みなさんは、VRゴーグルを被ってデスクワークをしたことがあるだろうか?
VRゴーグルの利用方法は様々だ。「Beat Saber」や「Half-Life: Alyx」などのVRゲームで遊ぶもよし、「VRChat」などのソーシャルVRで新しい日常を過ごすもよし。そんな主な利用法の一つとして期待を寄せるのが、「バーチャル作業環境」だろう。VRゴーグルを被ったら、集中できる没入型の背景だったり、現実のデスクにはとてもじゃないけど置けない大画面のディスプレイが操作できたり、さらにはゴーグルひとつを持ち歩けば、外出先でもマルチディスプレイで作業ができたり……。これまでも「Immersed」「BigScreen」「VertualDesktop」「Meta Holizon Workrooms」などなど、さまざまなアプリケーションが登場してきた。
だがしかし、VRゴーグルはまだまだ重い! 装着感も正直不快感がある! まだまだ作業に集中できる環境じゃない!
なかなか、日常の作業に堪える「これだ!」といった環境に出会えていない人も多いはず。筆者も、普段はソーシャルVRに毎日ログインしている割には、作業をVRでやるかと言われると、集中したいときは普通にデスクトップに向かった方が楽だよね、と考えてしまう。
そこで試してみたのが、HTC NIPPONが提供するVRゴーグル「VIVE XR Elite」と、バーチャルデスクトップアプリ「VIVE Desk」だ。本稿では、はたして「XR Elite」×「VIVE Desk」でのVR作業が実用に耐えるのか、筆者の体験とともに検証していければと思う。
「VIVE Desk」って何ができるの?
「VIVE Desk」は、VIVE XR Eliteに標準搭載されているバーチャルワークスペースソリューションだ。昨年末にBeta版がリリースされたのち、今年5月15日のファームウェア アップデートによって正式にリリースされた(公式ブログ)。互換性のあるWindows PCとXR Eliteを、VIVE Streaming Hubにて接続することで利用が可能で、仮想空間上にマルチディスプレイを表示したり、カラーパススルーで現実環境の上に仮想ディスプレイをオーバーレイしたり、逆に完全にVR環境に没入して作業に集中することもできる。ちなみに、執筆時点では未対応だが、macOSへの対応も今後予定しているとのこと。
VIVE XR Eliteといえば、昨年の4月に発売され、そのサイズ感やメガネモードでの軽量さなどが話題を呼んだxRデバイス。1600万画素のパススルー用RGBカメラ、片目1920×1920ドット、両目3840×1920ドットの4K解像度で19PPD。視野角は110度、リフレッシュレートは90Hzと、スペック自体は標準的ですが、AR/MR/VRと幅広い用途に使えるオールラウンダーとして、非常に使い勝手のいいデバイスだ。
・一歩先ゆく一体型VR「VIVE XR Elite」レビュー スマホの文字が見えるパススルーに快適無比なVR睡眠
バーチャルワークスペースを構築する際に、やはり一番気になるところは、「快適に作業ができるか」という部分。その点、XR Eliteはスペックの面でも重量の面でも、持ち運びやすさをとっても、現状の選択肢の中ではかなり「向いてる」といえそうだ。
特に、以前筆者の記事で言及していた「装着感」の面だが、今回「VIVE Desk」を使用する際に推奨されたMRガスケットを着用することで、かなりストレスフリーな装着感を得ることができた。VRコンテンツを体験したい場合は、周辺視野が開けてしまうため難しいが、VR作業を目的とする場合は、むしろふと目をやったときに、手元が見えるのはありがたい。何より、接顔部がおでこのみになるため、不快感が一切ない。
バッテリークレードルと合わせて装着をしてみると、額のみの接顔部でもかなり安定感があり、ズレ落ちてきてしまうような心配はなさそうだ。これは、XR Eliteの軽量さが一役を買っている部分で、個人的には評価が高い。
なお、このMRガスケットだが、これから買う人だけでなく、既存のユーザーも含めて6月30日まで無料でもらえるキャンペーンを実施しているのでぜひ入手しておこう。
実際の使用感をレビュー
さて、装着感に続いて実際に「VIVE Desk」のソフト自体はどうなのか、レビューを続けていきたい。今回は、ユースケースに応じて使い分けてみようということで、筆者の普段使いの一般的なノートPC(Let’s note CF-SV8)と、「VRChat」にも利用しているゲーミングデスクトップPCと、それぞれの使い心地をシェアしたい。なお、公式サポートによると「VIVE Desk」の動作環境は以下の通りだ。
- CPU:Intel Core i5-4590相当かそれ以上、AMD Ryzen 5 1500X相当かそれ以上
- GPU:NVIDIA GeForce GTX 1060(6GB)相当かそれ以上、AMD Radeon RX 580相当かそれ以上、Intel Iris Xe相当またはそれ以上(VIVE Desk 限定)
- メモリー:8GB以上
- OS:Windows 10/11
一般的なノートPC(Let’s note CF-SV8)の場合
Let’s note CF-SV8のカタログスペックは以下の通りである。
- CPU:Intel Core i5-8265U
- GPU:なし
- メモリー:8GB
- OS:Windows 10 Pro 64bit
CPUとメモリ容量、OSは基準を満たしているが、そもそもGPUの搭載はなく、VRのシミュレートは想定されていない。しかし、通常のデスクワークを行うには十分なスペックといったところだろうか。果たして、そもそも「VIVE DESK」は動作するのか……。
結果:ちゃんと動作しました!(※一応)
バーチャルワークスペースの利点として強調される「マルチ画面」や、そのほか「VIVE Desk」にて標準サポートされている「ウルトラワイド画面」などは切り替えると固まってしまった。しかし、単画面(シングルスクリーン)であれば問題なく動作した。
もちろん、ギリギリ動いているという状態で、決して推奨環境ではないが、画面の解像度が落ちたり、動作に遅延が発生したりといった作業上の不具合は(シングルスクリーンの場合)確認できなかった。出先で作業する際に、大きな画面やバーチャル環境で作業がしたいんだ、という場合や、新幹線などの移動時に集中して作業したいといったケースであれば、十分に検討の余地があるのかなと思う。少なくとも、VIVE Deskの場合は要求GPUも「Intel Iris Xe相当以上」であることから、動作環境を満たしたノートPCであれば、いわゆるゲーミングノートPCのようなものでなくとも、十分使用できるだろう。
デスクトップゲーミングPCの場合
こちらも、使用PCのスペックを記載しておく。
- CPU:Intel Core [email protected]
- GPU:NVIDIA GeForce GTX 2060
- メモリー:32GB
- OS:Windows 10
もちろん、動作環境も十分に満たしているため、単画面をはじめ「マルチ画面」「ウルトラワイド画面」「ゲームモード」すべての表示方法で十分に使用可能だ。普段筆者は、20インチのシングルディスプレイで作業しているため、場所を気にせず画面を自在に大きくできて、かつマルチディスプレイも配置を選べる点は、快適に感じた。
このように、トライアングル状に配置してあげることで、右側で主な作業を、左側で参照する資料などを表示し、見上げた上側にYouTubeでBGMを流してあげたりすると、良い役割分担ができるなと感じた。このように上側にディスプレイを配置しようというのは、現実で行おうとすると支えを工夫しなければならないので、バーチャルワークスペースならではの自由度だと思う。
ちなみに、VRコントローラーでの入力(スクロールやクリックなど、マウスと同様の機能)をサポートしているため、たとえばベッドの上で寝転がって大画面で動画を見る、といったこともできる。また、意外とありがたい機能が、このVRコントローラーとマウス両方に入力が対応している点。逆にマウスで、バーチャル環境上の画面の位置を移動させたり、VIVE Deskの設定画面を操作したりといったこともできる。VRゴーグルとマウスを持ち替える動作は、どうしても面倒なため、シームレスに両方の入力が対応しているのは、痒い所に手が届く仕様だと感じた。
VIVE Deskをインストールしてみよう
ここまで、筆者の2つの動作環境でのVIVE Deskの使用感をシェアしてきた。総評として感じるのは、やはりVIVE XR Eliteとバーチャルワークスペースの相性は抜群にいいということだ。特に、MRガスケットで最小限の接顔部にて安定して装着できる点は、XR Eliteのサイズ感ならではの魅力で、簡単に着脱もできるため、かなり使い勝手が良い。また、持ち運んで使用するユースケースを想定してみると、バッテリークレードルはそこそこ嵩張るし、重量感もあるかもしれないが、本体自体はこのポーチに入ってしまうほどの可搬性がある。
もし、XR Eliteをお持ちの方であれば、標準ソフトであることもあり、とりあえずは試してみてはいかがだろうか。
必要な作業は、使用するPCに「VIVE Streaming Hub」クライアントをインストールするだけ。後は、XR EliteとPCをWi-Fi経由もしくはUSB経由にて接続し、VIVE Deskを起動。初回のみ、作業環境を定義してあげれば、すぐに使い始めることができる。ぜひ、この機会にバーチャル作業デビューを果たしてみてほしい。
(提供:HTC)
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