はじめのボーカルがコケティッシュな魅力で溢れており、楽曲の中でもピーナッツくんを誘い出す側として歌っていく。ハミングするように歌う部分すら、聞くものを後ろに引きずっていくような不思議な魅力を放っている。
Clione(クリオネ)のように体をくねらせ、魅了する轟はじめの絵が見える。だがそれもまた、歌が終われば別のこと。アウトロでピーナッツくんは轟はじめに声を掛けるが、あっさりと帰宅するところまで描き、「ミスッたデートの誘い方」という構図をヒネった自虐とともに表現する。
「Small Soldier」ではPUNPEEが登場し、低音の効いたビートのうえで2人はラップしていく。ここからは筆者の読解だが、ピーナッツくんとPUNPEEの歌詞から考えるにおそらくテーマはアニメ映画「トイ・ストーリー」だろう
鈍感なGirl
生意気にまたこんがらがる
こんなのわたし好きだった
純粋なあなたじゃないとか
おかしいのはお前の頭じゃない?
ぼくChild Playで
Toy Storyじゃない
お前のTaxをPayできる金がある
だけど見せびらかさないFlexを
当然したことありますSEXも
夜になって日が昇る前に作戦を終わらせようと企み、この世界のおもちゃ箱の隅にぼくならいたというアピールする。そのクセのキレのあるラップで口撃するのだから、ソルジャーモードなピーナッツくんがこの曲にはいる。
それに対しPUNPEEは普段の飄々としたラップのなかに、こんなワードを忍ばせる。
A long time ago その説は予々
内弁慶 突然の助け舟
滋賀県にそびえる
豆化のモニュメント
やめとけナメナメ
俺のマイメンはただの豆
PUNPEEは学生時代からアメコミを愛好しており、かなりのマニアとして知られている。海外映画俳優やクリエイターらが登壇する「東京コミコン」に登壇・イベントを行なったこともあり、自身のアルバム「MODERN TIMES」の制作に「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: リミックス」から大いに影響されたと語っているほどだ。
マーベル・コミックスやDCコミックス、そこからスライドしてハリウッドの娯楽映画まで見ているのであれば、当然「トイ・ストーリー」は知ってて当たり前。むしろPUNPEEの目から見ると、「自分自身をアニメ化している」かのようなトライアルをするピーナッツくんは、とても興味深い存在だといえる。
2026年2月7日に有明の東京ガーデンシアターで開催されるPUNPEEのライブ「Seasons Greetings’26」のゲストで1番最初に名前が上がったところからみても、ピーナッツくんはPUNPEEのお眼鏡にかなった、なんていい方もできるかもしれない。
本作ラストの「TIME TO LUV」は、YOASOBIのボーカルのみならずソロシンガーとしても存在感を発している幾田りらである。だが彼女との楽曲は、これまでの女性陣との楽曲とはすこし毛色が違うようだ。
歪みすぎて割れ気味なベースサウンドが耳を引くトラックは、まるでsoundcloudのハイパーポップのよう。そのなかでラップしていくピーナッツくんから幾田りらへとマイクが渡ると、今度は4つ打ちのキックサウンドを軸にしたダンストラックへ。
It’s for you
振り返る
髪をなびかせて踊る このMUSIC
伝えたいんだキミが好きなこと
いま地球が壊れるとしても
人生最大級でデカいこと
あの日 君と出会ったこと
昂る気持ちで君以外に視線が離せないピーナッツくん。その声にエコーとフィルターエフェクトがかかって消えかかりそうな瞬間、キックドラムがコンコンと鳴り、幾田りらが歌い始める。まるでピーナッツくんの存在を幾田りらの声が保たせているかのような、そんなフィーリングが生まれる。
What I want is love
空っぽになるくらいキスして
止めてよこの瞬間
世界中を敵に回しても
躊躇いないで
時は過ぎる もう待てないよ
いまこの瞬間しか君と僕は愛し合うことはできない、まるでハリウッド映画で主人公とヒロインがキスしてフィナーレを迎えたかのような描写だ。そして「Just wait for a while…」とフィルターのかかった声とハイパーポップなサウンドが鳴るなかで、本作最後の楽曲は終りを迎える。
時が止まるような圧のあるハイパーポップとグルーヴィなクラブサウンドが交互に行き来していく楽曲構成は、ピーナッツくんと幾田りらの交信をより印象的なドラマのようだ。
2025年のVTuberシーンで最も優れた音楽アルバム 「Tele倶楽部II」
筆者的には、「Tele倶楽部II」はピーナッツくんみごとにヒロインとハッピーエンドを迎えた作品と受け取っている。このフィーリングがより視覚的に描かれたのが、何を隠そうライブ「PQ」であった。具体的なライブレポートはこちらに執筆したとおりだが、夢見がちなインドアな少年が「オシャレになりたい!モテたい!」と外の世界へ足を運んだらなんでか世界を救ってしまう、そんなストーリーラインとなっている。
セカイ系といってしまえばそれまでだが、それくらい分かりやすいヒーローモノ的な補強をすることで、「Tele倶楽部II」の世界観を伝えようと試みたと思える。くわえてピーナッツくんの過去作品ややりたいことを詰め込み、あの3Dルックと世界観を構築している。それも生半可なクオリティではない、とんでもない内容と質を詰め込んだうえでだ。
前作「BloodBagBrainBomb」も相当素晴らしい作品だったのだが、「Tele倶楽部II」はそれにも負けず劣らずの作品になったと言える。バラエティ豊かなトラックのうえでさまざまなヒロインたちと物語を重ね、フレックスと自虐を繰り返していく。それもシーンを飛び越えた様々なメンバーを呼び出し、精神的な成長や移ろいを描いてみせ、「TIME TO LUV」の存在感はまるで一つの映画を締めるかのようなクライマックス感がある。
東奔西走、南船北馬、縦横無尽に天地横断。日本全国ありとあらゆる場所へ足を運び、リアルとバーチャルの間も行き来してきたピーナッツくん。ただ足を運ぶだけじゃなく、何かしらのインパクトを残さなければ振り向いてもらえないわけだが、多くの人を振り向かせてきた結果がこの作品の節々にある。
すこし見方を変えてみよう。「音楽アルバムは売れない」「プレイリストが取って代わった」といわれるようになった音楽シーンにおいて、ここまで頭から最後まで一本筋通った作品を聞くことはなかなかなくなってしまった。1曲目から最終曲まで聞くことで意味が生まれる、それどころか爽快感や感じ入るところが生まれるというものが音楽アルバムであったはずで、リスナーの脳内でストーリーテリングを想像させやすくしている今作は一気通貫としたアルバムの在り方を思い出させてくれる。
それこそLady GaGa「Mayhem」やRosalia「Lux」といったコンセプチュアルなアルバムが海外で大きなヒットを飛ばしたなかで、彼女らのような”例外”的な存在・作品と、なんだか視点が揃っているように感じてしまう……なんて書いたら、さすがに筆者の過ぎた妄想かもしれない。
ただひとつ決定的なのは、こうも高い完成度を持つプロダクトを生み出したという事実にある。リリースから約半年近く経過し、2025年を終えて2026年に入ったいまだからこそハッキリと書き残すべきだろう。
ピーナッツくん「Tele倶楽部II」』は、2025年のVTuberシーンで最も優れた音楽アルバムであった。異論を挟む余地はひとつもない。
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