HIMEHINA、ワールドツアー「LIFETIME is BUBBLIN」グランドフィナーレレポート なぜ彼女たちのライブはこんなに心を動かすのか?

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2人組バーチャルアーティストのHIMEHINAは4日、東京・SGCホール有明にて、「HIMEHINA WORLD Tour 2026『LIFETIME is BUBBLIN』」のグランドフィナーレを開催した。

昨年11月から国内7ヵ所、海外は台北、ソウル、サンノゼの3ヵ所と開催してきて、3日には前夜祭となる「全曲カバー祭り」を展開。迎えた4日、約3時間20分(!)、全43演目(!!)という超ボリュームのステージを熱量が途切れることなく一気に駆け抜けて、会場に集まった5000人を常に沸かせていた(huluのアーカイブ)。

一番大きかったのは、日本武道館にて2027年7月13日にライブを開催することを発表したこと(速報記事、チケットページ)。2023年8月のライブで掲げた「5年以内の日本武道館ワンマンライブ開催」の宣言を叶えたという経緯があり、発表の瞬間、「ついにきたか!」と客席のファンが叫んだり、涙を流したりと、感情を爆発させていた。


現地で参加して改めて感じたのは、ファンと時間をかけて積み上げてきた彼女たちのライブの特殊性だ。歌ってる最中のコール&レスポンスのレベルを超えて、客席だけに歌ってもらうパートが随所に用意されていて、それが信じられないレベルで会場の一体感を高めていた。

VTuberのライブというと、ともすれば映像作品を見る感覚が強く、人によっては「配信でもいいかも?」となりがちだが、このみんなで歌う仕掛けのおかげで、HIMEHINAのライブは「現地が勝ち組」と言い切れるほど体験の質が異なる。まさにライブなのだ。

今回のグランドフィナーレはYouTubeで全編無料配信したこともあり、初めてライブを見て「え、これすごくない?」と衝撃を受けたという方もいたはず。今回の記事では、そうした初めて知った方々に向けて、武道館の現場に来ていただくために、彼女たちのライブの魅力をまとめていこう。


なお、ライブの構成自体はワールドツアーで共通しているところが多いため今回の記事では1曲ごと追わないが、過去のライブレポートに記しているのでそちらを参照して欲しい。

・HIMEHINA、ワンマン「LIFETIME is BUBBLIN」1万字レポート 築きあげてきたみんなで歌うライブ文化に涙
・HIMEHINA初の海外ワンマン、台北ライブレポート&独占インタビュー 海外JOJIの大歓迎に「帰って来たいペイ!」

また、HIMEHINA曲の作詞・作曲とライブの総演出を担当しているGohgo氏のインタビューも併せて読んでおくと彼女たちへの理解が深まるはずだ。

・HIMEHINAライブ演出・Gohgoインタビュー(前編) 「実は超パのボカロライブ、つくっていました」
・HIMEHINAライブ演出・Gohgoインタビュー(後編) 「VTuberのキャラクターはどこまで生き続けるのか」


冷笑なしで、心を裸にして合唱できる稀有な場

VTuberに限らず、ライブで一番大切なことは何か。筆者は、目の前のステージでどれだけ心を動かされたかという点に尽きると思う。

その点でいうと、HIMEHINAのライブは心を動かされっぱなしだ。

それは、ステージのHIMEHINAやバンド、それを客席から応援する「JOJI」(彼女らのファン)たち、裏で支えているスタッフという、現場にいるすべての人たちの気持ちがひとつになる瞬間が何度も生まれるからだ。この一体感はどうしても会場でないと体感できないので、現地に足を運んでしまう。

特にこのワールドツアーは、「試される合唱の大地」と名付けられた「JOJI」が歌うパートがキモになっている。スクリーンに歌詞が映し出され、例えば、HIMEHINAが「簡単サクッとパッとパッとです」と歌った後に、客席が「辛い痛いは無い無い心配無いネ」と応えるように、交互に歌っていくのが4分ほど続く。

このラリー中の客席の音圧がとにかくすごかった。アリーナから3階席まですべての場所から信じられないぐらい声が出ていて、みんなのここにかける熱量が伝わってきた。VTuberに限らない普通のライブで、4分もの長い間ステージの方向からではなく360度から音に包まれる経験というのはなかなかない。

例えるなら、盆踊りでみんなで動きを合わせて踊っていくうちに会場がハイになっていく感じだろうか。音ゲーでずっと「PERFECT」のタイミングで打ち込んでいける気持ちよさにも近いものがある。この後に続く、「バブリン」→「キスキツネ」→「愛包ダンスホール」でも客席が歌う部分が多かったのだが、「試される合唱の大地」で勢いづいた客席はより力を入れるように歌っていた。

筆者もこのワールドツアーは、横浜2公演、台北、サンノゼ、グランドフィナーレと合計5回拝見してきたが、その中でも今回が一番声が出ていたと感じた。参加人数的には、今回のSGCホール有明は最初のパシフィコ横浜と同じ5000人規模なのだが、各地やネットで参加して予習した「JOJI」たちの練度が上がっていたところもあるのだろう。もちろんHIMEHINAチームの成熟もあるだろうし、ホールの音響がよかったのかもしれないが、整った会場の重低音を超える音圧が何度も客席から感じられたのは本当に想定外だった。

想像してほしい。いい大人たち(失礼)が5000人も集まって、恥も外聞も捨てて大声を合わせている状況を。子供のような素の自分に戻って、歌って、笑って、泣いても、それを誰も冷笑しない安全な場を。しかも、われわれは恥ずかしがり屋で、人前で積極的に声を出さない日本人だ。

このピュアな衝動の集合体こそ、筆者が感じる「HIMEHINAのライブは心を動かされっぱなし」の正体で、8000〜1万人規模となる日本武道館でぜひ体験してほしいと願う部分になる。


どんな状況でも「JOJI」たちならきっと歌ってくれる──。その信頼は、ライブ冒頭でいきなり試されていた。

今までのツアーでは荘厳な雰囲気で始まるのを見ているだけだったところ、開始30秒後にいきなりステージに表示されたのが「風編み鳥」の楽譜と歌詞。普通なら戸惑って「えっ、これ歌うところ?」と声が出なそうなところ、スムーズに歌い出したのはさすがだと感じた(Gohgo氏もインタビューで感動していたところだ)。


HIMEHINAと「JOJI」たちで積み重ねてきたストーリー

なぜHIMEHINAのライブは、こんなに「JOJI」に歌わせるのか。そこにも彼女たちが積み上げてきた「みんなの声を聞かせて」というストーリーがある。

時を遡ること7年前。2019年9月に実施した1stワンマンライブ「心を叫べ」に続いて、2020年2月28日に開催した「田中音楽堂オトナLIVE 2020 in TOKYO 『歌學革命宴』 feat.鈴木文学堂」にて、全国ツアー「藍の華」を同年の4〜5月に実施することを発表したが、すでに始まっていた未曾有の事態、コロナ禍が深刻になり、このツアーが中止に追い込まれてしまった。

結局、この「藍の華」は無観客のワンマンライブとして2021年2月に配信されたわけだが、その際、事前に「JOJI」に呼びかけてそれぞれで録音してもらった声を集めて、彼女たちの歌声のバックで流すという粋な計らいをした。HIMEHINAは、「自分たちのライブにはみんなの声が必要なんだよ」という姿勢を5年前から見せていたのだ。

そこから同年11月にもう一度、無観客のワンマンライブ「希織歌と時鐘」を実施した上で、2022年5月、2年ぶりに有観客となる「アイタイボクラ」を開催。さらに2023年8月の「提灯暗航、夏をゆく」でようやく声出し解禁となり、2024年8月でさらに自由に声が出せるようになった「涙の薫りがする」を経て、2025年にスタートした今回のワールドツアーを迎えているわけだ。

VTuberは、アニメやゲームに登場するキャラクターとは異なり、リアルタイムで一緒の時間を生きている存在になる。だからこそ、隣にいてコロナ禍で強制的に孤独になったという辛さが真にわかってくれていたというのが理解できて、それでも前を向いて生きていこうという歌のメッセージや、みんなの声が聞きたかったという彼女たちの気持ちが本当だということが伝わってくるのだ。

中には、10代から20代を一緒に過ごしてきたファンもいるかもしれない。そんな時を一緒に彼女たちが求めるなら、気持ちを丸裸にして声を出そう。何年にもわたってHIMEHINAと「JOJI」の間でこだまのように反射してきた人生のコール&レスポンスが増幅されて、今に至っているわけだ。

バーチャルな存在と、これだけ濃い関係性を築けた貴重さ。それを知った上で、YouTubeのメンバーシップに課金するか、Blu-rayを買ってHIMEHINAの過去のライブを順番に見ていくと、名作と言われる映画やドラマ、アニメを見るように伝わってくる想いがあるはず。そして見て作品が完結するのではなく、2027年7月の武道館を含めて、今なお現役で活動してるのでリアルタイムでその先を追うことができるのが幸せなところだ(「沼」の入り口かもしれないが)。

 
そうした話をまったく知らないにしても、歌や演奏のインパクト、舞台装置の作り込み、照明や特効による演出の盛り上げ、曲順による構成の妙、曲間0秒でどんどんつながれていく「ドバガキ」仕様など、彼女たちのライブのいいところはいくらでも語れる。

そして、あれだけカッコいいステージを見せた上で、「旅行グッズにはシミ取りが必要」や「止まるんじゃねぇぞ…」などと、いくらでもMCで「ちょけて」みせるギャップもたまらない。本編で散々泣かされた後に、MCでおどけたところを見せられると、普段以上に笑顔になってしまいますよね。「キスキツネ」で、今まではヒナがヒメにビンタしていたイラストが、ついに「結婚しました」になっていたところも変な声が出た(出ませんでした?)。つまりずっと手のひらの上で転がされっぱなしなのだ。

ビジネス的な観点で言えば、エンターテインメントにおいても当たり前のように再現性や効率性が求められる。一方で、人は再現性がない、誰も予想してなかった当たり前でない体験だから、強烈に惹かれてしまうという側面もある(その点ではスポーツに近いかもしれない)。その奇跡を見られる、というか自分たちも一部となってつくり上げられるのがHIMEHINAのライブなのだ。

言葉では語り尽くせない体験。このライブレポートや、Hulu、Zaiko、bilibiliで配信されているアーカイブも見てより興味を持ったなら、ぜひ来年の武道館を実感してほしい。


●セットリスト

  1. Prelude:この旅の果てに夢があるんだ
  2. Introduction:楽園 Ⅱ
  3. Opening:80Bubbles
  4. V
  5. LADY CRAZY
  6. ヒトガタ
  7. WWW
  8. ECHO
  9. ヒビカセ
  10. UNDEAD
  11. 神っぽいな
  12. CQCQ
  13. 灼熱にて純情
  14. 過去を喰らう
  15. Int:The Past and God
  16. 密命
  17. Int:ElectronⅢ
  18. 琥珀の身体
  19. 棄てられた鉄の王国
  20. 魂にひそむ
  21. Int:わかれのうた
  22. 遺言
  23. マザードラッグ
  24. 相思相愛リフレクション
  25. アダムとマダム
  26. 絶望を翔る恒星
  27. Int:試される合唱の大地
  28. バブリン
  29. キスキツネ
  30. 愛包ダンスホール
  31. Lemonade
  32. うたかたよいかないで
  33. 涙の薫りがする
  34. しゃぼんだま
  35. 生と詩
  36. Encore Calling
  37. [新曲]VAMPY
  38. フランケンシュタインの怪物
  39. [新曲]ハングリラ
  40. I Love You
  41. 夢景色
  42. Int:Flying Bubbles
  43. 風編み鳥


(TEXT by Minoru Hirota)


●過去のライブレポート
・待ち望まれたVTuber界の「歌姫」が降臨 HIMEHINA初のワンマンライブ「心を叫べ」レポート(2019年)
・ヒメヒナ「HIMEHINA LIVE 2021『藍の華』」ライブレポート 「オンラインでも現地」を願った仕掛けと演出に涙(2021年)
・ヒメヒナ「希織歌と時鐘」レポート ライブ氷河期に希望の鐘を響かせた名ステージ(2021年)
・ヒメヒナ「HIMEHINA Live2Days『アイタイボクラ』」レポート 「やっと会えたね」に涙し、決意の2億円借金に驚く(2022年)
・HIMEHINA LIVE 2023「提灯暗航、夏をゆく」レポート 会場を包んだ声援と笑顔、やっとボクらはひとつになれた(2023年)
・HIMEHINA、「涙の薫りがする」1万字ライブレポート そして未来は変わり、ボクらは会えるようになった(2024年)
・HIMEHINA、ワンマン「LIFETIME is BUBBLIN」1万字レポート 築きあげてきたみんなで歌うライブ文化に涙(2025年)
・HIMEHINA初の海外ワンマン、台北ライブレポート&独占インタビュー 海外JOJIの大歓迎に「帰って来たいペイ!」

●関連リンク
・アーカイブページ(hulu)
・武道館ライブ(公式サイト)
・ツアー公式サイト
・X(田中ヒメ)
・X(鈴木ヒナ)
・YouTube
・公式サイト