G-SHOCKで知られる電機メーカー「カシオ計算機」は10月6日12時、 VRChat上にワールドを公開する。あわせて、BOOTHにてオフィシャルショップを開設し、VRChatアバター用アイテムとしてのG-SHOCKを販売する。
そもそも腕時計としてだけではなく、ファッションアイテムとしても注目されるG-SHOCK。BEAMSやアダストリアなど、リアルのアパレルとバーチャルファッションを組み合わせる動きが盛り上がる中で、リアルなアクセサリーへの需要の高まりを受け、ついにVRChatへ参入したという。
カシオ計算機が公開するワールドでは、自分好みのG-SHOCKをカスタマイズし、購入できるウェブサービス「MY G-SHOCK」でVR上で作って試着する体験を楽しめる。さらに、VRChat社とのパートナーシップ契約を締結したことも発表。単にユーザーに遊んでもらうだけでなく、VR業界に参入する企業としての意気込みを感じた。
もちろん、ワールドのメインであるG-SHOCKをカスタマイズするギミックはかなり凝っていて面白く、この体験だけでも十分楽しい。これまでVRとの関わりをあまり感じさせなかったカシオ計算機が本気度の高いVRChat用ワールドを用意してくるとは思っていなかったので、いい意味で期待を裏切られた。
今回、ワールド公開に先立って行われた体験会に行ったので、G-SHOCKの試着体験とともにワールドの見どころをお伝えしたい。
オリジナルのG-SHOCKを作ってその場で試着しよう!
繰り返しになるが、最大の目玉は何といってもオリジナルのG-SHOCKをその場で作って試着できるところ。
これは実際にカシオ計算機がウェブサイト上で運用しているサービス「MY G-SHOCK」をVRChat上で体験できるというもので、実際にはウェブサイト上でパーツごとの色や柄を選択してカスタマイズ・購入するが、VRChatではカスタムしたG-SHOCKをその場でアバターの好きなところに装着することができる。
カラーは全て、「MY G-SHOCK」の展開カラーと同じだという。カスタマイズが完了したら「EXPORT」を選択すると、自分でつくったオリジナルのG-SHOCKが出てくるので、手に取って試着できる。また、EXPORTすると元のG-SHOCKが真っ白になるので、そこから別のものをカスタマイズできる流れになっている。
EXPORTされたG-SHOCKはその場で拡大縮小して好きな場所に着用し、どういうコーディネートを楽しむかをすぐに確認できる。
この試着はワールドのギミックなため、ワールドを出てしまうとG-SHOCKは着用できなくなるが、ワールド内にいれば何度でもつけ外ししたりカスタマイズ可能なので、実際に着用したいアバターで試してからBOOTHで購入できる。実際に時計を選ぶ際にも何度も試着することになるが、そのリアルと同じようにVRChat上でも体験できるのはかなり楽しい。
さらに、このG-SHOCKの盤面の時計表示は現在時刻と同期できるため、VRChat内でいつでも時間を確認できる。リアル調のファッションを楽しみたい方やG-SHOCKのファンはもちろん、日頃HMDの隙間から腕時計を覗きながら遊んでいる方にも便利な機能だ。
しかも、「MY G-SHOCK」ではカスタマイズ可能とはいえ、決められたカラーを選択して組み合わせることになるが、アバター用アイテムとしてのG-SHOCKではマテリアルによる改変を許可されているため、実質「MY G-SHOCK」以上の自由なカスタマイズを楽しめる。
話によると、そもそも「MY G-SHOCK」で好きなカスタムをすることで「推し色」や「概念コーデ」といった文脈をカバーする意味合いもあったという。
これらは、キャラクターの概念をカラーで表現することで、日常にさりげなく推しを取り入れるという考えだ。私もマニキュアを概念カラーで塗るのでよくわかるが、推しを表現するためにそれっぽい色を選択するどころか、カラーコードを指定して概念そのもののカラーを適用することも可能という、自由度で言えば現実のG-SHOCKを超えているともいえるのはかなり熱いと思った。
仮想店舗「G-SHOCK STORE」のみどころ
「G-SHOCK STORE」ではオリジナルのG-SHOCKを作るだけでなく、ワールドがよくできているところも訪れて楽しいポイントになっている。
ワールドに入ってすぐのインターフェースの表示からして、G-SHOCKのワールドであることがはっきりわかるデザインでワクワクする。
内部は控えめな照明がクールな印象がある。展示内容に対して考えれば、ワールド自体が広めに感じられるレイアウトは、ファッションアイテムとしての人気が高いG-SHOCKを強調する佇まいだ。
はじめに新作の時計の展開図を見ることができると説明を受けた時には「展開図を見ても楽しめるのかな……」と少し不安に感じたが、実際に動くところを見ると、まるでロボットアニメの変形シーンのような純粋なかっこよさに夢中になった。こうしたささやかな動きの美しさや、ディテールの細かさは見ていて楽しくなるというもの。ぜひ、展開するところを見て欲しい。
オリジナルのG-SHOCKをカスタマイズして試着できる場所は、実際のG-SHOCK渋谷店の店舗を模しているという。インダストリアルテイストな天井の露出配管などのおしゃれさが、リアル調に再現されたことで良く伝わる。
ただリアルなだけでなく、実際の店舗にはないミラーも実装されているところはやはりVRならでは。VRChat上で人が集まるワールドには必須のギミックであり、自分でカスタムしたアイテムを試着できるワールドならなおのこと必要不可欠と言えるかもしれない。
この、痒いところに手が届くようなポイントをうまく押さえたワールド制作のスタッフはなんと、GHOST CLUBのチームによるものだという!
「こっち側の人」の担当者が作り出す「わかってる感」
かなりインタラクティブに遊べるギミックと、シンプルながら美しいワールドを用意したカシオ計算機。彼らはなぜ、ここまでメタバースに力を入れているのだろうか?
G-SHOCKほどの人気アイテムであれば、ただの3Dモデルを販売しても話題になると思われるところ、アバター用アクセサリーを試着するワールドをしっかり用意するなど、日頃VRChatで遊ぶ人を刺激する感度の高さが印象に残った。その背景には、「G-SHOCK STORE」を企画した担当者の足利さんはコロナ禍以前の2019年からVRChatで遊ぶユーザーだったことが挙げれる。つまりは俗に言う「こっち側の人」といえる。
アバターで言えば、2019年当時はまだアニメ的だったり、非日常的なものが主流だったが、現在ではさまざまな趣向に分かれており、同じアバターを使用していても改変をしながら個性を表現する「アバター文化」が盛り上がっている。中でもBEAMSやアダストリアなど、リアルのアパレルメーカーがバーチャルファッション領域に参入し、人気アバター用の服を販売するなど、現実に存在する服を着たいという需要が高まっている。
カシオ計算機がファッションアイテムとしてのG-SHOCKを、バーチャルとリアルの融合が始まりつつあるこのタイミングで投入してきたことは、バーチャルファッションやアバター文化のさらなる盛り上がりを予感させるターニングポイントのひとつかもしれない。
また、11月には人気アバターとのコラボレーションも予定されているほか、追加のコンテンツも順次リリース予定とのこと。G-SHOCKのファンはもちろんのこと、これを機に興味を持った方もワールドを訪れてみよう。
●VRメタバースワールド「G-SHOCK STORE」概要
・公開日時:2023年10月6日12時
・公開先:VRChat上 ワールド検索から「G-SHOCK STORE」を選択
・ワールド名:G-SHOCK STORE
・プラットフォーム:VRChat (Cross-Platform)
・対応言語:日本語、英語
・対応ハードウェア:Windows PC、SteamVR対応ハードウェア、Meta Quest
●VRChat上で使用できるデジタルアイテムG-SHOCK概要
・公開先:カシオ計算機公式BOOTHショップ
・日時:2023年10月6日 12:00より
・価格:3000円
(TEXT by ササニシキ)
●関連リンク
・カシオ計算機公式BOOTHショップ
・MY G-SHOCK